(2) ASEANとわが国との関係
わが国は,幅広い分野において対ASEAN協力を推進することをアジア外交の基本としているが,特に79年においては,インドシナ情勢及びインドシナ難民問題など,ASEANが直面する深刻な危機にかんがみ,対ASEAN協力を従来にまして強化するよう一層の努力を行つた。
(イ) 閣僚レベルの交流
79年においてはまず5月にマニラで開かれたUNCTAD総会の機会に大平総理大臣がフィリピンを訪問したほか,7月にはインドネシアのバリ島において第2回目・ASEAN外相会議が開かれた。また11月には日・ASEAN双方の経済関僚が一堂に会する初の日・ASEAN経済閣僚会議が東京で開かれ,日・ASEAN間の経済問題及び国際経済問題につき忌憚のない意見交換がなされた。
日・ASEAN間ではこのほかに,以下のとおり活発な閣僚レベルでの交流が行われた。
(ロ) 政治面での協力
わが国は,上記第2回目・ASEAN外相会議の機会に,ASEAN5カ国と日,米,豪,ニュー・ジーランド,ECの10カ国外相会議の実現に積極的に貢献し,ASEANに対する主要先進諸国の一致した支持を世界に向けて宣明するよう努力した。
また,わが国は上記外相会議の機会に,UNHCR拠出金半分負担及びインドネシアの難民一時収容センター経費半分負担など難民問題に対するわが国の積極的姿勢を打ち出しASEAN側の期待に応えた。
更に,東京サミットにおいては事前に安川政府代表をASEAN諸国に派遣しASEAN諸国の要望を十分に踏まえて会議に臨むとともに,インドシナ難民問題に関する共同声明発出のイニシアティヴをとり,その発出に努力した。
わが国は,また越・「カ」紛争,インドシナ難民問題などインドシナ問題の平和的解決のため,国連その他の場でASEANとの緊密な協力を行つた。
このほか,わが国は,12月の大平総理大臣の訪中についても11月の日・ASEAN経済閣僚会議の機会にASEANの理解を得るべく努めるとともに,事後に鹿取外務審議官をASEAN諸国に派遣し,その成果つき十分説明を行つた。
(ハ) 経済面での協力
わが国とASEANの関係は貿易面でも緊密であり,わが国の対ASEAN貿易は79年も78年に引き続き,対世界貿易を上回る拡大を示した。また79年6月に署名された東京ラウンド交渉においても,わが国は特にASEANを中心とする開発途上国の要望に好意的な配慮を行つている。
一次産品問題においても,わが国は共通基金のほか,すず,砂糖,天然ゴムなどASEAN産品をカバーする商品協定に関する国際会合の場でASEANの意向を踏まえ,その成立に前向きに取り組んできているが,79年はこのようなわが国の協力もあり,3月に共通基金の設立について産出国,消費国双方の間に大筋合意が成立したほか,10月に天然ゴム協定が成立するなど,一次産品問題には大きな進展がみられた。
また,資金協力,技術協力の分野でもASEANは引き続きわが国援助の最重点地域となつているが,上記ASEAN共同声明で約したASEAN工業プロジェクトに対する協力も,79年10月インドネシア尿素肥料プロジェクトに対する資金援助に関する交換公文がかわされたのをはじめ,着実に進展している。
このほか,79年5月,ジャカルタで署名されたASEAN貿易・投資・観光促進暫定センター設立の交換公文に基づき,12月に東京の池袋に同センターが正式に発足し,日・ASEAN間の貿易・投資の促進,観光の振興のため,現在活発な活動が行われている。
(ニ) 文化面での協力
文化面での協力についても,日・ASEAN共同声明で約束されたASEAN文化基金に関し,わが国は50億円を限度とする基金供与を誓約したが,79年8月全額の拠出を完了し,ASEAN側も既に運用計画の作成に入つている。また,わが国は79年5月ASEAN5カ国を対象とした奨学金の供与を約した。更にASEANを対象とした青年指導者招へい計画,文化施設援助計画など79年度新設の文化協力事業も実施に移されている。