(9)中国共産党第12回全国代表大会における胡ヨウ邦党主席の報告演説(「独立自主対外政策」関連部分)

(1982年9月1日,北京)

中国の前途は世界の前途と密接な関連がある。中国の革命と建設の勝利は,世界の進歩と光明に対する力強い支持であるが,中国の革命と建設が勝利できるのも,世界の光明ある前途を目指す各国人民の奮闘と切り離すことはできない。中国は他の国と人民から援助を受けたことがあるが,他の国と人民を援助したこともある。毛沢東同志は,建国の直後,「我々の全般的任務は,全国人民を結集し,諸外国のすべての友人の支援をかち取って,偉大な社会主義国の建設のために奮闘し,世界平和の擁護と人類進歩の事業の発展のために奮闘することである」と指摘している。愛国主義と国際主義とを結び付けることは,ゆらい,対外関係を処理する上での我々の根本的な出発点であった。

我々は愛国主義者であって,中国の民族的尊厳と民族的利益が少しでも侵害されることを絶対に容認しない。我々は国際主義者であって,中国の民族的利益が全人類の総体的な利益と切り離しては十分に実現されないことをよく知っている。我々が独立自主の対外政策を堅持することは,我々が世界平和の擁護,人類進歩の促進という崇高な国際的義務を履行することと一致している。建国以来33年,中国はいかなる大国あるいはいかなる国家ブロックにも決して依存せず,またいかなる大国の圧力にも決して屈服しないということを,我々は実際の行動で全世界に示してきた。中国の対外政策はマルクス・レーニン主義と毛沢東思想の科学的理論を基礎としたものであり,中国人民と世界人民の根本的利益から出発したものである。それは長期的,全局的な戦略的根拠を持つものであって,決して便宜的に変えたり,何人の使嗾,挑発にも乗ったりしない。毛沢東同志と周恩来同志の定めた我が国対外政策の基本原則を我我が断固実行してきたからこそ,社会主義の新中国は世界で信頼と名声をかち取り,友人を獲得し,国際舞台でその厳然たるイメージを保ち続けてきたのである。

中国が各国との関係発展の指針としている一貫した原則は,「主権と領土保全の相互尊重,相互不可侵,相互内政不干渉,平等互恵,平和共存」という五原則である。

我が国には,侵略と抑圧を受けてきた百余年の苦難の歴史がある。中国人民は,以前の屈辱的状態に2度と戻ろうとは決して思わないし,また他のいかなる民族をも我々の以前のような屈辱的状態に追いやることは決してあり得ない。中華人民共和国の成立によって,外国の侵略に屈従する我が国の社会的根源が消滅したばかりでなく,対外侵略を行う我が国の社会的根源も消滅した。エンゲルスも述べているように,「一民族は他民族を圧迫し続けながら,同時に自由になることはできない」。これは,覆すことのできない真理である。我々マルクス・レーニン主義者は,共産主義がいつかは必ず全世界で実現することを信じている。とはいえ,革命は決して輸出できるものではなく,各国人民自身の選択の結果でしかあり得ない。こうした認識に立てばこそ,我々は終始一貫,平和共存の五原則を堅持しているのである。我々はいかなる国に対しても,一兵卒たりとも駐留させてはおらず,いかなる国の領土にせよ,一寸たりとも侵略,占領したことはない。また,いかなる国の主権にせよ,これを侵犯したことはなく,いかなる国に対しても,不平等な関係を押し付けたことはない。我々は,いかなる状況の下でも,永遠に覇を唱えない。

平和共存の五原則は,社会主義諸国をも含め,すべての国との関係に適用される。ここ33年,我々はこの原則に基づいて,世界の125か国と外交関係を結んだ。我々と朝鮮,ルーマニア,ユーゴースラヴィアなど友好的な社会主義諸国とは,緊密に協力して,絶え間なく団結と友情を強化,発展させてきた。我々とアジア,アフリカ,ラテン・アメリカの多くの発展途上国とは,互いに共鳴し,支援し合って,各方面の協力関係を発展させてきた。中国と数多くの西側諸国とは,社会制度を異にしているとはいえ,世界平和を守る共通の願いを持ち,経済的,文化的協力を進める面で,共通の利益と巨大な潜在的可能性を持ち,長年にわたって良好な関係を保ち続けてきた。東欧諸国との関係も近年,ある程度の発展を見ている。

