3. 北米地域

(1) 米 国

(イ) 大平総理大臣の訪米

大平総理大臣は,米国政府の招待により,79年4月30日から5月6日まで米国を公式訪問し,カーター大統領と会談した。今回首脳会談は,大平総理大臣就任後はじめてのものであつたが,同時に日米両国間の間断なき協議の重要な一環であつた。会談において大平総理大臣は,米国が自由世界のリーダーとして自信と勇気をもつて世界的役割を遂行すべきこと,日本がその経済力にふさわしい国際的責任を負担すべきことを述べたが,これは会談の基調をなすものであつた。両首脳は,両国が共通の関心を持つ幅広い問題について率直かつ建設的な意見交換を行つた。特に,日米両国にとつて最も重要な共通関心事であるアジアの平和と安定のための協力に多くの時間を割いた。また,両国の基本的対外経済政策につき明確な了解に達したのをはじめ,両国経済関係の安定と発展のための基礎につき合意した。会談後の共同声明に示されているように,80年代に向かつて,世界における両国の責任にふさわしい両国間の実り豊かなパートナーシップの基盤が築かれたことは,今回会談の大きな成果といえる。

(ロ) カーター大統領の訪日

カーター大統領は,わが国政府の招待により,79年6月24日から27日まで国賓として訪日した。米国の現職大統領の訪日は,74年のフォード大統領に次ぎ2度目である。カーター大統領は,滞日中,両陛下との会見,宮中晩餐会,大平総理大臣との首脳会談のほか,衆参両院議長レセプション,歌舞伎鑑賞,日米修好ゆかりの地である下田市での対話集会など多彩な行事をこなした。

カーター大統領夫妻の両陛下との会見は終始親しく,和やかな雰囲気のうちに行われ,緊密な日米関係の現状と今回訪日の成功を象徴するものであつた。カーター大統領は大平総理大臣と2回にわたり会談した。会談では,主として日米両国が関心を有する国際問題について協議が行われたが,主要国首脳会議(東京サミット)を間近に控え,同会議のための事前打合せも話題となつた。特にエネルギー問題については,エネルギーの消費節約,とりわけ石油輸入の抑制が必要であるとの認識から,各国が輸入抑制に努力すること及びその努力目標と実現の方法につき意見が交換された。また,大きな国際問題となつているインドシナ難民問題,エジプト・イスラエル平和条約の調印を第一歩とする包括的中東和平への努力についても意見交換が行われた。

このようなカーター大統領の訪日を通じて,日米間の友好親善関係,相互理解と信頼の関係が一層深められたことは,「80年代の実り豊かな日米関係」を築いていく重要な基礎となつた。

(2) カ ナ ダ

近年特に政治及び経済分野での日本とカナダの結びつきは深まつている。79年においても両国関係をさらに緊密にする努力が政府及び民間レベルで積極的に推進された。

79年には,東京サミット会議出席のためクラーク首相が訪日したのをはじめ,第2回目加経済協力合同委員会(東京)や,第2回目加経済人会議(トロント)が開催されるなど人物交流も活発に行われた。

また,79年は日加修交50周年に当たり,両国間の文化交流も広範囲に進められ,教育,科学技術協力などの分野と相まつて日加関係をさらに増進させていく期待が高まつている。

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