(2)第21回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)

(1982年5月11日,パリ)

1.経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会は,現下の経済問題を克服し,1980年代の相互依存的な世界経済を通じて,インフレなき経済成長の持続的回復及び雇用を確保する上で,加盟国間の協力を強化するため,5月10日,11日の両日開催された。閣僚は,1980年代の貿易問題に関する作業を検討し,あらゆる形の保護主義と闘うコミットメントを再確認し,この機構(OECD)の将来の作業に指針を与えた。閣僚は,再び進む経済成長は,広範に分かち合わなければならず,また,開発途上国との協力は,活発に推進されなければならないとの決意を表明した。

2.閣僚理事会は,ニュー・ジーランドのR・D・マルドゥーン首相兼蔵相の議長の下に開催された。副議長は,フィンランドのE・レコラ外国貿易相,フランスのJ・ドロール経済・大蔵相及びC.シェイソン対外関係相が務めた。

3.閣僚は,短期的には,OECD地域において,来年において雇用面での回復がありうることも含め,経済活動の緩かな拡大が見通されるが,右は,現在の高い失業の水準を早期に低下させるのには十分でないことに合意した。多くの国において,労働市場への大量の流入が継続することにより,失業が悪化しつつある。個々の加盟国内では持続的なインフレなき成長のための条件造りの面で進歩が見られるものの,その程度は国の問で異なっている。

4.インフレの低下は,実質需要及び生産の回復を促すことに役立つであろうが,高金利の継続,財政赤字及び市場の硬直的側面は制約要因である。閣僚は,今後数年間を通じて,より力強い成長及び失業の低下を確保することが必要であることを強調した。閣僚は,すべての加盟国がそれぞれの異なる政策上の行動の余地に従い,かつ,共通の戦略の枠組みの中で,国際的な相互依存関係及び制約に妥当な考慮を払いつつ,以下に述べられるラインに沿って国内問題の克服に成功するならば,このことは達成され得るものであることを確信した。

5.閣僚は,第2次石油ショック以来とり続けてきた広範な戦略を更に進めることに合意し,特に次の諸点を強調した。

―失業を削減する緊急な必要があるが,この目的はインフレを減ずるための継続した努力が成功しなければ持続的な形では達成し得ないこと。

―持続的なインフレなき成長は,一層の生産的投資,生産性の向上及び技術的進歩なしには達成し得ないこと。また,投資の増加は,充分な収益性と生産増加にとって良好な見通しとの双方を必要とすること。

―開放的貿易体制の維持,市場機能の改善及び積極的構造調整が基本的に重要であること。

6.閣僚は,この広範な戦略の範囲内で,各国が自国の経済の直面している成長への構造的及びその他の障害の異なる性質と深刻度に応じて経済政策を策定する必要があることに合意した。閣僚はさらに,緊密な経済的相互依存関係のためすべての国は国内政策の対外的影響に慎重な注意を払わなければならないことを強調した。インフレなき成長を確立するための各国間での統一のとれた中期的政策が必要である。

より良好なパフォーマンスヘの障害

7.閣僚は,より良好な経済パフォーマンスに対する主要な構造的及びその他の障害,並びにこれら障害を改めるための適切な政策の範囲について,それらの問題及び政策を継続して密接に検討する必要性を強調しつつ,討議した。閣僚は,かかる政策の実施に失敗すれば低成長が持続することになり,そのこと自体が経済パフォーマンスを損うことを認識した。また,その失敗は保護主義の危険をも増大させる。低成長は,単に生産的投資を不充分にするのみならず,失業による熟練度や労働意欲の低下といった人的コスト,あるいは若年失業者の労働経験の不足をもたらす。

インフレによる制約

8.閣僚は,幾つかの国が基調的インフレ率を低下させることに成功したが,インフレは引き続き深刻な問題であることに同意した。インフレあるいはインフレ期待が根強く定着している国では,引き続きインフレ抑制政策に極めて高い優先度が与えられねばならない。

