(20)北朝鮮の米国・韓国との三者会談提案文書

(84年1月10日,平壌)

(イ)合同会議決議(提案)

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・最高人民会議常設会議合同会議が1984年1月10日,平壌で開かれた。

合同会議には朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員,最高会議常設会議議員らが参加した。会議には議題「朝鮮問題の平和的解決のための新たな措置を取ることについて」が上程された。

会議は我が国に生じた緊張した情勢を全面的に分析し,国の平和と自主的平和統一に有利な局面を開いていくための対策を討議した。

合同会議は朝鮮半島で緊張状態がいつにも増して激化し,戦争,とくに核戦争の危険が急激に増大している重大な事態について次のように指摘した。

近年,南朝鮮に対する軍事的占領を永続化しようとする米国の企図が一層露骨に現れている。米国は南朝鮮を自己の植民地軍事基地として永遠に占めようとしている。

今日,南朝鮮を含む東アジアは「米国の利益にとって死活的に重要な地域」として宣布され,「韓国の安全は米国の安全と直結」するものと規定されている。これによって南朝鮮とその周辺から一時退くといわれた米軍兵力がむしろ大々的に増強されており,南朝鮮「国軍」の「現代化」が促進されている。

我が方に対する挑発的な軍事行動が急激に拡大,強化されており,これは今日,極めて危険な段階に至っている。毎年実施されている「チームスピリット」合同軍事演習は事実上,実戦と変わらない「試験戦争」,「予備戦争」であり,今年は史上最大といった昨年よりもさらに大きな規模で展開されるだろうという。

戦争の雰囲気を鼓吹するために南朝鮮人民の間に南北対決と危機意識が大々的に注入され,同族に対する憎悪を鼓吹する反共和国騒動が絶頂に達している。

会議は今日,我が国に核戦争の危険が現実的に存在し,これが世界的な範囲に拡大する十分な可能性があるとの事実に留意し,次のように指摘した。

南朝鮮は米国の核戦争火薬庫,共和国北半部に狙いを定めた核攻撃基地となっている。南朝鮮にはすでに核爆弾,核砲弾など一千余の各種核兵器と「ランス」ミサイル,「F16」戦闘爆撃機をはじめとする核運搬手段が配備されている。「朝鮮で戦争が起これば米国は核兵器を使用するであろう」という公然とした核恐喝が繰り返されている。

南朝鮮は米国の対アジアおよび世界戦略の基本のカナメの一つとなっており,南朝鮮の軍事基地は共和国北半部ばかりかアジアを侵略するための米国の核前哨基地と化している。いま米国は最新型中距離ミサイルである「パーシングII」ミサイル,巡航ミサイル,最も野蛮な大量殺りく手段である中性子弾まで南朝鮮に新たに配備しようとしている。

今日,米・日・南朝鮮間に積極的に推進されている三角軍事同盟は,北大西洋条約機構(NATO)のアジア版である新たな軍事ブロックであり,これは日本「自衛隊」の朝鮮半島進出をほじめとする海外派兵の道を開くばかりか,南朝鮮「国軍」兵力までもアジア・太平洋地域に出動させ得る「合法的な」条件をつくろうとするものである。

朝鮮で戦争が起こる場合,それは朝鮮半島に限定される局部戦争にとどまることはできない。それは通常兵器による戦争でなく全面的な核戦争に転換し得る。

合同会議は,朝鮮半島で繰り広げられている事態の重大性を確認し,次のように指摘した。

朝鮮で戦争がぼっ発するとき,とくにそれが核戦争となるとき,我が民族とアジアと世界の人民にどのような災難がもたらされるかということは明白である。

我々は,我が民族が外部勢力による核戦争の犠牲となり,神聖な祖国の地が外部勢力の核戦争の場として荒廃化するのを絶対に許せない。

米国は我が方が「南侵」しょうとしているとして,これを防ぐために南朝鮮で兵力を増強し,核兵器までも配備するといっている。

しかし,米国は我が方が「南侵」するのではないかと恐れる必要はない。

我が方は南侵する意思がなく,朝鮮統一問題を戦争の方法で解決しようとしてはいないことについて一再ならず宣明している。

我々がすでに10年前に米国との間の平和協定締結のための会談を行うことを提議したこと自体が,我が方の一貫した平和愛好的な立場を如実に実証するものであった。

それにもかかわらず米国が我が方の平和政策を信じようとせず,我が方に不信と不安を抱き,力の立場で引き続き対決を追求しているのは,だれにとっても利益とはならないものであり,分別あることとはいえない。

