(9) 第7回主要国首脳会議関連文書

(イ) 第1回全体会議における鈴木総理大臣の冒頭発言

(1981年7月20日,オタワ)

1. 序

最初に発言する機会を得て光栄であります。私の最近の旅行を通じて皆様の知己を幸いにして,うることができた。我々の文化的,歴史的な背景は必ずしも同じではないが,本日こうしてサミットに出席してみて,あらためて主要先進国首脳が一堂に会して共通の価値観,理念に対する信認及び多難な国際社会の政治的経済的諸問題についての我々の間の相互依存と連帯とを確認し合うことの重要性を実感をもってうけとめている。

2. 基本認識について

(1) 先ず,私の基本認識について申し述べたい。

西側全体がその平和と安定を確保するためには,単に東側への対応のみならず,第三世界への対応,西側社会自体の諸問題への対応のいずれについても長期的な観点を踏まえて,効果的な取り組みを総合的に行っていく必要がある。

即ち,第1に,ソ連の継続的軍備増強とそれを背景とした第三世界への進出に有効に対処しなければならないこと。

第2に,西側経済の再活性化をはじめ西側全体の総合力を高めるべきこと。

更に,第3として,南北問題の解決に貢献し,第三世界の経済・社会開発を通じてその政治的安定を促すべきことである。

こうした課題に対し,西側社会としては,政治・外交的対応,経済的対応,更には軍事面における対応など広範囲に亘る諸政策を適切かつ総合的に組合わせていかなければならない。

また,ここで重要なことは,我々先進自由主義諸国は,広く世界に対し,我々が共有する価値観,理念及び体制が他のいかなるそれにも勝るものであることを実証する必要がある。特に,東側への対応にあたっては,抑止力としての軍事的な均衡を確保することも重要であるが,同時に西側諸国の政治・経済・社会制度全体が,東側の制度にくらべてより効率的であり,国民の生活をより豊かにするものであることを証明していくことが必要である。その意味で,現在諸々の困難に陥っている我々の経済を再活性化し,経済全体の活力を高めることが何よりも重要である。このことが翻って開発途上国に対しても,我々との協調と協力がもたらしうる利益について認識を深めさせることになろう。

なお,今まで申し述べてきた西側社会の「総合的安全保障戦略」を効果的に行なうために重要なことは,第1に,国際情勢についての基本認識とそれに対する基本戦略について一致があり,

第2に,その基本戦略の下で各国が各々その国力と国情にふさわしい貢献を行なうことである。

かかる観点から,我が国の対応は,経済面・経済協力面,アジアをはじめとする第三世界における政治的・経済的役割を中心としたものになると考える。

(2) 第2に,今回のサミットにおいては和の精神を基調として対処することが肝要であろう。

古来,日本には「和を以て貴しと為す」伝統がある。和とは,即ち連帯と協調の精神を指すものであり,今回のサミットの基本課題は,世界の平和と繁栄を脅やかしている政治的,経済的な諸困難に対して,我々がいかにこの「和」の精神をもって対処しうるかである。

「和」とは,決して意見の完全な一致,相違点の不存在を意味するものではない。むしろ,多様性を大きく包容した上での総合である。この点欧州式の理論で言えば「相互依存と多様性」の概念に相当するともいえよう。

(3) 第3に,我々がオタワから広く世界に向けて発出すべきメッセージは「先進民主主義国の政治的連帯と協調の強化及び自由と創意に基づく経済活性化の実現,さらに,自由貿易体制の維持強化」であろう。

3. 次に,私は,我々がいま直面している経済上の諸問題について焦点を絞っていくつか申し上げたい。

(1) 第1に,経済困難への基本的対処についてであるが,まず,我々は今日の諸困難が石油危機の影響もさることながら,我々の経済の構造的要因によるところが大きいことを直視すべきである。

各国ともそれぞれ国内において,諸々の政策努力を払っておられるわけではあるが,まず生産的投資を促進し,先進技術の共同研究・開発を進め,経済的・社会的硬直性を除去して,我々の経済の活性化に一層真剣に取り組むべきである。