日本は中国の近隣にあり,中日両国人民は古くから密接に往来し,厚い友情を培ってきた。ここ百年来,日本軍国主義者は再三,中国に対する侵略戦争を起こして,中国人民に大きな災厄をもたらし,日本人民にも大きな被害を与えてきた。中日両国人民の長期にわたる共同の努力によって,10年前,両国はついに国交正常化を実現した。中日両国が平和友好,平等互恵,長期安定の関係を発展させることは,両国人民の長期的利益に合致し,アジア・太平洋地域の平和と安定に役立つものである。現在,日本の一部の勢力は,かつて中国と東アジアのその他の諸国を侵略した歴史的事実を相変わらず美化しており,日本軍国主義の復活をたくらむ様々な活動を進めている。こうした危険な状況は中日両国人民とその他の諸国の人民の大きな警戒心を呼び起こさずにおかない。我々は日本人民及び日本の朝野の有識者と共に,両国関係を妨げるすべての要素を排除して,中日両国人民の子々孫々に至る友好を守り続けるであろう。

中米両国は,1979年の国交樹立以来,両国人民の利益に合致する関係を発展させてきた。我々はこうした関係を発展させたいと一貫して願っており,それが両国人民と世界平和にとって有益であると考えている。しかし,両国の関係には,絶えず暗い影が差していた。それは,アメリカが中華人民共和国政府を中国唯一の合法政府と認め,中国は一つであり,台湾は中国の一部にすぎないと認めながらも,また,両国の国交樹立コミュニケの原則に違反した「台湾関係法」を成立させ,引き続き台湾に兵器を売却し,台湾を独立した政治的実体と見なしているからである。中国政府は,それが中国の主権を侵害し,中国の内政に干渉する行為であると繰り返し声明してきた。中米両国政府は1年近い交渉を経て,先ごろ,共同コミュニケを発表し,アメリカの台湾向け兵器売却問題については,最終的な完全解決を目指し段取りを追って解決するという規定を設けた。我々は,これらの規定が確実に履行されることを希望してやまない。中米両国の関係は,主権と領土保全の相互尊重,相互内政不干渉という原則を真に遵守してこそ,引き続き健全な発展を遂げることができるのである。

中ソ両国の関係は,随分長い間,友好的であった。中ソ関係が今日のような局面に立ち至ったのは,ソ連が覇権主義の政策を実行したからである。ここ20年近く,ソ連は中ソ国境と中国・モンゴル国境にずっと大軍を集結してきた。ソ連はヴィエトナムを支持して,カンボディアを侵略,占領させ,インドシナと東南アジアで拡張を行わせ,我が国の国境地帯で絶えず挑発を行わせてきた。ソ連はまた中国の隣国アフガニスタンを武力侵略した。これらはすべて,アジアの平和と中国の安全に対する重大な脅威となっている。我々は,ソ連の指導者が一再ならず中国との関係を改善したいと表明していることに留意している。だが,重要なのは言葉ではなく,行動である。もしもソ連当局が確かに中国との関係を改善したいという誠意を持ち,しかも,我が国の安全への脅威を取り除く実際的措置をとるなら,中ソ両国の関係は正常化に向かう可能性がある。中国人民とソ連人民とは古くからの友情を持っており,中ソの国家関係がまたどのような状況に置かれていようとも,我々は共にこの友情を守り,発展させるよう努めるであろう。

現在,世界各国の平和共存を脅かしている主な勢力は,帝国主義,覇権主義,植民地主義である。もちろん,旧い植民地主義体制は,元植民地半植民地であった100近い国が相前後して独立したため瓦解してしまった。だが,その残渣が残らず一掃されたと言うにはほど遠い。しかも,覇権主義を推し進める超大国が今また世界人民への新たな脅威となっている。超大国は世界制覇の目的から,他のいかなる国をもはるかに上回る軍事力によって,世界的範囲の争奪を繰り広げ,世界の不安定と動乱の主な根源となっているのである。

