第5節 諸外国との相互理解の増進
今日の国際社会は年々相互依存関係を強めつつあり,情報化社会の進展とともに,世界はますます緊密な情報の網の目で結ばれつつある。
特にわが国については,その国際社会における地位が最近目覚ましく向上したことに伴い,わが国自身が世界の動きについて十分な認識を有することの必要性に加えて,わが国の実情・動向について諸外国に正しい情報,知識を与えることが極めて重要となってきている。このため,わが国としては,海外広報活動を通じて,諸外国に対し正確な情報を提供し,わが国に関する正しい認識及び理解を深めるよう努力を重ねている。
更に,諸外国との関係を長期的,かつ,より安定した基盤の上に維持・確保するためには,相互の文化交流の増進を図り,国民間の相互理解及び友好親善を深めることが肝要である。
かかる観点から,政府は,これまで,28カ国に上る諸国との間に文化交流に関する取極を整備しており,80年には,これらのうち7カ国との間で文化交流に関する協議を開催する一方,主として国際交流基金(80年度予算額52億円)を通じ,対中近東スポーツ交流特別計画,対中国日本語教育特別計画など各種の文化交流事業を実施した。同時に,開発途上国における文化,教育の振興に対する協力を重視し,文化無償協力を24カ国に対し27件(80年度)実施したほか,ASEAN青年奨学金制度,日墨友好基金の設立に協力するなどこの分野での協力事業の拡充を図ってきた。
わが国外交は,国民の幅広い理解及び支援の下に推進されていかなければならない。わが国は,その存立を国際環境に依存し,その発展の基礎を諸外国との友好協力の促進に置いているので,絶えず国際情勢の推移及び諸外国の動向に関心を払っていく必要がある。外務省は,かかる観点から,日本国民に常に正確な情報を提供し,国際情勢及びわが国外交についての正しい認識と理解を深めるよう諸般の国内広報活動,報道機関への協力を行っている。
このように諸外国及びわが国民から,わが国外交についての幅広い理解及び支持を得ることは,わが国外交を強力に推進するための基盤の整備を意味するものである。国際社会において,わが国に対する諸外国の期待が増大するとともに,わが国の進路に寄せる関心も大きくなることは必至の状況にある。このような状況の下にあって,広報活動及び文化交流事業は,わが国外交の不可欠な要素としてその重要性はますます高まっており,この分野における各種事業の一層の拡充を図っているところである。