そして,このことが経済の成長を促し,雇用を拡大し,インフレを克服する上でいかに重要であるかを,国民に十分認識させなければならない。

(2) 第2に,ここで,日本経済について若干ふれたい。

(あ) (石油危機の克服)

見るべき資源をほとんど持たない日本にとって,2度にわたる石油危機は,極めて大きな試練であった。

しかし,国民,企業,政府がそれぞれ厳しい合理化,省エネルギー等の構造調整に努めたかいあって,その乗り切りに成功した。

この背景として,相互の信頼関係の上に築かれた良好な労使関係の存在といった要因も指摘できよう。

(い) (財政赤字)

しかしながら,日本においてはかっての機関車論等により高目の成長を目指したこともあり,多額の財政赤字といった後遺症を生じている。累積赤字は,日本人の赤ん坊も含めて,一人当り約3,000米ドルに達しており,私がこうして話をしている間にも1時間につき約250万ドルの割合で国債の利払いが行われる勘定になっている。

(う) (内需拡大)

このように我が国の経済とて決して楽なわけではないが,我が国は引き続き内需中心の成長パターンを追求することとしている。

(3) 第3に,貿易の問題について申し上げたい。

開放された多角的貿易体制を維持・強化することが世界経済の安定的発展にとって不可欠であると確信しており,この点については,皆様も同様の見解であると考える。われわれ7カ国首脳が一堂に会したこのサミットの場において自由貿易体制強化の必要性を謳いあげ,これを世界に対するメッセージとして出発することは極めて時宜に適つたことと考える。

従って,この会議においていささかでも貿易制限的な字句がコミュニケに挿入されることには強く反対する。若し輸入の急増によって国内産業に損害が生ずる場合には,正にガットに規定されるところに従って対処すべきものと考える。

自由貿易体制強化の新たなイニシアティブとしてガット閣僚会議の開催を強く支持するものであり,かかる機会及びその検討段階において,セーフガードの問題を含め,1980年代の貿易の課題をお互いに,検討すべきものと考える。

(更に踏み込んで言えば,我々が抱える経済上の諸困難は,マクロ経済政策及び構造調整政策の推進によってのみ解決が可能であると考える。わが国としては,諸外国の構造調整努力に応じて,それを促進するため投資や,技術分野での産業協力を促進する用意がある。)

なお,ここで市場の閉鎖性問題について一書触れておきたい。

我が国の産品の優秀性,競争力を率直に認める諸外国の人々の中にもいまだに日本の市場が閉鎖的であるとの神話があるが,我が国の市場の開放性は,他の国に比して決して遜色のないものである。しかしながら,今後お互いに一層の開放努力を続けていくことは必要であり,製品輸入の拡大等については積極的に協力して行く方針である。

貿易に関する最後の点として,(中進国)について一言付け加えたい。

日本の位置するアジアにはいわゆる中進国が多い。これらの諸国は開発途上国の優等生であって,今後,これら諸国を国際経済体制の中に組み込んで行くべきであるが,他方,かりそめにも彼等が努力し,成功したが故に却って他の開発途上国に比して不利に扱われるということになってはいけないと思う。

アジア諸国は,保護主義の動きを懸念し,自由貿易体制の堅持に強い関心を寄せており,このサミットの成果に期待している。

4. 次に,開発途上国との関係について述べたい。

近年南北間の相互依存関係は著しく進展している。これに対応して,開発途上国との関係を国際経済全体の発展及び世界の平和と安定の確保という全般的な観点からとらえることが益々重要になっている。わが国は,かかる見地から政府開発援助(ODA)を1978年から80年までの3カ年間に倍増し,未曾有の苦しい財政状況に拘らず更に81年以降中期目標(5年間で倍増以上)を新たに設け,その積極的拡充につとめている。援助の実施に際しては,開発途上国の国民一般の生活に裨益する人造り,農村・農業開発,食糧増産等の分野に一層力を入れていく考えである。

