5. 国際経済の動向
79年における西側先進諸国の景気動向をみると,日本および西独が順調な拡大基調を維持したのに対し,米国経済が頭打ちから下降局面に向かいはじめたこともあり,先進諸国全体としての上昇テンポは比較的緩慢なものとなつた。また,多くの先進国は,引き続き根強いインフレ圧力及び高水準の失業に悩まされているが,これらの問題は,第2次石油ショックの影響もあつて,一層深刻な様相を呈してきている。他方,国際収支面では,先進諸国相互間の国際収支調整については進展が見られたものの,原油価格の大幅値上りの結果,産油国と石油輸入国との間の国際収支不均衡が顕著となり,なかんずく非産油途上国の国際収支問題が深刻化しつつある。
かかる情勢下東京で開催された主要国首脳会議では79年,80年のみならず85年の石油消費/輸入目標値の設定に合意した。また,貿易面では長きにわたつた多角的貿易交渉(MTN)が漸く妥結に至り,保護主義との闘い,開放的世界貿易体制の維持,強化が確認された。南北問題では,第5回国連貿易開発会議(UNCTAD)総会の開催,世界農地改革農村開発会議の開催,第3次国連開発10年のための国際開発戦略(新IDS)の策定作業の開始,開発のための科学技術国連会議の開催及び第3回国連工業開発機関(UNIDO)総会の開催(80年2月)など,80年代における南北問題の動向を占う上で注目すべき幾つかの進展があつた。
このほか,原子力分野では,原子力平和利用と核拡散防止を両立させる方策を探求するためにロンドン主要国首脳会議を契機として開始された国際協議(国際核燃料サイクル評価,INFCE)が80年2月末,原子力平和利用推進に前向きの結論を出して終了した。