第2節 邦人の渡航

1.概況

(1)63年から64年にかけての渡航自由化措置以来,我が国の旅券発行数及び海外渡航者数は,経済状況及び国民生活の飛躍的向上等に伴い,目覚ましい増加を示してきており,海外渡航は国民各層にわたり一般化してきている。

(2)国内における旅券発行総数は,一般旅券,公用旅券を合わせ72年に100万件,82年に200万件を超えて85年には対前年比4.3%増の238万件余を記録し,一方,79年に400万人を突破した海外渡航者は,85年は対前年比で6.2%増加し,約495万人と,500万人台に迫っている。旅券発行数と海外渡航者数の動向は,国内経済や海外情勢の動向,航空運賃や為替レートの変動等により影響を受けるが,国民の間には海外渡航熱が根強く存在しているので,今後当分は経済情況等に特段の変化がない限り増加傾向は続くものと予想される。

(3)旅券の種類別に見ると,5年間有効の数次往復用一般旅券に対する需要が大きく,同旅券の発行数は77年に発行総数の84%を占めて以来,継続して80%台を維持している。

2.渡航の態様

(1)85年の一般旅券申請を渡航目的別に見ると,従来同様短期の渡航者が圧倒的に多く,発行総数の91%を観光目的の者,次いで8%を短期業務目的の者が占めている。他方,商社員の海外駐在,外国企業への就職,長期的な調査研究,これらを目的とする者の同伴家族,留学生,海外移住者等の長期滞在目的による旅券発行件数は3万4,213件で,ほぼ前年並みに推移した。

(2)一般旅券申請者の主要渡航先国等を地域別に見ると,米国(ハワイ・グアムを含む)が全体の38%と圧倒的に多く,次いで台湾,韓国,中国,香港,シンガポール,フランスの順となっている。ここ数年大洋州地域及び中国の増加が顕著で,85年は実数で,5年前の80年と比較して,大洋州が24倍,中国が3.5倍になっている。

(3)85年の一般旅券受給者を年齢別に見ると,20歳代と30歳代を合わせて旅券発行数全体の約60%を占め,また,若年層の海外渡航熱を反映するものとして,19歳以下の旅券受給者が全体の約8%を占めているのが注目される。

性別では,女性の比率が伸びており,総件数の約42%に達した。

3.旅券事務の機械化の現状

外務省においては急増する旅券業務に対処するため65年にコンピューターを導入,69年以降は都道府県に順次端末機を設置して外務省と直結したデータ伝送を実施し,さらに84年にはデータ伝送と旅券発給事務の統合一貫処理システムを全都道府県に普及完成させた。しかし,増大する事務量を円滑に処理するためには,今後とも旅券業務に関するソフト・ウェアの開発を始めとする高度情報処理技術を導入しつつ,能率向上を一段と推進する必要がある。

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