労働コスト・企業収益及び雇用

9.多くの国において,労働コストの非弾力性及び企業収益性への圧迫が雇用を悪化させた。低収益性及び低い生産の度合は,投資を弱める働きをした。高い労働コストは,高失業の状況下においてさえ資本集約的投資を助長した。閣僚は,これら問題に対する政策の策定は困難ではあるが,必要な調整及び高失業の是正を早めるためにかかる政策を促進することには大きい価値があることに同意した。

10.幾つかの事例では,賃金決定が雇用確保とコスト削減重視の姿勢を反映したものとなっている。閣僚は,こうした革新的アプローチを歓迎した。閣僚は,団体交渉の過程において見られ始めている現実的姿勢の強まりが生産と雇用の回復を促進し維持するであろうことを強調した。かかる努力は,社会的パートナーの間の対話を強化することによって促進されるかも知れない。閣僚は,法令上の雇用コストを引き下げ,生産性を高め,かつ,労働組織における革新を助長するための効果的政策を策定する必要があることを強調した。この関連で,閣僚は1982年3月のOECD労働力・社会問題委員会閣僚レベル会合の議長であったオランダのJ.M.デンウィル氏の報告を歓迎した。

公共支出及び租税

11.閣僚は,多くの国において社会保障支出の増大が財政を圧迫し,租税負担増が余りに大き過ぎ,同時に公共投資が圧迫されていることに意見の一致を見た。財政の管理にかかわる,これら構造的問題については,望ましい総合的な財政赤字スタンスとは別に,引き続き直接的に取り組まねばならない。閣僚は,一般的に税制改正が行われる場合には,それは貯蓄,雇用及び投資を阻害するようなゆがみを取り除くものであるべきだとの見解をとった。

公的部門赤字

12.ほとんどの加盟国で,公的部門の赤字は現在歴史的な高水準にある。赤字削減は引き続き政策目標である。閣僚は,景気不振と現下の高金利が公的部門の赤字を増大させる要因であるが,ほとんどの国で構造的要因も重要であることに留意した。閣僚は,公的部門の赤字が構造的・中間的目標に比較して大きい国の場合,赤字削減は延期されるべきではないとの結論に達した。基調的インフレ率は相当低下しているが内需が依然弱い国の場合には,財政スタンスは,中期的目標を危険にさらすことなく,経済活動に及ぼすと思われる影響を十分考慮しつつ評価されるべきである。

高金利と国際緊張

13.従来の経験に反して金利はインフレとの比較において高い水準にとどまっており,そのため公的部門赤字に新たな要因を加え,また民間部門における需要の抑制をもたらしている。閣僚は現在の高金利について種々の要因を認め,特に大規模な財政赤字の影響及び財政金融政策の先行きの不確実性に留意した。金利の持続的な低下は,結局はインフレとインフレ期待の永続的な低下に依存している。閣僚は米国経済及びドルの世界経済における主要な役割の故に米国におけるインフレ対策の重要性及びその結果を認識した。多くの閣僚は,金利及び貯蓄フローへの圧力を緩和するために,今や将来の財政赤字を大幅に削減するための措置が更にとられるべきであると感じた。

14.閣僚は為替相場調整メカニズムがより円滑に機能することの重要性を確認した。

閣僚は,現在状況の下では,最近生じたような過度の為替相場の変動を減ずるための経済政策の調和に関し協力関係を改善することが必要であることに合意した。閣僚は,為替相場に影響を与える複雑な要因の一つとして,通貨の切下げとその好ましくない効果を回避する意図から生ずる高金利の国際的移転に留意した。閣僚は金利が下がり,貿易,資本移動及び投資の機会が増大すればOECD全体の経済パ

