-その他の重要文書-

5. その他の重要文書

(1) 米ソ会談に関する共同発表(プラウダ紙,仮訳)

(1978年4月22日,モスクワ)

米国国務長官C・ヴァンスは4月20日から22日までモスクワに滞在した。同人はソ連邦共産党中央委書記長・ソ連邦最高会議幹部会議長エリ・イ・ブレジネフに引見され,ソ連邦共産党中央委政治局員・ソ連邦外務大臣ア・ア・グロムイコと数回会談した。

ソ米関係の重要な諸問題並びにソ連と米国が相互に関心を有する若干の国際問題について意見交換が行われた。

会談においては核戦争防止及び軍備制限をめざす今後の措置の策定と実施という課題に特別の注意が払われた。

この関連で戦略的攻撃兵器制限に関する新協定の準備状況につき有益,かつ,綿密な討議が行われた。その結果,未合意であつた問題のうちのいくつかにつき双方の立場はいくらか接近した。

双方から,戦略的攻撃兵器制限協定が出来る限り早期に締結されるよう精力的に努力する旨の意向が表明された。

軍備制限に関する他の交渉の現状についても審議され,双方は,特に核兵器実験の完全かつ全面禁止に関する協定の早期達成をめざす作業を英国と共に継続することに同意した。

双方は,中部欧州における兵力及び軍備の相互削減交渉の進展を達成することの重要な意義を強調した。

軍備制限問題の討議に際して,双方は近く開催される国連軍縮特別総会についても意見を交換した。

モスクワにおける会談の対象となつた諸問題の討議は継続される旨が合意された。

会談には次の者が参加した。ソ連側-ソ連邦軍参謀総長・ソ連邦国防第1次官・ソ連邦元帥エヌ・ヴェ・オガルコフ,ソ連邦外務次官ゲ・ニム・コルニエンコ及びヴェ・エス・セミヨノフ,駐米・ソ連大使ア・エフ・ドブルイニン;米国側-駐ソ・米国大使エム・トウーン,軍縮・軍備制限局長官ぺ・ウオンキ,米国国務長官特別顧問エム・シュールマン,並びに双方の公的人物。

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(2) モンデール米副大統領の米国のアジア政策に関するハワイ演説要旨

(1978年5月10日,ホノルル)

1. 歴訪の目的とアジア政策形成の必要性

(1) 私のフィリピン,タイ,インドネシア,豪州,NZ首脳との協議は,カーター大統領の指示に基づくものであり,米国の同地域における役割を明確に定義づける上に役立てるためであつた。

(2) ヴィエトナム以後,米国の東南アジアに対する関心,軍事的プレゼンス及び援助は減少し,米国は同地域を見捨てるのではないかとの懸念が生じた。同地域の非共産主義諸国は,すべて,米国が明白なプレゼンスを維持することを望み,また米国の積極的な外交を歓迎している。

(3) カーター政権の課題は,急速に変化しつつある情勢の中で,米国の利益を助長するような東南アジア政策を形成することである。

我々は,東南アジア諸国の懸念に答えつつ,かつ,過去の悪夢からの偏見から脱出しつつ,米国の同地域における関与の維持可能なレベルを定義づけなければならない。さらに,人権や武器移転規制といつた事項に関する米国の新しい外交政策について強調することが我々の新しい使命である。

2. 太平洋地域における米国の利害関係

(1) 米国は変ることなき太平洋国家である。この公理は,歴史的,地理的条件に基づくと同時に,意識的選択に基づくものである。我々のアジア諸国との結びつきは我我の世界的な政策の成功の鍵である。

(2) 米国がアジアで持つ主要な同盟関係は,同地域の安定と世界的勢力均衡に寄与しており,われわれはこれを維持する。

(3) 太平洋航路の自由は,米国及び全ての海運国の安全と福祉に死活的重要性を持つており,われわれはこれを守る。

(4) 環太平洋諸国の経済は,世界で最も急速に成長しつつあり,同諸国との貿易は,米国経済の健全性にとつて極めて重要である。われわれはこれを拡大する。

(5) 米国の中国との関係は,太平洋地域の安定的均衡に貢献しており,われわれはこれを深めるよう努力する。

(6) 太平洋を通じる交流は,われわれの生活,芸術,科学を豊かにしており,われわれはこれを強化する。

(7) アジアヘの関与に当つては,過去のパターンにこだわることなく,安全保障の維持と建設的変革の促進の間に均衡を図りつつ,これを具体化して行く。

3. アジアの現状

(1) 1966年私が東南アジアを訪れた当時は,多くのアメリカ人にとつて東南アジアは暴力,不安定,腐敗を意味した。また,中国は近隣諸国に脅威となつていたし,日本は商業的利益に支配された外交を追求していた。地域の多くの非共産主義諸国は米国に深く依存し,我々のプレゼンスの規模自体が,米国が内政事項に過度に関与する結果を招くこととなつた。

(2) 現在東南アジアは一変し,比較的静穏である。イデオロギー闘争は力を失い,民族主義が勝利している。最も激しい対立は共産主義国の間で見られる。

(3) 環太平洋地域(共産主義圏を除く)は,世界で最もダイナミックな経済圏となつており,大国による支配は影をひそめ,成熟したパートナーシップの時代がおとずれつつある。今や,経済問題が地域のほとんどの政府の主要関心事項となつてきている。

(4) 日本は,環太平洋地域の経済成長のためのエンジンの役目を果し続けており,また,経済援助の拡大,ASEANに対する支持,東南アジアにおける敵対国家群の発生防止に努めることを通じて,同地域におけるその政治上の役割について一層広いヴィジョンを明確にしつつある。

