(11) イスラム諸国臨時外相会議決議(仮訳)
(1980年1月27~29日,イスラマバード)
決議第1:ソ連のアフガニスタン軍事介入とその影響に関する決議
1980年1月27日より29日まで,イスラマバードにおいて開催された第1回イスラム諸国臨時外相会議は,
イスラム諸国会議機構の原則及び目的並びにイスラム諸国人民の共通の目的及び運命を強調するイスラム諸国会議によつて採択された決議の規定に従い,
特にアフガニスタンが創始国の一員である非同盟運動の基本原則を想起し,
すべての国家,特にイスラム諸国の利益を害する緊張の危険な増大,敵対関係の激化並びに国家の国内問題への軍事介入及び干渉の増加に対して深い懸念を表明し,
ソ連のアフガニスタン占領は,この地域及び全世界の平和及び安全に対する重大な脅威であるとともに,アフガニスタンの独立を侵害し,アフガニスタン人民の自由を侵略し,また,あらゆる国際規範をはなはだしく侵害するものであることを確認し,
加盟国の政府と人民は,いかなる形態と種類の外国に対する占領及び拡張並びに勢力圏争いも拒否し,それにより人民の主権と国家の独立を強化するとの決意を表明し,ソ連のアフガニスタン軍事介入及びこの干渉がアフガニスタンのイスラム教徒が,自らの政治的将来を決定する権利を行使する意思に及ぼす影響を深刻に憂慮し,
アフガニスタンにおけるソ連軍隊の引き続く駐留,その既成事実化の画策及び軍隊のアフガニスタン人民に対する軍事行動が国際規範を侮辱し人権を露骨に侵害していることを考慮し,
超大国間の抗争に関し非同盟政策を追求し,また,超大国間の冷戦の悪影響からイスラム教徒を保護するというイスラム諸国の決意を再確認し,
ソ連の軍事占領によつて追われた老人,婦女子を含む数十万のアフガニスタン人民に避難所を提供した結果として,アフガニスタンの隣国,特にパキスタンが負つている巨額の財政的負担を十分に認識し,
1. ソ連のアフガニスタン人民に対する軍事侵略を強く非難し,それが国際法と国際規範,特に1980年1月14日の決議でこの侵略を非難している国連の憲章及びイスラム諸国会議機構憲章のはなはだしい違反であることを非難するとともに,遺憾とし,全世界の人民及び政府に対し,この侵略を無視することのできない人権侵害及び人民の自由の侵犯として徹底して非難するよう要請する。
2. アフガニスタン領土に駐留するすべてのソ連軍の即時・無条件撤退を要求し,ソ連兵の最後の一兵がアフガニスタン領土より出て行くまでの間,ソ連軍がアフガニスタン人民及びその戦う子孫達に対する抑圧と暴虐行為を慎しむよう再度訴え,すべての国家及び人民があらゆる可能な手段を通じてソ連軍の撤退を確保するよう強く要請する。
3. アフガニスタンのイスラム諸国会議機構での参加資格を停止する。
4. ソ連軍がアフガニスタンより完全に撤退するまでの間,加盟国にアフガニスタンの非合法政権に承認を与えず,また,外交関係を断絶するよう勧誘する。
5. 全加盟国に対し,アフガニスタンの現政権に供与しているあらゆる形態の援助を停止するよう要請する。
6. 全世界の国家及び人民に,アフガニスタン人民を支持し,また侵略により家を追われた難民に援助と支援を与えるよう要請する。
7. 全加盟国に対し,信念・国家の独立及び領土保全を守るため,また自らの運命を決定する権利を回復するために正義の闘争を行つているアフガニスタン人民との連帯を確認するよう勧告する。
8. アフガニスタンに隣接するイスラム諸国が,その安全と福利へのいかなる脅威に対しても完全なる連帯を有することを厳粛に宣言し,イスラム諸国会議加盟国に対し,主権,国家の独立及び領土保全を完全に守る努力をしているこれらの諸国に断固たる支持とすべての可能な協力を供与するよう要請する。
9. 事務局長に対し,加盟国,国際組織又は個人から寄付を受領し,関係国と協議の上,事務局長が設置する3加盟国よりなる委員会の推薦に基づき関係当局に分配する権限を与える。
10. 加盟国に対し,ソ連が国連総会及びイスラム諸国会議の呼びかけに従つて,アフガニスタンから直ちにすべての軍隊を引き揚げるまで,1980年にモスクワで開催されるオリンピック大会への不参加を適当な機関を通じて考慮するよう要請する。
11. イスラム諸国会議機構の事務局長にこれらの決議の実施状況を監視し,第11回イスラム諸国外相会議に報告するよう委任する。
決議第2:イスラム諸国に対する外国の圧力に関する決議
1980年1月27日より29日まで,イスラマバードにおいて開催された第1回イスラム諸国臨時外相会議は,イスラム諸国会議機構憲章の原則に鼓舞され,また以下の必要性を強調する非同盟及