また,建設的な南北対話の継続も重要であろう。

アジア・太平洋諸国の指導者達も,これからの世界経済の展望との関連で先進諸国による南北問題への積極的な取り組みが緊急の課題であると認識している。第三世界の諸問題を無視すれば,これら地域へのソ連の影響力を増大させる結果となるというのが彼等の認識である。我々は,こうした意見にも留意しつつ,この問題を議論すべきものと考える。

5. また,この機会に核拡散防止と平和目的のための原子力国際協力に関するレーガン大統領の声明は極めて時宜を得たものとして全面的に支持したい。

日本としてもあらゆる機会をとらえて核不拡散条約に開発途上国を含め全ての国が加盟するよう勧奨していくとともに,核軍縮の実質的進展が速やかに実現されることを期待している。

() オタワ・サミット宣言(仮訳)

(1981年7月21日,オタワ)

1. 我々は,世界の経済進歩と平和に対する急激な変化と大きな挑戦の時期に会合した。我々の会合は,我々の共通の連帯の強さを強化した。経済問題が我々の共有するより広い政治目的を反映し,またそれに影響を及ぼすことを我々は自覚している。相互依存の世界において,我々は,我々共通の目的と我々の追求する政策が他国に与える影響を考慮に入れる必要性についての認識を再確認した。我々は,我々相互間,及び世界中の我々のパートナーとの間で,責任を分ち合うとの精神の下で,我々の問題に取組む共同の決意と能力に確信を持つ。

経済

2. 今回の会合で我々が取組んだ主要な挑戦は,我々の国民の必要に応え,世界の繁栄を強化するため,民主主義工業国の経済を再活性化する必要性であった。

3. ヴェニス・サミット以降我々の国の平均インフレ率は低下したが,その内4か国においてインフレ率は依然として2桁である。多くの国において失業率は急激に上昇し,依然として上昇しつつある。これからの1年にゆるやかな成長が見込まれるが,現在において失業が早期に緩和する徴候はほとんどない。1979~80年の石油価格上昇に基因する国際収支の大幅な赤字は,現在まで耐え難いほどの調整の負担を課すことなくファイナンスされてきたが,この赤字はしばらくの間続く可能性が強い。利子率は多くの国において記録的水準に達しており,もしかかる水準に長く維持されれば,生産的投資をおびやかすこととなろう。

4. インフレを低下させ失業を減少させる戦いが我々の最優先課題でなければならず,また,この互いに関連した問題は同時に取り組まれなければならない。雇用の持続的回復のもととなる投資の増大と持続的成長を確保するためには,我々は,インフレを引続き抑制していかなければならない。一連の政策手段をバランスのとれた形で用いることが必要である。我々は,国民に変化の必要性を一層理解するようはからなければならない。即ち,成長及び所得についての期待の変化,労使関係及び慣行の変化,産業の形態の変化,投資の方向及び規模の変化,エネルギー使用及び供給の変化である。

5. 我々は,ほとんどの国において公的借入れを緊急に削減する必要がある。状況が許す場合,或いは予算上の制約の内でそのような変更が可能な場合には,我々は,生産的投資及び技術革新に対する支援を増加する。我々は,また,経済における市場の役割を受け入れなければならない。我々は,変化を容易にするために必要な経過的措置が恒久的な保護措置ないし補助金となることを許してはならない。

6. 我々は,インフレ抑制にとり通貨供給量の伸びが低く,かつ安定的であることが緊要であると考える。金利はインフレ抑制を達成する上で一端を担うものであり,また,インフレの恐れが根強い場合には高水準にとどまるものと見られる。しかしながら,我々は,一国における金利の水準及び動きが,他の諸国の為替相場及び経済に影響を及ぼすことにより,これら諸国の安定化政策をより困難なものとし得ることを十分認識している。これらの理由により,我々のほとんどは,必要に応じ政府支出の制限を通じ財政赤字の抑制に依存する必要がある。また,金利及び為替相場の不安定な動きを最小限にすることも極めて望ましい。外国為替相場及び金融市場のより一層の安定は世界経済の健全な発展にとり重要である。

