第4節 国際投資問題
1. わが国の投資概要
(1) 79年度のわが国の海外投資の状況を見ると,前年度に引続き企業活動が活発であったことや,78年秋ころまで続いた円高傾向により投資コストが圧縮されたことなどから,許可ベースで49億9,500万ドルとなり,過去最高を記録した78年度(45億9,800万ドル)を上回った。しかしながら,アジア,中近東地域の一部の国に対する投資が減少したため,対前年度比では3億9,700万ドル(8.6%)増と,78年度の対前年度比17億9,200万ドル(63.9%)増に比べ小幅にとどまった。
(2) 79年度の許可実績を業種別に見ると,製造業のシェアが33.9%と前年度(44.3%)に比べ低下したものの引続き第1位にあり,次いで鉱業が17.2%,商業が16.7%となっている。
製造業は,鉄・非鉄,機械,輸送機で増加したものの,化学,繊維,電機で大幅に減少したため,全体では対前年度比16.9%減の16億9,300万ドルとなった。これに対し,鉱業は資源開発関係を中心に153.6%増の8億5,700万ドルと3年度ぶりの増加となった。また,商業は前年度と同水準の8億3,400万ドルとなっている。
地域別に見ると,北米は対前年度比5.4%増の14億3,800万ドル(うち米国向けは同4.9%増の13億4,500万ドル),中南米はブラジルにおける合弁の製鉄所の建設が本格化したことなどから,同95.9%増の12億700万ドル,欧州は商業,金融保険業部門を中心に53.3%増の4億9,500万ドルとなったのに対し,アジアは対前年度比27.2%減の9億7,600万ドル,中近東は同73.6%減の1億3,000万ドルとなった。
(3) 79年度末現在の許可累計額は318億400万ドルとなっている。業種別に見ると,製造業108億6,700万ドル(シェア34.2%),鉱業65億600万ドル(同20.5%),商業46億1,200万ドル(同14.5%)などとなっている。地域別に見ると,アジア86億4,300万ドル(シェア27.2%),北米82億200万ドル(同25.8%),中南米55億8,000万ドル(同17.5%),欧州38億9,300万ドル(同12.2%),中近東21億100万ドル(同6.6%)大洋州20億7,800万ドル(同6.5%),アフリカ13億600万ドル(同41%)の順となっている。
また,わが国の主要投資先国を累計額で見ると,米国,インドネシア,ブラジルの順に多く,この3カ国で全体の44.1%を占めている。
(4) なお,80年度については,開発途上国を中心とする資源に対する恒久主権の主張や外資に対する規制強化,また世界経済の停滞など,投資環境が必ずしも明るくないこともあり,4月から12月までの許可実績(速報ベース)で前年同期比5.5%減の32億2,000万ドルとなっている。
2. OECDにおける討議
79年のOECD閣僚理事会において,76年に採択された「国際投資及び多国籍企業に関する宣言」の第1回目のレビューが行われたことを受けて,80年には,(1)多国籍企業のガイドライン,(2)内国民待遇,(3)国際投資政策,(4)会計基準の4分野で作業を行った。これら作業を進めるに当たり,OECDの民間諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC),及び労働組合諮問委員会(TUAC)との協議も行われた。
また,国際直接投資の最近の傾向についても検討したほか,国連及びその他の国際機関における多国籍企業と国際投資に関する動きについても話し合った。