第2節 通 商 問 題
1. 概 況
(1) 世界貿易は77年末以降の先進諸国経済の回復基調を反映し,78年の世界貿易量の伸びは,対前年比5%増(国連統計)を示した。続く79年には,石油価格の再度の高騰,インフレ高進の中での景気の鈍化傾向がみられたため,世界貿易の伸びへの影響が懸念されたが,78年と同水準の5%増(同統計)を示した。
(2) かかる環境下で,一部の先進諸国においては,保護貿易主義的な措置を求める動きもあつたが,開放貿易体制の維持強化を図るための努力が続けられてきた。79年6月,OECD閣僚理事会において貿易プレッジの5回目の更新が行われ,また同月の東京主要国首脳会議においても,保護主義と闘う決意が確認された。後者においてはさらに,東京ラウンドが4月に約5年半を経て漸く実質的合意に至つたことを受けて,東京ラウンドでの諸合意が重要な成果であるとの評価が示された。さらに東京ラウンドの諸合意を監視し,また,開放的な世界貿易体制を維持するためにガットを強化し,できるだけ多くの国が,これらの諸合意及び体制全体に参加することを歓迎するとの意向が表明された。わが国としては,MTN諸協定を可及的速やかに受諾,実施しうるよう最善の努力を払つてきた。
(3) わが国と主要国との貿易問題に関しては,77年秋以降日米間及び日・EC間において,日本の経常収支及び貿易収支の大幅な黒字を背景として,わが国への批判の高まりが見られていたが,79年においては,原油価格の引上げをはじめとする一次産品価格の大幅上昇や内需の比較的着実な伸びなどを背景として輸入額が大幅に増加したため,わが国の国際収支は78年に比べ様変わりに悪化を示したこともあり,主要国間との貿易問題は全般的には,平穏に推移した。その間に,日米間においては,5月の大平・カーター共同声明の発表,6月の牛場・ストラウス共同発表などに見られるように,両国間の緊密な意思疎通が図られ,更に,個別問題についても両国事務レベル間で着実な話合いが続けられてきた。他方,日・EC間においても,日・ECハイレベル定期協議,ハーフェルカンプ副委員長の訪日,園田外務大臣及び安川政府代表の訪ECなどの交流が,日・EC通商経済関係の円滑な発展を図るため続けられた。日・ASEAN間においては79年4月,日・ASEANフォーラム,7月,日・ASEAN外相会議,11月,日・ASEAN経済閣僚会議が,それぞれ開催された。この間,日・ASEAN貿易は順調に拡大しており,特に79年のASEANよりの輸入は,対前年比64.1%増と大幅な増加を示した。