(9)第12回主要国首脳会議(東京サミット)関連文書
(86年5月4日~6日)
(イ)東京経済宣言(仮訳)
1.我々主要先進7ケ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,第12回経済サミットのために東京で会合し,1年前のボンにおける会合以来の世界経済の進展を回顧した。その結果,我々の国民の繁栄と幸福を維持かつ向上させ,開発途上国がその経済成長と繁栄を推進していくための努力を支援し,そして,国際通貨及び貿易制度の機能を向上させていくために,我々は共同して事にあたっていくとの変わらぬ決意をあらためて確認した。
2.昨年の会合以来の進展は,最近の一連の経済サミットで我々がコミットしてきた政策の有効性を反映するものである。先進諸国の経済の拡大は4年目に入った。
我々のいずれの国においても,インフレ率は下降しており,節度ある財政・金融政策の継続と相俟って金利の大幅な低下をもたらした。また,経済の基礎的諸条件をより良く反映するような為替レートの顕著な変化があった。更に,最近の石油価格の下落は,特定の産油国に困難を生じさせるものの,先進諸国ひいては世界経済のインフレなき持続的成長及び世界貿易の量的拡大に資するものである。総じて,これらの進展は,世界経済の将来に対してより明るい展望を与え,かつ,信頼を増進するものである。
3.しかしながら,世界経済は,成長の持続性を阻害しかねないいくつかの困難な挑戦に依然として直面している。これらの中には,高い失業率,大幅な国内及び対外不均衡,為替レートの将来の動きに関する不確実性,根強い保護主義圧力,多くの開発途上国が引き続き直面している諸困難,いくつかの国における深刻な債務問題,及びエネルギー価格の水準をめぐる中期的見通しについての不確実性がある。
もし,大幅な不均衡及び歪みがあまりにも長く放置されるならば,世界の経済成長及び開放された多角的貿易体制に対し,ますます大きな脅威を及ぼすであろう。
我々には,これまでの努力をゆるめる余裕はない。我々は,政策を策定する上で,中長期に目を向けるとともに,現下の諸問題が相互に関連しあい,また,構造的性格を有することを考慮する必要がある。
4.我々は,成長,雇用及び国内経済の世界経済への組み入れを促進するため,全ての国において経済活動の全ての分野にわたり効果的構造調整政策が実施される必要性を強調する。このような政策は,技術革新,産業構造の調整並びに貿易及び対外直接投資の拡大を含む。
5.我々の各国において,適切な中期的な財政・金融政策の枠内で,公共支出の確固たる抑制を維持することが依然として必要不可欠である。我々の中のいくつかの国においては,引き続き過大な財政赤字が存在し,それらの国の政府は,漸次とれを削減する決意である。
6.前回会合以来,我々は,労働力の増加に対応する新たな雇用の創出にある程度成功してきたが,我々の中の多くの国においては,失業率は依然として高すぎる。インフレなき成長は,今後とも失業の歯止め及び削減に対する唯一最大の貢献を行うものであるが,それは雇用創出,特に新たなハイテク産業及び小企業における雇用創出,を促進する政策により補強される必要がある。
7.同時に,サミット7ケ国の間で緊密かつ継続的な経済政策の協調をはかることが重要である。我々は,5ケ国の蔵相及び中央銀行総裁の間の協調の進展という最近の動きを歓迎する。かかる協調は,整然とかつインフレを生じることなく為替レートの再調整と金利の低下をもたらすうえで有益であった。しかしながら,我々は,国際経済政策の効果的な協調のための手続きの一層の強化を確実にするためには,追加的な措置を講ずべきことに合意する。このため,首脳は,
-イタリアとカナダを含む,新たな7ケ国蔵相会議を創設することに合意する。同会議は,サミットと翌年のサミットの間に,従来以上に緊密かつ頻繁に共同して事にあたることとなろう。
-7ケ国の蔵相が,特にそれぞれの国の経済目標及び見通しの整合性を検討するために,以下に掲げる指標を活用して,少なくとも年1回は,共同してその見直しを行うよう要請する。
欧州共同体の代表とともに,
