第6章 邦人の渡航と保護・援助
第1節 概要
国際的な相互依存関係が深まる中にあって,我が国の海外渡航者数は,83年には423万人余と史上最高を記録し,海外在留邦人も47万人(長期滞在者22万人,永住者25万人)を超すに至っている。
このような邦人は,資源小国たる我が国の発展と繁栄を支える基盤を形成していると言っても過言ではなく,外務省としては,邦人が海外において安んじて活動できるよう邦人の保護及び福利の向上に努めている。
近年,海外在留邦人数が増加するとともに,その分布も世界のあらゆる国に広がっており,世界各地の動乱,紛争,ハイジャック事件等に邦人が巻き込まれるケースが増加しており,外務省としては,このような邦人の保護・援助に万全を期した。
また,在留邦人ができる限り国内とほぼ同様の福祉を享受しうるよう子女教育・医療等において諸施策の充実に努めた。特に在留邦人に海外での国民年金の継続を可能とするための法改正を行うよう厚生省に要請していたが,右要請を織り込んだ改正法案が第101回国会に提出される運びとなった。また,開発途上国地域に在留する邦人の医療面の不安を解消することを目的として外務省,厚生省,労働省の3省共管として財団法人「海外邦人医療基金」の設立許可を行った。さらに,在留邦人に選挙権行使の道を開くための公職選挙法改正につき自治省と共に法案の具体的内容の検討を行い,同法案は84年4月に国会に提出された。