フォーマンスはこれにより均霑し,また,現下の国際貿易関係の緊張は緩和するであろうとの見解を示した。

変化しつつある石油情勢に対する政策

15.閣僚は,エネルギー節約及び石油からの転換の進展が,石油需要を引き続き減少させるために貢献していることを歓迎した。閣僚は気のゆるみがもたらす危険を認識し,より一層のエネルギー効率化及びより一層の均衡のとれたエネルギー・ミックスを達成する上での進展に向けての政策が引き続き必要なことに留意した。

16.閣僚は,石油の消費者価格が予想される長期的世界市場価格傾向を反映する必要がある点を含め,エネルギー価格設定に特別の注意が払われるべきことに意見の一致を見た。

積極的調整政策

17.過去のエネルギー価格の高騰に対する調整,新技術の影響,開発途上国の役割の増大といった世界経済に生じている主要な変化により,工業国における継続的構造変化が必要になっている。かかる変化は,現下の悪条件のもとにおいては,しばしば苦痛を伴うものであるが,世界経済における成長と互恵的貿易関係の維持のために不可欠である。

18.閣僚は,過去3年間この機構(OECD)において行われた構造変化を容易にするための政策に関する作業及び積極的調整政策に関する経済政策委員会特別グループの最終報告を歓迎した。閣僚は,本問題に付与した重要性を強調しつつ,本コミュニケ付属の声明を採択し,この機構(OECD)に対し,進行中の作業において積極的調整政策を引き続き考慮に入れることを指示した。

現在の貿易問題

19.閣僚は,1980年6月の貿易宣言に表明されるとおり,開放的多角的貿易体制に対する完全な約束を繰り返した。閣僚は,世界貿易の一層の拡大が世界的な雇用の増加,生産性の改善及び所得の増大に貢献することを充分に認識している。閣僚は,また,再開されるインフレなき成長が生産及び雇用を刺激し,それにより保護主義の圧力を和らげるであろうことに留意した。しかしながら,かかる成長の再開は,貿易制限及び同様の効果を有する国内政策措置の拡大によって妨げられることもあり得よう。

20.前述の宣言のフォローアップとして,閣僚は過去1年間の貿易政策分野における進展を振り返った。現下の経済的困難にもかかわらず国際貿易体制はかなり良く耐えてきた。しかしながら,閣僚は貿易関係環境に影響を及ぼす二国間の緊張及び紛争と共に,保護主義圧力及び貿易措置の更なる拡大並びにその多くは多角的規制及び規範によって統治されていないことに懸念の意をもって留意した。閣僚は,これらの傾向が国際貿易体制の将来に及ぼす危険性を認識した。

21.閣僚は,従って,保護主義の圧力に抵抗し,また,開放的で多角的な貿易体制の枠内で緊急の短期的諸問題を解決するため,一層の共同の努力が必要であることに合意した。閣僚は,この困難な時期に,同体制への信頼性を維持し,また,今後の10年間に取り組む必要のある長期的諸問題について,その貿易相手国とともに作業を行う決意である。

セーフ・ガード措置

22.閣僚は,国際規則及び規範の完全適用の必要性を強調した。また,閣僚は,ガットの枠内でセーフ・ガード問題の早期解決策を探る重要性についても合意した。

輸出金融

23.閣僚は,昨年末の輸出信用問題についての進展を歓迎した。しかしながら,閣僚は5月6~7日の会合において,アレンジメントの一層の改善について参加国が暫定的な決定に到達し得なかったことを遺憾とした。しかしながら,閣僚は,全体として,建設的妥協を目指した一連の措置を提案した議長のイニシアチブに留意した。閣僚は,アレンジメントに付与された重要性を強調し,かつ,この国際経済協力の手段を維持し,強化するために必要なすべての努力が行われるべきであることに合意した。

また,閣僚は,金融措置の利用における貿易と,援助面での歪曲の危険を避ける必要があることを認識した。

1980年代の貿易

24.閣僚は,前回の会合での要請に基づき,OECDによって行われた1980年代の貿易問題に関する集中的作業を歓迎した。同作業は閣僚による今後10年間の世界貿易体制における多くの有り得べき重要な傾向の確認と討議を可能にした。これは,世界経済に生じつつある重要な諸変化に対応して,貿易及び貿易関連の諸問題について,OECD及び他の場所における国際協力を強化するために貴重な刺激を提供するものである。