-協調の進展をはかるとの目的には次のことが明示的に含まれるべきであることを述べる。即ち,インフレなき経済成長の推進,雇用と生産的な投資のための市場指向型誘因の強化,国際貿易・投資制度の開放,そして為替レートの安定性の向上をはかることである。
-多角的な監視を,特にSDRを構成する通貨を有する諸国の間で,強化していく上で,IMF(国際通貨基金)と協力するとの1982年のヴェルサイユ・サミットにおける約束をあらためて確認する。そのような監視を実施していく上で,また,IMF専務理事と協力していく上で,これら諸国の経済見通しの見直しは,GNP成長率,インフレ率,金利,失業率,財政赤字比率,経常収支及び貿易収支,貨幣供給量の伸び,外貨準備,為替レート等の指標を勘案しつつ行うよう要請する。
-蔵相及び中央銀行総裁が多角的な監視を実施する際に,当初意図した進路から相当な乖離が生じるときは,常に適切な是正措置につき了解に達するよう最善の努力を行うことを懲慂する。また,有益であれば為替市場に介入するとの1983年のウィリアムズバーグ・サミットにおける約束を再認識しつつ,是正努力は,何よりも基礎となる政策要因に焦点をあてるよう勧告する。
首脳は,
-5ケ国蔵相に対し,国際通貨制度及び関連する経済政策措置の運用ないし改善につき討議し,対処する際は,必ずカナダ及びイタリアをその会合に含めるよう要請する。
-蔵相に対して,次回の経済サミット会合において,進捗状況を報告するよう慫慂する。
協調をはかる上でのこのような改善は,10ケ国蔵相会議における同様の諸努力とともに行われるべきである。
8.先進国によるこれらの政策の遂行は,それが世界経済を強化し,より低い金利のための条件を創出し,開発途上国に対する資金の流れを増加させる可能性を生み出し,技術移転を促進し,さらに先進国の市場へのアクセスを改善する限り,開発途上国にとって有益であろう。同時に,開発途上国,特に債務国は,国内貯蓄を活用し,逃避資本の還流を奨励し,海外からの投資のための環境を改善し,さらにより開放的な貿易政策を促進するための措置と併せて,効果的な構造調整政策をとることにより,世界経済においてより充実した役割を果たしうる。この関連で,我々は,一次産品輸出への依存度の高い開発途上国が直面している困難な状況に特に留意しつつ,引き続きこれら諸国の産品の加工度向上及び経済の多様化のための努力を支援するとともに,我々自身の貿易及び国内政策を策定するにあたり,これら諸国の輸出の必要性を考慮することに合意する。
9.民間資金の流れは,開発途上国の開発ニーズに対応するにあたり引き続き大きな役割を果たす。我々は,開発途上国への二国間及び多数国間の公的資金の流れを維持し,適当な場合には,これを拡大していく意向であることにつき再確認する。この関連で,我々は,早急に相当な規模の国際開発協会(IDA)の第8次増資が実現すること及び適当な場合には世界銀行の一般増資を行うことを重視している。我々は,多数国間投資保証機関(MIGA)の業務開始に向けての進展に期待する。
10.我々は,国際的債務問題については,ケース・バイ・ケースによる対応が引き続き重要であることを再確認する。我々は,債務問題に対する協調的戦略の策定が,特に米国による債務に関するイニシアチブを発展させる形で進展していることを歓迎する。多数国間開発銀行を含む国際開発金融機関が引き続き中心的な役割を果たすものであり,我々としてもこれら諸機関,とりわけIMFと世界銀行の間の一層緊密な協力へ向けての進展を歓迎する。健全な調整計画はまた,民間銀行の融資の再開,債務繰り延べにあたっての柔軟性及び輸出信用への適切なアクセスを必要とする。
11.我々は,アフリカにおける食糧事情が改善してきたことを歓迎する。しかしながら,多くのアフリカ諸国は緊急な援助を必要としており,我々はこれを支援する用意がある。より一般的には,我々は,アフリカの援助需要の充足を優先すべきことを引き続き認識している。外相によって採択され,我々に提出された対アフリカ援助報告書に示された諸措置は,着実に実施されるべきである。これらの国々に対する援助は,特に中長期的経済発展に重点を置いて行われなければならない。この関連で,我々は,サハラ以南アフリカ諸国のための特別基金を通じた協力を継続すること,新たに設立されたIMFの構造調整ファシリティーを早急に実施すること及びIDAを活用することを特に重視している。我々は,この地域の長期的な発展の基盤作りのため,来る国連アフリカ特別総会に積極的に参加する所存である。