(5) 中国はますます同地域の建設的勢力として成長しつつあり,ある点では米国の政策とパラレルな政策を追求している。

(6)これらは希望的な徴候であり,アジア及び太平洋諸国との新しい関係の展望をもたらすものである。即ち,我々の伝統的な安全保障に関する関心を新たな問題と関連させて論じうるとの私の確信を支えるものである。

4. 安全保障問題

(1) アジアの新たな課題,すなわち,食糧の確保,貿易問題の解決,代替エネルギー源の開発,地域的協力と和解の促進,基本的人権遵守の増進を達成するためには,米国は太平洋地域で強力であり続けなければならない。そうすれば,他の地域における米国の安全保障も高められ,逆にそうでなければ,その影響は単にアジアにのみ止まるものではない。

(2) しかし,米国の安全保障上の役割の性格は変りつつあり,米国の軍事的プレゼンスは,友好国の自己依存の増大に対応する形で維持されなければならない。

(3) 我々の安全保障上の懸念はすべての主要大国の利害が直接に交叉する北東アジアにおいて最も大きいが,厳密に線を引くことはできず,東南アジアでの事件が日本及び韓国に影響しないと仮定することはできない。東南アジアは,(イ)豊富な資源を有しており米国にとり市場性を有していること,(ロ)日本,米西岸への中東からの石油輸送路を内包していること,(ハ)フィリピンにおいては基地の確保が我々の戦略上の柔軟性を強化していること,(ニ)地域における友好国,同盟国の存在が我々の世界的な地位を強化していること等により,本質的に極めて重要な地域である。

幸いにして東南アジアは,もはや大規模な軍事紛争の舞台ではない。しかし,ヴィエトナムの意図,共産主義諸国間の衝突,中ソ対立等安全保障上極めて深刻な,不分明・不安定な要素が存在している。

(4) 非共産主義諸国が米国に望んでいることは,米国の直接的な軍事的関与ではなく,抑止力として,また,心理的安心感のよりどころとして役立つような軍事的プレゼンス,不必要かつ非能率的な軍事産業の振興を回避するための必要な兵器の供給,及び大国間の抗争に巻き込まれまいとする努力に対する米国の外交的支援である。

以上の要望は,米国の利益にも合致するものである。私は,訪問先各地で,米国は多数国間及び2国間の安全保障上のコミットメントを維持し,均衡がとれ,かつ柔軟な軍事態勢を保持することを確認した。

5. 新たな課題

安全保障の場合と同様に,アジアに対する米国の経済的関与のあり方も急速に変化しつつある。太平洋地域における米国の経済的利害は極めて大きい。貿易は昨年610億ドルに達し,投資額は160億ドルを超えた。

東南アジア諸国の関心は,援助よりも米国の規制措置,民間投資の促進,保護主義の抬頭に対する懸念等むしろビジネス面に置かれていた。われわれは,今後,次の事項に優先的に取り組まねばならない。

(1) 貿易の拡大

MTNを成功させることを通じて,貿易の拡大を確保する。農業がMTNの重要な要素である。米国はすでにジュネーヴにおいて寛大なオファーを行つており,日本,EC等がこれに見合うオファーをすることを期待している。

(2) 農業生産性の向上

東南アジアは,人口の増大につれて食糧増産の必要性に迫られているが,生産性拡大の大きな可能性を秘めている。私は,次のような手段により,この問題に包括的に取り組む決意を強調した。

(イ) 農業生産性の増加のため現実的な措置をとる国に対するPL480その他の形による長期援助の拡大。

(ロ) 生態学的諸問題評価のための衛星の使用。

(ハ) 地方開発のための2国間援助の集中。

(ニ) 各国が食糧を備蓄する形で,国際的食糧不足に対処するための国際体制を創設することに対する支援。

(3) 代替エネルギー資源の開発

インドネシア以外の東南アジア諸国は若干の石油資源を保有しているにすぎないが,天然ガス,石炭,ウラニウム及び地熱資源は豊富に有しており,その開発は,石油価格上昇の圧力を鈍らせるとともに,われわれ及び同盟国のエネルギー分野での安全性を高めることとなろう。

今次歴訪中,私は,地域的エネルギー資源の調査,エネルギー計画の強化及び新たな協力分野の発見に資するため,エネルギー省から技術チームを派遣することを申し出た。われわれはニュー・ジーランドのように地熱エネルギーの生産に長い経験を持つ国から多くを学ぶことができる。さらに,私は

(イ) エネルギーの分野でASEANとのより緊密な協力を促進するための公式な協議機構の構想に積極的に応じ,

(ロ) 米民間企業が,新たな石油及び天然ガス資源の開発では依然として世界で最も秀れていることを強調した。

(4) アジアにとつて有利な資金源の確保

われわれの2国間援助計画は,フィリピン,タイ及びインドネシアのように,貧困や飢餓及び失業問題に取り組もうとしている国にとつては依然として重要である。援助の目標はそれらの問題の克服でなければならない。

他方,アジア開発銀行のような多数国間の機関に対する開発援助も引き続き増加させていくつもりである。同銀行の本部を訪問した際,私は1979年から82年にかけて4億4,500万ドルを拠出するとのカーター大統領の決定を確認した。

