(6) 第20回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)
(1981年6月17日,パリ)
1. 経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会は,1981年6月16日,17日の両日,ベルギーのジョゼ・デマレ副首相兼計画相及びウィリー・クラース副首相兼経済相の議長の下に開催された。討議は,加盟国の経済見通しと,経済政策,最近の貿易問題,エネルギー情勢及び開発途上国との関係に集中して行われた。
I 経済の見通しと政策
2. いくつかの勇気づけられる発展,特にOECD諸国の第2次石油ショックに対する調整の仕方等にもかかわらず,閣僚は,高い失業とその増大,経済活動が停滞しているにもかかわらず根強い高インフレ,インフレ期待と不確実性に悩む金融,為替市場,継続する世界的な調整問題に見られるように,OECD経済が特に困難かつ複雑な問題に直面している時期に参集していることを認識した。
3. 閣僚は,これらの問題が何年か前に遡る経済の動向や政策に根があることを認識した。2回の大規模な石油ショックを含む外部環境が大きな要因であった。また,顧みれば過去20年間に採られたいくつかの政策について,中期的なインフレ面及び構造面への影響についての不十分な注意も,現下の諸困難の一因となっていることは明らかである。さらに,閣僚は,これらの問題が進行するのに時間がかかったように,その解決も,また時間を要することに留意した。
4. しかしながら,閣僚は,過去1年間の動向を振り返ると,いくつかの勇気づけられる材料があったことに意見の一致を見た。1979~80年の石油危機の後に広く各国で講じられた妥協を排した引締め的な金融・財政政策は,石油価格の上昇が国内の基調的インフレ率を押し上げることを予防するのに役立った。第1次石油危機とは対照的に,長期的には投資の回復を損なうことになる深刻な収益圧縮ないし企業家コンフィデンスの減退は生じなかった。エネルギー需要,就中,輸入石油に対する需要は,高エネルギー価格への適応増大と精力的なエネルギー政策の結果,相当削減された。
5. 今後について見れば,インフレは更に多少鈍化することが期待される。米国では,最近の旺盛な成長はいく分の間は鈍化するものと思われる。日本では,着実な成長が持続し,来年にはその足取りを若干速めるものと期待される。その他のOECD加盟国特に欧州の多くは,需要及び経済活動の回復は本年後半ないし1982年初めになる可能性があるが,特に労働人口の急速な増加が予想されていることに鑑み,そのため既に高水準にある失業がさらに増大することを防止するには不十分となろう。
6. 最近の数か月に重要な為替変動が起こった。最近数か月間の欧州大陸通貨の大幅な下落と米ドルの上昇は,欧州における輸入価格を引き上げ,それによって国内需要を減退させるとともに,インフレ圧力を増大させ,近い将来における失業の見通しの悪化に寄与するであろう。自国通貨の一層の下落を食い止めようとする努力も一因となって,多くの諸国で金利が急騰し,これがまた回復を遅らせるであろう。
他方,自国通貨の下落の結果生ずるインフレ効果を抑制できさえすれば,欧州の競争力の改善を予想することができる。これはさらに本年後半のより強い回復と輸出及び雇用見通しの改善に寄与するであろう。
7. 閣僚は,改善された成長及び経済パフォーマンスを実現するまでの過渡期の長さについて討議した。特に,一部の欧州諸国においては,対外ポジションが改善しはじめれば,金融政策運営上の制約は徐々に弱まることもありうることが留意された。また,もし,石油価格の若干の緩和が一定期間持続すれば,若干の余裕がもたらされるかも知れない。米国におけるインフレ,インフレ期待及び金利の比較的速やかな下方調整は,他の諸国に対してより良好な経済パフォーマンスの実現への道を容易にしよう。逆に,欧州通貨に対して下方圧力を課するような他の要因が持続するか,ないしは米国の金利調整が遅れると,この過渡期の長期化をもたらすことになろう。これらは困難な問題であり,従って,その評価が分かれた。
8. さらに,より良好な長期的パフォーマンスを実現するまでの過渡期における危険に関しても評価が分かれた。一方では需要を浮揚させる時期を誤れば,インフレーション減少のためにこれまでになされた進歩を台なしにし,インフレ期待を一層深めることになり,その結果,成長のパフォーマンスを悪化させるリスクが強調された。他方では,強い需要が欠如する中で,高い失業の長期化,保護主義圧力の高まり,構造的歪みの拡大及び投資や生産性改善の低下という危険の増大を強調した。