12.開放された多角的貿易体制は世界経済の効率と拡大のための1つの鍵である。
我片は,保護主義を防圧し巻き返し,貿易制限を軽減・撤廃するとのコミットメントを再確認する。我々は,ガットの制度と機能を強化すること,世界貿易における新たな進展及び国際的な経済環境に対してガットを適応させること並びに新たな問題を国際的規律の下に置くことを支持する。新ラウンドでは,就中,サービス貿易並びに知的所有権及び対外直接投資の貿易関連面に関する諸問題につき検討が行われなければならない。貿易の一層の自由化は,我々自身にとってと同様に開発途上国にとっても重要であると我々は考えており,また,我々は,新たな多角的貿易交渉の早期開始のためのガットにおける準備過程に全面的にコミットしている。我々は,9月の閣僚会議においてこの方向で決定的な前進が図られるよう努力する。
13.我々は,いくつかの重要な農産物について,技術の向上,世界市場情勢の変化,我々の全ての国における長年にわたる国内補助金及び農業保護政策等から発生した世界的な構造的余剰状態が存在していることを憂慮をもって留意する。これは,一部の開発途上国経済を阻害するとともに,より広範な保護主義的圧力の危険を増大させる惧れがある。これは,我々すべてが共有する問題であり,相互の協力によってのみ対処しうるものである。我々は皆,農村社会の福利にとっての農業の重要性を認識しているが,我々は,余剰が存在する際には,世界需要に照らして,政策を再編成し,農業生産構造を調整するための行動が必要であることにつき合意している。我々は,これらの問題を理解することの重要性を認識し,この分野におけるOECDの作業を全面的に支持するとの決意を表明する。
14.最近の石油価格の下落は,我々が過去10年間に協力して遂行してきたエネルギー政策に負うところが大であることに留意しつつ,我々は,長期にわたるエネルギーの市場の安定と供給保証を達成するための政策の継続性が必要であることを認識する。我々は,現在の石油市場の状況は,備蓄の積増しを希望する国がそれを実施することを可能とすることに留意する。
15.我々は,世界経済のダイナミックな成長のための,科学技術の重要性を再確認し,技術,成長及び雇用に関する作業部会の最終報告に感謝の意をもって留意する。我々は,米国の有人宇宙基地計画の進展及び欧州宇宙機関(ESA)による自主的な作業の進展を歓迎する。我々は,本計画への参加国間の真の協力関係と適切な情報,経験及び技術の交流の重要性を強調する。我々は,また,ドイツ連邦共和国が主催した「生命科学と人間の会議」の成果に満足の意をもって留意するとともに,次回会合を主催するとのカナダ政府の決定に感謝する。
16.我々は,自然環境の保全に対し他の諸国の政府とともに,責任を有することを再確認し,汚染の防止及び抑制並びに天然資源の管理に関する国際協力を引き続き重視する。この関連で,我々は,環境測定技術及び慣行の改善及び調和のための環境専門家グループによる作業に留意し,できるだけ早期に報告するよう要請する。
我々は,また,環境分野において開発途上国との協力を強化する必要性を認識する。
17.我々は,1987年に再び会合することに合意し,イタリアにおけるこの会合の開催についてのイタリア首相の招待を受諾した。
(ロ)東京宣言一より良き未来を期して(仮訳)
1.我々,欧州とアジアの文明に深い源を持つ主要先進7ケ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,我々の東京での会合の機会をとらえ,残りの今世紀のみならず次の世紀をも展望した。我々は,共通の原則と目標を分ち合い,かつ自らの力強さを心に置きつつ,自信と決意を持って未来に臨むものである。