(5) 相互利益のためアジアの開発について米民間企業の影響力を拡大すること

私は,ジャカルタでアジアにおける米企業の代表に会つた時彼等を励ますとともに,政府として米国の輸出増大のための包括的戦略を展開していく旨伝えた。

(6) ASEANとの結束推進

東南アジアにおける最も力強い発展は,ASEANの抬頭であり,米国はASEANとの緊密な結びつきを求めて行く。東南アジア諸国首脳との会談の際,私は,米国が本年後半ワシントンで閣僚レベルの米・ASEAN協議を喜んで主催する意向であることを強調した。

将来の地域協力のあり方を決定するのはASEANの首脳であるが,われわれとしては彼等のイニシアティヴを支援する用意がある。

6. 人権の尊重

(1) 安全保障の維持及び経済的結びつきの強化のほかに,東南アジア及び太平洋における米国の新たな役割として,わが国がよりどころとしている基本的価値の確認がある。

(2) より幅広い人権の尊重を促進することは,われわれの外交政策の中心目標である。人権に対する米政府のコミットメントをためす上で,インドシナ難民の急激な増加に対する対処ぶり程重要なものはない。今回の旅行で私は,米国やその他の諸国が難民問題を過小評価していたことを知つた。ヴィエトナムの隣接諸国は,増加する水陸両方からの難民の増加に苦慮しており,タイに不均衡な負担がかかつている。

この問題は一国だけで取り組めるものではない。米国のヴィエトナム介入の遺物であるとすれば,われわれには特別な責任を果す用意がある。

米国は難民問題に取り組むためのより広範な国際間の努力を率先して促進していかねばならない。私は東南アジアの首脳に対し米国が東南アジアからの難民を更に追加的に年間25,000人受け入れる旨伝えるとともに,バンコクに,移住及び帰化に携わる担当官を追加して米国向け難民の手続を促進するつもりである。

私はタイ当局に対し,タイの長期的な難民対策計画の策定のため上限200万ドルまで供与する旨申し出た。また,そのような計画が策定された暁には,タイその他の地域における難民の永住を資金的に援助するために,他国とも協力の上,追加的に実質的な支援を行う用意があることを明確にした。

(3) われわれは,カンボディアでの苛酷かつ野蛮な圧政に影響を与えるすべをほとんど有していないが,同地域で生じている恐るべき事態に対し世界が注目するよう引き続き努力を継続していく。

(4) 安全の維持と人権の尊重は両立しえないと批判するものもあるが,そんなことはない。人権の尊重は,安全な環境においてのみ真に成就されうるが,他方,国民の基本的な要求に応えられないような,あるいはすべての反対意見をしめ出すような政府は安全保障を達成することはできない。

われわれが求めている安全保障は,安全保障のための安全保障ではない。それは,社会的及び経済的な公正と切り難すことはできない。これは,われわれに非常に微妙な外交的課題を課すものであるが,われわれは,無関心と内政干渉の双方を避けつつ,現実的利益と理想の両者を追求して行かねばならない。

(5) 今次歴訪で私は,人権について率直に話すことが出来た。様々な政治見解にも耳を傾けることを怠らずにこれら諸国の首脳との信頼関係を発展させることは可能であると確信している。

例えばインドネシアでは,同国政府が本年末までに予定されていた10,000人の囚人の段階的釈放のスピード・アップを真剣に検討しているとの感触を受けた。

われわれの努力が,真の永続的な結果をもたらすかどうかは時のみが知るところであるが,われわれの信念を語らずに米国民の支持を期待したり他国民の願望に応えることはできない。

7. 結 論

太平洋地域は,前例のない活気に満ちた変化と発展の時代を迎えていると確信する。われわれの役割りは重要なものであり,今後とも政治上,安全保障上及び経済上の係り合いを継続していくことは必要不可決であり,またこれは米国の利益にもかなうものである。今後とも変革する現実に適応していかなければならないが,それは歓迎すべき試練である。

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(3) NATOワシントン首脳会議最終コミュニケ(仮訳)

(1978年5月31日,ワシントン)

I

1. 北大西洋理事会は,国家元首及び政府首脳参加の下,1978年5月30日及び31日ワシントンにおいて会合した。

2. 同盟は,その創設以来,安全を保障し,協力と団結を強化し,平和を促進した。

同盟の偉大な生命力は,全ての同盟諸国が民主的な政体を所有している事実に基づいている。同盟諸国は,この政体が,現代社会の挑戦に対処する人間社会を形成するために最も人道的かつ効果的な手段であることを確信している。同盟諸国は,集団安全保障の守り手としての同盟の中心的役割を強調し,来たるべき数年間同盟の共通目標と役割に関し相互に協議することを改めて約束した。

3. 同盟国指導者は,今次会合が一年間の活発な活動・分析及び再評価をフォローアップするとともに,同盟の将来の役割を公正なものとすることを確認した。同盟諸国は特に客年5月ロンドンにおける理事会での共通の決議とイニシャティブを検討し,成功裡に実行した。

4・ ロンドンにおいて決定された東西関係の長期的動向に関する研究は,安全を保障し,緊張緩和政策を継続する同盟の二つの補足しあう目標が変ることなく有効であることを確認した。ソ連及び他のワルシャワ条約加盟諸国における状態と今後の発展に関する検討に基づき,理事会の研究は同盟諸国が,その団結と警戒を維持し,その防衛をワルシャワ条約の攻撃的能力に対し必要とされるレベルに維持するとともに,他方,緊張緩和の促進に努めねばならないとの結論に達した。同研究は,更に,同盟諸国とワルシャワ条約諸国との関係が拡大したが,なお重大な緊張の原因が存在していることを確認した。

