(6)5か国蔵相・中央銀行総裁会議声明(要旨)
(85年9月22日,ニューヨーク)
参加5か国は好ましい経済パフォーマンスを促進する努力が進展しつつあり,持続的成長を強化する一層の政策措置を実施する決意を表明するとともに,各国間の基礎的経済条件の最近の変化が為替市場に十分に反映されていないとの見解を明らかにした。
最近の経済発展と政策変化
1.参加5か国がインフレを軽減したマクロ経済政策,節度ある財政政策,市場機能の重視及び慎重な金融政策を実施してきた結果,5か国全体の実質成長は引き続き強く,インフレは再燃する兆しはなく,また金利が近年著しく低下していることは発展途上国の債務負担を軽減する上で特に有意義であった。
2.しかしながら,こういった経済発展にもかかわらず,各国の対外ポジションには大きなインバランスがあり,米国は大幅な経常収支赤字を,また日本と西独は大幅な経常収支黒字を有している。米国の経常収支赤字は保護主義圧力を生み出しておりこれに抵抗しないと相互破壊的報復を招く恐れがある。
政策意図
1.各国は主導的工業国として,その国際的責任及び義務を果たす決意の下に強力なインフレなき国内成長と市場開放の定着を目指す政策を行う。財政赤字が過大な国々においては,赤字削減のためのより一層の措置が緊急に要請される。
2.5か国は保護主義圧力に抵抗することが不可欠である旨同意した。開発途上国の経済調整の継続のためにも保護主義政策を回避することが重要であり,9月末のGATT準備会合で大枠の合意に達することを希望する。
3.各国はインフレなき持続的成長の達成のため,個々の,及び協調的努力の強化に合意し,各国の政策意図を明らかにする。
結論
1.5か国は最近の経済動向,政策変化が各国の政策協力と相まって,インフレなき,均衡のとれた景気拡大への健全な基盤を提供するとの点で合意。また,拡大する貿易不均衡を是正し,保護主義に抗するためには,一層の市場開放措置が重要であると確認した。
2.為替レートが国際収支の不均衡を調整する役割を果たすべきであり,そのためには為替レートが各国の基礎的経済条件を反映したものとなる必要がある。主要通貨の対ドル・レートは,ある程度秩序ある上昇をしたほうが望ましい。各国は有益と見られる際には,主要非ドル通貨の対ドル・レートの秩序ある上昇を促すよう,より密接に協力していく用意がある。
各国の政策意図表明
1.日本
(1)行動計画の着実な実施
(2)強力な規制緩和による民間活力の十分な活用
(3)為替レートに注意した金融政策の弾力的な運営
(4)金融・資本市場の自由化,及び円の国際化の強力な実施
(5)財政赤字削減,民間活力発揮に焦点を合わせた財政政策
(6)民間消費,投資増大に焦点を合わせた内需刺激努力
2.米国
(1)財政赤字の削減と政府支出のGNP比削減
(2)86会計年度の赤字削減の総合策を十分に実施
(3)貯蓄,雇用を促進し,経済の効率性を高め,歳入に中立的な税制改革の実施
(4)物価安定を継続的に進める金融政策
(5)保護主義的措置に対する抵抗
3.フランス
(1)インフレ抑制
(2)通貨供給量増加目標値の達成
(3)公共支出の漸進的抑制
(4)民間投資の回復を促進
(5)金融市場の自由化・近代化
(6)雇用創出の促進
(7)保護主義に対する抵抗
4.西独
(1)財政政策において民間主導及び生産的投資の促進,及び物価安定を優先
(2)連邦政府による公共支出抑制
(3)市場の硬直性の除去
(4)国内需要の継続に配慮した財政・金融政策
(5)保護主義に対する抵抗
5.英国
(1)物価安定,生産・雇用促進のための金融政策の実施
(2)公共部門企業の重要部門の民間移転
(3)租税負担を軽減し,経済における資源の効率的利用の促進
(4)労働市場の効果的機能の改善
(5)金融市場の自由化
(6)保護主義に対する抵抗