第4節 邦人に対する援助

1. 一般邦人,船員,船舶に対する援助

83年中に在外公館で取扱い,外務省に報告のあった一般邦人,船員,船舶等に関係する事件,事故件数は493件(546人)であった。

このうち,地震,火災,風水害などの被害は5件(以下括弧内は死亡者数)(0人),船舶,航空機,列車,自動車事故54件(98人),山岳遭難,遊泳事故24件(23人),犯罪被害による死亡者9人,自殺(未遂を含む)23件(21人),病気93件(48人),精神異常34人,行方不明9人,邦人による殺人事件2件,麻薬覚醒剤等犯罪19件などがある。

なお,航空機に関しては,9月1日,ニューヨーク発ソウル行き大韓航空機がソ連邦領樺太上空付近において,ソ連戦闘機により撃墜され,邦人乗客28名を含む乗員乗客269名が死亡した事件が発生したこと,並びに12月7日にスペインのマドリッド空港において,ローマ行きイベリア航空機とスペイン国内線アビアコ航空機が地上で衝突する事故が起き,イベリア航空機に搭乗していた日本人団体旅行客34名が死亡し,6名が負傷したことが注目された。

このように,事故,病気等により海外にいる邦人を援護する必要が生じた場合,外務省は在外公館と緊密な連絡をとりつつ,留守宅への通報をはじめ,当該邦人が安全かつ速やかに帰国できるようにするなど必要な措置をとっている。

また,83年においては前年に引き続き,邦人観光旅行者の現地の治安事情や法令規則等についての不注意に基づく事故やトラブルが多発したので,運輸省を通じ旅行業界に対し注意喚起を行った。

帰国を希望するにもかかわらず帰国費を負担し得ない邦人に対しては,審査の上貸付けを行っているが,83年中の貸付けは7件(23名)であった。

2. 巡回医師団の派遣

外務省は,72年以来,海外在留邦人の健康管理の見地から,衛生環境が悪く,かつ,十分な医療施設のない開発途上国に在留する邦人を対象に巡回医師団を派遣している。83年度においては,中近東地域に1チーム,アフリカ地域に4チーム,アジア地域に3チーム,オセアニア地域に1チーム及び中南米地域に2チームをそれぞれ派遣し,約6,000名の邦人の健康相談に当たった。

3. 海外子女教育

5月現在,海外の学齢子女(小・中学生)は35,663名であり,このうち,42%が全日制日本人学校に就学しており,35%が現地校などに通学するとともに補習授業校に通っており,残り23%が専ら現地校などに就学している。

海外子女教育は,国内と異なった種々の問題を抱えているが,外務省は文部省と協力して,できる限り海外子女教育を充実強化するよう努めている。

(1) 援助の状況

外務省は,施設及び人の双方に対し援助しているが,前者は校舎建設,借料補助,後者は現地採用教員や補習授業校講師の謝金補助である。このほか,文部省が教員派遣,巡回指導,教材,教科書の無料配布等の補助を行っている。なお,外務省の海外子女教育予算は,83年度,約17億円となっている。

(2) 日本人学校

日本人学校は,83年にコタ・キナバル,マナオスの2か所に新設され,合計74校となった。

在籍児童生徒数は,5月現在15,097名で,うち約72%は開発途上国である。派遣教員(ほとんど公立学校教員)の数は,917名に上っている。

(3) 補習授業校

補習授業校は,現地校などに通学する邦人子女に対し,週末などに国語を中心に補習授業を行っているものであり,5月現在95校となっている。

在籍児童生徒数は,5月現在12,501名で,うち96%は欧米先進国地域である。

補習授業校の講師は,主として,現地の在留邦人であるが,83年には合計914名となっている。生徒数100名以上の大規模な補習授業校及び全日制に準じた授業を行っている補習授業校に対しては,国内から専任教員が派遣されており,その数は38名に上っている。

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