び国際連合憲章の原則に従い,すなわち世界平和を達成し,各自の国民及び世界のすべての国民に対し,安全,自由及び正義を確保するための協調的な努力,
あらゆる形態の帝国主義,植民地主義,新植民地主義,拡張主義,シオニズムを含む人種差別主義及びアパルトヘイト,搾取,武力行使並びにあらゆる形態及び表現の外国占領,支配及び覇権に対する闘争,
ブロック政策の拒否,
正義に基礎をおく国際の平和及び安全を強化するために必要な措置の実施,尊厳,独立及び国家の権利を守るためのすべてのイスラム人民の闘争への支持・すべての国の主権及び領土保全への尊重並びに他国の国内問題に対する政治的,軍事的,経済的又は文化的な不干渉,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対しても武力を行使せず,脅迫又は侵略の手段を用いないこと,独立を達成し,完全な主権を守るための協力及び連帯,すべての人民の法益の保護,イスラム教の精神的,倫理的,社会的及び経済的価値の維持への熱意。
イスラム諸国を結合する共通の運命並びに自由,正義及び発展のための共通の闘争目的に対する約束を表明し,かつ伝統的に帝国主義政策で知られた国からであろうと,それに追従する他の国からであろうと,よつて来る所の如何を問わず植民地主義,外国の干渉及び占領に対して闘うよう主張し,超大国が,イスラム諸国に対し,各種の形態の圧力を行使し,武力行使の威嚇を行い,国内問題に干渉し並びに超大国間で激化する闘争と関連する超大国の利益及び戦略計画を守るためにイスラム諸国の領土内に軍事基地を建設していることに対し,深刻な懸念を表明し,ソ連のアフガニスタンヘの軍事介入によつて生じた新情勢をイスラム世界,特にアフガニスタン近隣諸国へ帝国主義的介入を再導入するために利用しようとする西側諸国の画策に注意を喚起し,あらゆる種類の圧力を強く非難するとともに,これらの国々に世界の平和及び安全に対する脅威となる悲惨な結末を警告する。
加盟国に対し,超大国の計画と戦略に巻き込まれる危険及び自らの地域が彼らの抗争のための場となることについての危険を警告する。
すべてのイスラム諸国に対し,努力を結集し,運命を脅かす危険に対し揺ぎない態度を保つように勧誘し,更に第三世界の諸国全体を脅かす危険に立ち向うために,これらの諸国全体と協力することを勧誘する。
決議第3:米国のイランに対する外部圧力に関する決議
1980年1月27日より29日まで,イスラマバードにおいて開催された第1回イスラム諸国臨時外相会議は,すべての国はその国際関係において,いかなる国の主権,領土保全及び政治的独立に対しても,武力による威嚇又は武力の行使を慣しむという厳粛な義務を想起し,また,国家の国内問題に対する不干渉及び不介入の原則を含む国際連合憲章の原則及び目的並びに平和共存原則を想起し,
すべての国が,天然及びその他の資源並びに経済的資産及び活動に対し,恒久,完全,実効的な主権を行使する権利を再確認し,イランと米国間の増大する緊張と,兄弟国イランに対する制裁措置による威嚇を深く憂慮し,国際連合憲章が国家間の紛争を解決するための武力の行使を禁じていることを想起し,また・自らの尊厳,独立及び国家の権利を守るためのすべてのイスラム人民の闘争を強化するとの決意を含むイスラム諸国会議憲章に宣言されている目的を想起し,
1. イランの主権,領土保全及び政治的独立について,イスラム諸国会議が重大な利害関係をもつことを確認する。
2. イランと米国が,平和的手段によつて未解決の問題を解決するように衷心からの希望を表明する。
3. 同時に,イラン又は他のいかなるイスラム諸国に対するいかなる武力による威嚇又は武力の行使,脅迫,干渉又は経済的制裁の行使にも断固反対することを宣言する。
4. 更に,イランのイスラム教徒が,社会政治生活の制度として,イスラム教の教義に基づいたいかなる制度を選択しようとも,彼らとの連帯を宣言する。
5. 事務局長にこの決議の実施状況を監視するよう要請する。
決議第4:パレスチナ問題とジェルサレムに関する決議
1980年1月27日より29日まで,イスラマバードにおいて第1回臨時会議として開催されたイスラム諸国外相会議は,
イスラム諸国会議機構がジェルサレムのアクサーモスク燃失後の1969年にラバトで開催された第1回イスラム諸国首脳会議の後に創設されたことを想起し,
本機構がパレスチナ問題及びジェルサレム市に継続的でかつ少なからぬ重要性を置いていることを留意し,
