(5)第21回OAU(アフリカ統一機構)首脳会議において採択された宣言・決議(要旨)

(85年7月20日,アディスアベバ)

(1)アフリカの経済情勢に関する宣言(アディスアベバ宣言)

(イ)我々は,アフリカ大陸の発展は,第一義的には,我々の政府と国民にその責任があることを再確認し,アフリカの国々と国民の経済的発展の達成のために個別的に,又は集団的に具体的措置をとることを決定した。

(ロ)ラゴス行動計画及びラゴス最終文書の原則及び目的を再確認する一方,アフリカの復興・発展のために今後5年間にとるべき優先計画として次の点に焦点をあて討議した。

(あ)ラゴス行動計画及びラゴス最終文書の実施促進のための措置

(い)アフリカの食糧事情改善・農業復興のための特別行動計画

(う)アフリカの対外債務問題の解決策

(え)種々のレベルにおいて共通した行動基準

(お)南部アフリカ諸国の経済を阻害する南アの政策に対する行動計画

(ハ)我々の経済の支配的セクターである農業は,近年急激に悪化した。1970年代初めから生産力が落ち始め,旱魃,自然災害などで急激に悪化し,現在では加盟国のほぼ半数が食糧援助に頼っている。

国際社会や国連を始めとする各種援助機関によるさまざまな援助には深く感謝する。

国際社会に対し河川流域及び農業食糧生産面での多国間の協力等の既存の地域機構を通じ,飢餓や経済回復のための援助がなされることを強く要請する。

(ニ)しかし,現在の緊急救済援助活動のみに焦点があてられてはならず,アフリカの食糧・農業危機の根絶のためには,十分に練られた開発戦略を基礎に各国及びアフリカ大陸の潜在能力を効果的に動員・発掘することが極めて重大であることを認識し,各国はこれから1989年までに政府の総公共投資のうち農業投資の割合を20~25%に段階的に増加させることを誓約する。

(ホ)アフリカの対外債務は,84年末で1,580億ドルに達し,本年末には1,700億ドル以上になると見込まれ,これは,それら諸国のGDPの36%にもなり,その債務返済は1985年の輸出収入の27%以上にものぼると見込まれている。

この原因の一端は,我々の開発政策の欠陥にあるが,主要原因は,交易条件の悪化,高金利,為替相場の急激な変動,借入れ条件の悪化等各国のコントロールが及ばないところにある。

(ヘ)我々は,アフリカ債務問題の緊急かつ永続的な解決のため,ドナーに対しコンセッショナルな資金供与の増加,特に開発途上国の債務及び開発問題に関するUNCTAD決議165(S-IX)の緊急の実施並びにアフリカの危機的経済情勢に関する国連総会決議39/29(特にODAによる債務の贈与への転換)の緊急の実施を要請するとともに,アフリカ債務問題に関する国際会議が緊急に開催されることを要請する。

(ト)我々は,アフリカの食糧自給の基礎を築くため,食糧事情の改善及び農業の再建のための特別行動計画の実施にアフリカ諸国間協力の最大のプライオリティを置く。また輸送・通信等の面でもあらゆるレベルで必要な行動をとる。また,アフリカの危機的経済情勢に関する国連総会の特別会合の開催を呼びかける。

(チ)南アの人種差別政権による侵略政策及び南部アフリカ諸国の経済的軍事的不安定に対しては,我々の一致した抵抗の努力が求められている。我々は,人種差別政権と戦う解放運動への支援を再確認するとともに,我々は全ての国,特に先進工業国,金融機関,多国籍企業に対し,南アのアパルトヘイト政権にその人種差別政策を撤廃させる効果的な経済制裁を含め,ナミビアの不法占拠と南部アフリカ諸国の不安定化に対抗する策を講じるよう求める。

