5. エネルギー以外の資源問題

(1) 概 況

(イ) 1979年の主要鉱物資源の市況

銅,鉛などの非鉄金属や天然ゴムなど工業用原料の価格が,イランの政情不安などの国際情勢の動揺もあつて一時高騰し,年初頃には石油危機後の一次産品ブームの再来を懸念する声も聞かれた。また,小麦,飼料穀物の価格は,年初来の上昇傾向にソ連の不作の影響が加わり,5,6月頃に一時急騰したが,その後は比較的安定を保つていた。このほか,木材の価格が,78年来の上昇傾向を持続し,春から夏にかけては,一時急騰する局面もあつた。以上のように一次産品の市況は全般的に上半期に急騰しているが,年央ないし夏過ぎにはほぼ平静さを取り戻し,79年1年を通じてみれば穏やかな上昇局面を経験することとなつた。

(ロ) 1979年の主たる出来事

一次産品総合計画(IPC)のもとでの2年半にわたる審議を経て,3月には共通基金交渉が基本合意に達し,4月には天然ゴム協定交渉が実質合意に達した。このような背景のもとに,5月にマニラで第5回の国際連合貿易開発会議(UNCTAD)が開催され,IPC決議の履行状況の検討などが行われたが,一次産品分野に関する限り,前回のナイロビ総会ほどの対立は惹起されなかつた。その後,共通基金についての協定の準備作業が累次の暫定委員会で行われてきているほか,10月6日にはIPCでの協議からもたらされた最初の具体的な成果として国際天然ゴム協定が採択された。また,12月,国連総会では全体委などでの検討を踏まえ,国際経済協力会議(CIEC)と同様にエネルギー一次産品を含めあらゆる南北間の諸問題についての包括的南北交渉(GN)を80年8月の国連経済特別総会において開始する旨の合意が得られた。

(2) 鉱物資源の動向

国際商品市場においては,銅を中心とした一部非鉄金属が年初に高騰するというような動きが見られたが、一次産品問題に対する国際的な検討としては,UNCTADでの従来からの協議が続けられた以外は,鉄鉱石,銅,鉛,亜鉛,ボーキサイトなどの主要鉱物については,79年中はこれといつためだつた動きはなかつた。なお,その他の鉱物においては,タングステンにつきUNCTADVでの関連決議を踏まえ,9月に政府間協議が

開催され,80年においても市場安定化問題についての検討が行われたほか,ニッケルにつき初めての政府間協議が4月にロンドンにて開催された。

(3) 非鉱物資源の動向

非鉱物資源については,木材,特に熱帯木材が年初以降8月末まで一本調子で高騰を続けたが,その結果,需要の減退を招来し,下半期には逆に反落するなど市況がめまぐるしく変動したこと,及び長期にわたつて価格が低迷していた砂糖が,需給バランスの改善などに伴い8月下旬から漸く市況を回復したことが特筆される。このほか綿花,硬質繊維,天然ゴムなどの工業用原料及びコーヒー,ココアなどの嗜好品については,市況面で天然ゴムとコーヒーに急騰が見られたものの,国際機関での検討としてはUNCTADの協議の継続以外には特にこれといつた動きはなかつた。

(4) IPC個別産品交渉の進捗状況

(イ) 天然ゴムの交渉会議は,4月の第2会期での主要経済条項についての実質合意,7月の第3会期での条文化作業を経て,10月の第4会期においてすべての条文について合意が成立し,国際天然ゴム協定が採択された。同協定は,緩衝在庫を唯一の価格安定メカニズムとし,定められた価格帯に従い在庫操作を行うことによつて,天然ゴムの価格と需給の安定を図ろうとするものである。

(ロ) その他,銅,茶について,それぞれの産品に特有の複雑な事情はあるものの,緩衝在庫を中心とした価格安定化方策の実現に向けての検討が進められてきた。また,ジュート,硬質繊維などについては,直接的な価格安定化措置の検討は一応棚上げされ,研究開発,消費振興などのいわゆる「その他の措置」の検討に重点をおいた協議が更に進展した。

(5) 商品機関の現状(わが国が加盟しているもの)

(イ) 商品協定

(a) 国際小麦協定

79年初頭に再開された国連小麦会議が備蓄在庫の規模,備蓄の運用の基準となる価格水準などをめぐる輸出国,輸入国の意見の相違から合意に至らず,3月の国際小麦理事会において協定の第5次延長が決定された。

(b) 国際すず協定

現行協定の有効期間が81年6月までとなつていることから,79年においては,国際すず理事会において新協定のための準備作業が行われてきたほか,12月には漸く米国議会により3万5,000トンのすずの放出法案(うち5,000トンを国際すず理事会への任意拠出にあてる)が承認され,これに伴い,80年初頭来,同理事会において,米国による放出と拠出問題をめぐる検討が行われてきている。

(c) 国際ココア協定

現行協定が79年9月末に有効期限を満了することから,2月及び7月の2度にわたり改定交渉が行われたが妥結に至らなかつた。その後9月の国際ココア理事会における6ヵ月の延長の決定を踏まえ,11月に第3会期を開催したが,依然として価格面での調整がつかず交渉は中断のやむなきに至つている。

(d) 国際砂糖協定

現行協定は78年1月に暫定発効し,価格の低迷状況の中で協定の輸出割当が発動されてきていたが,その効果もあつて年後半から漸く価格も回復し,80年1月に割当が停止された。また,80年1月には批准が遅れていた米国も漸く本協定に正式に加盟し,協定は確定的に発効することとなつた。

(e) 国際コーヒー協定

現行協定は有効期間6年で76年に発効し,わが国は協定の定めるところに従い,9月に協定の後半3年間についても引き続き加盟国としてとどまる旨の通告を行つた。コーヒーの価格はブラジルの霜害などの影響もあつて,前年に続き79年も協定の価格水準を上回つており,このような事態を改善すべく理事会において新たな価格帯の設定を含め,協定のより有効な機能を確保するための検討が累次にわたつて行われた。

(ロ) 商品研究会

(a) 国際鉛・亜鉛研究会

10月にジュネーヴで総会が開催され,同会議において,特に亜鉛の需給状況につき懸念が表明され,今後とも慎重な生産政策で臨むことが確認された。

(b)国際綿花諮問委員会

11月にボゴダで総会が開催された。また,設立計画中のCDI(国際綿花開発機関―仮称)については,本年も前記総会及びCDIの作業部会などにおいて検討が行われた。

(c)国際ゴム研究会

10月にロンドンで総会を開催し,国際天然ゴム理事会(設立交渉中)との関係の初歩的な討議とゴムの情報統計の整備を行つた。

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