2.これまでのサミットで確認されてきた我々が分ち合う原則と目標は今や実を結びつつある。太平洋を取り巻く諸国は,その豊かで多様な遺産の基盤の上に立って,自由な交流を通じて力強く繁栄しつつある。西欧諸国,就中・欧州共同体諸国は,その協力を新たな水準にまで高めることによって繁栄しつつある。欧州及びアジアの双方の文化によって豊かさを増してきた北米諸国は,自由の中で人間の潜在的能力を実現していくことを堅く決意している。世界中を通じて,民主主義の訴える力は強く,個性的発意,個人の創造性及び社会的正義が進歩の主要な源泉であるとの認識が高まりつつある。我々全ては,これまでにも増して持てる精力を結集し,より安全かつ健全な,また,より文明度が高く繁栄した,自由で平和な世界の実現を追求して行かなければならない。我々は,日本,北米及び欧州の緊密なパートナーシップが,この目的に向かって意義深い貢献をなすであろうことを確信する。
3.我々は,平和の維持と強化に向けて,またこの努力の一環として,より安定的かつ建設的な東西関係の構築に向けて,我々が共に献身していくことを再確認する。
我々のいずれも,共通の関心を有する分野において,協力する用意がある。現在ある諸々の同盟関係の枠内において,我々のいずれも,他国の安全を脅かすこと無く,自由を守り侵略を抑止しうる強力で信頼性ある防衛力を維持することを決意している。我々は,平和が軍事力のみでは守られ得ないことを承知している。我々のいずれも,ハイレベルでの対話と交渉を通じ,東西間の相違に取り組んでいく決意である。その目的のため,我々のいずれも均衡がとれ,実質的かつ検証可能な軍備水準の削減,信頼を増進させ衝突の危険を減じるための措置,及び紛争の平和的解決を支持する。我々は,ジュネーブにおける作業の進捗を早めるとの米国とソ連との間の合意を想起し,米国の交渉努力を評価するとともに,ソ連もまた積極的に交渉するよう呼びかける。これらの努力に加え,我々は,世界中を通じて個人の権利がよりよく尊重されることを目指して努力する。
4.我々は,相互依存関係の一層の深まりに特徴づけられた今日の世界においては,開発途上世界の安定と繁栄なくして・また,そのような開発途上世界の安定と繁栄を可能ならしめる我々の協力なくして,我々諸国は永続的安定と繁栄を享受しえないとの確信を表明する。我々は,開発途上国もまた共通の明るい未来の建設に十分な役割を果たしうるよう,飢餓,病疫及び貧困と闘うことを改めて誓う。
5.我々は,健全な環境と精神的,物質的両様の価値において豊かな文化を将来の世代に伝える責務を負っている。我々は,麻薬の濫用を排除するための効果的な国際的行動を追求する決意である。我々は,人間をその才能,信条,文化及び伝統の多様性において尊重する世界を目指して協力する決意を宣言する。平和,自由及び民主主義を基盤としたこのような世界において,社会的正義の理想は実現され,雇用機会は全ての人々に提供され得ることとなる。我々は,科学技術の潜在力を賢明に利用し,協力と交流を通じてその便益を増進しなければならない。我々は,次の世代に,21世紀に相応しい創造性を賦与し,かつ彼らに自由と尊厳の中で生きることの価値を伝えるような教育を与える厳粛な責任を有するものである。
(ハ)国際テロリズムに関する声明(仮訳)
1.我々,主要民主主義諸国7ケ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,ここ東京に参集し,あらゆる形態の国際テロリズム,その共犯者,及び,政府を含めそれを主唱若しくは支援する者に対する非難を断固として再確認する。我々は,前回の会合以来かかるテロリズムが増加していること,また,とりわけそれが政府の政策の具として臆面なくかつ冷血に利用されていることを忌わしく思う。テロリズムにはいかなる正当化の余地もない。それは人間の生命,自由及び尊厳の価値を無視し,卑劣な手段を用いることによって蔓延していくものである。それに対しては仮借なくかつ妥協することなく闘わねぱならない。
2.我々は,テロリズムと闘い続けることは国際社会が一体となって遂行すべき任務であることを認識し,この害悪と闘うために最大限の努力を払うことを誓約する。
テロリズムに対しては,国としてとる措置を国際協力と結びつけつつ,決然とした粘り強い,緻密な,かつ忍耐強い行動をとることによって効果的に闘わねばならない。それゆえ,我々は志を同じくする全ての国に対し,特に国際連合,国際民間航空機関及び国際海事機関などの国際的な機構において,これら機関の専門知識を結集しつつ,テロリズム及びそれを主唱若しくは支援する者に対抗する措置を改善し拡充する為,我々と協力するよう強く要請する。
