2. 漁業問題
78年に引き続き伝統的なわが国遠洋漁業の操業を確保するため,79年においても,多くの沿岸国との間で2国間協定の締結ないし既存の協定に基づく漁獲量,入漁条件などの交渉を行うとともに,国際的漁業規制及び条約の改正もしくは新条約作成のための多数国間の交渉に参加した。
(1) 2国間漁業交渉
79年においては,わが国は豪州及び仏(仏領ポリネシアなどの仏海外領土について)との間に新たな2国間協定及び取極を締結した。また,ソ連との間では77年の漁業暫定協定の有効期間を78年同様更に1年間延長する旨の議定書及びさけ・ます漁業の79年の操業条件を規定した議定書を締結した。また78年10月に署名したポルトガルとの協定はポルトガル側の国内手続の完了に伴い80年3月発効した。
既存の協定に基づき漁獲量などを定めるために行われた2国間交渉としては米,加,ソロモン諸島及びキリバスなどがある。
2国間漁業交渉において目立つ点として,沿岸国の多くが水産物貿易問題や自国漁業開発問題をわが国漁船の入漁問題とリンクさせようとする姿勢を強めていることがあげられる。
一方,わが国の200海里漁業水域内におけるソ連の漁業に関して,77年に締結された漁業暫定協定は78年と同様,79年においてもその有効期間を更に1年間延長した。また,韓国との間では韓国漁船が北海道沖において操業しており,わが国漁民の漁具被害が生じ,また資源保存上も問題があることから,同国との間で問題解決のため話合いが続けられた。
(2) 多数国間漁業交渉
米,加などの200海里漁業水域設定の結果,北西大西洋漁業条約に代わる新条約の作成のための作業が行われ,77年10月新条約が作成され,79年1月これが発効したが,わが国は80年1月回条約を受諾した。他方,79年2月には日米加漁業条約の改正議定書の批准書の交換を行つた。更に南極条約協議国会議においては,南氷洋の生物資源,特におきあみの保存を目的とした条約を作成するための検討が行われ,また,ラ米諸国の200海里漁業水域設定に伴う全米熱帯まぐろ類保存条約の改正交渉が引き続き行われた。
(3) 捕鯨問題・いるか問題
海産哺乳類の捕獲反対運動は欧米諸国を中心に根強い動きをみせているが,79年7月の国際捕鯨委員会年次会議において,ミンク鯨以外の母船式捕鯨の禁止及びインド洋での10年間捕鯨禁止が決定され,わが国捕鯨業の存続にとつて厳しい状況が続いている。
他方,わが国の壱岐周辺における漁場保全のためのいるか捕獲に対し欧米諸国を中心に抗議運動が続いているが,これに対しわが国のいるか捕獲の事情を理解させるよう努力を行つている。