7. 資金の強い流れと大幅な国際収支赤字が見られる世界においては,国際銀行制度及び国際金融機関の財務上の健全さが十分に維持されることはすべての者の利益である。我々は,最近,国際通貨基金が必要とされる調整を助長する条件の下で国際収支赤字をファイナンスするに当っての役割を一層拡大したことを歓迎する。

8. 我々の長期的経済政策を策定するに当っては,地球の環境及び資源基盤を保全するよう配慮が払われなければならない。

開発途上国との関係

9. 我々は,開発途上国の安定,独立及び真の意味の非同盟を支持するとともに,相互依存の現実を認識して相互の利益,尊重及び恩恵の精神で開発途上国と協力するとのコミットメントを再確認する。

10. 開発途上国が成長し,繁栄をとげ,国際経済体制においてその能力と責任に応じた十分な役割を果たし,その体制に一層緊密に一体化することは,開発途上国のみならず,我々にとっても利益である。

11. 我々は,開発途上国との建設的かつ実質的な討議を期待し,カンクン・サミットが新たに我々の共通の問題を取り上げる早期の機会を提供するものと信ずる。

12. 我々は,適当ないかなる場においても開発途上国との協議及び協力のあらゆる方途を進んで探求する意向であることを再確認する。我々は,意義ある進展が見込まれる状況の下で包括交渉の双方にとり受け入れ可能なプロセスのための準備に参画する用意がある。

13. 大多数の中所得開発途上国の成長には力強いものがあるが,我々は,多くの開発途上国における深刻な経済問題及びその中でも特に貧困国が直面する厳しい貧困を深く認識している。我々は,開発途上国が,途上国自身の社会的価値と伝統の枠組みの中で,経済及び社会開発促進のために行う努力を引続き支援する用意がある。

かかる努力は,開発途上国が成功を収める上で決定的重要性を有している。

14. 我々は,政府開発援助を十分な水準に,また多くの場合においてその水準の上昇を,維持することをコミットしており,この重要性に対する国民の理解を高めるよう努める。我々は援助の主要部分を貧困国に向けるとともに,後発開発途上国国連会議に積極的に参加する。

15. 我々は,我々自身の経済を強化し,我々の市場への進出機会を拡大し,また,資本の流れに対する障害を除去することがより大きな量の所要の資金及び技術をもたらし,もって公的援助を補完するものである点を指摘する。民間資本の流れは,開発途上国自身が投資の保護と安全を保証する限り,更に促進される。

16. ソ連及びソ連諸国の貢献は貧弱であり,これらの国は,開発途上国の独立及び非同盟を尊重しつつ,より多くの開発援助を行い,また開発途上国の輸出のより多くの割合を引き受けるべきである。

17. 我々は,国際金融機関に対する強いコミットメントを維持し,また,これらの機関がその重要な責任を遂行するための資金を保持し,効果的に使用することを確保するよう努める。

18. 我々は,2回の石油ショックにともなう高いエネルギー輸入コストが非産油開発途上国にもたらした悪影響の結果生じている諸問題の解決に高い優先度を与える。

我々は,黒字石油輸出国が非産油開発途上国の開発,特にエネルギー分野の開発をファイナンスする価値ある努力を拡大するよう要請する。我々は,この目的のためにこれらの黒字石油輸出国と協力し,パートナーシップの精神のもとに,世界銀行で検討されているような,これらの諸国の資金拠出の重要性を十分考慮に入れた可能なメカニズムを探求する用意がある。

19. 我々は,開発途上諸国における食糧生産の一層の増大及び世界の食糧安全保障の強化の重要性,並びに開発途上国による健全な農業・食糧政策の遂行の必要性を認識する。我々は,これらの目的のために,より多くの資金を振向ける方法を検討する。我々は,イタリア政府がローマに所在する国連専門機関と緊密な協力の下に行う予定の最貧国を主たる対象とするこの分野における特別行動についての提案を欧州共同体の中で討議する意向であることに留意する。

