第5節 諸外国との相互理解の増進
今日の国際社会は,年々相互依存関係を深めつつあり,情報化社会の進展とともに,世界はますます緊密な情報の網の目で結ばれつつある。
特に,我が国については,その国際社会における地位が近年目覚ましく向上したことに伴い,我が国自身が世界の動きについて十分な認識及び情報を有することが必要であるのみならず,我が国の実情・動向について諸外国に正しい情報,知識を与えることが極めて重要となっている。このため,我が国としては海外広報活動を通じて,諸外国に対し,我が国の国情及び政策について正確な情報を提供し,我が国に関する正しい認識及び理解が深まるよう努力を重ねている。
さらに,諸外国との関係を長期的,かつ,より安定した基盤の上に維持・発展させるためには,相互の文化交流の増進を図り,広く国民間の相互理解及び友好親善を深めることが肝要である。
かかる観点から,我が国は,これまで32か国に上る諸国との間に文化交流に関する協定及び取極を締結しており,82年度には,米国,中国,豪州,オランダ,及びフィンランドの5か国との間で文化交流に関する協議を実施した。また,外務省所管の特殊法人である国際交流基金を通じ,人物交流,日本語普及,及び日本研究振興事業,公演展示事業,図書寄贈・出版助成事業,視聴覚事業など各種の文化交流事業を実施した。同時に,開発途上国における文化,教育の振興に対する協力を重視し,文化無償協力を16か国に対し18件(82年度)実施した。さらに,カナダのブリティッシュ・コロンビア大学,米国のアスペン人文研究所に各々資金協力を行い,また,ユネスコの行っている遺跡保存のための国際的事業に協力した。
また,外務省は,我が国の外交に対する日本国民の幅広い理解と支持を得るために国民に常に正確な情報を提供し,国民が国際情勢及び我が国外交についての正しい認識と理解を深めるよう諸般の国内広報活動,報道機関への協力を行っている。
このように諸外国及び我が国民から,我が国外交についての幅広い理解と支持を得ることは,我が国外交を強力に推進するための基盤を一段と強固なものとするゆえんである。国際社会において,我が国に対する諸外国の期待が増大するとともに,我が国の動静に寄せる関心も大きくなることは必至の状況にある。このような状況の下にあって,広報文化事業は,我が国外交の不可欠な要素としてその重要性がますます高まっており,我が国としてもこの分野における各種事業の一層の拡充・強化を図っているところである。