政策スタンス
9. 閣僚は,経済政策の目標は国民の福祉向上にあることを強調した。現状においては,インフレの抑制及び失業の低下が最大の関心事でなければならない。閣僚は,インフレ及びインフレ期待を低下さぜることは,雇用の持続的拡大やより力強い持続的成長の基礎を再構築するうえで不可欠の条件であることを再確認した。長期的に失業を削減する上で最も効果的な政策は,生産的投資を再活性化し,市場の効率を高めることによってOECD諸国経済の全般的パフォーマンスを改善する政策である。これらの政策を,雇用の拡大の基礎を提供するような方法で履行するためあらゆる可能な措置を講ずべきである。
10. 閣僚は,これらの目標を達成するためには,各国間の相互依存関係とともに,循環面と構造面の諸問題にそれぞれ対応した行動,需要面と供給面及び短期と中期の間の正しいバランスを見出すことの必要性をも考慮して,利用可能な一連の政策手段を均衡のとれた形態で講ずることが,要請されていることを認識した。このため,閣僚は次のことに意見の一致をみた。
(i) 適切な一組の政策が追求されるべきであり,その組合せは各当該国の状況に一部依存している。すべての国における金融財政政策は,インフレに対し断固として妥協を排し続ける必要があり,さらにそれは中期的観点に立って,また,金融市場への圧力を避けるよう補完的に行われる必要がある。予算の構成とスタンスは,投資を妨げるよりも,むしろ推進することを着実に目指すべきである。
(ii) しかしながら,こうした政策の実施にあたっては,慎重な判断が必要である。
民間需要が強いところでは,金融政策の目標の達成を全面的に支援する財政政策スタンスは,特に重要である。インフレ脅威が高まり,公的部門の構造的赤字が持続的に高いところでは,かかる赤字を縮小するために,断固とした措置が必要とされる。失業が高く,しかも増加しているところでは,急激な財政赤字削減の試みは,仮にこれが弱い循環局面をさらに悪化させることになるとすれば自滅的となる慣れがある。
(iii) このように,相互に補完的な金融・財政政策は,また,インフレ期待の鎮静化に伴い持続的なより低い金利を可能ならしめるであろう。
(iv) 円滑な国際収支調整を実現するためには,為替レートが,各国間の基本的な経済諸要因を反映すべきである。しかし,政策の実施にあたっては,金利の乱高下や他の短期的諸要因により,為替相場の変動が勢いを得,ひいてはそれが輸入インフレと国内インフレとの間の悪循環を導くことがないような配慮が必要である。この目的のために,輸入された価格変化の国内インフレヘの転化を著しくするような慣習や取決めを是正する手段を見出すこともまた非常に重要である。
(v) 自由かつ開放的な貿易制度を維持し,かつ可能な場合にはその改善を図り,さらに技術革新を誘発するような環境作りを行うことは,インフレの度合がより少ないより活力のある経済環境を実現する上で不可欠である。1978年に閣僚により採択されたより積極的な調整政策への漸進的移行のための「一般方針」は,依然として有効であり,事実現下の状況においては,新たな緊急性を有している。
(vi) 各国の状況に応じ,物価および所得政策及び労使間の対話の改善を通して,より強いコンセンスを形成するためのその他の諸措置,拡充され,かつ改善された技術訓練計画インフレを伴わない労働時間の再配分,対象を絞った投資や雇用促進策,さらに労働生産性や市場弾力性を改善するための措置も,失業者の生産的な仕事への持続的な吸収への移行を加速するうえで,重要な役割をはたすことができる。
(vii) すべての国で,効果的な社会政策が必要である。しかしながら,同様に,ほとんどのOECD諸国が経済パフォーマンスの改善に努力している現時点においては,社会政策のある側面が,経済パフォーマンスに対して,あるいは,その政策自体の目的の効率的な達成に対して起こりうるいくつかの逆効果を理解し,それを少なくすることがますます必要となっている。
11. 閣僚は,マクロ経済政策の実施に際しての協調的なアプローチの重要性,及び一国の行動が他国に及ぼす影響を考慮することの重要性をくり返し強調した。彼らは,他にも増して開放的な貿易及び支払制度を維持する場合にこそ,こうした協調が最も重要であることを再度確認した。
II 貿易問題及び貿易政策