20. 我々は,世界の人口増加のもつ意味あいにつき深く懸念している。多くの開発途上国が人間の価値と尊厳に配慮した方法で,この問題と取り組むため,また,技術及び経営能力を含め人造りを推進するため措置を講じている。我々は,これらの問題の重要性を認識し,これらの分野における国際的努力に一層の重要性を付与する。

貿易

21. 我々は,自由な貿易政策の維持及びガットに具現される開放された多角的貿易体制の効果的な運用に対する強いコミットメントを再確認する。

22. 我々は,世界経済の変化に対する構造的適応を伴うであろうことを認識しつつ,全ての貿易国の利益のため,相協力してこの貿易体制の強化を図っていく。

23. 我々は,多角的貿易交渉において合意された諸協定を実施するとともに,他の国,特に開発途上国に対し,相互に利益となるこれらの貿易協定への参加を招請する。

24. 保護主義的措置は,それが公然とした,または目立たない貿易制限の形であろうと,あるいは衰退産業を支えるための補助金の形であろうと,我々の経済の活力を損うのみならず,時の経過とともにインフレと失業をも悪化させるとの認識に立ち,我々は,引き続き保護主義圧力を排除していく。

25. 我々は,1982年中にガット締結国団が閣僚レベルの会議を開催するとのガット18カ国協議グループの提案及び貿易問題を検討する,OECD研究計画にみられるOECD諸国の提案に示された新たなイニシアティブを歓迎する。

26. 我々は,多角的貿易体制の円滑な機能において自らが果している役割を引き続き綿密にレヴューするが,それはガットに規定されるセーフガード措置がとられる余地を考慮しつつ,我々の市場を相互主義の精神のもとに最大限に開放することを確保するためである。

27. 我々は,公的輸出信用制度における補助金的要素を減少することに関し,本年末までに合意に達するための努力を支持する。

エネルギー

28. 我々は,たゆまぬ努力を続ければ,我々がヴェニスで設定した80年代におけるエネルギー目標は達成され,もってエネルギー経済の構造変化を通じて経済成長と石油消費とのリンクを断ち切ることが可能であると確信している。

29. 我々の国がエネルギーについて未だに脆弱であり,その供給は経済成長の回復にとり依然潜在的な制約条件となっていることを認識しつつ,我々は,全ての在来型及び新エネルギー源の開発及び利用を加速するとともに,エネルギー節約及び他の燃料による石油代替を引き続き促進する。

30. これらの目的のために,我々は,引き続き市場メカニズムに大幅に依存するが,これは必要に応じ政府の行動によって補完される。

31. 我々の短期的な石油市場の問題への対応能力は,特に十分な水準の備蓄を保有することにより,改善されるべきである。

32. 我々の国のほとんどにおいて新規の原子力発電施設の建設の進捗状況は,遅々としている。我々は,我々の各々の国において原子力エネルギーを国民一般が一層受け入れることとなるよう勧奨し安全性,健康,放射性廃棄物処理及び核不拡散に関する国民一般の懸念に対応する考えである。我々は,新型技術の開発特に使用済燃料の処理について一層の努力を払っていく。

33. 我々は,石炭の経済的生産,貿易及び利用がもつ潜在的能力を実現するための措置をとり,また,石炭利用の増大が環境を損わないことを確保するため万全を尽くす。

34. 我々は,また,我々が太陽熱,地熱及びバイオマス・エネルギーといった再生可能なエネルギー源を最大限に開発するようにする意向である。我々は,来るべき新・再生可能エネルギー国連会議において,現実的成果が得られるよう努める。

35. 我々は,世界経済の利益のために,石油輸出国との理解及び協力が改善されることを期待している。

東西経済関係

36. 我々は,また東西経済関係が我々の政治・安全保障上の利益に対して有する重要性をレヴューした。我々は,東西経済関係においては,政治・経済上の利益と危険との間に複雑なバランスが存在することを認識した。我々は,東西関係において,我々の経済政策が,今後とも我々の政治・安全保障上の目的と適合することを確保するため,協議及び必要に応じ,調整を行う必要があるとの結論に達した。

