(17)ストラスブールの欧州議会におけるレーガン米国大統領演説

(抜粋)

(85年5月8日,ストラスブール)

1.40年前の今日,ヨーロッパは独裁者達より解放された。戦後,防衛あるいは物質面での目覚ましい前進があったが,最も重要なことは西欧諸国が民主主義及び自由という価値を選択したことである。

米国は統合されたヨーロッパを歓迎。ECの拡大を歓迎。より強いヨーロッパはより強固な西側の団結を意味する。

2.西側において平和,繁栄,自由等を引き続き維持していくためには,以前にも増して強力になっているソ連との間の平和を保ち,同国との関係に,より安定性をもたらすことが重要である。

第二次大戦後の欧州指導者たちは,宥和政策は侵略をもたらすとの歴史の教訓を学んだが,我々も彼らの成功から学ぶことができる。つまり,紛争も侵略もともに抑止し得るものであり,民主主義国家は,かかる抑止を維持する上で必要な決意を有しており,また犠牲を払う用意があり,更に政策の一貫性を維持し得るということである。

3.戦後,70年代初めまで,ソ連の侵略は効果的に抑止されてきた。しかし,70年代の初めに,米国がそれまでソ連に対し有していた戦略核分野での優位が失われた。かかる喪失はグローバルに見るならば,ソ連の行動様式に変化をもたらした。

アンゴラ,エチオピア,南イエメン,カンボディア,そしてアフガニスタンにおいて然り。今日また同様に,地域問題から利益を得,またそのような問題を助長しようとのソ連の態度は,中米においても見られる。

4.このような状況に対し,我々は核優位を再び取り戻すとの方途を追求することもできようが,米国はそのような道は選択しない。我々は常に拡大していく核兵器の上に平和と自由を築くことはできず,またすべきでもない。

5.しかし,短期的には核兵器の分野でソ連との間でバランスを図っていくことを避けるわけにはいかない。それ故米国が近代的かつ残存性を有する核能力を戦略兵器の3本柱(Strategic Triad)のそれぞれにおいて維持していくことが不可欠。

ソ連の核兵器増強に対しては,第一に,攻撃システムの均衡かつ検証可能な軍備管理措置を通ずる削減をソ連に対し訴えることが可能であり,ジュネーブにおいてそのような主張をしているが,ソ連側からは何の反応もない。

また,第二には,ソ連に対抗して現存の兵器の近代化努力を強めていくことが考えられる。しかし我々にはそれ以上の平和の保証が必要である。

幸い我々には,SDIという第三の選択肢がある。

6.ソ連は,長く防御システムの重要性を認識してきており,過去20年間,攻撃システムに対する支出と同様の額をかかるシステムに割り当てている。米国は,SDI研究に際しては既存の条約の枠内にてそれを行い,また同盟国とは緊密に協議を行う。それが配備可能となった段階では,ソ連と話し合うことが必要。

7.米国のソ連との関係では以下の6項目が重要。

(1)ソ連との関係で抑止力を維持していくことは重要であるが,同時に米国はソ連との関係で緊張を低減させるために着実かつ持続的な努力を払っていく。

(2)米国は,兵器削減,特に攻撃核兵器につき,公正かつ均衡のとれた検証可能な合意を締結する用意がある。

(3)米国は,過去に締結された条約の遵守を求めていく。

(4)米国は一方的な優位を求めるものではなく,またソ連側の優位は認め得ない。

(5)米国は同盟国と緊密に協議を行っていく。

(6)米国はソ連体制を切り崩したり,ソ連の安全を脅かすことはしない,同時に,ソ連が他国に対し武力を行使し,あるいは威嚇することには抵抗する。

8.自分は,シュルツ国務長官に対し,諸分野にわたる問題につきソ連側と話し合いを進めるよう指示した。

しかし,東西間の緊張を下げていくことに成功するためには,将来における恣意的な武力の行使が起きないよう米ソ間で以下の四つの現実的な措置をとることを提案する。

(1)軍事演習に際してのオブザーバーの相互交換。

(2)米ソの軍指導部間の定期的なハイレベルでの接触を行っていくこと。

(3)CDE(欧州軍縮会議)が,NATO諸国により提案された具体的な信頼醸成措置につき合意するよう希望するとともに,かかる具体的信頼醸成措置にソ連が同意するとの枠内で,米国はソ連の武力不行使に関する提案につき討議を行う用意がある。

(4)また,米ソ両国の軍の間の常設的な通信手段を確立することは有用と考える。長期的にはかかるシステムは危機時におけるリスク削減メカニズムとなることも考え得よう。

9.米国は欧州における人為的な分断を終わらせることにコミットしている。また,米国はヘルシンキ最終合意の完全な履行に対する強い希望を再確認する。

自分の,そして我々の希望は,21世紀においてはリスボンからモスクワまですべてのヨーロッパの人々が自由に旅行が出来ることであり,かかる人と思想の自由な往来は欧州の他の半分をも含むものとなることである。

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