12. 閣僚は,経済情勢の悪化にもかかわらず,加盟国政府がその貿易政策の一般的な方向を1980年6月に採択された「貿易政策に関する宣言」の諸目的に沿って維持し得てきたことに留意した。閣僚は,深刻な経済困難の根強い継続及びそれに起因する保護主義圧力のため,加盟国政府は開放的かつ多角的な貿易体制の漸進的崩壊を避けるための一層かつ精力的な努力を払うことが必要である旨合意した。閣僚は,特に,合意された規則及び規範の対象ではない貿易措置や貿易を歪める補助金や習慣をとる場合に伴う危険性を強調した。
13. 閣僚は,貿易,産業,農業,漁業及びマクロ経済政策の相互関連について討議した。閣僚は,次の諸点につき合意した。
-マクロ経済政策は増大する保護主義圧力の危険を考慮すべきであり,他方,貿易,産業,農業及び漁業政策は,短期的考慮に基づく防御的行動が究極的には,自滅的であることを認識しつつ,遂行されるべきである。
-貿易制限措置は,各国間の生産性パフォーマンスの格差により生じる貿易問題を克服するものでなく,長い眼でみれば,貿易問題を悪化させるのみである。最善の解決策は,積極的調整に向かって,努力を継続することにある。もし,諸困難を回避するのであれば,実質所得が生産性の傾向の格差に応じて調整され,また,為替相場が競争力の変化に応じて調整されるべきことも同様に不可欠である。
-構造的困難をかかえているセクターに対する政府の介入は,合理的な期間内にこれらセクターにおける正常な市場諸力の作用の回復を容易にするため漸減されるべきであり,成長が再開されれば,その回復に役立つであろう。
14. 閣僚は,昨年採択された「貿易政策に関する宣言」の目標を再確認し,開放的な国際貿易体制を維持,改善するとの決意を新たにした。閣僚は,諸困難を軽減するために多角的な協力を強化する必要性及び貿易の流れが引き続き構造調整や他の一般的経済目標の達成のために効率的な役割を果たし続けることを確保する必要性について意見が一致した。各国政府は,いくつかの面でこれらの規則及び手続は改善と現下の要請への適応が求められていることを認めつつ,貿易分野における既存の国際的な機関や多角的な規則及び手続きを最大限活用する。さらに,閣僚は,すべての貿易相手国が,貿易措置の内容及び影響を評価できるよう,透明度を確保することが一般的に望ましい旨強調した。
15. より具体的に閣僚は,
(i) 多角的貿易交渉(MTN)におけるコミットメントを完全かつ効果的に実施するとの各国政府の決意を再確認し,これまでの自由化の過程で比重のより少なかった分野を含め,国際貿易の状態を改善,自由化する手段の探求を支援する行動の重要性について意見の一致をみた。従って,閣僚は,貿易分野において次の10年間にとりあげられるべき問題事項について熟考する必要性を認識した。この機構(OECD)は,これらの問題事項を検討するうえで重要な役割を果たすことになる。よって,閣僚は,事務総長に対し,閣僚による検討のために,適当な機関が,1982年5月1日までにこれらの問題事項に関する報告を行うことを目的として,事務総長が出来るだけ早くこの機構(OECD)内での検討計画の作成を開始するように要請した。
(ii) 今日までに合意が成立しえなかったことに遺憾の意を表明しつつ,閣僚は,輸出信用アレンジメントの改訂に関連する未解決な重要案件を緊急に妥結させる必要性を強調した。閣僚は,アレンジメントの参加国が年末までに相互に受諾可能な解決策に到達することを目的に,今後交渉を積極的に続けるように強く勧奨した。
このため,参加国は年末までに,決定に至るために必要とされるいかなるレベルにおいても会合を持つべきである。
(iii) 昨年の閣僚理事会の指示に基づき着手された農業貿易問題に関する研究の進捗報告に留意した。また,1982年の閣僚理事会でこの研究を討議することに合意した。
(iv) 加盟国の国内経済及び国際貿易においてサービスの果たす重要な役割に鑑み,この機構(OECD)内でサービス部門に対しより高い関心が払われてきたことを歓迎した。また,OECD条約に含まれ,かつ1980年6月4日の「貿易政策に関する宣言」に言及されている国際取引の自由化に関する原則及び目標が財の取引と同様にサービスの取引をも対象としていることを想起した。現在行われているサービス分野に関するOECDの活動が今後迅速に進展するよう希望を表明した。閣僚は,これらの活動の結果に照らして,問題であることが明らかになったものにつきその数を減らし又は問題自身を除去するための手段を調査し,また,この分野における国際協力を改善するための努力がなされるべきである旨意見の一致をみた。
III エネルギー政策
16. 閣僚は,エネルギーに関する種々のフォーラムで採られた行動をレヴューし,次の諸点につき意見の一致をみた。
