第4節 在外邦人に対する保護・援助

1. 緊急事態に際しての邦人保護

79年にはニカラグァ,エルサルヴァドル,アフガニスタンなどでクーデター,内戦などの緊急事態が発生したほか,78年同様イランにおいては混乱が続き,11月,在イラン米大使館占拠事件の発生により,人質解放のための対イラン制裁措置などに関連し在留邦人保護に遺漏なきを期すべく事態の推移を慎重に見守りつつ最大限の努力を払つた。

2. 一般邦人に対する援助

79年中に在外公館で取り扱い,外務本省に報告のあつた邦人の関係した事故件数は539件(687人)である。

このうち火災,風水害などの被害は6件(以下カッコ内死亡者数)(3人),航空機事故3件(27人),交通事故35件(43人),山岳遭難9件(11人),遊泳事故16件(16人),他殺11件(12人),自殺23人(17人),病気61件(32人),精神異常30人,行方不明10人,盗難被害15件(以下カッコ内係わりのあつた人数)(45人),不法滞在・就労25件(30人),麻薬不法所持23件(32人),関税法違反30件(34人),殺人3件,窃盗詐欺8件などがある。

これら事故,病気などにより援護の必要が生じた場合外務省は在外公館と緊密な連絡をとりつつ,留守宅への通報をはじめ当該邦人が安全かつ速やかに帰国できるよう最大の努力をしている。また不幸にして現地で死亡した場合には遺体,遺骨の引取りなどの事後措置につき必要な援助を与えるなど協力を行い,犯罪関係者などに対しても人道的見地から必要な措置を講じている。

79年中,多数の邦人が巻き込まれた事故として,11月の南極におけるニュー・ジーランド航空遭難事故が挙げられる。

また政府は在外において生活に困窮した邦人に対し,生活援助,医療扶助などを行うとともに,困窮状態から立ち直る見込みがなく,帰国を希望するが,帰国費を負担し得ない者に対して審査の上帰国費の貸付けを行つている。79年の貸付けは11件(32人)である。

船員,船舶に係わる犯罪,事故は67件(死亡30人)である。

3. 巡回医師団の派遣

外務省は,72年以来海外在留邦人の健康維持の見地から,衛生環境が悪く,かつ,十分な医療施設のない開発途上国に在留する邦人を対象に巡回医師団を派遣している。79年度においては,中近東及びアフリカ地域に各3チーム,アジア及び中南米地域に各2チームをそれぞれ派遣し,約7,200名の邦人の健康相談に当たつた。

4. 海外子女教育

79年5月現在,海外の学齢子女(小・中学生)は24,289人であり,このうち45%が全日制日本人学校,35%が補習授業校,20%が現地校その他となつている。海外子女教育は国内と異なり種々の問題を抱えているが,外務省はできる限り海外子女教育について援助すべく,その充実強化に努めている。

(1) 援助の状況

援助は施設面と人的面で行われているが,前者は校舎建設,借料補助,後者は教員の派遣経費(在勤手当,旅費など),現地採用教員や補習校講師の謝金補助,医療費補助などが主なものである。このほか文部省が教材,教科書の補助を行つている。

外務省の海外子女教育予算は年々増大しており,79年度は46億円に上つている。

(2) 日本人学校

日本人学校は,国内とほぼ同様の全日制教育を行つているが,79年はアムステルダム,アンカラ,キート,スラバヤ,ドーハ,ベオグラードの6カ所に新設され,合計62校となつた。

在籍児童生徒数は79年5月現在10,882人で,うち約75%は開発途上国にいる。派遣教員(殆んど公立学校教員)は602名に上る。

(3) 補習授業校

補習授業校は,現地校などに通学する邦人子女に対し,週末などに国語を中心に補習授業を行つているもので,79年5月現在70校となつている。

在籍児童生徒数は79年5月現在8,501人で,うち96%は欧米の先進国にいる。

補習授業校の講師は現地の在留邦人であるが,79年は合計603名となつている。外務省は大規模補習授業校及び全日制に準じた授業を行つている補習授業校に22名の専任教員を派遣している。

(4) 巡回指導

日本人学校も補習授業校もない地域の邦人子女のため,日本人学校教員による巡回指導を企画し,援助を行つている。79年は31カ所に巡回した。

(5) その他

民間の財団法人海外子女教育振興財団が通信教育を行つている。

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