合同会議は,生じた情勢に照らし,迫りくる戦争の危険を防ぎ,国の平和と自主的平和統一に有利な局面を主動的に開くための転換的な対策を取るべきであることを一致して認めた。

会議は次のように指摘した。

だれでも戦争を望まず,朝鮮の平和と平和統一を望むならば,力によるべきでなく,互いに会って対話を行うべきである。

武力に依拠することは問題解決の方途ではない。

直接会って対話を行ってこそ,長い間互いに隔絶された状態において積もった誤解と不信を解いて接近することができ,真摯な協議を通じて問題解決の合理的な方途を求めることができる。対話だけが,戦争瀬戸際へと突っ走っている現情勢発展の危険なすう勢を平和と自主的平和統一に有利に転換させ得る唯一の道である。

合同会議はこうした見地において,今回,我が方と米国との会談に,今日,朝鮮における緊張状態の激化に責任のある他の一方である南朝鮮当局も参加させて,三者会談を行うことを提起することを決定した。

会議は三者会談を提起する我が方の立場について次のように指摘した。

米国は朝鮮の平和を保障し,統一途上に横たわった障害を取り除くべき回避できない責任を負っている。

米国は第2次世界大戦後の40年近い間,朝鮮問題に深く関与してきた。

米国はとくに,南朝鮮に自己の軍隊を駐屯させ,南朝鮮「国軍」の統帥権を握っており,事実上南朝鮮を自己の統制の下においている。

朝鮮半島の情勢がつねに緊張しており,今日のように事態が戦争瀬戸際にまで至るようになった主な責任は米国にある。

このような状況の下で,米国と直接会って問題を解決せずしては,我が国における緊張状態を解消することはできず,戦争の危険を根源的に除去することはできず,祖国統一の平和的な局面を到底開くことはできない。

我々が早くから米国に朝米会談を提起して対話の扉を開いている理由はまさにここにある。

米国は緊張状態が激化している朝鮮半島の緊迫した現実を直視し,これ以上我が方との対話に顔をそむけてはならず,我が方が提起する会談に誠意をもって対するべきである。

我が国の情勢が日増しに緊張しているのは,南朝鮮当局が米国に積極的に追従し,南朝鮮を彼らのアジア戦略のための核基地としてゆだね,日本との軍事的結託を強化し,外部勢力をバックにして我が方との対決を追求していることとも関連している。

南朝鮮当局は当然,南朝鮮にある米軍をとどめておくべきでなく撤収させるべきであり,南北対決をもくろむことなく南北の緊張状態を緩和するための実際的な措置を取るべきであり,こうした諸問題を三者会談において協議する用意を持つべきである。

合同会議は次のように指摘した。

三者会談を開くという我が方の新しい提議は朝鮮問題を平和的に解決する上で画期的意義を持つ重大な発起となる。

とれは戦争と平和の岐路にある朝鮮半島の重大な事態をなんとしても対話と協商の方法によって平和的に解決しようとする我が方の真摯な努力の表れであり,朝鮮人民の前に負った民族的任務と,アジアと世界の人民の前に負った平和愛好的使命に忠実であろうとする我が方の切なる念願の表れである。

会談が開かれ,朝鮮半島において緊張状態を解消し,自主的平和統一に有利な前提をもたらす諸問題を成功裏に協議できるであろうし,互いの利益に合致するよう,危険な現局面を打開する合理的な方途を求めることができよう。

合同会議は,三者会議においてなによりも朝米間に平和協定を締結し,米軍を南朝鮮から撤収させるという問題が協議されなければならないと認め,次のように指摘した。

朝米間に平和協定を締結し,南朝鮮から米軍を撤収させることは朝鮮の強固な平和のための基本的保証であり,朝鮮人民が外部勢力の干渉なしに自主的に統一偉業を成就するための先決条件である。