5, 同盟国指導者は,ソ連及び二・三の同盟諸国が,途上国世界における不安定な状況と地域紛争を再三利用していることに懸念を表明した。緊張緩和の不可分性を無視することは,東西関係の一層の発展を危険にさらすことになる。また,同盟国指導者は,この状況が,専ら東西の関連で見られるべきでないことを強調し,各国及び地域を通じての交渉による平和的解決を促進することの重要性を改めて強調した。

6. 同盟諸国は,ベルリン及び全ドイツに関する展開を討議した。同盟諸国は,1977年12月の閣僚理事会以来のベルリンをめぐる状態が,一般的には,重大な妨害もなく留まつているが,特定の重要な分野においてなお困難が存在していることを確認した。同盟諸国は,著名な同盟の立場,特に1971年9月3日の4カ国協定の全ての規定の厳格な遵守と完全な履行が欧州における緊張緩和の促進・安全保障の維持及び協力の発展にとつて重要であるとの確信を改めて強調した。

7. 同盟諸国は,国際平和にとつて重要とみなすソ連及び他の東欧諸国との可能な限りの建設的・積極的な関係に努める決意である。同盟諸国は,真の継続的緊張緩和の基盤を拡大するため,より密接な接触と理解が一層促進されるべきであるとの確信を改めて強調した。

8. 同盟諸国は,CSCE最終文書の無制限の実施が東西関係の改善のために重要であることを絶えず確信している。同盟諸国は,ベオグラードにおけるフォローアップ会議での最終文書の実施に関する徹底的検討を歓迎するとともに,人権及び人道的問題が国民共同体の正当な関心として認められていることを確認した。同盟諸国は,全ての参加諸国がヘルシンキ最終文書を完全に実施する決意を強調し,CSCEによつて始められた多数国間の進展を継続する意志を表明したことを想起した。だが,同盟諸国は,ベオグラード・フォローアップ会議が実質的成果をもたらさなかつたことに遺憾の意を表明した。同盟諸国は,1980年のマドリッド会議における実施の検討の際,重要な改善が,単に国家間の関係だけでなく,個人生活においても達成されることが認められるような,最終文書の全ての規定がより一層実施されることの重要性を強調した。この関連において,同盟諸国は,ソ連及び他の二,三の東欧諸国が,最終文書の規定に従つて行動する市民の権利を拒否し,市民を抑圧手段にさらしていることは,最終文書と緊張緩和政策と合致しないものと見なした。

9. 同盟国指導者は,より効果的かつ均衡的な世界経済体制の擁護に努める決意を改めて強調した。同盟諸国政府は,発展途上諸国に対する援助での長期的努力によつて,この目標の重要性を示した。同盟諸国政府は,ワルシャワ条約諸国がこの処置に全面的に参加することを呼びかける。

10. 科学・技術及び環境保護における国際協力が,同様に,より良き世界に貢献しうる。この関連において,同盟国指導者は,先日,20周年となつたNATO科学委員会及び現代社会に挑戦する委員会の成果に満足の意をもつて留意した。

11. 北大西洋条約第2条の規定に留意して,同盟国指導者は,同盟国諸国民の経済的・社会的状態の一層の改善のため,健全な基盤を保障することの重要性を認める。二,三の同盟諸国の効果的な防衛を維持する能力が,十分な恒常的経済成長の維持における諸困難によつて影響を受けている。同盟諸国間の防衛援助・協力に附随して,これら諸国は,発展計画及び諸国民の生活水準の改善を支援するための経済援助・協力を必要としている。この目的のため,事務総長は,目下既に2国間及び他の国際委員会において行われている同盟諸国の努力を考慮して,この問題がいかに扱われるかの研究を行い,理事会に報告することを委任された。

12. 同盟諸国は,ギリシャとトルコ両首相の会談を満足の意をもつて留意した。同盟

諸国は,2国問題に関するこの対話が,この両国間の意見の相違の解消に貢献する希望を表明した。

13. 同盟諸国は,特に南東翼における団結の強化の重要性を改めて強調した。同盟諸国は,現存の諸問題が解決され,同盟諸国間の無制限の協力が防衛分野の全ての面で一層行われる希望を表明した。

14. 中東における情勢を検討した後,同盟国指導者は,この地域における広範な規定に努める努力が一層行われる希望を表明した。同盟国指導者は,真の継続的平和を達成するための努力を倍加することを全ての関係諸国に要請した。

15. 東西間の緊張を緩和し,政治的目的のために軍事力を使用する試みを沮喪させる同盟諸国の努力は,安定した軍事的均衡の枠内においてのみ追求され得る。このような均衡は,同盟諸国がその緊張緩和を安全かつ確信をもつて継続することを保障する。

16・ 同盟国指導者は,ワルシャワ条約の攻撃的能力の持続的強化に関し懸念を表明した。この状況にかんがみ,同盟諸国は,この巨大な軍事手段が安全保障を脅かす目的を追求するものではないというソ連の声明にもかかわらず,今後とも,防衛力を強化し,軍備管理・軍縮協定に関する交渉の促進に努めるという補足しあう二つの道を歩む以外の方法はない。また,同盟諸国は,将来,可能となれば第2の道を歩む。だが,この方向での進展は,当然ワルシャワ条約諸国側の肯定的態度にかかつている。

17. 同盟国指導者は,特に欧州の通常兵器の分野において現存している不均衡の排除を目指した効果的かつ検証し得る軍備制限が,東西関係の継続的改善と平和の確保にとつて不可欠の前提であることに合意した。