-石油市場の情勢は,石油消費の低減と相対的に安定的な供給にもかかわらず,依然脆弱であること。
-石油備蓄水準及び供給撹乱に対処するための措置に十分な注意を要すること。
-石油依存からの脱却を達成し,それにより経済成長とエネルギー使用のリンクを絶つことを助けるために必要な構造変化はすでに始まっており,しかも一層の進展をみているが,しかしより一層合理的で経済的なエネルギー使用を奨励し,且つ石炭,多くの国における原子力及び新代替エネルギー源の利用を促進する措置,並びに適切な価格政策及び研究開発努力を含む一層の努力を通じてより良い成果を達成できること。
17. 閣僚は,現在の市場の緩和により気をゆるめることが危険であることを特に強調し,将来のあり得べき供給撹乱に対する脆弱性を減ずるために引き続き強力な努力を払う必要があり・また・エネルギーの合理的な使用及び供給の増加を奨励する必要があることを指摘した。
18. この関連で,閣僚は,6月15日開催された国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会の議長である豪州のJ.L.キャリッツ上院議員による同閣僚理事会に関する口頭報告に留意した。
IV 開発途上国との関係
19. 閣僚は,加盟諸国及び開発途上国の相互利益に沿って開発途上国のよりよい経済成長の達成及びこれらの諸国民の福祉の持続的改善に協力するとの加盟国政府の基本的コミットメントを継続する旨を強調した。増大する世界経済の相互依存にうまく適応すること,及び開発途上国がより一層の強靱性を持つことが世界の安定と平和にとって重要な要素である。開発は,第一義的には,途上国自身にかかっていることは勿論であるが,閣僚は,開発協力及び世界経済の効率的かつ互恵的な機能の促進の双方につき・加盟諸国及び,これをなしうる立場にあるその他の諸国が引き続き果たすべき役割を強調した。
20. 現下の世界経済情勢において,閣僚は,多くの開発途上国に影響を及ぼしている国際収支上の負担や他の経済上の問題を深刻に認識した。閣僚は,多くの工業国におけるスタグフレーションの問題及び国際収支不均衡を含む現在の世界経済の諸困難の解決には継続的な努力が必要であることを認識し,これら諸困難に緊急に取り組まねばならないことにつき意見が一致した。閣僚は,前掲の項において概説されている諸政策をOECD諸国政府が成功裡に実施することは,開発途上国の調整と開発努力を助長すると考える。閣僚は,途上国もそれぞれの国内経済政策について慎重に判断するものと留意した。
国際的な資金協力及び政府開発援助
21. 閣僚は,世界的な収支不均衡,特に開発途上国のそれに対するファイナンシングと調整についての国際通貨基金(IMF)の役割の拡大が国際的な協力の重要な成果であるとして歓迎した。閣僚は,開発のための多国間の機構に適当な資金を提供することの重要性を強調した。閣僚は,より貧しい開発途上国へのより緩和された条件による援助の不可欠な資金源である国際開発協会(IDA)が,その活動を再開することを可能ならしめるために必要な手続きを完了させる努力の緊急性を強調した。
22. 閣僚は,開発協力委員会(DAC)加盟国全体からの1980年における政府開発援助資金の流れは,1970年に比して,実質で40%増大したことに留意した。閣僚は,政府開発援助の一層の増大が開発途上国,特に,なかでも最も恵まれない国にとって重要であることに意見が一致した。閣僚は,各国政府が国際的な援助の目的に対するそれぞれのコミットメントに沿って,能力の及ぶ限り,国際的な開発援助努力の増大に寄与するとの決意を確認した。閣僚は,OPEC諸国からの援助を歓迎し,これらの諸国が国際的な援助努力への貢献を更に強化することにつき希望を表明した。閣僚は,コメコン諸国がより大きくかつより効率的に,開発援助に貢献すべきであることを考慮した。
23. 閣僚は,過去20年間に得た経験が援助の質の改善を招来したことに意見が一致した。援助は,開発途上国の生産能力,インフラストラクチャー及び人造りの面での進歩に大きく貢してきた。これに関連して,閣僚は,被援助国政府及び援助国政府の方が開発援助の一層の効果を助長する政策を執ることの重要性を強調した。
24. 閣僚は,援助の量と質の改善に関するOECD開発援助委員会の作業を支持し,短期及び長期の両分野において,緩和された条件による資金の流れの量及び質並びに効果的使用に影響を与える諸問題についての継続的な検討を進め,かつ拡大するために,タスク・フォースを設置するとの世界銀行-IMF開発委員会の原則的な決定に留意した。