37. 我々は,ソ連との戦略物資及び関連技術の貿易規制に関する現行制度を改善するため協議することとする。

結論

38. 我々は,我々の民主主義・自由社会は,我々が直面する挑戦に十分対処し得るものであると確信している。我々は,一体となって,そして我々と行動する用意のある全ての国とともに,協力の和の精神に基づいて前進する。我々は,来年再び会合することに合意し,この会合をフランスにおいて開催するとのフランス共和国大統領の招請を受諾した。我々は,相互に緊密かつ継続的な協議と協力を維持する意向である。

 

() 政治問題に関する議長総括(仮訳)

(1981年7月20日,オタワ)

1. 我々は,国際問題に関する討議を通じ,我々全てが直面する主要問題についての見解の一致を確認した。我々は,連帯と協力と責任の精神をもつて共にこれらの問題と取り組む決意である。

2. 我々全員は,国際の安全と安定に対する脅威が引続いて存在していることを懸念をもって注視する。永続的平和は,国家及び個人の自由と尊厳の尊重の上にのみ構築されうる。我々は,すべての国の政府に対し,国際問題につき自制と責任を行使し,危機と緊張に乗ずることを慎しむよう訴える。

3. 我々は,中東において,引き続きアラブとイスラエル間の紛争に対する解決策が見出されなければならないと確信している。

我々全員は,現在同地域において起っている緊張の拡大と引き続く暴力行為を憂慮する。なかでも我々は,特にレバノンにおける破壊の規模及び双方の側において多数の市民の生命が奪われたことに深い苦しみを感じている。我々は,すべての国家及び当事者に対し自制すること,特に報復行為はエスカレーションしかもたらすことがないのでかかる行為を回避することを呼びかけるとともに,現在の同地域における緊迫した状況下においては一層の流血と戦乱をもたらしかねない行為を慎しむことを呼びかける。

4.我々は,この関連で,レバノン国民の悲劇的運命を特に憂慮している。我々は,レバノンに真の意味の民族的和解,国内治安及び近隣諸国との和平を達成することを可能とする現在進行中の諸努力を支持する。

5.東西関係において,我々は,ソ連の軍事力が引き続き増強されていることを深刻に懸念する。我々の懸念は,国際問題における自制と責任の行使に背馳するソ連の行動によって強められている。したがって,我々自身強力な防衛力を必要とする。

我々は,軍事力の均衡と政治的自制を確固として主張する。我々は,ソ連がそれを可能とする限りにおいて,対話と協力を行う用意がある。我々は,より低い軍備と歳出の水準において安全保障を損うことなく追求するため,均衡のとれた検証可能な軍備管理と軍縮の取極に向け作業を行うことの重要性を確信している。

6.我々は,マドリッドにおける欧州安全保障協力会議において,今,西側諸国が,提案されている欧州軍縮会議において交渉されるべき諸措置の対象地域を定義する目的で,更に新たな主要なイニシアチブを取ったことを歓迎する。

また,西側諸国が,自由を奪われた個人に対し新たな希望を与えるいくつかの人権規定を提案したことも同様に重要である。

我々は,ソ連がこれらのイニシアチブを受け入れることがマドリッド会議の均衡のとれた結論と欧州における緊張の大幅な軽減を可能にすると確信する。

7.アフガニスタンについては,我々は,昨年のヴェニス・サミットにおいて確固たる全員一致の立場を公けに表明したが,我々は,その状況が変っていないことに留意する。従って,我々は,圧倒的多数の諸国とともに,ソ連によるアフガニスタンの軍事占領を引き続き糾弾する。我々は,ソ連軍の完全撤退を達成し,また,解放戦争を闘っているアフガニスタン国民が自らの将来を決定する権利を回復するための国際的努力を支持する。我々は,かかる結果をもたらすための国際会議の召集を求める欧州理事会の建設的な提案を賛同の意をもって留意するとともに,ソ連が同提案を受入れるよう要請する。我々は,キャリントン英国外務大臣の,最近のモスクワ訪問及び同地においてEC10か国を代表して行った国際会議提案に関する討議についての報告を感謝する。

