第6節 海洋法に関する国際連合条約

1. 概況

第3次国連海洋法会議は,包括的な新しい海の秩序を形成する目的で73年に開始され,82年に海洋法に関する国際連合条約(以下「条約」という)を採択し,各国の署名に開放して終了した。条約発効後設立されることとなった国際海底機構及び国際海洋法裁判所の設立の準備を行うための準備委員会第1会期及び再開第1会期が各々83年春及び夏にジャマイカで開催され,組織問題を中心に審議が行われた。

準備委員会第2会期は84年3月19日から4月13日まで開催され,先行投資保護決議の登録受付規則,深海底開発規則等に関する実質審議が行われた。我が国としては今後これらの準備委員会での審議を通じて,条約が先進国を含む国際社会全体に受け入れられるものとなるよう一層の努力を継続する必要があると考える。

なお,条約は60番目の批准書又は加入書が寄託された後1年で発効することとなっているが,84年3月21日現在の批准数は10(フィジー,ザンビア,メキシコ,ジャマイカ,ナミビア(国連ナミビア理事会),ガーナ,バハマ,ベリーズ,エジプト,象牙海岸),署名数は134である。我が国は83年2月に条約に署名したが,批准については先進国,開発途上国双方を含む他の諸国の動向を見極めつつ最終的立場を決定することとしている。

2. 準備委員会第1会期(春及び夏)の審議状況

(1) 概要

準備委員会第1会期(春会期)は3月15日から4月8日まで,また再開会期(夏会期)は8月15日から9月9日まで開催され,主として議長選出,手続規則等組織問題を中心に審議した。この結果,議長にタンザニアのワリオバ法務大臣を選出し,また準備委員会の構成,役割配分,役員,手続規則,先行投資保護決議の下での先行投資者の登録のための手続及び指針を一括してコンセンサスにより採択した。

(2) 準備委員会の構成,役割配分

準備委員会の扱うべき事項については春会期において(イ)国際海底機構の各種機関に関する行財政事項についての規則及び手続,(ロ)エンタープライズ(国際海底機構の事業実施主体)の早期始業のために必要な措置,(ハ)開発途上陸上生産国問題,(ニ)深海底の探査・開発のための規則及び手続,(ホ)先行投資保護に関する決議(決議II)の実施,(へ)国際海洋法裁判所設立のための準備の六つであることが確認されるにとどまった。

夏会期において審議を続けた結果,国際海底機構に関する諸規則及び先行投資保護の手続規則については,本会議で審議することとし,他の開発途上陸上生産国問題,エンタープライズ,深海底開発規則,国際海洋法裁判所の四つの問題については,それぞれ第1,2,3,4特別委員会で審議することとなった。なお,会議の運営,組織問題等を扱う一般委員会(下記の36名の役員で構成)を設け,先行投資保護決議の実施面についての問題は,同委員会が取り扱うこととなった。

(3) 各機関の役員の配分

夏会期において役員の配分につき審議した結果,各特別委員会には,少なくとも各地域グループの代表1名が参加することを条件に議長1名及び副議長4名の計5名の役員を置き,また,本会議には議長のほか14名の副議長,1名のラポルトゥール・ジェネラルを置くこととし(この結果全体の役員数は36名となる),また,その地理的配分はアフリカ9,アジア9,ラ米7,西欧6,東欧5とされた。我が国は本会議の副議長に選ばれた。

(4) 準備委員会の手続規則

夏会期において採択された準備委員会の手続規則では,手続事項については過半数以上の多数決,実質事項については,特に条約上コンセンサスに基づいて決定されるとされている事項,先行投資保護及び深海底開発の諸規則に関する事項,財政支出を伴う事項等についてはコンセンサスで決定され,それ以外の実質問題については3分の2の多数決で決定されることとなった。

(5) 開催地

春会期及び夏会期で準備委員会の開催地の問題について,審議が難航した。ラ米グループ及びアフリカ・グループが開催地は国際海底機構の設立地であるジャマイカにすることに決着済みであるとするのに対し,アジア,西欧,東欧の3グループは,ニューヨーク及びジュネーヴでも開催できる方途を開いておくべきで,そのためには夏会期が最後の機会であると主張した。結局議長が第2会期の春はキングストン,夏はニューヨーク又はジュネーヴ(春会期で決定),それ以降は年1回はキングストン,他の1回はキングストン,ニューヨーク,ジュネーヴのいずれかにするとの妥協案を出し,これにより一応の解決を見た。

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