相互依存関係の増大と資本移動の重要性の増大

25.経済活動に占める貿易の比重の増大,金融的相互依存の急激な増大及び商業活動の国際化等の過去20年間の重要な特徴は継続すると思われる。閣僚は,このことは,各国経済がますます他の諸国の動向に強く影響されるようになることを意味することを認識する。

26.1980年代においては,国内マクロ経済政策によって強く影響される大規模資本移動及びより弾力的な為替相場によって特徴づける国際通貨体制の一層の進展があるであろう。閣僚は,貿易問題が為替相場の過度の変動を通じて生じるとすれば,これらの問題は経済政策整合に関するより良い協力を通じて最善の解決が得られることに留意した。このような観点及びパラ19に述べられた現下の貿易問題にかんがみ,閣僚は,事務総長に対し,マクロ経済政策と貿易政策との間の関係についてのOECDの既存の作業を強化する方法を検討するよう要請した。

27.相互依存関係の増大はまた,貿易政策のみならず,産業,労働社会,地域,農業及び漁業政策の諸分野における各国の諸措置が,貿易相手国の利害にますます大きな影響を与えるようになることを意味しよう。したがって,閣僚は以下につき合意した。

―加盟国が執った措置で,他の加盟国の貿易上の利害に重大な悪影響を及ぼすものに関し,この機構(OECD)の現行の協議制度を十分活用すること。

―事務総長が透明性を高め,合理的期間内に非常な市場諸力の作用を回復することを確保するため,特別な構造的困難に直面しているセクターの再編成に関するこの機構の作業効果を高める方法を提案することを要請すること。

―貿易及び貿易関連措置の費用と便益に関し,直接影響を受ける者のみならず,インフレ,雇用,所得及び成長の側面における社会全体のためにも,より良い情報が必要であること。

28.閣僚は,経済成長にとって国際投資フローの重要性が増しつつあることを認め,加盟国が参画している現行の取極を土台とし,投資関連問題に関する国際協力強化のため努力を払うべきことにつき合意した。この観点より,国際投資に影響を与え,貿易動向に影響を及ぼしうる措置に対し,投資国受入国両者の利害や関心事項を考慮することにより,バランスのとれた形で,特別の注意が払われるべきである。

29.閣僚は,貿易障害の削減及び企業活動の国際化の進行に伴い,一国における民間の制限的商慣行取極の,その貿易相手国の利害に悪影響を及ぼす可能性が高くなっていることを確認した。閣僚は,競争政策と貿易政策の境界部分で発生する問題に対処するための現行の国際取極の適用範囲について,この問題に対する国際協力を強化することを目指し,この機構(OECD)の適当な機関において,一層の検討を行うことに合意した。

新たな貿易相手国

30.新たな市場の急速な成長及び新たな競争相手の出現は,1980年代においても続くと予想される。1973年以前にはOECD諸国の輸出の伸びのうち非加盟国に向けられたものが占める割合は,4分の1に過ぎなかったが,1980年代にはおよそ半分になるであろう。閣僚は,これが世界経済の重要な動的要因となり,先進国と開発途上国との互恵的貿易関係にとって新しい機会をもたらすものであることを確信している。

急速な技術の変化

31.新技術の開発は世界経済を再活性化し,資本及び技術集約的な活動における先進諸国の比較優位を伸長するにおいて枢要な役割を果し得るものであり,また果すべきである。本分野における政府介入の度合は異なっている。閣僚は,高度技術製品貿易において生じるかもしれない特別の諸問題及び,それら諸問題が明かになった場合には可能な解決策につき,検討を行うことにつき合意した。閣僚はまた,経済成長及び雇用促進のため,国際的技術流通を容易にするための方途につき研究を行うことにつき合意した。

