(7)中曽根総理大臣の訪米関連文書

(イ)中曽根総理大臣のプレス・リマークス

(85年1月2日,ロス・アンジェルス)

レーガン大統領と私は,極めて実り多い会談を行いました。私は,日米関係が,信頼,責任,友好という三つの柱によって構成されていると考えます。大統領と私は,年頭にあたり,このような三つの柱の上に立って,日米両国が世界の平和と繁栄のために相携えて活力ある協力を進めるための枠組を設定致しました。

大統領と私は,平和と軍備管理の問題について話し合いました。来週にはジュネーヴにおいてシュルツ長官とグロムイコ外相との間で軍備管理に関する交渉が開始されます。私は,平和を希求する大統領の強固な決意に敬意を表明致しました。私は,この重要な交渉に向けての大統領の努力を完全に支持するものであります。また,大統領と私は,この問題に関する自由主義諸国間の緊密な連絡と結束の維持の重要性につき再確認致しました。私は,後世の歴史家が,1985年を世界平和の構築のための偉大な一歩が踏み出された年として記録できることを祈念するものであります。

大統領と私は,日米両国が世界経済のインフレなき持続的成長と開放的かつ多角的な国際経済貿易体制の維持発展のために大きな責任を共有していることを改めて確認致しました。このため,両国が,それぞれ適切な経済政策の実施と市場の開放性の維持拡大を図ることが重要であります。また,大統領と私は,両国が本年中に多角的貿易交渉の新ラウンドの準備を本格化させるべく一層緊密に協力していくことを確認致しました。

大統領と私は,ハイテク,投資・資本交流,サービス等の分野における積極的協力により性格付けられる新時代の到来を歓迎致しました。

大統領と私は,日米貿易経済関係のより均衡のとれた発展のため,真剣な努力を行っていく決意をわかち合いました。このため,我が国は,国内民間需要主導の経済政策の推進と一層の市場開放努力を行っていく所存であります。このような相互の努力を実効あるものとすべく,今後共同で積極的にフォロー・アップを進めることとなり,この協力の過程を総覧するためにシュルツ長官と安倍外務大臣を指名致しました。このような作業は日米関係全体を強化していく方向で取り進めていくべきであると考えます。

大統領と私は,日米諮問委員会の報告が貴重な貢献であり,双方による真剣な検討に値いするものである旨意見の一致をみました。

また,私は,大統領に対し,我が国としては,日米安保体制の信頼性を一層強化しつつ,我が国の自衛力の整備のための自主的な努力を更に進めていく所存である旨表明致しました。

大統領閣下,

カリフォルニアは太平洋をはさんでの日米交流の歴史において常に中心的な役割を果たして参りました。また,申すまでもなく,同州は,大統領閣下にとって特別に意味のある州であります。そのカリフォルニアにおいて大統領にお目にかかり,21世紀に向けての方向を設定すべく,かけがえのない日米関係につき意見交換を行い得たことは,私にとって大きな喜びでありました。また,アジア・太平洋地域にみられるダイナミックな発展を一層促進することの重要性につき話し合う場所として,このカリフォルニアほど適した場所はありません。大統領閣下,今後とも引続き貴大統領との緊密なパートナーシップの下に,共通の目的に向かって邁進できることは,誠に心強い限りであります。

今般の御歓待を感謝致します。

(ロ)レーガン大統領のプレス・リマークス

(85年1月2日,ロス・アンジェルス)

私は,新年の冒頭に,そして喜ばしいことに我々双方にとって政権2期目の冒頭に,中曽根総理及び安倍外務大臣を公式実務訪問の形でロス・アンジェルスにお迎えし,大変嬉しく思います。今次訪問は,非常に重要な日米関係を再確認し,強化するものでありました。私は,1年前の11月に訪日した際,中曽根総理に対し,世界の平和と繁栄にとって日米関係ほど重要な関係はないと述べました。私は,本日我々が行った会談を通じ,先に私が述べたことが真実であることにつき改めて確信を深めました。

総理と私は,いくつかの重要な地域的及び国際的な問題,就中,我々とソ連との関係及び近くジュネーヴで行われる軍備削減交渉を特に重点的に取り上げ,話し合いました。私は,総理に対し,ソ連との間の実効的な軍備削減協定を真剣にかつ熱心に追求するとの私の意思を伝達するとともに,我々としては困難な取引が待ち受けているものと考えている旨指摘しました。私は,総理に対し,米国としてはかかる交渉を行うに際し,欧州及びアジアの友好国及び同盟国の利益を十分考慮に入れることを約束しました。私は,中曽根総理に対し,もしソ連に協力の用意があるならば,進展があろうと述べました。私は,総理がこれらの交渉に対する我々のアプローチを支持されたことを感謝します。

我々は,地域の平和及び安定にとっての我々自身の防衛努力の重要性を再確認するとともに,「相互協力及び安全保障条約」の枠内で相互安全保障協力を強化すべく共に努力していくことを誓いました。

日米経済関係,就中,貿易関係は,本日の議題の最重要項目でした。我々は,問題のある分野につき非常に率直に話し合いました。我々は,今後数か月間にわたって両国の市場を完全に開放し,両国における保護主義的圧力を防圧するためたゆまぬ努力を払うことにつき合意しました。私は,日米貿易関係の諸問題を解決するため共同して作業する緊急の必要性があることにつき双方の意見が一致しているものと信じます。

私は,日米両国がもしこれらの貿易上の諸障壁の克服に失敗すれば,日米の国際的パートナーシップの共通のヴィジョンを実現すべき両国の能力を複雑なものとするであろうということを双方が認識しているものと信じます。

私はまた,日本が昨年5月に発表した資本市場に関する措置が完全かつ早急に実施されるべきであるとの我々の見解を繰り返しました。私は,エネルギー協力についての合意の実施を早めるべきであるとの私の考えのあらましを述べました。更に,私は,既に15万人以上の米国の労働者に雇用を提供している日本の米国への投資の増加を歓迎するものであることを指摘しました。

我々は,シュルツ長官と安倍外務大臣を,両国が全般的関係を強化する努力を払っていく上で,特に重要な分野における特別に緊急な努力を含め,我々の経済関係を進展させるための強化された協同の努力を総覧する任に就かせることにつき合意しました。

本日の会談の基調は,我々二つの偉大な国民の間に存在する緊密かつ友好的な絆,及び,我々が共有する民主主義の諸価値の再確認であります。中曽根総理と私は,二国間,太平洋,そして国際的な場におけるパートナーとしての我々の関係と協力を一層強化するために努力していくことを誓約しました。このような観点から,我々は,日米諮問委員会の最近の報告が日米関係の将来の道筋をつけるための貴重な出発点であることにつき意見の一致をみました。両国の政府関係者は,この報告及びそれに含まれている数多くのすぐれた提言を近く共に検討することとなりましょう。

最後に,総理大臣閣下,再びお会い出来たことは,私にとってこの上もない喜びでありました。我々は,これまで5回にわたる会談を通じ,私が貴国の国会で述べたような日米間の永遠の力強いパートナーシップの強化のために貢献してきました。

我々は,日本との緊密な友好関係をこの上もなく貴重なものと考えております。

我々は,経済大国として,あるいは民主主義国家として,我々両国の国民のために,そして世界中の人々のために平和と繁栄を探求するという固い決意を有しております。我々は,二つの偉大な国家の指導者として,我々の享受している自由と繁栄の恵沢を世界中の人々が確保出来るよう相携えて働く責任を共有しております。

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