(22)レーガン米大統領演説(米ソ協力に向けての対話)(要旨)

(84年1月16日,ワシントン)

1.今は平和に対する好機

(1)17日からの欧州軍縮会議は,平和に対する挑戦が多い時期にあって,平和への好機。ソ連は,過去10年間に,GNP比で米国の2倍の予算を軍備に,その結果,ICBMで6倍,戦車等が4倍,戦闘機で2倍,SS-20の配備も行ってきた。

(2)3年前米国民は,このような路線の変更を求め,米国は実際に新方針をとってきた。国防力は強化され,同盟関係は強固なものになった。ソ連は厳しい言葉使いを行っているが,現在の世の中は,以前に比べれば,より安全になっている。

(3)しかし,抑止力が対ソ政策のすべてではなく,対話も重要。「信頼できる抑止力と平和的競争」ということを訴えたい。1984年は「平和のための好機」。

2.問題の3分野における進展を提案

(1)紛争解決の手段としての武力の行使を排除。中東,アフガニスタン,東南アジア,中米,アフリカ等で武力紛争があった。ソ連とその代理人は,これら紛争を利用。これらには対決が拡大していく危険がある。最初の一歩は,これら地域での米ソ対決の危機を減らすこと。

(2)軍備の削減。開発途上国は年間1,500億ドル,国家予算の20%も軍備に要している。米国の保有する核兵器の数は,この20年間に減ってきている。核による破壊能力を比べると,米国は過去25年間で最も低い水準にある。新しい核兵器を一つ配備するごとに既存の兵器を5個破壊。

(3)ソ連とのよりよい実務的関係を構築。情報や知識の交流が必要。協力と理解は,単なる言葉ではなく,行動に基づくもの。軍備管理についての協定の条項がソ連により守られていないとの証拠あり(本件について,数日内に議会に報告書を提出の予定)。

3.対ソ関係についての3つの指導原則

(1)現実主義,力,そして対話。現実主義とは,価値観を異にする国との共存という事実を認識すること。

(2)力は交渉の基礎。力は単に軍事力のみでなく,経済力,精神力も重要。

(3)対話は力と両立。交渉は継続していく。核戦争の回避は交渉と対話の最優先事項。「ゼロ・オプション」の背景。INF,STARTの一方的中断は遺憾,CBM(信頼醸成措置)も重視。特に演習の連絡とホットライン増強(先週ワシントンにて協議)。人権も重視(良心の故に投獄されている人々,ユダヤ人やアルバニア人の出国問題)。

4.米国はソ連に脅威を与えない

(1)米国の対ソ政策は,「信頼のできる抑止力,平和的競争及び建設的協力」。これは長期的政策。協力は対話から始まる。18日の米ソ外相会議は定期的な高級対話につながるべし。米国はソ連に脅威を与えない。

(2)米国は第2次世界大戦では,共通の敵と闘った。現代における共通の敵は,貧困,疾病,それに最大の敵である戦争。民衆は戦争をしない。もしソ連政府が平和を欲するならば,平和は存在する。今こそ平和のための対話を始めよう。

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