第5節 海 外 移 住
1. 移住の概況
戦後のわが国の移住者数は,約23万人であるが,内外情勢の変化のため年間の移住者数も最盛期の1958年の約1万6,000人から現在では3,000人台へ減少している。移住の形態も,農業移住の減少,工業移住の増加及び家族移住の減少,単身青年の増加など変化している。79年の移住者数は,総計3,564人で,内訳は米国向け1,739人,ブラジル500人,カナダ323人,アルゼンテイン445人,パラグァイ117人,その他となつている。
2. 移住施策
(1) 国際協力事業団の業務
同事業団は,国の内外において,移住希望者及び移住者に対する各種の援助を行つている。外務省は,79年度において同事業団に対し,約16億1,000万円の交付金及び10億5,000万円の出資金を支出した。同事業団は,79年度において,渡航費支給297人を含め中南米移住者331人を送出した。
事業団は79年度において,(イ)営農指導,(ロ)生活環境整備,(ハ)教育対策,(ニ)事業資金の融資(約20億5,000万円の新規貸付け),(ホ)移住地現地調査(移住地におげる飲料水,国際協力事業団の試験場効果測定,豪州邦人移住実態,老人問題,移住者子弟日本語教育に関するそれぞれの調査)のほか,将来日系社会の中堅となる海外移住実習生をコロンビア,ヴェネズエラなど南米4カ国に8名送出した。
(2) 伯法人問題
国際協力事業団の伯国における移住者援護は,同事業団の援護実施機関であるJAMIC移植民有限会社及びJEMIS金融信用株式会社によつて実施されてきたが,伯国は同国の経済社会情勢の変革及びナショナリズムの高揚に対応するため,移住政策の変更を行い,79年12月に開催された「日伯移住混合委員会」の席上,JAMIC及びJEMISの両法人は伯国内法に
抵触するので,その早期廃止をわが方に強く求めてきた。わが方は,両法人の20数年にわたる移住者援護の実績及び移住者などに与える影響をも考慮して,両法人の解消後の移住者援護方法,両法人の廃止に至るまでの暫定期間,JAMICの取得した入植地の処分,JEMISによる融資の回収などの多くの問題についての対処案を検討し,次回の日伯移住混合委員会で伯国政府と交渉の上,本件の解決を図ることとしている。
(3) ペルー移住80周年記念行事
1899年に移住者がペルーに渡つて以来1979年は80周年にあたつたため,同年8月現地で記念式典が開催されたので,わが国から園田外務大臣が同式典に参加した。
(4) アマゾン移住50周年記念行事
1929年にトメアスー及びマウエスに最初の移住者が入植して以来50年となり,79年11月に現地で記念行事が催された。わが国からは,民間の慶祝使節団がこの記念行事に参加した。
(5) 都道府県の移住事業
外務省は,79年度において,都道府県の行つている各種移住事業に対し,総額5,865万円の補助金を支出した。
(6) 日本海外移住家族連合会の事業
外務省は,79年度において,同連合会の移住者子弟研修及び初期移住者の訪日団受入れ事業に対し,3,884万円の補助金を支給した。
(7) 農業研修生派米事業
外務省は,79年度において,農村青年を2年間米国に派遣して学課研修及び農場実習をさせる事業のため,約8,800万円の補助金を派米協会へ支出した。
3. 海外移住審議会
海外移住審議会(海外移住政策に関する内閣総理大臣の諮問機関)は,79年1月の第40回総会で移住政策に関する意見書を取りまとめ,総理大臣に提出した。79年12月に委員の任期が満了し,80年3月に新委員による第41回総会が開催された。