3.元首及び首相は,テロ活動とそれを主唱若しくは支援する者がもたらす脅威及び潜在的脅威,並びに,これらを防止する方法について,適切な場における情報交換を強化することに合意する。
4.我々は,国際テロリストに対し彼らの目的を遂行するための機会と手段を拒否し,また,テロリズムを犯す者を確認し,抑止するため,いかなる関心ある政府もとりうる措置として次のものを特記する。我々はこれらの措置を国際法の枠内において,かつ自国の管轄権の範囲内で,国際テロリズムの主唱若しくは支援に明白に関わっているいかなる国家,特にリビア,についても,当該国がそのようなテロリズムヘの共謀若しくは支援を放棄するまでの間適用することを決定した。
-テロリズムを主唱若しくは支援する国に対する武器の輸出の拒否。
-かかる活動を行っている国の外交・領事使節団及びその他在外の公的機関の規模の厳格な制限,かかる使節団乃至機関の構成員の旅行の規制,並びに,適当な場合,かかる使節団乃至機関の大幅な削減若しくは閉鎖。
-国際テロリズムに関与した嫌疑で我々のいずれかの国から国外追放又は排除され,若しくはかかるテロ行為により有罪となった全ての者について,外交職員の場合も含め,入国を拒否すること。
-かかるテロ行為を犯した者を裁判に付すための適正な国内法の手続きに従った犯罪人引渡し手続きの改善。
-テロリズムを主唱若しくは支援する国の国民に対する,より厳格な入国及び査証発給の要件及び手続。
-テロリズムとの闘いに当り,警察及び治安機関並びに他の関係当局の間での可能な限り緊密な二国間及び多数国間の協力。
我々はそれぞれが,同様の措置が他の出来るだけ多くの政府により受け入れられ,実施されるよう確保するために我々が属する適切な国際機関で作業を行うことを決意している。
5.我々は,この声明の目的を推進し,また追加的措置を検討するにあたり,緊密な協力を維持する。我々は民間航空に影響を及ぼす全ての形態のテロリズムに対処する上で,1978年のボン宣言をより有効なものとすることに合意する。我々は,いかなる形態のものであれ国際テロリズムと闘う上で権限を有する国際機関乃至国際場裡において更にとられるべき行動につき,二国間でも多数国間でもこれを促進していく用意がある。
(ニ)チェルノブイリ原子力事故の諸影響に関する声明(仮訳)
1.我々,主要先進7ケ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,チェルノブイリ原子力発電所における事故の諸影響について討議を行った。我々は,被害を蒙った人々に対して深い同情の念を表明するものである。また,引き続き我々は,要請がある場合には援助,特に医療及び技術援助を提供する用意がある。
2.原子力は,現在はもとより,適確な管理が行われることによって将来とも益々広範に利用されるエネルギー源である。いずれの国にとっても安全性及び安全の保障の確保は国際的な責任であり,原子力発電を行っているいずれの国も,自国の原子力施設の設計,製造,運転及び維持管理の安全性について全責任を負っている。
我々のいずれの国も,厳格な基準を満たしている。さらに,いずれの国も,原子力に関する緊急事態及び事故,特に国境を越えて影響を及ぼす可能性のあるものについて,詳細かつ完全な情報を迅速に提供する責任を負っている。我々の国のいずれもかかる責任を受け入れており,我々は,チェルノブイリの場合その責任を果さなかったソ連邦政府に対し,我々及びその他の国々が要請したとおり,かかる情報を緊急に提供することを強く求める。
3.我々は,国際原子力機関(IAEA)の事務局長と討議を今週行うことについてのソ連邦の意向に対し満足の念をもって留意する。我々は,これらの討議が待ち望まれている事故後分析へのソ連邦の参加につながることを期待している。
4.我々は,原子力施設の安全性,原子力事故とその結果への対処及び相互緊急援助の供与についての国際協力の改善を追求する上でのIAEAの作業を歓迎し,奨励する。我々は,IAEAの関連ガイドラインから一歩進んで,原子力に関する緊急事態もしくは事故に際して報告及び情報交換をその加盟国に義務付ける国際協定を早期に考案するよう強く求める。この作業は,できる限り速やかに行われるべきものである。