18. 同盟国指導者は,米・ソ戦略兵器交渉を討議した。同盟国指導者は,交渉において達成された進展を歓迎するとともに,戦略的安定性を高め,抑止力を維持する同盟の安全保障の利益と関心に相応する協定への米国の努力に対する支援を表明した。

19. 相互均衡兵力削減に関し,ウィーンにおける交渉に参加している同盟諸国は,10年前レイキャビクにおける閣僚理事会で初めて提案されたこの交渉に対するコミットメントとこの交渉を成功裡に導く決意を強調した。同盟諸国は,より安定した勢力関係及び欧州における平和と安全保障に貢献する交渉の合意目標に対する賛意を確認した。この目標は,地上軍の兵員の共通上限と戦車における不均衡削減による削減地域におけるおよその均衡を創出する提案によつて達成される。同盟諸国は,4月19日の交渉に提起した重要な新提案に対する注意を喚起するとともに,ワルシャワ条約諸国の誠実かつ,建設的反応を期待する。これら同盟諸国は,ウィーンにおけるデータ討議が,満足すべき成果を得る努力の重要な要素であり,それ故,データ基盤の解明が交渉の本質的進展にとつて決定的であるとの見解である。これら同盟諸国は,交渉の本質的進展が達成され,外相レベルの会議が双方満足すべき合意締結に貢献するならば,同盟諸国が,適当な時期に外相レベルの交渉を招集することを声明した。

20. 同盟諸国は,軍縮に関する国連特別総会を歓迎した。同盟諸国は,同総会に建設的に参加する決意を表明するとともに,この重要な会議が具体的成果をもたらす希望を表明した。同盟国指導者は,近代兵器の破壊力,核兵器拡散の危険,発展途上国と同盟諸国民の要求が,軍縮・軍備管理問題の広範な分野における協力を全ての諸国の緊急な課題とするという一致した見解であつた。この方向での進展は,世界における福祉を事実上高め,開発援助に用意された手段の必要な増加を容易にする。同盟諸国は,交渉を通じ,安定性を高め,兵力量を減少し,安全保障を促進する現実かつ検証し得る軍縮・軍備管理措置を忍耐強く検討する決意を強調した。この目的のため,同盟諸国は,軍備管理及び軍縮問題に関する徹底的な協議のため同盟機構をより一層利用することに合意した。

21. 軍備削減に関する現実的かつ検証し得る合意によつて,より低い軍事力における満足すべき軍事的勢力関係を達成することが可能となる時期まで,同盟諸国は,今後とも,同盟の軍事力の近代化と強化のため,抑止力と防衛に必要な全ての手段を調達する。同盟諸国は,同盟全体の防衛にとつて不可欠である強力な工業・技術能力の維持と改善のための努力を継続する。新規の既存の兵器の世代の導入は,防衛のために使用し得る手段の合理的投入とより一層の軍備協力を必要とする。この関連において,同盟諸国は,北大西洋間の対話の強化のため,ロンドンにおいてなされた提案の実施において行われた処置を歓迎した。同盟諸国は,同盟の軍事打撃力が,より改善されたインターオペラビリティー,兵器の標準化及び計画の処置により高められることを確信している。

II

22. 東西関係の長期的動向の研究及び西欧の安全保障に関する他の諸問題の背景において,同盟の統合された防衛機構に参加している諸国の指導者は,5月31日,1977年5月のロンドン首脳会議で委任され,国防大臣により作成された長期防衛計画に関する報告を検討した。

23. 同盟諸国は,長期防衛計画が,より密接な協力とNATOの長期的に調整された防衛計画の必要性に重点が置かれていることに賛意しつつ留意した。これら諸国の指導者は,NATO軍の即応態勢の改善,予備軍の動員,NATO空軍の強化,電子戦争の危険に対する防衛,NATO海軍の改善,全NATO軍のためのより改善された兵站支援の準備及びNATOの司令,通信施設の改善に役立つ,国防大臣により承認された特別計画に同意した。同盟国指導者は民間航空及び国家の陸海施設を導入した戦時における前方地域への重要な強化の輸送の迅速化のための計画を承認した。同盟国指導者は,特に1982年までに,米国3個師団のための重装備を欧州連合軍中部地域に配備する米国の意図を歓迎するとともに,欧州の同盟諸国が,必要な支援施設及びその他の施設を提供する必要性を認めた。同盟国指導者は,更に欧州に配備されている核兵力の必要な近代化を目的とした核計画グループの作業に関心をもつて留意した。

24. この同盟諸国の指導者は,ほとんど全ての同盟諸国が,1977年の閣僚ガイダンスにより要求された年間約3%を実質増加させる財政上の防衛計画に適応させる意図を表明したことに満足の意をもつて確認した。同盟国指導者は,より大規模な協力と合理化によつて,防衛のために提供されたないしは計画された手段の可能な限り効果的な等価を達成する重要性を強調した。同盟国指導者は,この目標が,長期防衛計画において強調されることを歓迎した。

25. 同盟諸国は,80年代の変わりゆく必要性へのNATO軍の適応に著しく貢献する,国防大臣によつて提起された長期防衛計画に対する支援を表明した。同盟諸国は,各国と並んでNATOと国際軍事本部側の活発な実施措置を要求した。この関連において,トルコは自国の参加のためには,同盟諸国による十分な支援と軍備調達における現存の制限の完全な撤廃が重要性を持つことを示唆した。