サービス

32.あらゆる種類のサービスの国際取引は急速に伸びており,現在では世界の財の貿易の約3分の1に達している。閣僚は,今後サービスが引き続き世界貿易のもう一つの重要な動的要因となることにつき意見の一致を見た。したがって,閣僚は本分野に包摂される複雑な諸問題に関する分析的及び事実調査の作業を可及的速かに進展せしめ,この作業の結果に照らし,サービス面の国際貿易における不当な障害を除去し,この分野における国際協力を改善する方策の検討を開始することができるよう権限を有する機関を奨励することを決定した。

農業

33.閣僚は,この機構(OECD)が作成した報告「農産物貿易の諸問題」を歓迎し,その結論を承認した。閣僚は,農産物貿易が一般的な経済状況並びに国際的な影響を必ずしも配慮しているとは限らない各国の国内的な農業政策とにより影響を受けていることを確認した。閣僚は,農産物貿易が,開放的で多角的な貿易体制により一層統合されるべきことにつき合意した。閣僚は,農業の持つ特殊性及び農業政策の追求する種々の目標を認めた。閣僚は,国内政策の望ましい調整は,各国間及び諸産品の間にバランスを保ちつつ保護を漸減し,貿易を自由化するための調和的な多国間アプローチによって計画され,調整される場合最も円滑に行われ得ることについて合意した。閣僚は,農産物貿易上の問題に関する協力の強化に関する進展への寄与及び実際的な多角的及びその他の解決方法を発展させることに対する寄与として,この機構(OECD)が上記の目的を達成するための可能な種々の方法を研究することを決定した。

ガット閣僚会議

34.閣僚はアーサー・ダンケル・ガット事務局長による11月のガット閣僚会議の準備に関する説明を聞いた。多角的貿易体制にとって同閣僚会議における建設的で前向きなすべての参加国の利益に適う決定の重要性を認識し,閣僚は同会議及び右準備に十分かつ建設的に参加するとの自国政府の決意を表明した。閣僚は同会議に関し討議された問題の関連性に留意した。

非加盟国との経済関係

開発途上国との経済関係

35.閣僚は,増大する相互依存関係及び多様性により特徴づけられる開発途上国との経済関係を概観した。閣僚は,現下の芳しくない世界経済環境が開発途上国に対して増大する債務問題を含む大きな圧力を生じさせていることに留意した。閣僚は,開発における最も重要な要因は開発途上国自身の努力や政策であるが,途上国の経済的社会的開発の促進を支援して,これら諸国と協力していくとの自国政府の継続的なコミットメントを強調した。閣僚は,開発に関する国際協力につき,二国間及び,多国間の機関の双方において見られた過去1年間の進展に留意するとともに一般的に更に作業が必要であることを認めた。閣僚は,経済的・社会的強靱性を強化するための開発途上国の努力を助けるため総合的で整合性のある形で援助,貿易,投資,金融の諸政策を実施することの重要性を強調した。

対話

36.閣僚は,昨年10月カンクンで開かれたサミットの共同議長サマリーに留意しつつ,相互に合意される基礎に立ち,意義ある進展が見込まれる状況の下で包括交渉(GN)を開始するとの全会一致の決定が得られることの緊急性を認識して国連において支持することが望ましいことを確認した。閣僚は,現在国連の中で検討されている包括交渉開始のための最近の提案に留意するとともに,包括交渉会議の中心的な役割に関する相互に満足すべき定義の基礎及び専門的機関の権限の尊重を含むコンセンサスに達するための精力的な努力の重要性について合意した。これらの努力を損うことなく,閣僚は,また,事態の新たな進展と前向きな結果を得るため,適切な多国間フォーラム及び二国間の双方において,開発途上国との特定の問題に関する交渉及び協力に加えて政策志向的な協議を進める決意を宣言した。この関連で,閣僚は,来るべきガット閣僚会議及びUNCTADIV に特に留意した。閣僚は,これらに対し積極的かつ建設的な参加をする意図を有している。