(リ)今次会議の取組みがアフリカ経済を再生し,アフリカの経済統合への道を開くことを確信する。

(2)経済問題に関する勧告

(イ)ラゴス行動計画(LPA)並びにラゴス最終文書の実施状況及び実施促進のための措置

(あ)実施状況

(a)LPAの趣旨は加盟国によって受入れられているが,加盟国は必ずしもそれを具体的行動に移したり国家開発計画の中に取入れたりしていない。もしLPAが勧告している諸措置の大部分が実施されていたら,現下の世界的不況及び旱魃がアフリカ経済に与えた影響は最小限に押えられていたであろう。

(b)LPA並びにラゴス最終文書が採択された1980年以降アフリカ経済は悪化し1984年末の総生産は1980年に比べ10%減となっている。農業生産も目標の年間成長率4%を達成し得ず,人口増加率が2.8%の状況下において,わずか1.7%の年間成長率に留まっている。工業生産も輸入原料の不足や工業化政策の欠陥等の理由から不振を続け,大部分の工場が50%以下の稼働率で操業されており閉鎖された工場も少なくない。低い生産性も重要な問題である。

(い)実施促進のための部門別措置

(a)食糧及び農業

「アフリカにおける食糧事情の改善及び農業復興のための特別行動プログラム」(下記(ロ)参照)の実施

(b)工業

(i) 短期的措置:主要企業の能力評価及び合理化,部品生産を含む工業機械保守のための国家的プログラムの作成,工業製品の標準化及び品質管理の促進

(ii) 中・長期的措置:アフリカ工業開発10カ年計画に盛られたプロジェクトの実施,国民の企業への資本並びに経営参加を促すインセンティヴ措置の導入

(c)(その他の部門については省略)

(ロ)アフリカにおける食糧事情の改善及び農業復興のための特別行動プログラム

(あ)食糧危機に対する緊急措置

(a)国家レベルでの措置:早期警報体制の確立,救援物資配布ルートの合理化及びロジスティックスの強化等

(b)全アフリカ・レベルでの措置:特別緊急援助基金に対する拠出及び運営

(い)農業の復興

国家レベルでとるべき措置

(a)短期的措置:生産増大のためのインセンティヴ措置,施設・インフラの強化,水資源の有効利用等

(b)中期的措置:生産の質的・量的改善,灌漑農業の促進,新しい農地の開発等

(c)長期的措置:研究・開発の促進,流通システムの改善,熟練労働者の育成,農村の生産条件の改善,食生活パターンの改善,機構的な管理能力の改善等

(ハ)アフリカの対外債務

(あ)アフリカ46カ国の中・長期的対外累積債務の総額は1982年の1,344億ドルから1983年の1,368億ドル,1984年の1,580億ドル(見込み)へと増大。1983年のアフリカの対外累積債務総額はGNPの59%を占めた。デット・サービス・レイシオも1982年の19.8%から1983年の27.4%へと悪化。

(い)国際レベルでとられるべき短期的措置

(a)アフリカ対外債務に関する国際会議の招集

(b)世銀,IMF内のアフリカ・グループはアフリカ経済の早期回復を確保するための効果的な構造調整が新たな財源の調達なしには実施不能であることを強調すべし。

(c)リスケが効果的であるためには多年ベース(返済期間最低15年,支払猶予期間最低5年)で行なわれるべし。リスケ後の金利がリスケ前の金利を上回らぬこと。

(d)世銀はより多くのアフリカ諸国がIDA財源を利用し得るよう資格条件を緩和すること。

(e)IMFは信託基金を再活性化すること。

(3)その他の主な決議等

(イ)米国議会によるUNITA支援についてのクラーク修正案の廃棄に関する決議

(要旨)クラーク修正案の廃棄はアンゴラの内政に干渉するライセンスを与えるものではない。アンゴラ人民の敵に対する財政的,軍事的支援はOAU並びに国連憲章に違反するものであり,アンゴラの領土保全を脅かすいかなる行為の再開に際してもOAUは必要と考える適切な措置をとる権利を留保する。

(ロ)コンゴー大統領によるチャド問題調停に関する決議

(要旨)コンゴー大統領がチャド国内諸派間に和平をもたらすために行っている努力は今後も継続されるべきである。

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