26. これらの決議に際し,これら同盟諸国の指導者は,相互に均衡した軍備管理と軍縮の合意が成立たない限り,戦略兵力,欧州に配備された核兵力及び通常兵力における十分な均衡は,同盟軍事力の近代化と強化のための一層の努力によつてのみ達成され得ることに合意した。同盟国指導者は,安全保障の維持が自由と個人の権利の保護,同盟諸国民の福祉及び緊張緩和の促進にとつて不可欠であることを強調した。

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(4) カーター大統領の米国海軍兵学校卒業式における米ソ関係に関する演説(仮訳)

(1978年6月7日,アナポリス)

マッキー提督,リー知事,来賓各位,卒業生諸君,友人諸君,

本日は多くの著名な来賓の御出席を得ている。私は,私の嘗ての上官ハイマン・リッコウバー提督をこの式に招待した。提督は最高司令官としての私の命令には勿論従うつもりだが,ワシントンでの海軍の仕事の方が私の演説を聞くより更に重要だと返事してきた。(笑) 私は別に驚かなかつた。(笑)

違った階級でもどつて来たとは言え,海軍兵学校卒業式に出席できてうれしい。32年前,私は今日の諸君と同じ経験をしたことを覚えている。私は優等生ではなかつた。諸君の大部分も同様そうではない。私は世界のでき事や遠い将来のことよりも休暇や結婚のことを考えていた。諸君の中にも同じことを考えている者がいるのではなかろうか。(笑)

私は最初の配属に全く失望した。我々は配属を決めるのにくじをひいた。私は,太平洋の新型駆逐艦を望んでいた。ところが私は大西洋で一番旧式な船ワイオミング号に配属させられた。(笑)それは老朽艦で安全上問題があるということで桟橋に碇泊するためノーフォークに入港するのを許されず,独りハンプトンローヅに碇泊せねばならなかつた。(笑)

我々の卒業式には雄弁なチェスター・ニミッツ提督が来場した。諸君も同じだろうが,私は提督が話したことを一語も覚えていない。(笑)私の希望はと言えば,卒業式が短いようにということだつた。諸君の場合もそうだろうが,私の期待は裏切られた。(笑)

打ち明けて言えば,当時私は,この場へ後日合衆国大統領としてもどつて来ようとは思いもしなかつた。

7年後,私は渋々海軍を去つた。しかし今にして思えば,海軍兵学校と海軍での勤務は,私がついに選んだ生き方のよき準備であつたと言うことができる。

私は1978年の卒業生諸君に祝意を表する。大人の見方に立つた諸君の教育は始まつたばかりであるが,諸君は世界で最も生き甲斐があり,且つ挑戦的な生涯の基礎を確保している。

近代海軍の士官として,諸君は世界の政治的,軍事的ドラマの役者をつとめるであろう。諸君は軍事科学や軍隊統率の技術を習得するばかりでなく,海軍が活動している国際社会についての鋭敏な理解力を持つよう要請されるであろう。

本日,私はこの国際分野の最も重要な局面の一つ,即ち米国とソ連という世界最大の2強国間の関係について論じたい。

我々は,米ソ関係が極めて長期間,競争的であることを十分認識せねばならない。この競争は,うまくいけば建設的なものとなる筈である。さもなくば,この競争は危険でもあり,政治的に災をもたらすことになりかねない。従つてソ連との関係は協力的でもなければならない。

我々は,米国人の気持が,物事が順調にいつている時の満足感から順調にいつていない時の失望へ,又ソ連との共存可能性を誇張して考えることから敵愾心のあらわな表現へと,極端にゆれ動くことがないようにせねばならない。

米ソ両国間のデタントは世界平和の中心である。この問題の複雑で機微な性質を理解することは,世界にとつても,米国民にとつても,又海軍の将来の指導者たる諸君にとっても重要である。

デタントという言葉は,ごく簡単に「国家間の緊張緩和」と定義することができる。しかし,この言葉は実際には更に,経験上,それらの国家がお互いに平和の中に生存し得るような新たな手段を発展させることであると定義される。

デタントが安定したものであり,米国民によつて支持され,又協力の範囲を拡大する基礎となるためには,デタントは広く定義されかつ真に相互的なものでなくてはならない。両国とも紛争地域で又紛争の時に抑制の態度をとらねばならない。双方とも協力を拡大するために結ばれた協定を厳密に尊重し,当然,お互いに核兵器の生産を制限し,国民の自由な移動と思想の表現を認め,人権を擁護しなくてはならない。

双方とも軍事上の優越を達成することができるとか,あるいは一時的な軍事上の有利さを政治的に利用できると考えてはならない。

我々の第一の目的は,経済的福利,社会正義,政治的自決及び基本人権を求めるあらゆる人々の願望にもつとよく応えられる世界の形成を支援することである。

我々は平和に満ちた世界を求める。しかし,かかる世界は,社会的,政治的それから思想的多様性を持つものでなくてはならない。その時始めて,諸国家間の又諸文化間の真の協力が可能となろう。

我々は誰をも支配しようとは思わない。我々は今後とも世界の積極的な新しい勢力との協力を拡大していくつもりである。

我々はソ連との協力を強めるとともに,新興諸国,東欧諸国それから中華人民共和国との協力も強めたいと思う。我々は真の自決権や多数支配が未だ確立していない地域でそれが実現するよう特に努力する。