ラホール首脳会議とジェッダ,イスタンブール,トリポリ及びダガールイスラム諸国外相会議の原則と決議に反して米国の監督と指導の下にエジプト大統領が占領されたジェルサレムを訪れ,ジェルサレムのアラブの立場を無視し,またパレスチナ人民の不可譲の国民的権利の犠牲の下において,キャンプ・デービッド協定とシオニスト達との平和条約に署名したことに伴い,エジプトの参加資格を,イスラム諸国会議機構及びすべての機構及び機関において停止するという5月8日から12日にフェズ市で開催されたイスラム諸国外相会議において採択された決議を想起し,
シオニスト達が,占領したアラブの領土を保持し続け,ここにシオニストの植民地を設立しようとする目論見を続け,ジェルサレムをシオニストのいわゆる「永遠の都」とみなし続けているにもかかわらず,エジプト政府は,彼らとの外交関係を樹立し,大使を交換することを決定し,これによつて,エジプト政府が,この決議とその基礎となつている前提を無視し,アラブ及びイスラム世界の心情を無視し続けていること,また,エジプト政府がシオニストさん奪者と協力を続けることによつてパレスチナ人民の権利を侵害し続けていることを考慮し,
第10回イスラム諸国外相会議(パレスチナ及びジェルサレムに関する会議)がその最終コミュニケにおいて西暦1980年をジェルサレムの年とすると決議したことを想起し,本会議は加盟国に対し,すべての分野及びすべての水準において,政治的,経済的及び文化的ボイコットを,イスラエル国家に代表されるシオニスト人種差別主義者に対する他の形態の協力のボイコットとともに完全に遵守するよう要請していることを考慮し,
エジプトがパレスチナ問題とパレスチナ人民の権利についてのイスラム諸国会議,非同盟運動及び国際連合機構のすべての決議に挑戦し,これを侵害するイスラエルと政治的,経済的,文化的,技術的及びその他の形態の関係を確立する政策に着手していること並びにイスラエルが拡張主義,帝国主義及び人種差別政策を追求するとともに,パレスチナのさん奪と国際社会の意思を無視し続けることをエジプトが援助,奨励していることを考慮し,
1. シオニスト人種差別主義者達と関係を樹立したエジプト政府の政策を非難し,エジプト,イスラエル及び米国間の共謀及び協力を非難する。
これは,あらゆる分野においてパレスチナ人民の権利へのはなはだしい侵害であり,また,アラブ・イスラム諸国の安全及び独立に対する脅威である。
2. すべてのイスラム諸国に対し,共同してエジプト政権を政治的,経済的及び文化的にボイコットし,アラブ連盟のボイコット規則を遵守し,また,この点についてアラブ諸国と協調して努力するよう要請する。
3. すべてのイスラム諸国に対し,シオニスト達に対する闘争において,パレスチナ人民の唯一の合法的代表であるPLOと連帯することを再確認し,また,パレスチナ人民のさん奪された故郷の地に独立国家を建設する権利を含む不可譲の国民的権利を確保することを要請する。
4. イスラエルが南レバノンに対して準備している侵略を非難し,加盟国に対し,これらの侵略を終らせるためにレバノン政府を援助するために努力するよう要請する。
5. イスラム諸国に対し,ジェルサレム及びその他のすべての占領された地域の解放のために,アラブ諸国との連帯を特に再確認することを勧誘する。
決議第5:アフリカの角における外国の軍事介入に関する決議
1980年1月27日より29日まで,イスラマバードにおいて第1回臨時会議として開催されたイスラム諸国外相会議は,イスラム諸国会議憲章第2条及び国際連合憲章第1条を想起し,いかなる外国の脅迫に対しても,イスラム教徒はこの機構の加盟国を支援するというイスラムの教義を確認し,ソマリアの独立及びその平和及び安全に対する直接の脅威となつているソ連及びその幾つかの同盟国の軍隊のアフリカの角駐留が確認されていることに鑑み,イスラム諸国会議の加盟国であるソマリアに対する度重なる侵略に鑑み,以下のごとく決定した。
1. ソマリアに対する軍事侵略を非難し,アフリカの角におけるソ連及びその幾つかの同盟国の軍隊の駐留を非難すること。
2. これら外国軍隊の完全,無条件撤退を要求すること。
3. アフリカの角及び紅海における外国基地を撤去し,これらの地域より大国間抗争を除去すること。
4. アフリカの角地域のイスラム人民を物質的,財政的に強化し,エリトリア人民を含む武力占領によつて国を追われた難民に対し,援助を供与すること。
5. 事務局長に対し,第11回イスラム外相会議に,本件についての詳細な報告を準備し提出するよう要求する。