これは朝鮮休戦協定締結以来,30余年間も解決を待っていた歴史的な課題である。

戦争の危険をはらんでいる今日の緊張した我が国の情勢は,まさに平和でも戦争でもない不安定な休戦状態の中で絶えず強化されてきた米国の「力の立場に立った政策」の必然的な結果である。

米国が真に朝鮮とアジアの平和を願うならば,朝鮮休戦協定の締約の一方として当然,朝鮮における戦争状態の終結を法的に宣布し,朝米関係を強固な平和的な関係へと転換することをためらってはならないし,米国と大洋を間にはさんで数万里も離れている我が国において米軍を朝鮮人民軍と対時させている非正常な事態を終わらせるべきであり,南朝鮮から核兵器を撤収させるべきである。

我が方は朝鮮半島の恒久的な平和のために最も差し迫って提起されているこうした諸問題が平和協定を通じて解決されるべきだと主張する。

平和協定が締結され,南朝鮮から米軍が撤収するならば,我が国の平和を脅かし,祖国の自主的平和統一を阻む根源がなくなり,朝鮮問題の平和的解決のための明るい展望が開かれるであろう。

平和協定によって米軍が南朝鮮から撤収した後,朝鮮における平和の保証は十分に整い得る。

我が方は朝鮮において強固な平和維持のためのすべての条件を保障するであろうし,米国は自身の体面と利害関係を損ずることなく朝鮮問題から誉れ高く手を引くことができよう。

平和協定の締結はまた朝米関係の正常化のためにもよい環境を造るであろう。

合同会議は三者会談において,また北と南の間に不可侵宣言を採択するという問題を提起し,次のように指摘した。

北と南の膨大な兵力が対時している現状をそのままにしておいては,我が国において武力衝突の可能性を完全に排除することはできない。こうした非正常な事態は,北と南の間に誤解と不信を生じさせ,莫大な人的,物的資源を無駄に使い果たすだけであり,だれにも利益にはならない。

朝鮮において緊張緩和措置がいつにも増して差し迫ったものとなっている今日,南北間においてはなによりもこの問題から解決しなければならない。

このために我が方は互いに武力を使用することなく相手方を攻撃しないことを確約し,軍隊と軍備を大幅に縮小し,軍事的対時状態を解消することを見越した不可侵宣言を採択すべきだと主張する。

この宣言は我が国の平和と平和統一偉業に寄与するもう一つの重要な措置となり,南朝鮮から米軍が撤収した後に朝鮮半島の平和と安全を保障する確固たる保証となるであろう。

米国と平和協定を締結し,北と南の間に不可侵宣言が採択され,祖国の自主的平和統一に有利な前提が整った後,北と南は統一対話を行うことになろう。

合同会議はこの統一対話において,すでに合意された7・4南北共同声明に準拠して自主,平和,民族大団結の原則に合致するように統一問題を解決していくべきだと強調し,次のように指摘した。

自主,平和,民族大団結の原則は祖国統一問題解決の礎石である。7・4南北共同声明の精神に沿ってこの原則を尊重し,それを忠実に履行すべきであり,それに反することをしてはならない。自主の原則に従って,いかなる外部勢力の干渉も排撃すべきであり,どこまでも朝鮮人自身の力で国の統一問題を解決しようとする姿勢を持つべきである。平和の原則を守って,軍事的対決を追求してはならず,緊張状態を生じさせることをしてはならない。また民族大団結の原則により,思想と制度の差異を超越し,北と南の団結を図るべきであり,同族間に反目と不信を助長する反共対決政策に終止符を打つべきである。

会議は,自主,平和,民族大団結の原則を具現した最も合理的な祖国統一方途は北と南に互いに異なる思想と制度をそのままにし,二つの地域が自治制に基づいた一つの連邦として統一することである,と強調し,次のように指摘した。

自治制に基づいた連邦国家はだれにも縛られることなく,だれの衛星国にもならない自主的な国となり,どちらの側にも傾かず,どのブロックにも加担しない中立的な国となるであろう。

