(9)コンタドーラ・グループ大統領会談共同声明(中米の和平に関するカンクン声明)
(83年7月17日,カンクン(メキシコ))
1.コンタドーラ・グループ4大統領は,中米紛争の深刻化に鑑み本17日,カンクンで会合することを決定した。
2.中米の危機的情勢を検討し,暴力及び緊張の増加,国境における諸事件拡大化の恐れのある武力衝突の脅威等により,上記情勢が急速に悪化する懸念があることで一致した。
3.中米紛争は,国際社会に対し,政治的理解への途を支援するか,あるいは武力衝突の要因が強まることを座視するかの選択をせまっている。
4.中米の和平は,不干渉,民族自決,国家の主権の平等,経済社会開発に対する協力,紛争の平和的解決,表現の自由,真の民意等の国家の共存のための基本原則等を相互に尊重することによってのみ実現されると考えられるが,平和のための条件の醸成のためには,中米諸国が対話のための行動と姿勢を示すことが肝要であり,また,同諸国は共存のための合意を探求する基本的な責任を有する。
5.コンタドーラ・グループの努力は,全ての中米諸国が参加する対話の開始,協議メカニズムの設置,問題解決のための討議すべきテーマの決定等を実現したが,成果としてはいまだ不十分である。しかし,国際社会はコンタドーラ・グループの活動は紛争の拡大阻止に貢献することとともに紛争の問題点,原因等を明確にしたことを認めている。
6.平和的意志が紛争解決に実効的に資する提案となるためのプロセスを促進する要があると考え,中米諸国に対し提案するプログラムの骨子につき合意した。右プログラムは国際関係を律する原則の厳格な遵守の他に,域内における軍拡の有効なコントロール,外国人顧問の排除,非軍事地区の設置,他国政府を不安定化するための政治的,軍事的行動のために,その他の国の領土を使用することの禁止,武器の流入,流通の根絶,地域の全ての国に対する,他国の侵略,内政干渉等を行うととの禁止等の政治的取り極めを締結することを想定している。
7.上記プログラムを有効ならしめ,地域の平和を保障するため次の政治的約束からなる協定の締結が要請されている。
(1)交戦状態の終結。
(2)攻撃兵器の現状水準における凍結。
(3)監視メカニズムを設置し,現存兵器の管理と縮小を行うための合意を得るための交渉の開始。
(4)他州の軍事施設の自国領土内設置の禁止。
(5)予め合意された兵力数を越える軍隊を国境付近へ移動させる際の事前通告。
(6)場合により,共同国境パトロール,または関係者の合意により選出されたオブザーバー・グループによる国際国境監視の実施。
(7)国境における事件発生の防止と右が発生した場合の解決のための安全保障混合委員会の設置。
(8)域内のいずれかの国の領土から他国領土への武器の流入を防止するための域内監視メカニズムの設置。
(9)政治的信頼関係をおびやかす声明や行動を排し,地域の緊張緩和と信頼の雰囲気の高揚。
(10)武力紛争を予知し,政治的信頼関係を生み出すための,政府間直接連絡システムについての調整。
8.上記の一般プログラムの実施と平行に関係国の相違点を解消するために,先ず了解覚書の署名及び関係者が共同行動をとり,また国境付近において領土の有効な管理を保証する混合委員会の設置が行われるべきである。
9.地域の平和破壊要因排除のための上記措置にあわせ,民主制度の強化及び人権の保障等の独自の努力が必要であり,国民協議の手段を設け,世論各層の選挙自由参加を保障し,国民の政治参加の促進が必要である。
10.民主体制の強化は経済,社会開発と密接に関係しているため,地域の経済的遅れに対処する要があり,統合のメカニズムの強化,域内通商の増加及び産業補完関係の活用等は,世界経済不況の影響を減少させるために急を要する措置である。しかし右の自助努力は,クレジットの供与,協力計画,中米産品に対する市場開放等,先進諸国を中心とする国際社会の支援によって補完されねばならない。
11.コンタドーラ・グループは地域に対する協力計画及び経済再活性化のために国際的支援を取り付ける努力を継続するとの決定を再確認する。
次回のコンタドーラ・グループ,中米諸国外相会談においてコンタトーラ・グループ外相が,中米諸国に提示すべき具体的提案を策定することを期待する。
12.国際社会,国連事務総長,OAC常任理事会議長等に対し,その経験と外交的手腕をもって,中米問題の平和的解決のため貢献するようよびかける。
13.メキシコ国,カンクンにおいて1983年7月17日。