2. 石油代替エネルギー
(1) 枯渇資源たる石油に代わるエネルギー源の研究開発促進,利用拡大は人類に課せられた緊急の課題である。先進石油消費国が石油需要の抑制と並んで最も力を入れんとしているのはこのためである。5月の第3回IEA閣僚理事会は石油に代わるエネルギー源としての石炭を見直し,石炭の生産,貿易及び利用について加盟国がとるべき諸施策を示した「石炭に関するIEAの行動原則」を採択し,石油代替エネルギーに関する研究開発の強化につき合意した。6月の東京サミットはエネルギー問題の根本的解決のため中・長期的に代替エネルギーの利用拡大及び新エネルギーの研究開発の必要性を強調し,サミット宣言においても石炭の見直しと原子力の推進を謳つている。また有望なエネルギー新技術の実用化促進のための国際エネルギー技術グループ(IETG)の創設が合意された。IETGは79年11月5日に第1回会合を開催したが,これにはわが国をはじめとするサミット参加7カ国に豪州,オランダ,北欧各国などOECD加盟10カ国を加えた17カ国とECが参加した。IETGは80年2月,3月と3回にわたり会合を開き,近い将来商業化が見込まれる代替エネルギー技術の開発について如何なる国際協力が可能かについて検討を重ね,80年3月24日3回目の最終会合において最終報告書を採択した。この報告書では,(イ)今後の商業化のための最重点技術として石炭液化,タールサンド,オイルシェール,天然ガスからの合成燃料など6技術分野を選択し,調査チームを作つて上記6技術の検討を行う,(ロ)各国は商業化促進のための投資を加速化し,製品買上げ保証,税制面での優遇などを行う,(ハ)各国は代替エネルギー技術の商業化の進捗状況についてのモニタリング,有望プロジェクトの発掘,国際協力の検討に積極的に参加する,(ニ)85年半ばまでの具体的プロジェクト計画及び90年以降の代替エネルギー生産見通しの作成,などが謳われた。
(2) 国際的なエネルギー協力の分野では,従来,枯渇資源たる石油の需要を如何にして抑制するかという「需要」面での抑制メカニズムの設定が中心となつてきたが,この面では,前記1.の如く国別石油輸入目標の設定に合意した東京サミット以来の先進消費国の努力が結実しつつあるところ,IETGで上記の如き最終報告書が採択され,代替エネルギーの「プロジェクト計画」と「生産見通し」の作成が合意されたことは,石油に代わるエネルギーを今後如何に供給していくかというエネルギーの「供給」面での協力という意味で大きな意義を有していると言えよう。