第6節 外国人に対する査証
1. 査証と外国人入国者
我が国の83年における査証発給総件数は120万件を超え,5年前(78年)の約55万件に比し2倍以上に増加しており,また実際に来日した外国人の入国者総数についても,5年前の約100万人に対し83年には約190万人とほぼ2倍に達している。
上記の数字から,外国人入国者の増加にほぼ比例して査証発給事務も激増していることは明らかである。入国者総数と査証発給総件数との統計上のギャップは,ジャンボ・ジェット機時代の航空運賃の低廉化等により国際間の人的移動が容易となったことを背景に,国際間の人的交流の円滑化のため,相互の取極により観光等短期の一時旅行者に対し査証取得を免除していること,及び渡航目的に応じ数次査証を与えていることのためである。さらに,上記の数字は,国際間の人的交流の増加に伴い,(イ)国の安全ないし公安の維持,(ロ)内国人に対する雇用機会の確保,(ハ)対外政策実施のための措置等,独立国家の主権を基礎とした査証制度の機能の重要性が,従来にも増して高まってきていることを示唆している。
2. 査証の発給状況
(1) 近年の国際間の人的交流の増大を反映して,我が国の在外公館における査証発給総件数も年々増加傾向を示している。83年における外国人に対する査証発給総件数は,120万9,887件で前年に比べ70,774件(6.2%)の増加であった。
(2) 査証発給件数を地域別に見ると,下表のとおり。なお,アジア地域は前年に比べ4%増加し全体の68.5%,次の北米地域は前年に比べ13.7%増加し全体の23.6%であり,両地域だけで査証発給総件数の9割以上を占めている。
(3) 査証区分別発給件数は下表のとおり。なお,短期滞在査証(観光,訪問,業務など)は,全体の86.4%(そのうち短期商用目的は全体の18.2%),通過査証は全体の5.2%であり,両査証だけで査証発給総件数の9割以上を占めている。
(4) ちなみに,83年中に来日した外国人を国籍別に見ると,米国人(382,180人),英国人(167,538人)及び韓国人(140,928人)の順となっている。
3. 査証に関する二国間取極
我が国は,国際間の人的交流円滑化の観点から相互主義に基づき,観光,訪問,商用などの目的の一時旅行者に対し査証取得を免除する取極を各国と結んでいる。83年末現在の査証免除取極国は,下表のとおり48か国であるが,その取極の主な内容は,自国内で就業又は報酬を得る活動に従事しない短期(3か月以内の期間を定めるものが多い)の相手国籍滞在者に対する入国査証の免除である。
米国及び豪州とは査証免除取極はないが,渡航目的に応じ相当の長期間(最長5年)にわたり数次入国に有効な査証を相互に発給する取極を結んでいる。
欧州諸国
査証免除の滞在期間3か月:
アイスランド,イタリア,オランダ,ギリシャ,サンマリノ,スウェーデン,スペイン,デンマーク,ノールウェー,フィンランド,フランス,ベルギー,ポルトガル,マルタ,ユーゴースラヴィア,ルクセンブルグ,サイプラス
査証免除の滞在期間6か月:
アイルランド,英国,オーストリア,西独,スイス,リヒテンシュタイン
アジア・大洋州諸国
査証免除の滞在期間1か月:
ニュー・ジーランド
査証免除の滞在期間3か月:
シンガポール,パキスタン,バングラデシュ,マレイシア
北米・中南米諸国
査証免除の滞在期間3か月:
アルゼンティン・ウルグァイ,エル・サルヴァドル,カナダ,グァテマラ,コスタ・リカ,コロンビア,ドミニカ,チリ,ペルー,ホンデュラス,スリナム,バハマ
査証免除の滞在期間6か月
メキシコ
中近東・アフリカ諸国
査証免除の滞在期間3か月:
レソト,チュニジア,モーリシアス,イスラエル,イラン,トルコ