第5節 行財政問題
1.加盟諸国の緊縮財政並びに主要な大口財政負担国の国連予算膨張に対する厳しい態度を反映して,行財政問題が国連における重要な政策的問題となった。特に,国連活動経費の4分の1を負担する米国が85年中に成立させた二立法(国連及び専門機関の予算関連事項の決定について分担率に基づく加重投票制が導入されない限り,これら機関に対する支払いを87会計年度以降現行(国連等で25%)の分担率にかかわらず最高20%に押さえるとのカセバウム修正,及び1991年までに財政の均衡を実現するために歳出を一律に削減するとのグラム・ラドマン法)の結果,米国の国連機関拠出額が大幅削減を余儀なくされるとの深刻な状況を踏まえ,国連事務局並びに加盟国の間に国連の効率化,予算増の抑制を目指す動きが活発化した。
2.第40回国連総会一般討論演説において安倍外務大臣が提唱した「国連効率化のための賢人会議」設置提案が全会一致で採決されたこと,及び,同総会の行財政問題審議の中心的課題であった86/87年計画予算について実質伸び率0.1%というほぼゼロ成長予算を実現できたことは上記1.の事情を如実に物語るものと言える。
3.さらに,国連機関の通常予算の7~8割を占める人件費抑制が予算額抑制の要であるが,第40回国連総会においてはこの面でも厳しい議論が展開された。
(1)人事問題に関しては,我が国,西独,イタリア等依然として望ましい職員の数を下回っている加盟国があるため,国連は第2次中期採用計画(1986-1987)を実施し,すべての国を望ましい範囲に入れるようにするとの条項が我が国等の主張で挿入された決議が成立したほか,85年は「国連婦人の10年」の最終年にあたるので,ニュー・ジーランド,カラダ,北欧諸国等の提案により事務局の女性職員の地位(採用・昇進)の向上に関する条項が含まれる決議が成立した。
(2)他方,給与・年金については,我が国のイニシアティブにより,米国の連邦公務員との比較で適正化を図るとの観点から,従来の議論に更に一歩踏み込んだ形で,給与格差(マージン)の定量化が承認されたほか,年金給付額と給与との関係等についての抜本的見直しを年金委員会に求める決議が採択された。また,国連共通制度から一部機関が離れようとする傾向に対し警鐘を鳴らしたことも今次総会で留意すべき点といえよう。
(3)なお,国連事務局に勤務する邦人職員は,その望ましい範囲が171~232名であるのに対し,85年末現在122名(前年比8名増)である。