覇権主義に反対し,世界平和を守ることは,今日の世界人民にとって最も重要な任務である。世界大戦の危険は,超大国の争奪によってますます深刻化している。しかし,世界人民が粘り強い闘争によって彼らの戦略配置をかき乱すことができることも,経験によって示されている。全世界人民が真に一致団結して,覇権主義,拡張主義のあらゆる現象と断固闘うなら,世界平和は守ることができるであろう。我々は一貫して,超大国の軍備競争に断固反対し,核兵器の使用禁止と完全廃棄を主張し,超大国が真っ先に核兵器と通常兵器を大規模に削減するよう要求してきた。我々は超大国が準備している世界大戦に反対するばかりでなく,彼らが起こし,あるいは後押しするすべての局地的な侵略戦争にも反対する。我々は侵略されているあらゆる国と人民の反侵略闘争を一貫して断固支持してきた。我々は,祖国の統一を目指す朝鮮人民の闘争を支持する。我々は,民主カンボディア連合政府の指導のもとにヴィエトナムの侵略に反対するカンボディア人民の闘争を支持し,ソ連の侵略に反対するアフガニスタン人民の闘争を支持し,南アフリカの人種主義と拡張主義に反対するアフリカ人民の闘争を支持する。我々は,パレスチナ人民とレバノン人民に対するイスラエルの凶悪極まる侵略の暴挙を強く非難する。イスラエルはアメリカ覇権主義の支持と庇護の下に,横暴にもパレスチナを侵略・占領し,アラブ諸国を再三武力侵略して,中東と世界の平和に重大な脅威をもたらしている。我々は故郷への帰還と自国の樹立を目指すパレスチナ人民の闘争を引き続き断固支持し,イスラエル拡張主義に反対するアラブ諸国人民の闘争を引き続き断固支持する。

社会主義の中国は第三世界に属している。中国と大多数の第三世界諸国とは似かよった苦難を体験し,共通の課題と任務に直面している。中国は,第三世界の他の諸国と共に帝国主義,覇権主義,植民地主義に反対して断固闘争することを自己の神聖な国際的義務と見なしている。

第三世界が戦後の国際舞台に登場したことは,我々の時代の最も大きな出来事である。第三世界は,一部の大国に操られる表決機械にすぎなかった国連を,帝国主義,覇権主義,拡張主義がいつも正義の非難を浴びる場に変えた。超大国の海洋覇権に反対してラテン・アメリカ諸国の起こした闘争,自国の自然資源に対する永久的な主権の享有と行使を目指す石油輸出国及び他の原料生産国の闘争,強権政治とブロック政治に反対する非同盟諸国の闘争,国際経済新秩序の確立を目指すすべての発展途上国の闘争―これらのすべてが現代における強大な正義の潮流となって,かつて超大国が欲しいままに世界の運命を左右することのできた局面を大きく変えている。

第三世界の諸国が直面している共通の任務は,まず民族の独立と国家の主権を守り,民族経済を積極的に発展させ,その経済的独立によって,既に獲得した政治的独立を打ち固めることである。この面で第三世界の諸国が相互支援を行うことは,とりわけ重要な意義がある。第三世界の諸国は広大な土地,数多くの人口,豊富な資源,広い市場を持っている。我々のうちの一部の国はかなりの資金を蓄積しているし,多くの国はそれぞれ特色のある技術を持っている。民族経済を発展させる面でも,ほとんどの国は他国の参考となる経験を持っている。我々の間の経済協力,一般に「南南協力」と言われているものは,一部の技術と設備の適合性から見るなら,その効果はしばしば先進国との協力に比べてもひけを取らない。この協力は,これまでの不平等な国際経済関係を打破し,国際経済新秩序を確立する上で偉大な戦略的意義を持っている。