それは真に,北と南のどの一方も自分のものを相手方に強要することができず,その一方も他方を併呑することができず,北侵も「南侵」も外部勢力の侵略も許さない平和的な国となるであろう。

こうした連邦国家の誕生のために南北朝鮮全人民の総意を結集した全民族大会が開かれなければならない。

我が方は北と南の間の統一対話において連邦国家創設問題をはじめとする以上の諸般の問題が協議されなければならないと認める。それとともに,我が方は相手方が提起する他の提案についても協議する用意があるということを表明する。

合同会議は次のように指摘した。

米国と南朝鮮当局が転換的な意義を持つ我が方の誠意ある発起を正しく認識するならば,三者会談は早い時日内に開かれるであろうし,朝鮮問題解決において必ずや新たな突破口が開かれるであろう。我が方はこうした期待と確信を持って三者会談を開くために全力を尽くす。

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委・最高人民会議常設会議合同会議は参加者らの一致した賛同の下に三者会談を開くことを公式に提議することにし,との提議を盛り込んだ書簡を米国国会と政府,そして南朝鮮当局にそれぞれ送ることを決定した。

(ロ)米合衆国政府・国会に送る書簡

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・最高人民会議常設会議合同会議は朝鮮問題の平和的解決のための新たな措置を取ることについて討議,決定し,その書簡を米合衆国政府と国会上・下両院に送る。

今日,朝鮮半島は平和か戦争かという重大な岐路に置かれている。

朝鮮で休戦が実現されてはや30年が過ぎたが,平和の展望は日増しに暗くなり,事態は戦争前夜をほうふつさせる先鋭化した局面へと一層迫っている。

軍事境界線を間にして双方の膨大な兵力が鋭く対時している中で,南の方では兵力増強が続けられ,大規模な戦争演習が相次いで行われている。

現情勢は,なんらかの偶発的な些細な事件によってもいつなんどきでも戦争がぼっ発し得るほど,極度に緊張している。

つくり出された情勢は世界人民に深い憂慮を抱かせ,戦争を防止し平和を守護するための適切な措置が取られることを差し迫って要求している。

朝鮮民主主義人民共和国政府ほ朝鮮で休戦が実現された後,一貫して米国との敵対関係を終わらせるための方途を各方面から探求してきており,その一環としてすでに1974年に朝鮮民主主義人民共和国と米合衆国間に直接対話を実現して平和協定を締結する問題を提起した。

しかし,遺憾ながら,我が方のこうした努力は今日に至るまでしかるべき呼応を得ることができなかった。

あなた方は我が方が「南侵」をしようとしているとして,南朝鮮で絶えず兵力を増強し,戦争準備を促しており,ありもしない「南侵」を防ぐとの口実をもって世界の人民を欺まんしようとしている。

我々は「南侵」する意思を持たず,同族が相争うことはしない。これについて我が方は一再ならず2度宣明している。我が方はつねに民族の自主権と生存権を守るために全力を傾けている。日増しに激化している双方の軍事的対決状態は相互の不信と反目だけをつくり出し,戦争の危険をますます増大させている。

いま朝鮮で戦争が再発するならば,その戦争は決して朝鮮内だけにとどまらず,必ずや核戦争となるであろう。

そうなれば,朝鮮人民ばかりか米国人民も安らかではないだろうし,全世界全体が核の惨禍を免れることができなくなるであろう。

いま問題は,核戦争への道を引き続き走りつづけるか,そうでなければ平和の道へ立ち戻るかというように深刻に提起されている。

諸般の事実は,いまのように先鋭化した対決状態を持続させてはあなた方が得るものはなにもないということをはっきり示している。

我が方は,いまこそ我が政府と米国政府がともに隔絶された状態から脱して,朝鮮問題の平和的な解決のための道を共同で模索する時に至っていると認める。

活路は専ら対決でなく,当事者間の対話にあると我が方は深く信じている。

我が方は,米国政府が心から平和を望むならば,今日,朝鮮における緊張状態の激化に責任のある他の一方である南朝鮮当局者とともに我が方と接触し,朝鮮問題を平和的に解決するための協商を行うべきであると考える。