我々の長期的目的は,ソ連に対して協力による利益と破壊行為による損失を悟らせることでなくてはならない。

我々は米国とソ連が第2次世界大戦において同盟国であつたことを記憶している。米国海軍の偉大な歴史的業績の一つは,ナチスの脅威に対抗するための共同の闘いを支援して,米国からムルマンスクその他のソ連の港へ軍需品及び補給品の莫大な船荷を導き保護することであつた。

あの大規模な戦いの苦悩の中で2千万人ものソ連人の生命が失われた。ソ連で生活している更に何百万人もの多くの人々が今なお当時の恐怖と飢えを想起している。

私はソ連の国民が平和を望んでいるものと確信する。ソ連国民が仮にも戦争を望むとは思えない。

長年の間,米国は,オーストリア平和条約,ベルリンに関する4カ国協定,大気圏内核実験停止,共同の宇宙空間科学調査,貿易諸協定,弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約,戦略的攻撃兵器制限に関する暫定協定,及び部分的核実験禁止条約によつて実証されているように,ソ連との協調を求めてきた。

この努力は,SALT・II協定,包括的核実験禁止,他国への通常兵器移転の削減,宇宙衛星への攻撃禁止,インド洋における兵力水準安定化や貿易と科学的・文化的交流の拡大のための交渉においてなお続けられている。米ソ両国を対立させている根本的問題があるにも拘らず,我々はこのような協力分野を積極的に切り開かねばならない。核戦争の危険こそ,我々をこの方向に駆りたてるのである。

核兵器の数と破壊力は驚くべき速度で増加してきている。両国の安全保障を推進するSALT協定が基本的重要性を持つているのもそのためである。米国とソ連は誠意をもつて連日のように交渉している。何故なら両国とも交渉が妥結しない場合は,大規模な核軍備競争が急遽再開されるだろうことを知つているからである。

私は今日諸君に対してSALT・II協定の見通しは明るいと告げることができて満足である。

この主要な努力以外に,貿易,技術,文化交流の改善は,両国間協力から即刻得られる利益に数えらるべきものである。しかし,これら協力のための努力も両国間の重要な対立点を解消するものではない。

しからば,これらの対立点はどんなものであるか。

ソ連にとつてデタントとは,政治的利益及び諸般の影響力の増大を達成するための継続的侵略闘争を意味するように思われる。ソ連は明らかに軍事力と軍事援助がソ連の勢力を海外に拡大する最善の方法であると考えている。明らかに世界の不安定地帯はかかる努力を誘引する目標を提供するものであり,ソ連は殆ど常にと言つてもいい程あらゆるこのような機会を進んで利用する用意をしている。

朝鮮,アンゴラそれから又ご存じのように,もつと最近ではエチオピアにおいて明白となつたように,ソ連はその目的を達成するためソ連兵力に代えて他国の兵力を使用している。

他の世界各国にとつてソ連の軍事増強は,度を過ぎたものであり,ソ連自身あるいはその同盟諸国を防衛するための正当な必要限度をはるかにこえたものと考えられる。15年以上,ソ連はその国民総生産の殆ど15%を軍備に充当して,この軍事増強計画を維持しており,この不断の増強は継続している。

ヘルシンキで得られた合意に違反したソ連国内での基本的人権の侵害は,自由を愛する各地の人々の非難の的となつている。ソ連は,ソ連の体制が,自由に表現された考えも,誠実な反対意見も,国民の自由な移動も容認することができないということを行動で実証した。

ソ連は,閉鎖的社会をもたらす全体主義的,抑圧的政体を国外に広めようと試みている。これらの特徴や目標のなかには,ソ連にとって幾多の問題を惹起するものもある。

きびしく統制されたブロック外で,ソ連は他の諸国と困難な政治関係に立つている。

ソ連と他の諸国との文化的絆は数少くかつ擦り切れている。ソ連の政体は他の諸国にとつて次第に魅力を失いつつあり,斯くてマルクス・レーニン主義グループさえ最早やソ連を模倣すべきモデルとは見なしていない。

多くの国は,明らかにソ連と緊密な同盟関係にありまたソ連に経済的生存と軍事的・政治的指導・指示を依存しているキューバが非同盟運動を破壊するのを非常に憂慮し始めている。

ソ連は,世界第2の規模の経済組織を持つているが,その成長は著しく速度をおとしており,その生活水準は同等の経済開発段階にある他の諸国のそれとくらべて,良好であるとは言えない。

農業生産は,ソ連にとつて依然切実な問題であり,作物の生産が平年並みあるいはそれ以下である場合,ソ連は米国あるいは他の諸国こ食糧の供給を仰がねばならない。

我が国はもつと有利な立場にある。我々の産業基盤及び生産性は無類のものである。我々の科学的,技術的能力は,他のすべての国よりも優つている。米国と他の自由諸国との同盟は強力であり,一層強力になりつつある。そして米国の軍事力は現在も将来も他の何れの国にも劣らないのである。

ソ連と異なり,我々は友好的隣国や広い大洋に囲まれている。我々の社会機構は安定しており,結合力があり,又我々の対外政策は超党派的国民の支持を得ており,そのため継続性がある。

我々は又,我々が国家として標榜すること即ち,各人がより良い生活を築くための現実的機会,法と慣習による政府権力の諮意的行使からの保護,各個人が自由に発言し政治に十分に参加し政治力をともにする権利の故に強力である。我々の哲学は,個人の自由というあらゆる概念の中で最も強力なものに基づいており,我々の民主的生活様式は,世界の他の国民の賞賛と模倣競争の的となつている。

