(16)INF交渉暫定新提案に関するレーガン米大統領声明(要旨)

(1983年3月30日,ワシントン)

1.米政府は過去1年半にわたり核兵器の大幅削減,化学兵器の全廃,在欧通常兵力の削減を目指す包括的な軍備管理政策を進めてきている。

本日は,このうちのINF交渉を取り上げたく,NATO諸国民も米国民もこの交渉の成功を期待しているがゆえにNATO諸国駐米大使の同席を願った。

2.INF交渉で取り上げている戦力は同盟諸国の安全保障に直接かかわるものである。ソ連が何百と配備したSS-20は欧州の同盟諸国及びアジアの友邦・同盟諸国の都市・防衛施設を攻撃し得る。

ソ連は,NATO側に同等の脅威となる兵器がないにもかかわらず,これら戦力をたゆみなく増強し続け,今や1,000発以上の核弾頭を抱える350以上のSS-20が配備されている。

NATOとしては,軍備管理合意が達成されその配備が不要とならない限り本年後半にSS-20の脅威に対する特定の抑止力を配備する。

3.米政府は,同盟諸国の全幅の支持の下に1年以上ジュネーヴで交渉し,この種兵器の全廃を提案してきている。

その実現はNATOのみならずソ連の安全保障も強化し,また欧州・アジア諸国民の願望も満たすものである。

しかし,今のところソ連は米国のこの全廃案を拒否し,更に真剣な代案も出していない。ソ連は現在保有している独占を保持せんとしており,ソ連の最近の提案もソ連は欧州だけでSS-20について500発以上の弾頭を残し,極東に更に数百発保持することとなるものである。さらに,この提案では81年の交渉開始当時のソ連保有数を上回るSS-20が保持されることとなる。

4.ソ連が真剣な提案をしてきていないことには失望させられているが,ソ連の姿勢が我々の平和の提案に影を落とすままにしてはならない。

INFミサイルについて言えば,何がしか持っているよりは無いことに越したことはないが,何がしか持たざるを得なければ少ない方がよい。

ソ連が全廃に応じないのであれば,暫定的取極として,この種戦力を双方均等の大幅に削減された水準とすることに応じるよう提案する。

ニッツエ代表はソ連代表に対し,米国としては「ソ連が相対的長距離のINFミサイルの弾頭数をグローバル・ベースで均等の水準までに削減することを条件に米国のパーシングII及び地上発射巡航ミサイルの配備計画数を大幅に削減する」との内容の暫定的取極を交渉する用意がある旨提示した。

ニッツエ代表はこの提案はこの種兵器全廃のための真剣な第一歩であると見なしている旨説明し,ソ連も同様な見方をとることを期待している旨伝えた。全廃方の米提案も依然生きている。

5.米政府の提案に基づき次回交渉は当初予定より2,3週間早く5月17日に開始することに合意された。この提案が早期合意をもたらすことを期待しており,米国としてソ連側の真剣な示唆を探究する用意があることに変わりない。

6.NATO諸国駐米大使の同席を願ったのは,以上の動きをレビューするとともに,INF交渉に臨む米国に対するこれまでの同盟諸国の支持に対し謝意を表すためでもある。今後とも緊密な協議を約す。これまでの協議により本日の提案(イニシアティヴ)も正にNATOイニシアティヴと言えるものである(大統領の各国首脳との連絡,ブッシュ副大統領訪欧,国務長官,国防長官のカウンターパートとの連絡,SCGの活動等に言及)。

この協議の過程は自由・民主主義諸国間の同盟が緊要な問題につき協力するに当たっての模範である。これは結束の根源であり,ジュネーヴ交渉の成功につき自信を与えるものである。

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