第4節 邦人に対する援助

1.一般邦人,船員,船舶に対する援助

85年中に在外公館で取扱い,外務省に報告のあった事件,事故件数は584件(720人)であった。これら事故,病気等により海外にいる邦人を援護する必要が生じた場合,外務省と在外公館は留守宅と緊密な連絡をとりつつ,邦人が安全かつ速やかに帰国できるよう必要な措置を講じている(なお,帰国を希望するが帰国費を支弁し得ない者に対しては,審査の上,貸付けを行っているが,85年中の貸付けは4件,9名であった)。

外務省では旅行者の安全確保やトラブルの再発防止のために現地の治安状況や法令規則等に関する情報の流布に努めているが,最近の海外渡航者の増大にも鑑み,このような施策がますます必要になっている。

在外公館が取扱った邦人の事件・事故等援護件数(1985年1~12月)

2.医療

外務省は,72年以来,海外在留邦人の健康管理の見地から,主として衛生環境が悪く,かつ,十分な医療施設のない開発途上国に在留する邦人を対象に巡回医師団を派遣している。85年度においては,アフリカ,中近東,アジア,大洋州,中南米の各地域に合計12チームの医師団を派遣し,約5,000名の邦人の健康相談に当たった。

また熱帯に在留する邦人が健康的な生活をおくれるよう小冊子「熱帯地における健康管理」を毎年シリーズで刊行し啓発に努めている。

3.海外子女教育

5月現在,海外の学齢子女(小・中学生)は,前年より約1,800名増加し,3万8,011名となった。このうち42%の子女が全日制の日本人学校に就学しており,38%が現地校などに通学するとともに補習授業校に通っており,残り20%がもっぱら現地校などに就学している。外務省は,文部省と協力して,予算上の制約はあるが,できる限り海外子女教育を充実強化するよう努めている。

(1)援助の状況

外務省は,校舎建設・借料補助,現地採用教員の謝金補助等を行い,文部省は教員派遣,教材供与等の事業を行っている。なお,85年度の外務省の海外子女教育予算は約17億円であった。

(2)日本人学校

日本人学校は,85年に,フランクフルト,リアドの2か所に新設され,合計78校となった。在籍児童生徒数は5月現在1万5,891名で,派遣教員の数は950名に上っている。

(3)補習授業校

補習授業校は,現地校などに通学する邦人子女に対し,週末等に国語を中心に補習授業を行っているものであり,5月現在109校となっている。在籍児童生徒数は,5月現在1万4,321名である。

補習授業校の講師は,主として現地の在留邦人であるが,85年には1,082名となっている。

100名以上の児童生徒を有する大規模な補習授業校及び全日制に準じた授業を行っている補習授業校に対しては,予算の範囲内で専任教員が派遣されている。

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