(2)NATO(北大西洋条約機構)閣僚会議関連文書

(84年5月29日~31日,ワシントン)

(イ)東西関係に関するワシントン声明(骨子)

1.1983年12月の閣僚理で東西関係の見直し決定。

2.1967年のハルメル報告のバランスド・アプローチはなお有効。

(1)十分な軍事力の維持及び政治的団結。

(2)対話と協力による東西の安定的関係。

3.緊張緩和政策の成果あり(ベルリン四か国協定,SALT,CSCE等)。但し人権,人的接触については不満。

4.ソ連の大幅軍拡。ソ連はこれを政治目的の達成に利用。アフガンとポーランドはその最大の例(この部分希と西が留保)。

5.東西に共通の利益=信頼醸成,安全保障,危機管理メカニズム,繁栄。真のデタント達成のため東側との建設的対話促進。

6.CSCEプロセス支持。しかし,人権,人的接触での進展なくば不十分。

7.欧州特に独の分割。独人(German people)が自由な決定により再統一を達成(regains its unity)することを支持。

8.他の安全に対する相互尊重。武力不行使,国際的規則の尊重が信頼と協力強化に重要。

9.主権と独立並びに真の非同盟尊重。

10.域外の事態がNATOに及ぼす影響。これには時宜にあった協議で対処。東西間の相違を第三世界に持ち込まない。

11.東西関係改善についての1983年12月の閣僚理での提案(ブラッセル宣言)を再確認。

特に,

(1)東西間の問題につきあらゆる分野での対話,協力,接触。

(2)互恵的経済協力,技術転移阻止。

(3)できる限り低い軍事力のレベルでの安全保障,均衡,公正,検証可能な軍備管理。このためNATOは引き続き以下のことをする。

(イ)米はINF及びSTARTについての二国間交渉をソ連といかなる時期にも前提条件なしに再開する用意がある。

NATOはソ連が交渉のテーブルに戻ることを招請(このサブ・パラには希が留保)。

(ロ)西側の諸提案を踏まえたMBFRの進捗。

(ハ)ジュネーヴでの米国提案を基礎にした化学兵器の廃絶。

(ニ)具体的な信頼譲成措置に重点を置いたCDEの進捗。

12.NATOは防衛的なもの。優越は望まぬが安定的な力のバランス。北米と欧州のメンバーのしっかりした結び付き。軍縮・軍備管理交渉はNATOの基本。建設的東西対話に対するコミット再確認。

13.統一的努力が平和と安定には必要。NATOはいかなる合理的提案も検討の用意あり。それにより長期的な建設的,現実的関係の樹立を期す。

(ロ)外相理事会最終コミュニケ(骨子)

1.同盟国は引続き激動と紛争の時代の中で平和と安定のため同盟国の期待にかなうよう努める。(パラ1)

2.同盟国は防衛のための同盟であり,加盟国は国連憲章,ヘルシンキ最終文書を尊重する。NATOは優越性を追及しないが,侵略を抑止,防衛し,脅迫に対抗するために必要な通常戦力と核戦力は維持する。(パラ2)

3.同盟国は東西関係に関するワシントン声明を発し,ソ連及び東側諸国との接触と協力に基づく真のデタントのため努力することを再確認。(パラ3)

均衡のとれた軍備管理合意と東西関係における信頼の復帰が平和的進展の基礎となる。(パラ4)

4.同盟国はソ連が前提条件抜きで速やかに核軍縮交渉を再開するよう要請する。具体的な交渉の成果がないため,1979年12月の決定に従って中距離ミサイルの配備が実施されているが,同決定の全ては等しく重要。(パラ5)

5.同盟国は軍縮会議において均衡のとれた,現実的かつ検証可能な軍縮措置を追及する。同盟国はソ連の介入する南西アジア及びアフガニスタンにおける化学兵器の使用に懸念を表明。(パラ7)

6.MBFRに関与する同盟国は,ウィーンで,満足のいくデータ・ベースの獲得を求める新たな提案を提出した。(パラ8)

7.ヘルシンキ最終文書及びマドリッド結論文書は建設的関係の樹立の基礎となるものである。同盟国はCSCEの実施の重要性を再確認。(パラ9)

8.同盟国はポーランド当局に対しヘルシンキ最終文書及びマドリッド結論文書を尊重するよう要請する。(パラ10)

9.同盟国は,アフガニスタンにおけるソ連軍の存在を非難する。(パラ11)

10.ベルリン及びその周辺における完全自由な往来は東西関係にとり基本的問題である。同盟国は,ドイツ連邦共和国政府とドイツ民主共和国との話合いの継続が,ベルリン及びドイツ人を直接利するものとなることを希望。(パラ12)

11.ソ連を特恵的な取り扱いとしない相互利益に基づく貿易は,建設的な東西関係に貢献するが,同時にソ連,東欧諸国との二国間経済関係は,広範な同盟諸国の安全保障と合致しなければならない。これはソ連への依存を避けること,あるいはソ連の軍事能力に貢献しないことなどを含む。安全保障の面から西側の東西経済関係を引き続き厳重に検討すべきである。(パラ13)

12.同盟諸国は,NATO条約の区域外での事件を共通の利益に影響しかねないものと認識。同盟国は,事件が同盟国の共通の利益に係わり合うことが立証されれば,時を失せず協議する方針である。そのような立場にある同盟国は安全保障と独立に対する脅威に対抗するため,(域外の)主権国家から援助を求められれば,その支援に努める。自国の決定に基づき,そのような同盟国は域外に軍隊を展開することが許される。(パラ14)

13.同盟国は,国際的なテロリズム行為を深刻に懸念し,ボン宣言に基づき国際テロの犯罪行為の防止と抑圧のため効果的な措置をとる決意を改めて表明。(パラ16)

14.次期閣僚会議は1984年12月ブラッセルで開催。

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