(7) イスラエル機によるイラク原子炉爆撃に関する国連安全保障理事会決議487(仮訳)
(1981年6月19日,ニューヨーク)
安全保障理事会は,定保理文書S/Agenda/2,280の議題を考慮し,1981年6月8日付イラク外務大臣発電報(S・14,509)の内容に注目し,第2,280回から第2,288回を通ずる本件安保理での諸発言を聴取し,国際原子力機関(IAEA)事務総長が1981年6月9日IAEA理事会に対し行った本件に関する声明及び1981年6月19日第2,288回安保理に対し行った声明をテーク・ノートし,IAEA理事会が1981年6月12日採択した「イラク原子力研究センターに対する軍事攻撃とIAEAへの関連性」についての決議をさらにテーク・ノートし,イラクは1970年核不拡散条約(NPT)の発効時より同条約の加盟国になっており,イラクは同条約に従って同国の全ての原子力事業についてIAEA保障措置を受け入れ,またIAEAはこれらの保障措置が今日に至るまで満足に適用されてきたと証言しているとの事実に十分留意し,イスラエルはNPTを受けいれていないことにさらに注目し,6月7日のイラク原子力施設に対するイスラエルの計画的爆撃が惹き起こした国際の平和と安全への危険は,地域の情勢を爆発さ世全ての国の死活的利益に重大な結果を招来する可能性があることに深い関心を有し,国連憲章第2条4項にある「すべての加盟国は,その国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使を,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」ことを考慮し,
1. 国連憲章と国際の行動規範に明確に違反したイスラエルの軍事行動を強く非難する。
2. イスラエルに対し,将来,いかなるこの種の行為又は威嚇も慎しむよう要請する。
3. さらに,本攻撃は,NPTの基礎であるIAEA保障措置全体に対する重大な脅威であるとみなす。
4. イラク及び他の全ての国,特に開発途上国が,経済・産業発展のため現在及び将来の必要に従い,かつ国際的に受け入れられた核兵器の拡散防止目的に沿って平和目的のために技術,核開発計画を策定する固有の主権的権利を有することを全面的に承認する。
5. イスラエルに対し,その核施設をIAEAの保障措置下におくよう緊急に要請する。
6. イラクは,イスラエルがその責任を認めている破壊の被害に対し適切な救済を受ける権利を有するものとみなす。
7. 事務総長に対し,本決議の履行状況につき安保理へ定期的に報告を行うよう要請する。