(14) ポーランド国家評議会の戒厳令布告
(1981年12月13日,ワルシャワ)
1. 「ポ」人及び全国市民に告ぐ。
我が国は,決定的な危機に直面している。社会主義に敵対する反国家的,破壊主義的活動が,我が国を市民戦争にひきずりこもうとしている。無秩序,無法状態,混乱が経済を破壊し,国力を弱め,国家の主権と存在を危機に晒している。国会及び政府・行政機関の努力は水泡に帰し,愛国心への呼びかけ及び善意の立法措置がすべて無視されている。反社会主義勢力は,外国に鼓舞・支援され,我が国憲法の理念を破壊しようとしている。「連帯」は,意図的に,政府の危機克服の努力を妨げている。今や惨劇への道を止め,国家の破壊を喰い止める時であり,至高の価値の名のもとに決定的行動をとる時である。政府及び行政機関の決定,命令,諸法令に対する尊敬の念が回復され,その実施が直ちに保証されねばならない。
2. 至高の国民利益及び歴史的要請のもとで,国家評議会は,「ポ」憲法第33条第2項に基づき,1981年12月13日から全国に戒厳令を布告する。戒厳令による諸規制は,過渡的措置として已むを得ないものであるが,これは,国家解体を防ぎ,政治経済体制の改革を促進し,社会主義再生を望むすべての者に容認されよう。評議会は,1981年12月13日夜に設置され,議長はヤルゼルスキー大将である。評議会は,中央省庁,県,市町村の全権委任者,すなわち,1967年11月21日決定の「ポ」国防のための一般義務に関する法律第15条に基づく地方国防委員会人民委員を通して活動する。「ポ」国軍力及び全ての愛国主義的かつ進歩的な社会勢力の信頼と支持を得て,評議会は,国内治安と国家安全保障を断固確保する。評議会は,事態が平静に戻るまでの暫定機関であり,「ポ」国軍の上級将校により構成される。評議会は,国民の如何なる権利も侵害しない。その役割は,反国家的試みを打ち砕き,情勢の安定を図り,安定した法秩序のもとでの行政機関及び経済組織の円滑な活動を保障することをめざしている。
3. 評議会は,政治上及び国防上の同盟関係の維持,及び「ポ」政府より締結された国際的合意及び義務の履行を遵守する。そして,社会主義民主制の実現を支持し,経済改革実施を行なう。また,評議会は,適法な機関を通じて,投機,浪費,不正な私利行為と戦い,そして,怠慢,公正秩序の破壊及び労働放棄を根絶する。
4. 評議会は,国民に次のとおり訴える。
(1) 国家代表機関は,この異常事態のもとで,その活動が正常に機能し難いことを認めつつも,可能な限り事態を正常に戻すよう最善の努力をすること。
(2) 政治的及び社会的諸組織は,国内生活安定のため尽力すること。各機関の幹部は,そのメンバーに規定及び計画に従った活動をさせることについての責任を負うこと。
(3) 国家行政機関は,国家非常事態から生ずる諸課題の解決に専念すること。現在の最大の問題は,食料,医療品及び冬期対策関連物資の供給の確保である。戒厳令により,労働組合活動は停止させられるが,近いうちに労働者人民の利益のために労働組合が規約上の活動を再開できるようにする。
5. 評議会は,国家崩壊及び国家主権喪失の危機の排除をめざし,全市民の日常生活の改善をめざしている。「ポ」は,力強い生産的な労働を再開すべく市民の偉大な尽力を必要としている。このためには治安の維持が不可欠である。敵対行為と議論の時は過ぎた。社会及び国家は,もはや,破壊主義者,煽動者,冒険主義者の自由な活動を許さない。また,1980年夏の事態に国家を導いた者達,すなわち,公器を乱用した人々は,適正な機関で裁判にかけられるまで,自由を束縛される。社会主義国家の利益及び労働者人民に対する個人の罪は,これからは,厳重に,かつ,戒厳令に基づくあらゆる手段をもって罰せられよう。「ポ」国民にとって歴史的時期がきた。そして,それは,我が祖国を我が手で正常化し得る最後の機会であり,それを無駄にしてはならない。