25. 閣僚は,最も恵まれない開発途上国の問題とニーズの緊急性を強調した。閣僚は,これらの諸国の問題に特別の関心を払うことに意見が一致した。閣僚は,後発開発途上国国連会議がこれらのより貧しい諸国の開発を強化する国内的及び国際的行動に新しい刺激を提供する重要な機会であるとした。閣僚は,この目的を達成するための現実的な措置に向けて建設的な役割を果たすとの意向を宣言した。
貿易及び投資
26. 閣僚は,開発途上国に対し,状況によって相異なる,かつ,より好意的な取扱いが望ましいことを考慮し,これら諸国,特に,最も開発の遅れている諸国の特別かつ異なるニーズを念頭に置いて,開発途上国との貿易関係を強化するとの1980年の「貿易政策に関する宣言」に表明された決意を想起した。閣僚は,開発途上国にとっての輸出所得の決定的な重要性,及びこれらの諸国における高い成長が世界経済に及ぼす好ましい影響を認識した。
閣僚は,開発途上国との貿易の動態的な展開を阻害するような規制措置を回避する必要につき再確認した。閣僚は,すべての貿易相手国にとっての相互利益は,工業諸国による貿易自由化に加えて,自由化する立場にある開発途上国による漸進的な貿易自由化努力によって,また,より一般的には国際貿易体制への途上国の漸進的統合によって得られることを強調した。
27. 閣僚は,共通基金設立についての合意を歓迎した。閣僚は,一次産品の分野において国際協力を促進するために努力を続ける決意を表明した。閣僚は,また,生産国と消費国双方の利益のため,広範な需給上の問題及び一次産品の生産に対する投資についてのこの機構(OECD)の作業を歓迎した。
28. 閣僚は,国際的な民間資金の流れが開発において不可欠な役割を果たすことに意見が一致した。閣僚は,これらの資金の流れの円滑化のためのこの機構(0ECD)の努力の継続を支持した。閣僚は,技術・経営及び販売に関する専門知識という利点を伴うところの直接投資の重要かつ極めて効果的な役割に留意した。閣僚は,適切な投資環境の重要性を強調するとともに,国際投資,技術移転,及び制限的商慣行の分野における国連での活動が増大した,互恵的な投資に寄与するとの希望を表明した。
食糧生産及び食糧安全保障
29. 閣僚は,開発途上国における食糧生産及び食糧安全保障が大きな関心事であることに合意した。閣僚は,開発途上国の食糧生産を強化し,食糧配分及び栄養水準を向上させるための国内的努力と政策を支援するための,適切に計画された食糧援助を含む開発援助努力は優先分野であると考えた。
この関連で市場の安定性の改善及び食糧貿易の増進を目的とする政策も食糧の安全保障を達成するために不可欠である。
開発途上国のエネルギー・ニーズヘの対応
30. 閣僚は,開発途上国が,その石油輸入の必要量を満たすことの困難から,薪の一層の不足に至るまでのそれらの国々に特有なエネルギー問題に対処するのを手助けすることにより,世界のエネルギー供給を多様化し,もって重要な相互利益を実現する展望を強調した。閣僚は,在来型エネルギー資源の開発が開発途上国との協力の優先分野であることで意見が一致した。エネルギー生産のための融資と開発は民間機関及び政府機関双方にとって重要な課題である。この関連で,エネルギー分野において世界銀行の貸付け活動を拡張し,追加的なエネルギーのための貸付けが,最も適切に融資され,運用される方法を探求する必要がある。
閣僚は,新・再生可能エネルギー国連会議が,一層の国内的努力を増強し,地域強力及び国際協力を強化する基礎を提供する最初の機会であるとして,期待を表明した。
南北対話
31. 閣僚は,1980年のための国際開発戦略が採択されたことに満足の意を表明した。
閣僚は,この戦略の効果は,工業国及び開発途上国がこの戦略に定められた目標に到達するために払う努力にかかっていることを認識した。閣僚は,適切な国際場裡において,相互利益に立脚し,開発途上国の開発に貢献しつつ,世界経済における諸問題と開発問題につき開発途上国とともに引き続き討議することが不可欠である旨合意した。閣僚は,広範囲に及ぶ対話は,柔軟かつ現実的に行われ,参加国の共通の利益とともにこれら諸国の課題,ニーズや責任の多様性を考慮したものであれば,国際協力に積極的な貢献をなすべきであることに意見の一致をみた。閣僚は,適切な準備が行われた後に,国連包括交渉を開始するという1979年の国連におけるそれぞれの政府の合意を想起し,共通の利益がある広範囲の事柄について開発途上国との国際的協議及び協力を進める用意を確認した。