我が方はこのような見地から,1984年の新年を迎え,我が方と米国間の会談に南朝鮮当局者を参加させる三者会談を行うことを正式に提起することに決定した。

三者会談を行う場所としては板門店でもよいし,また互いに便利だと認めるどこか他の場所を選択することもできよう。

三者会談では,なによりも,朝鮮において緊張状態を緩和し,朝鮮問題の平和的解決の前提を整えるための対策的諸問題を討議すべきであろう。

それは,朝鮮半島において軍事的対決状態がこれまでになく激化し,核戦争の危険が重く垂れこめている現状態をそのままにしては,朝鮮問題の平和的解決について考えることさえできないからである。

それゆえ三者会談では,朝鮮休戦協定の締約の一方であり,南朝鮮においてすべての軍事的統帥権を握っている米国と我が方の間に休戦協定に替わる平和協定を締結するという問題と,朝鮮の北と南の間に不可侵宣言を採択する問題が優先的に提起されると考える。

平和協定には,朝鮮戦争の終結を法的に公式宣布し,休戦を強固な平和へと転換させ,すべての外国軍隊を撤収させるという問題を含めることができるであろうし,不可侵宣言には北と南が互いに相手方に反対する武力行使をせず,双方の軍隊を縮減するという問題を含めることができよう。

三者会談では,このほかに,朝鮮において緊張状態を緩和するために米国と南朝鮮当局が提起する諸問題も包括的に協議することができよう。

三者会談で平和協定が締結され,不可侵宣言が採択されることによって,朝鮮における緊張状態の緩和と朝鮮統一の前提条件が整った後,朝鮮の北と南の間の対話を開き,7・4南北共同声明に宣明された自主,平和統一,民族的大団結の原則に従って国の統一を実現することについての問題を論議することになるであろう。

ここでは,全民族大会を開いて民族的大団結をはかり,北と南の現存の社会・政治制度をそのままにして,地域自治制に基づく連邦制を実施することに関する問題を討議することができるであろう。

三者会談と北と南の間の統一対話においてこれらすべての問題が成功裏に解決されるとき,朝鮮半島において恒久かつ公正な平和を保障する上に必要なすべての保証が頼もしく整えられよう。

統一した朝鮮は,いかなる外国の軍事基地にも作戦基地にもならず,衛星国にもならないであろうし,いかなる政治・軍事的な同盟にも,ブロックにも加担しない,完全に自主的な厳正な中立国家となるであろう。

統一した朝鮮は,国が統一される前に南朝鮮に投資された外国の資本を侵害することなく,その利権を引き続き保障するであろうし,自主性と内政不干渉,平等と互恵,平和共存の原則に従って世界のすべての国々と友好関係を発展させていくであろう。

このようになりさえずれば,米国はその体面と利害関係を損傷することなく朝鮮問題から名誉を持って手を引くととができ,とれは朝鮮人民ばかりか米国人民の利益にも完全に合致することになるであろう。

米国と我が方はすでに一度,戦争を行った。我々両国が一度争ったからといって,永遠に敵対国となっているべきでもなく,再び戦争をする必要もない。

我が方は,米国政府が朝鮮において平和を維持し,朝鮮問題を平和的に解決することに心から関心を持って朝鮮人民の内政に干渉せず,朝鮮の統一を妨害しないならば,米国とも友好的な関係を持ち得ると考える。

三者会談を行うことについての我が方の今回の提議は,変化した現情勢下において,最も時期適切で,妥当なものである。

歴史的背景から見ても,現実的な切迫性から見ても,朝鮮問題をいつまでも未解決の状態で残しておくととはできない。

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会と最高人民会議常設会議は米合衆国政府と国会でわが方の新たな平和的発起について沈思熟考し,肯定的反応を示すものとの期待を表明する。

