2. わが国と西欧諸国との関係

(1) 日欧関係全般

伝統的友好関係によつて結ばれているわが国と西欧諸国とは,先進民主主義諸国の重要な一員として世界政治・経済の両面にわたり一層責任ある役割を果たすことが期待されるに至つており,日欧関係の重要性はますます高まつてきている。79年も78年に引き続き,政治,経済その他さまざまな分野での広汎な日欧協力関係の深化・拡大がみられ,具体的には別表にみられるごとく,要人の交流の活発化と相まつて日欧間の相互理解と協調の促進に資するところ大であつた。

もちろん,わが国は対西欧外交を進めるにあたり,大国のみを念頭に置いていることはなく,その他の諸国ともきめ細かく関係を深めようとしている。このようなわが国の政策は,例えば皇太子同妃両殿下のオランダ・ベルギーご訪問(10月),灘尾衆議院議長のルクセンブルグ訪問,園田外務大臣のベルギー(5月)・オランダ(7~8月)訪問,ジャンルクセンブルグ大公同妃両殿下のご来日(10月)及びトルンルクセンブルグ首相(当時)の来日(1月)などの要人往来に示されているとおりである。

(2) 日・西欧経済関係(日・EC関係)

(イ) ECにおける伝統的産業の衰退や失業問題などの経済的困難は,79年においても好転しなかつた。また,日・EC関係においては,EC側の対日貿易赤字が,78年において77年の45.4億ドルから50.3億ドルに拡大したこともあり,79年当初EC側では,かかる傾向の続くことが懸念されていた。このような情勢を反映し,79年前半はECにおいて依然対日批判の動きがみられた。

折から3月,過度の輸出依存度,日本人の働き過ぎ,日本社会の特殊性などが日・EC間の貿易問題の根底にあるとする,いわゆる「うさぎ小屋」文書がEC内部で流布したと伝えられた。

(ロ) EC側の対日批判には一方的なものも多々あつたが,わが国としては貿易黒字累積時でもあり,「李下の冠」の観点から誠意を尽して改めるべき点は改めることとし,更にEC側の輸出努力を慫慂した。例えば,わが国からは,2~3月に英・アイルランド,4~5月にベネルクスに対し輸入促進ミッションが派遣され,一方では輸入検査手続の簡素化など,国内市場の一層の開放が図られた。EC側も対日輸出振興計画を発表し,積極的に日本市場開拓の姿勢を見せるに至つた。

(ハ) また,わが国から園田外務大臣,安川政府代表のEC委訪問,EC側からハーフェルカンプ,オルトリ両副委員長,ダヴィニヨン委員などの訪日により日・EC間の対話による相互理解を深める努力が続けられた。

注目すべき動きとしては,通商・経済問題の解決ということにとどまらず,建設的な日・EC関係強化の観点から,広く産業の分野での協力を推進するための話合いが始められた。例えば既に述べたわが国における欧州青年日本研修計画のほか,EC側における欧州青年実業家日本研修計画などの人物交流プログラムも開始された。

(ニ) こうした努力と相まつて79年のわが国の対EC貿易黒字がほぼ前年並みの51.1億ドルにとどまつたこともあり,年央以降,日・EC関係は小康状態にある。

<要人往来>


<貿易>


<民間投資>

(あ) わが国の対西欧直接投資

(い) 西欧諸国のわが国に対する直接投資

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