貿易及び投資に関する協力

37.開発途上国及び先進国の双方にとって,貿易は,インフレなき成長と同様に輸出所得,国際資本の利用,債務返済,借入れ能力の複雑な相互依存関係の中で中心的な役割を果たす。経済成長は特に,開発途上国にとって国際貿易の調和ある発展をもたらすことになることは明らかである。閣僚は,国際貿易及び投資における開発途上国の役割が増大していることに留意し々閣僚は,これら諸国が世界の市場経済へ漸進的に参加するための健全な基盤を用意するため,これら諸国が権利と責任を分担しつつ,開放的かつ多角的貿易体制により十分に参加することを容易ならしめることの重要性につき合意した。閣僚は,開発途上国に特に関連した国際経済問題の討議及び解決のための諸取極の改善の必要性を予見し々閣僚は,この過程が適切な国際的フォーラムにおいていかに促進されるかにつき,開発途上国と討議する用意がある。

援助

38.閣僚は,国際的な援助目標へのコミットメントを実現することを目標として,開発途上国に対する援助量を維持しかつ能う限りそれを増加することについてのそれぞれの政府の決意を表明した。閣僚は,援助の質及び効率性を高めるため,並びに開発途上国に対する他の資金の流れを容易にするための努力の重要性についても強調した。この関連で,閣僚は,多国間開発機関の果たす役割が枢要であることを強調した。そして,閣僚は,それら機関が継続的で実質的な資金量を有する必要性並びに多国間及び二国間の援助計画の一層の調整を奨励した。閣僚は,開発途上国の人的資源の開発に付与される重要性が増加していることを歓迎した。

39.閣僚は,現下の世界経済の状況により,一層悪化している開発途上国,なかんずく最も不利な立場にある国々の問題が差し迫った性質のものであることを強調した。閣僚は,特により貧困な諸国の開発のための努力及びその政策を助けるための援助の増加,及び適合性の改善が必要であることに合意した。閣僚は,1981年9月にパリで開かれた後発開発途上国国連会議の建設的成果を歓迎し,同会議の実質的な新活動計画の実施に向けて,協力する意志があることを表明した。

食糧

40.開発途上国の農業開発及び食糧生産のもつ高い優先度と緊急性は,今や普遍的に受け入れられている。閣僚は,この分野における国際協調や協力を強化するためになされている新しい努力,特に開発途上国の総合的食糧戦略の策定及び実施を助けるための先進国からの資金及び技術援助の増大及び調整改善のイニシアチブを歓迎し,奨励した。閣僚は,このために先進国及び開発途上国による持続的努力及び資金をコミットメントすることが必要であることを認識した。

一次産品

41.閣僚は,一次産品の分野における国際協力を推進するため努力を継続する決意を表明した。閣僚は,共通基金とその目的への支持を再確認し,できるだけ早く協定を実施し得るよう先進国,開発途上国双方が一層の努力を払うことを勧奨した。閣僚は,また,適当である場合には,個別の一次産品の特殊な性格に妥当な考慮を払いつつ,商品協定を締結するための一層の努力への支持を再確認した。

エネルギー

42.閣僚は,二国間及び多数国間による技術・資金援助の強化及びこれらの調整の改善により,エネルギー開発のはずみを維持することの重要性につき合意した。閣僚は,更に,この部門への追加的な公的及び民間資金を動員し,また,奨励するための適切なる方法を例えば世界銀行において見出すことの重要性を認識した。

43.閣僚は,開発途上国との協力改善のための建設的な基礎を確立したナイロビにおける国連新・再生エネルギー会議の行動計画の持続的かつ効果的実施の重要性につき合意した。

東西経済関係

44.閣僚は,東西経済関係に関するこの機構(OECD)の作業の異なる側面の価値を認め,これらの相互関係がさらにこの機構(OECD)で検討されるべきとの点で合意した。

 目次へ