4.日本国政府が関与した主要な共同コミュニケ等
(1)ハリーファ=カタル国首長訪日に関しての日本・カタル共同コミュニケ
(84年4月25日)
1)シェイク・ハリーファ・ビン・ハマド・アール・サーニー=カタル国首長殿下は,日本国政府の招待により,1984年4月22日から25日まで国賓として日本国を訪問した。
2)訪日中,4月23日,首長殿下は皇居において天皇陛下と会見した。
3)また同日,中曽根総理大臣とハリーファ首長殿下は,共通の関心を有する国際的及び地域的諸問題並びに二国間の諸問題について意見交換を行った。
同会談には日本側から,
安倍外務大臣,藤波官房長官,野草駐カタル特命全権大使が,
カタル側から,
シェイク・アブドゥル・アジーズ財政石油大臣,シェイク・アハマド外務担当国務大臣,カーメル首長顧問,カワリ情報大臣,アンサーリ駐日特命全権大使が同席した。
同会談は,日本とカタル国との間の関係を特徴づけている友好的かつ親密な雰囲気の中で行われた。総理大臣及び首長殿下は,首脳会談の成果に十分なる満足の意を表明するとともに,同会談が両国民の利益のための両国間協力及び理解増進に寄与することを希望する旨表明した。
4)両首脳は,両国間関係のレヴューを行った際,両国の友好協力関係が間断なく進展していることに満足している旨述べるとともに,政治,経済,科学技術,文化及びその他諸々の分野において,友好協力関係を引き続き拡大していく意向をあらためて表明した。
両首脳は,両国間の関係を更に促進させることにつき強い関心を表明し,両国間関係のあらゆる分野をレヴューしかつフォローアップすることを任務とする適当なフォーラムの設置を歓迎するとの共通の認識に到達した。
5)双方は,湾岸を含む中東地域の動向につき協議を行った。この点に関し,首長殿下は総理大臣に対し,湾岸協力理事会が地域的及び国際的レベルで推進している政策並びに同理事会が行ってきている,加盟諸国闇経済統合達成,湾岸地域の安全と安定の強化及び外部勢力の干渉を排除した平和的方法による現下の域内諸問題の解決への諸々の努力につき説明を行った。
総理大臣は,湾岸協力理事会が,域内の経済発展促進及び安全と安定維持に果たしている重要な役割は世界の平和と安定に寄与するものとして賛辞を表明した。総理大臣は,また,首長殿下の指導の下に,カタル国が湾岸協力理事会の今期議長国としての役割を通じ,域内の安全と安定促進のために尽している努力を大いに評価する旨述べた。
6)総理大臣及び首長殿下は,長期化しているイラン・イラク紛争について深い憂慮の念を表明した。
双方は,同紛争が湾岸地域全体の平和と安定のみならず世界経済に及ぼす重大な危険に対し強い懸念を表明し,平和的方法により同紛争が早期かつ公正に解決されることが緊急に必要である旨強調した。
この関連において,総理大臣は,和平への環境作りのため日本が行ってきている外交努力を説明するとともに,早期和平に向けて引き続き努力を行う旨の決意をあらためて表明した。
首長殿下は,総理の詳細な説明を多とするとともに,イラン・イラク紛争終結に向け日本が積極的役割を演じるよう窓悪した。双方は,紛争の平和的解決のため国際社会が一層効果的な努力を行うべきであるとの点で一致した。
7)中東和平問題に関し,双方は,公正で永続的かつ包括的和平の早期達成が必要であるにもかかわらず,和平への努力が行き詰まっていることに深い憂慮の念を表明した。
双方は,問題の解決は,イスラエルが1967年以降に占領したエルサレムを含む全アラブ領土からのイスラエルの完全撤退及びパレスチナ人自身の独立国家建設の権利を含む国連憲章に従った不可譲かつ正当な民族自決の権利の回復に基づいてなされるべきである旨を再確認した。
日本側は,同地域のすべての国の安全と領土保全が尊重されることが必要であることを確認した。
レバノン情勢に関し,双方は,レバノンの国家主権及び領土保全を全面的に支持する旨確認するとともに,国連安保理決議508及び509に従って,イスラエル軍の完全撤退並びにレバノン政府が正当と認めない他の非レバノン軍のレバノン領土からの撤退の必要性を強調した。
双方は,レバノン内の相対立する諸勢力が,レバノン国内の平和,安全及び安定回復のため,早急に国民和解を達成することを強く希望するとの点で一致した。
8)双方は,今回の首長殿下の訪日は,両国間の相互理解及び伝統的友好関係を一層促進するものとして,その結果に満足の意を表明した。
9)首長殿下は,日本訪問中に殿下及び随員一行が受けた厚遇につき,天皇陛下並びに日本政府及び日本国民に対し感謝の意を表明した。
10)首長殿下は,日本国総理大臣に対し,カタル国を訪問するよう招請した。この招請は,感謝の念をもって受諾された。訪問の具体的時期は,外交チャネルを通じて決定される。