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・最高人民会議常設会議合同会議

(ハ)ソウル当局に送る書簡

我々は1月10日,現情勢に関して祖国の自主的平和統一を促進するための新たな措置を取ることについての問題を討議し,この書簡をソウル当局に送る。

祖国が分裂してから約40年になろうとしており,休戦が実現してからすでに30年以上の歳月が流れた。

これまで我が民族は一様に平和統一を渇望してきた。

しかし今日,我が国には全民族の念願に反し緊張状態がこれまでになく激化し,いつでも戦争がぼっ発し得る極めて危険な情勢が生じている。

心痛むととは,民族内部の不信と反目は日増しに深化し,民族統一の展望はますます暗くなっている。はなはだしきに至っては南の地は核前哨基地にまで化した。

いま朝鮮半島で再び戦争が起これば,この戦争は過去のような通常の戦争ではなく核戦争となるというととは火を見るより明らかである。

我が民族が核の惨禍の犠牲となり,平和統一の可能性を完全に失うことになるこの重大な事態の発展を何人も手をこまぬいて傍観してはならない。

我々はなんとしても民族最大の宿願である国の平和統一を我々の世代に実現すべきであり,この崇高な目的のために全民族が力を合わせて難問打開の道を求めるべきである。

現情勢において国の平和統一を実現するためにはなによりもまず,北と南の間の先鋭化している軍事的対時状態を解消し,緊張状態を緩和することが必要である。

現在のように北と南が互いに大砲を据え,銃剣を向き合わせている条件の下では到底,対話と平和統一の環境を造り出すことはできない。

我が国で北と南の間の軍事的対時状態を解消し,緊張状態を緩和するためにはまず,米国との間の問題を解決すべきである。

それは米国が朝鮮休戦協定の締約の一方となっているばかりでなく,南朝鮮に自己の軍隊を駐留させ,すべての軍事統帥権を掌握しているからである。

したがって,我が方は今回この問題について米国と会談することを新たに提起した。

それとともに我が方は,我が方と米国の間のこの会談に,我が国に生じた緊張状態と直接関連している他の一方であるソウル当局も同等の資格で参加することができるものと認める。

我が方は,三者会談を行うならば我が国における軍事的対時状態を解消し,緊張状態を緩和する問題があらゆる側面で十分な保証をもって,解決されることができるものと考える。

三者会談では,北と南の間の緊張状態を解消し,強固な平和を保障するための対策として朝鮮休戦協定の締約双方である我が方と米国との間に休戦協定に替わる平和協定を締結する問題を討議することができ,また北と南の間の不可侵宣言を採択する問題を討議することができるであろう。

我が方と米国との間の平和協定には主に米軍と核兵器をはじめとする軍事装備を撤収させ,強固な平和を保障する条件に関する問題を含ませることができるし,北と南の間の不可侵宣言には南北が互いに相手側に反対する兵力行使をせず,軍備を縮小させる問題を含ませることができると考える。

三者会談ではその他米国とソウル当局が提起する諸問題も討議することができるであろう。

三者会談でこのような問題が解決され,緊張緩和の保証が与えられ,祖国統一の前提が整った後,北と南の間の対話を開き,統一問題を協議することができるものと我々は考える。

北と南の対話では,すでに双方が7・4南北共同声明で合意し,民族に対してその履行を確約した祖国統一の三大原則に準拠して国の統一問題を自主的,平和的に民族の団結した力によって解決することに関する問題を協議すべきであろう。

国の自主的平和統一のためには北と南の当局を含め各党,各派,各界各層人士を網羅する全民族大会のような政治協商会議が招集されるべきであり,ここで北と南にある制度をそのままにして,二つの地域がそれぞれ自治制を実施する中立的な連邦国家を創立する問題を討議することができるであろう。

もし,ソウル当局に統一国家創設に関する他の合理的な案があるならばそれも合わせて討議することができよう。

三者会談に関する我が方の新たな提案は我が国において実質的に緊張状態を除去し,平和を確固として保証し,平和統一に有利な局面を開くための画期的かつ転換的な発起である。

三者会談は板門店かその他の便利な第三国で行うことができよう。

我々は緊張緩和と祖国統一の新たな序章となる三者会談が一日も早く招集されるべきであると考え,ソウル当局が我が方の提議に深い注意をめぐらし,肯定的な呼応を示すことを期待する。

朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・最高人民会議常設会議合同会議

1984年1月10日平壌

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