2. OECDにおける援助関係活動
(1) OECD開発援助委員会(DAC)
(イ) OECDの3大委員会の一つであるDACには,現在わが国,米国,英国,仏,西独など先進17カ国及びEC委員会が加盟しており,援助理念,援助政策などに関する討議・検討,各加盟国の援助政策及び援助実績に関する援助審査(下記(ロ)(a)参照),各加盟国の開発援助実績統計の収集・分析(その概要はDAC議長報告書として発表される)などを行つている。
79年のDACの主な活動としては,第5回UNCTAD総会の準備の
一環たる開発途上国の債務問題などの討議,プロジェクトの円滑な運営のための経常費ガイドライン採択(77年のローカルコスト・ガイドラインの一部改訂),英,仏,西独などの数カ国の援助実施手続のレヴュー,80年に国連において策定される新国際開発戦略の内容についての検討などがある。また11月の上級会議(年1回開催される各国ハイ・レベル援助担当責任者の会合,下記(ロ)(b)参照)では,今後の南北関係における中心的諸問題のほか,資金協力に関し討議が行われた。
(ロ) 79年のDACの活動のうら,特に注目すべきものは次のとおりであつた。
(a) 対日援助審査
78年のわが国の開発援助実績に対する79年援助審査は,10月8日に西独及びオランダを審査国として行われた。各国からは,わが国のODA3年間倍増目標が確実に達成されるのか,目標達成後のODA拡充の努力如何といつた点について関心が表明された。わが国は,ODA3年間倍増は,確実に達成できる見通しであることを強調し,またODAの対GNP比については,国際目標である0.7%を目指し,たゆまず改善に努力するとの意思を表明した。
援助条件については,わが国のODAのグラント・エレメントは75.1%(前年70.2%)と改善されたが,DAC諸国(DAC平均は89.8%)の中では依然として低水準にあることから,わが国の実績については厳しい見方が表明された。
その他,第5回UNCTADにおいて大平総理大臣が強調した「人造り」協力に関し,わが国が今後具体的にいかなる施策を講じようとしているかにつき,各国から関心が表明された。
(b) 第18回上級会議
第18回上級会議は,11月19,20日の両日開催され,80年代の第3次開発の10年を控えて,今後の南北関係のあり方,最近の石油価格上昇による非産油途上国の経済的困難に先進諸国としてどう対処すべきかなどに関し,以下の議論が行われた。
(i) 南北関係における中心的諸問題
国連におけるグローバル・ネゴシエーションズ(GN)及び80年代の新国際開発戦略(IDS)をめぐる討議にみられるように,南北関係が新しい局面を迎えようとしている中で,今後DACの場で考慮すべき具体的な問題について討議が行われた。
まず,開発途上国の分化(differentiation)に関しては,2国間援助において間接的または事実上分化に対応していくことを考えるべきであるとされた。また,今後は「南」と「北」といつた単純な関係だけでなく,OPEC諸国,新興工業諸国及び社会主義諸国をもパートナーとして加えた総合的な関係を築くことに留意すべきであるとの見解も出された。さらに,重視すべき協力分野として,人口,農業,エネルギー,雇用などが指摘された。
わが国からは「人造り」の重要性を述べ,DACにおける「人造り」協力問題の検討を提案した。この提案は,議長の賛同も得て受け入れられ,今後DACの場で「人造り」協力を効果的に行うための方策を探るべく,具体的な検討作業が行われることとなつた。
(ii) 開発途上国に対する資金協力
79年に石油価格の大幅引上げが行われ,石油輸入開発途上国が大きな打撃を受けることが懸念される中で,開発途上国の資金ニーズに関する諸問題についても議論が行われた。
開発途上国にもたらされるインパクトとしては,非産油途上国の経常収支の赤字増大及び債務累積問題が中心的問題とされたが,各非産油途上国の個別的状況は異なつていることに加え,第1次石油危機の際の状況と比較すると,途上国全体としては外貨準備高の面では高い水準にあることなどから,当面は国際開発金融機関など現存の諸制度の活用に期待しつつDACとしては他のフォーラムにおける議論も踏まえ,開発途上国に対する資金協力全体の問題として今後一層の検討を行つていくこととなつた。
ODAに関しては,開発途上国の分化傾向にかんがみ,ODAの総量ばかりでなく効果的配分についても議論が行われた。より多くのODAを低所得国に振り向けることについては,ほとんどの国が同意したが,低所得国向けのODAについて量的目標を設定してはどうかとの提案は,大方の支持を得るに至らなかつた。
また,ODA増大の努力は援助国の政治的な決意に基づくものであるが,経済,財政状況も制約要因となること,ODAの拡充には議会及び世論の支持を得ることが重要であり,一般大衆に対する広報活動の強化が必要であるなどの発言もあつた。
(iii) 援助実施手続改善のためのガイドライン
DACでは援助の質の向上と効果的活用を目指し,援助実施手続改善のためのガイドラインについて検討が行われてきたが,今回の上級会議で正式に採択され,公表された。主な内容は,被援助国の行政能力向上のための協力,プロジェクトないしプログラム援助実施の効率化,援助国の行政機構の改善,援助の継続性と予見可能性への配慮,援助実施メカニズムに多様性と柔軟性をもたせることなどである。
(2) OECD開発センター
OECD開発センターは,OECD加盟国の有する経済開発問題,経済政策実施に関する知識・経験を開発途上国に普及・利用させることなどを目的として,調査・研究活動,研修,セミナー開催などを行つている。
(3) 技術協力委員会(TECO)
本委員会はOECD加盟国に対する技術協力,特に開発途上にある加盟国(ギリシャ,トルコ,スペイン,ポルトガル及び準加盟国ユーゴースラヴィァ)に対する技術協力を行つているが,最近ではその他のOECD加盟国にとつても関心のあるテーマ(行政管理など)についてシンポジウムを開催するなど,その活動範囲を拡げつつある。