2. わが国と国際連合
(1) わが国の基本的態度
わが国は,1956年の国連加盟以来一貫して国際の平和と安全の維持をはじめとする国連の目的及び活動に積極的支持を与えるとともに,わが国の国際的地位の向上に伴つて強まつている国際社会のわが国に対する期待に応えるべく,諸分野における国際協力の推進を目的とする国連の諸活動により積極的に参加,協力してきており,これがわが外交の基本政策の一つとなつている。
(2) 79年におけるわが国の国連活動
79年において,わが国は,このような基本政策に基づき,活発な国連外交を展開したが,その主要なものは次のとおりである。
(イ) 国連総会は,自国の立場を国際世論に訴え,その理解を得る多数国間外交の格好の場であり,かつ,各国の外交最高責任者が一堂に会するので,ハイレベルでの意見交換,相互理解促進の貴重な機会である。第34回国連総会に出席した園田外務大臣は,米,中,西独をはじめとする多くの国の外交責任者と精力的に意見交換を行うとともに,一般討論演説においては,カンボディア情勢,インドシナ難民問題,中東問題,南部アフリカ問題,軍縮問題,エネルギー問題,開発援助など国際社会が直面している諸問題について,わが国の取組み方,基本的考え方を明らかにし,その解決のために加盟各国の協力を訴えるとともに,国連の平和維持機能強化のための具体的提言を行つた。
(ロ) わが国は国連の主要政治問題たる中東問題,南部アフリカ問題の動向につき引き続き関心を払うとともに,79年から80年初めにかけて相次いで安保理で取り上げられたカンボディア問題,中越紛争,イランの米国大使館人質事件,ソ連のアフガニスタン侵攻といつた国際の平和と安全に重大な影響を及ぼす問題の審議に,安保理メンバーではないが積極的に参加し,問題の平和的解決の必要性を強く訴えた。また第34回国連総会では,カンボディア問題に関するASEAN諸国などの決議案の共同提案国として採択に尽力したほか,人質行為防止国際条約作成に貢献した。さらに,アフガニスタン問題に関する第6回緊急特別総会にも積極的に参加した。
(ハ) 諸国間の相互依存関係の緊密化に伴い,各国の協力なしには実効的解決が期待できない問題が多々ある。例えば,南北問題をはじめとして,資源,エネルギー,食糧,人口などの諸問題は,一国の力あるいは少数国間の協力のみでは解決し得ず,普遍的国際機構たる国連が,これらの問題解決のための多国間協力の有効な枠組みを与えている。わが国は,特に経済社会開発分野の中枢機構である経済社会理事会及びその他の国際機関のメンバー国として,この分野で積極的に活動している。
(ニ) 軍縮の分野では,78年5月の軍縮特別総会を契機とする各国の関心が持続し,第34回国連総会では,前回同様40近くの軍縮関係決議が採択された。わが国は,従来より軍縮措置の推進にあたつては,現実の国際情勢の中で,実現可能な措置を一つ一つ積み重ねていくことが肝要であることを訴えており,本総会においても包括的核実験禁止条約決議などいくつかの決議の共同提案国となつた。
(ホ) 79年6月,わが国は経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約を批准した(同年9月発効)。また,第34回国連総会では,婦人差別撤廃条約作成の審議に積極的に参加するなど,社会・人権問題についても積極的役割を果たした。
(ヘ) インドシナからのボート・ピープルの大量流出,さらにカンボディア難民の大量発生という事態に直面し,79年7月と11月,インドシナ難民の援助に関する国際会議が開かれたが,わが国は,これらの会議で,難民救済に対するわが国の考え方を表明し,具体的拠出誓約も行つた。