8.我々は,カンボディア国民が民族自決の権利を有することを確信し,カンボディア問題国際会議の宣言を歓迎し,これを支持する。

9.我々は,他の諸国及び地域機構とともに,地域的な安全を強め,主権国家の独立と尊厳に基づく平和を確保するため必要なことを行う決意である。すべての国民は,外部からの介入を恐れることなしに自らの進路を決定する自由をもつべきである。

この目的のため,我々は,引き続き紛争の平和的解決を促進し,また,その根底にある社会的,経済的諸問題に取り組む考えである。我々は,独立の尊重と真の意味の非同盟とが国際の平和と安全のために重要であるとの信念を再確認する。

10.我々は,ヴェニス・サミットにおいて採択された難民に関する声明を想起しつつ,難民の窮状が全世界的に増大していることについて深刻に懸念する。我々は,国際的な救済努力に対する我々の支持を再確認し,また,すべての国の政府に対し難民の大量流出につながりうる行為を慎しむよう求めた我々の呼びかけを再確認する。

 

() テロリズムに関する声明(仮訳)

(1981年7月20日,オタワ)

1. 7か国元首及び首相は,テロリスト集団に資金及び武器を供給することを通じ,国際テロリズムに対し積極的な支援が与えられていること,また,テロリストに対し聖域と訓練の提供が行われていること,並びに航空機ハイジャック,人質行為及び外交領事機関の職員及び公館に対する襲撃等の暴力行為やテロ行為が引続き発生していることを深く懸念し,このような国際法に対する重大な侵犯と強力に戦う決意を再確認する。基本的人権を無視したテロ行為にすべての国が脅かされていることを強調しつつ,7か国元首及び首相は,かかる行為を防止し,処罰する行動を国際社会において強化・拡充することを決意する。

2. 7か国元首及び首相は,国際民間航空の安全を脅かす最近のハイジャック事件を特段の懸念をもって注視している。7か国元首及び首相は,1978年のボン声明で明記された諸原則を想起し,再確認するとともに,特定の国が国際法上の義務に従った解決を行わなかった数件のハイジャック事件があることに留意する。7か国元首及び首相は,関係国政府に対し,その義務を早急に履行し,もって国際民間航空の安全に貢献するよう要請する。

3. 7か国元首及び首相は,本年3月のパキスタン国際航空の航空機ハイジャック事件において,事件発生中及びその後のハイジャック犯人を庇護したアフガニスタンのバブラック・カルマル政権の行動は,アフガニスタンが加盟国であるヘーグ条約上の国際的義務の明白な違反であったし,現在も違反しており,航空の安全に対する重大な脅威をなすものであると確信する。

よって,7か国元首及び首相は,アフガニスタンが直ちにその義務を履行する諸措置を講じない場合には,ボン声明の実施としてアフガニスタン向け及びアフガニスタン発のすべての航空機便の運航を停止することを提案する。更に,7か国元首及び首相は,航空の安全に関心を有するすべての国に対し,アフガニスタンにその義務を遵守するよう説得するための適当な行動をとることを要請する。

4. 7か国元首及び首相は,外交官人質問題に関するヴェニス声明を想起し,7か国のいずれかの政府の外交・領事機関の公館又は職員が襲撃された場合,引き続き協力することに同意する。7か国元首及び首相は,かかる事件発生の際には,7か国政府が直ちに適切な対応につき協議を行うことに合意する。更に,7か国元首及び首相は,ヴェニス声明において非難されているテロ行為の遂行を直接幇助し,かつ教唆するいかなる国に対しても即座に国際的な対応措置を執るべきことを決意する。テロリストの脅威及び活動に関する情報交換を行うこと,及びテロ行為に対処・反撃し,現行のテロ対策関連諸条約の一層効果的な実施を推進し,また,右諸条約へのより広範な遵守を確保するための協力措置を探究することが合意された。

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