中国はまだ発展途上の国である。だが,我々は運命を共にしてきた第三世界の諸国に,一貫してできる限りの援助を与えてきた。貧しきを疎んじて,富めるものにへつらい,弱きをしいたげて,強きを恐れるという考え方や行為を,中国人民は一貫してさげすんできた。第三世界の諸国に対する我々の友情は,真心からのものである。互恵協力であれ,援助提供であれ,我々は相手側の主権を厳格に尊重し,いかなる条件も付けたことはなく,いかなる特権も要求したことはない。今後,我が国の経済建設の発展に伴って,我々は第三世界の諸国及び人民との友好協力を絶えず拡大していくであろう。

我々は第三世界の一部の国の間に不和が発生し,更には武力衝突が起こっているのを見て,憂慮に堪えない。こうした紛争はとかく双方に大きな損害をもたらし,ときにはまた覇権主義に漁夫の利を得させるものである。我々は従来第三世界の団結強化のために努力しており,紛争問題を抱えている第三世界の諸国が話合いを通じて意見の食違いを解消し,味方を悲しませ敵を喜ばせるような事態の発生を避けることを一貫して望んできた。

ここで,中国共産党と外国の共産党との関係について,特にふれておきたい。我が党はマルクス主義を基礎として,独立自主,完全平等,相互尊重,内部問題の相互不干渉という原則に基づき,各国の共産党や他の労働者階級の政党との関係を発展させる方針を堅持している。

ある国の革命が成功するには,その国自身の条件が成熟しなければならず,その国の共産党の路線と政策が広範な自国人民の支持を受けなければならない。各国の党の間では,もちろん,相互援助も必要ではあるが,外部からの強制と一手代行を絶対に許してはならない。自己の観点を他に押し付けたり,他国の党の内部問題に干渉したりすれば,他国の革命事業を挫折,失敗させるだけである。他国の党の政策を自国の党や自国の政策に無理やり奉仕させ,ひいては他国に対する武力干渉まで行うなら,国際共産主義運動を根本から破壊するだけである。

世界各国の共産党はすべて平等である。大きな党であれ小さな党であれ,歴史の長い党であれ歴史の短い党であれ,政権の座にある党であれ政権を握っていない党であれ,すべて上下貴賎の別があってはならない。我が党はかって,おやじ党を自任して我々を支配下に置こうとした者のため,苦い目に遇わされたことがある。周知のように,我々の独立自主の対外政策が勝利したのは,この支配をはねのけた結果に他ならない。

我々は,各国の党が互いに尊重し合うべきであるという立場を堅持している。各国の党にはすべて長所と短所がある。その上,それぞれの置かれている状況が異なるため,情勢と任務に対する各国の党の見方が完全に一致することは不可能である。こうした意見の相違は,友好的な話合いと,互いに時間をかけて待つことによって,逐次解決するほかはない。我々は,各国の党がみな他国の党から成功の経験と失敗の教訓を学びとることに賛成する。これは,国際共産主義運動の発展に役立つからである。

我が党は上述の原則に基づいて,世界の多くの共産党と友好的な結び付きを保っている。我々は,彼らが我々に与えてくれた支持と援助に心から感謝するとともに,我が国の革命と建設に有益な経験を彼らから真剣に学び取るであろう。我々はまた,より多くの進歩的な政党及び組織とこのような結び付きを打ち立てることを望んでいる。中国人民は,世界各国人民との友情を非常に重視し,各国人民との広範な結び付きを発展させている。要するに,世界各国人民が絶えず理解と協力を強めてこそ,世界の光明と進歩は根本的に保証されるのである。

我が国は10億の人口を擁する大国であるから,世界に対してかなり大きい貢献をすべきであり,人々が我々に期待を寄せるのも当然である。だが,我々がこれまでになし遂げたことは,我々のなすべきことに比べると,まだはるかに隔たりがある。我々は,更に努力して自身の建設に努め,世界平和の擁護,人類進歩の促進のために然るべき役割を果たさなければならない。

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