(8) 第4回IEA閣僚理事会コミュニケ(仮訳)
(1979年12月10日,パリ)
国際エネルギー機関(IEA)閣僚レベル理事会は,1979年12月10日パリにおいてオットー・グラフ・ラムスドルフ西独経済相の議長の下で開催された。
1. 閣僚は,1979年における世界石油市場の波乱に富んだ動向と,健全な世界経済を深刻に脅やかすような石油供給をめぐる継続的な不確実性について懸念をもつて留意した。IEA諸国としては,一層の価格の高騰を防止するため,世界石油市場における秩序を回復し,同市場に対する圧力を軽減すべく貢献する決意である。同諸国の行動は,現下の情況を狙いとするのみならず,石油の欠乏に対応する世界経済への中長期的な移行を加速し,かつ,円滑化するためでもある。閣僚は,完全な団結の精神をもつて,供給のいかなる不足をも克服する決意を表明した。
閣僚は,開発途上国が十分なエネルギー資源を合理的な価格で入手しなければ,開発政策が危くされるかも知れないとの事実に対する懸念と認識を強調し,開発途上国がそのエネルギー需要を満たすのを助けるため,エネルギー面の具体的な行動が必要であることを強調した。
閣僚は,さらに,世界石油市場及び世界経済における情況の安定化に寄与するような政策を産油国側として追求することの重要性を認識した。閣僚は,それらの諸国が,このような配慮によつて影響されることを確信している。世界の深刻なエネルギー問題の解決は,先進または開発途上を問わず,産油国と消費国による共通のアプローチを必要としている。IEA諸国としては,これらの問題について産油国と討議する一層の機会を歓迎するものである。
2. 閣僚は,国内石油価格を世界市場価格の水準に維持すること,あるいは出来る限り速やかに国内石油価格をこの水準に引き上げることの重要性につき合意し,短期的な節約措置をエネルギー効果の恒久的かつ長期的な向上に変形させ,また代替エネルギー源の開発を早めるため,各IEA諸国において行動がとられるべきである旨合意した。即ち,具体的には,天然ガスによる速やかな中期的石油代替,石炭の世界的生産及びその利用の大幅拡大,憲法及び法律上の規定に十分な考慮を払いつつ,可能な範囲で原子力の着実な拡大,及び長期的な新エネルギー技術の追求。
採られた措置の効果は,需要と入手可能な供給との間の受け入れ可能なバランスを達成し,かつ,輸入石油への依存度を軽減するとのIEA諸国の必要性を満たすために相当な貢献をする上で十分なものでなければならない。
3. 閣僚は,1980年において,世界市場での石油への需要を抑制するため,それぞれの国が真剣かつ効果的なエネルギー政策上の行動をとることを保証する旨約した。
4. 全てのIEA諸国は,以下の通り1980年における同諸国の石油輸入を制限し,1985年における石油輸入についての目標を追求することを確約した。
5.閣僚は,短期・中期及び長期のエネルギー政策及びエネルギー情勢の動向についてのモニタリングの手続に関し合意した。
―理事会は,モニタリングの手続を開始するために,また石油の需給動向に基づき必要となる範囲内で1980年の石油輸入シーリングの調整を行うことを含めて,状況のあらゆる側面と本日委任された作業の結果をレビューするために,1980年の第1四半期内に再度閣僚レベルで会合する。
―その後,IEA理事会は,各国の1980年シーリング及び1985年目標を実現するために達成された成果を四半期毎にレビューし,各国が現在執つている特定の措置が妥当であつて有効に実施されているか否か,及び追加的措置が必要か否かにつき決定する。
―IEA理事会は,石油供給の動向並びに1980年のシーリングと1985年目標が右動向の観点から適切なものであるかについて四半期毎にレビューする。
―輸入制限内におさめることについての各国のパーフォーマンスが満足すべきものでない場合及び供給情勢において主要な変化があつた場合には,閣僚は,いかなる矯正行動が必要かを検討するため,速やかに会合する。
6.事務レベル理事会は今後生じ得る需給状況の悪化に対応するため,1980年及び85年の石油輸入目標を考慮しつつ,公平な負担配分を促進するとともに,(イ)各国のIEA「エネルギー政策の原則」に沿つた継続的なパーフォーマンス,(ロ)経済成長及び全般的な経済構造,(ハ)開発の必要性並びに(ニ)消費水準,エネルギー価格とこれらの変動を含むエネルギー経済の構造,(ホ)節約,燃料転換及び国内生産の機会及び達成を考慮に入れた国別石油輸入シーリング及び目標を調整するためのシステムを含む計画を開発する。
7.IEA諸国は,自国の石油輸入を自国の石油輸入シーリング及び目標内におさめることを確保するために,自国の責任の範囲内で必要なあらゆる措置をとる。
8・閣僚は,1985年のIEA諸国のグループとしての石油輸入についてのグループ目標を,バンカーを除き,26百万バーレル/日とする先のグループ目標と比較し,バンカーを除き24.6百万バーレル/日に引下げることにつき合意した。各国はこの修正された1985年のグループ目標が達成されることを確保するよう各国のエネルギー計画を調整する。
9.閣僚は,備蓄動向が市場条件を決定する重要な要素であるので,IEA加盟国が備蓄レベルに対する影響力を増大すべきであることにつき合意した。第一段階として,閣僚は,理事会に対し海上備蓄,保税地域の備蓄及び消費者備蓄に関する情報を加えた備蓄動向に関する情報システムの改善を早急に検討するよう指示した。
10.閣僚は,次の手続により,変化しつつある石油市場構造の理解と対処能力を改善することが必要であることに合意した。即ち,その手段とは,IEAに石油フローを直接報告する石油企業のリストを拡大すること,原油取引の新しい国際登録を拡大して石油製品を含むようにすること,国家間取引に関してさらに情報を収集すること及び,政府関連企業及び民間企業の双方が,スポット市場における不必要な購入を行うことを効果的に抑制することである。
11.閣僚は,さらに事務レベル理事会が以下を行うべきことにつき合意した。
―備蓄政策に関するIEA内の政府間並びに政府と石油会社の間の協議システムを開発するよう努めるとともに,90日緊急備蓄水準につき検討し,更に効果的かつ弾力的な備蓄政策についての他の提案を探究すること。
―IEA諸国の政府,民間企業及び個人がスポット市場活動に対して,より調整のとれたアプローチをとることになるような追加的措置を検討すること,そしてそれには変化する市場構造における参加者を見極めるため,IEA諸国への,又はIEA諸国からの石油取引を行つている主体を登録するシステムを開発すること,市場参加者に期待される行動の基本的な基準として「行動規範」を開発すること,及び石油市場が加熱した取引状況において,かかる市場を「冷却する」ための手段及び手続を用意することが含まれる。