第4節 社会・人権・文化問題

1. 社会問題

(1) 婦人問題

第32回国連総会以来審議が継続されていたr婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約」(仮称)は,第34回国連総会において採択された。

また,同総会において,「国際婦人調査訓練研修所」をドミニカ共和国に設置することが承認された。同研修所は,国連婦人の10年(1976~85年)を契機として,世界,特に開発途上国の婦人の地位向上のための調査・研究・セミナー開催などを行う予定である。

80年7月にデンマークで開催される国連婦人の十年1980年世界会議については,3回にわたる準備委員会などを通じて所要の準備が進められている。

(2) 国際障害者年

第31回国連総会で81年を国際障害者年とすることが決議されたが,その準備のため,79年に23カ国から成る諮問委員会が開催され,1980/81年の行動計画案が策定された。同案は,第34回国連総会において採択され,各国政府・国際機関などはこれに基づいて活動することとなつた。

(3) 国際青年年・老人問題

第34回国連総会は,85年を国際青年年(「参加,発展,平和」)とすることを決定するとともに,23カ国から成る国際青年年諮問委員会の設立を決定した。

また,同総会は,関係各国政府に対し,82年の世界老人会議への完全な参加を確保するための措置を含め,老人のための諸政策を検討するよう勧告した。

2. 人権問題

(1) 国際人権規約の批准

安倍国連常駐代表(当時)は,6月21日,ニューヨークの国連本部において,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約のわが方批准書をワルトハイム国連事務総長に寄託した。両規約は,9月21日にわが国について効力を生じた。

(2) 国連における動き

国連における人権問題については,第34回国連総会第3委員会を中心に審議が行われた。

一般的な問題として,人権及び基本的自由の効果的改善を図るため国連システム内における人権に関する機構問題が取り上げられ,また,人権の効果的保障と遵守を確保するためには民族自決権の普遍的実現並びに植民地人民に対する早期の独立付与が重要である旨の決議が採択された。

個別的な問題として,南部アフリカからの難民学生に対する援助,チリ政府に対する人権侵害非難と改善措置の要請,イスラエル政府による同国のアラブ占領地における人権侵害非難などに関する決議がそれぞれ採択された。

3. 国連大学

国連大学は,3優先研究領域(世界の飢餓問題,人間と社会の開発,天然資源の利用と管理)において,23の提携機関などを中心に本格的な研究活動を行つている。

国連大学に対しては,80年3月27日現在,わが国(9,000万ドル)をはじめとして,英国,ヴェネズエラなど29カ国から約1億700万ドルの拠出が行われている(既拠出額を含め,誓約額合計は約1億4,000万ドル)。

4. 国連環境計画(UNEP)

国連環境計画は,73年以降ナイロビに事務局本部をおいて世界的・地域的レベルの環境保全のために広範な活動を行つている。わが国は,UNEP環境基金に73年から79年までの7年間に1,630万ドルの拠出を行つたほか,80年には360万ドルの拠出を行う予定である。

(1) 第7回管理理事会

第7回管理理事会は,わが国を含む58理事国中の50カ国が参加して,79年4月ナイロビで開催された。今次理事会では,UNEPの発足以来6年が過ぎ,開発途上国の代表の中にも理事会への常連出席者が増加していることもあつて,具体的なプロジェクトに係わる優先度については意見の相違はあるものの環境破壊のない発展を目指すという点について広範なコンセンサスが得られている感があり,これは新国際開発戦略の検討に対するUNEPの環境面からのインプットに対する期待と支持という形で強く表明された。新しい動きとしては,特に米の強力なイニシアティヴもあつて地球環境監視,熱帯森林の保全及び気象と環境(炭酸ガス問題を含む)といつた全地球的な環境への影響の防止という点がクローズ・アップされてきたことが挙げられる。

(2) 第34回国連総会での審議

79年秋の国連総会では,第7回管理理事会報告,共有天然資源に関する環境分野での協力,海洋汚染,砂漠化防止問題などについて審議が行われ,合計六つの決議が採択されたほか,UNEPの58理事国のうち19カ国の改選に係わる選挙が行われた。

5. 国連人間居住委員会(HABITAT)

HABITAT機構は,78年以降ナイロビに人間居住センター事務局本部をおいて人間居住の分野における国際協力を促進している。わが国は,76年ヴァンクーヴァーで開催された国連人間居住会議の準備段階以来,人間居住の問題の審議に参加してきており,また人間居住委員会委員国の選挙(78年)において委員国に選出されている。

第2回国連人間居住委員会

第2回国連人間居住委員会は,79年3月末よりナイロビで開催され,事務局作成の80~81年事業計画の審議を行い,資金量を考慮しつつ優先順位の高いプログラムから実施していくことを決定している。

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