人権のための我々の尽力により,我々は,益々勢を増している国際潮流に加わるに至つた。これによつて,我々は強められている。

我々の増大しつつある経済力は又,他の諸国の利益のための主要な政治的要因であり,潜在的影響力である。我々の国民総生産はヨーロッパ共同体9カ国全体の国民総生産を凌駕し,ソ連の2倍である。その上,我々は今や国民と環境との間に新たな調和を創出しながら,我々の資源を如何にして,賢明に利用するかを学びつつある。

米国の軍事力に関する我々の分析もまた自信の根拠となつている。我々は米国もソ連も,攻撃した側を殲滅しかねない壊滅的反撃を蒙ることなしに相手国に核攻撃を開始することはできないことを知つている。ソ連は米国にくらべより多くのミサイル発射基,より大きな投射重量,それからより強大な大陸防空能力を持つているが,米国はソ連にくらべより多くの弾頭,全般的により高い命中精度,より多くの重爆撃機,より均衡のとれた核戦力,より良いミサイル搭載潜水艦,それから優れた対潜水艦戦の能力を持つている。

SALT・II協定が結ばれた場合,それはミサイル発射基,それから又,複数弾頭ミサイルに関して,同等でしかもより低い上限を両国に与えるであろう。我々はSALT・IIIが核兵器のより大きな相互縮小をもたらすものと予想する。

本質的な核の均衡に伴って,相対的通常兵力が従来よりも重要になつた。実際には,米国及びその同盟諸国の軍事力は,予想できる如何なる脅威にも十分対応しうる。

双方とも相手の軍事力を過大視する傾向のあることは十分考えられる。正確な分析は,将来のための決定を行う基礎として重要である。ソ連の力あるいは米国の弱さを誤つてあるいは過度に評価するならば,それはソ連の宣伝の効果に寄与することになる。

例えば,米海軍の予算に関する最近の人騒がせなニュース報道は,我々が史上最大の防衛予算を持つており,その最大部分は海軍に充てられるものであるという事実を無視したものである。

諸君は,優秀な統率力,船員気質,戦術及び船舶設計の長い伝統を担おうとしている。そして私は,米国海軍は今日海洋において対等者,匹敵者を持たず,又諸君も私も他の米国民も,常に強力な米海軍をそのまま維持するだろうことを確信している。我々の現在及び将来の力について疑念を抱かないようにしよう。私が今述べた簡単な評価は,米国の競争力及び競争に打ち勝つための能力についてひどく憂慮する必要のないことを示すものである。確かにあわてふためく理由はない。民主主義において不可欠である健全な自己批判と自由な討論を,弱さや絶望あるいは目的の欠如と混同してはならない。

米国の対ソ外交政策の主要素は何であるか。それらを極く簡単に述べてみよう。

我々は引続きソ連と対等の核戦力を維持する。何故なら,我々は世界的核軍縮が存在しない現在,かかる対等性は,世界にとって最も脅威の少いかつ最も安定した状態であると信ずるからである。

我々は,より強力なNATOやより機動性ある軍隊,それから太平洋における現在のプレゼンスに見合った慎重かつ安定したレベルの軍事費を維持するであろう。我々と我我の同盟諸国は,戦略的核兵力あるいは通常兵力のいずれからなりとも,我々の安全に対する予見し得る挑戦に対抗せねばならず,又することができるであろう。米国は米国民に極端な犠牲を払わせることなしにこのコミットメントを遵守する能力を持つており,軍事力に関するこのコミットメントを履行するであろう。

同盟諸国以外について言えば,我々は国際連合や米州機構,アフリカ統一機構の如き国際平和を促進することに専らたずさわつている世界的又地域的機関を支持する。

アフリカについては,我々と我々の友邦は外部勢力の支配を受けない,人種的不公正の苛酷さの存在しない,紛争なき又貧困,飢餓,疾病の重荷のない大陸にしたいと欲している。これらの目標に達するための最善の方法は,アフリカの現実を認識し,アフリカ人の願望を認識する確固たる政策によることであると確信している。

アフリカにおけるソ連とキューバの根強い益々増大する軍事介入は,この希望に満ちた映像を打ち消しかねない。我々は地域的平和とこれら外国軍隊が永久に駐留するように思われる諸国の自治とに対する脅威に深い憂慮の念をよせている。これが私が今日この問題を取上げた理由である。そしてこれが,我々が最近ザイールで行つたように,かかる侵入を抑制するためのアフリカの努力を支持する理由である。

私は,すべての他の列強が,戦争の武器ではなく平和の作業を強調することで我々に加担するよう再び強く要請する。アフリカヘの援助に際し,ソ連が今や我々とともにローデシア及びナミビアにおける多数支配への平和的で迅速な移行を求めるようにさせようではないか。エリトリア及びアンゴラにおける紛争を平和的に解決するため努力が払われるようにしようではないか。アフリカを分割しアフリカでの支配を求めるためではなく,アフリカ諸国がその偉大な可能性を実現するのを助けるため皆で努力しようではないか。

我々はソ連及び他の諸国との平和,よりよいコミュニケーションと理解,文化・科学交流及び貿易の拡大を求める。

我が国は,現在核兵器生産能力を所有していない諸国への拡散を防止すべく努力する。

我々は公正な戦略兵器制限協定のため建設的に根気強く交渉を続ける。我々はいずれの側も,核兵器の使用によつてイデオロギー的勝利をかち得ることのできないことを知っている。

我々はSALT協定交渉を他の競争関係と結びつけたり,又その交渉過程に他の特殊条件をおしつけることは望まない。しかし,対外政策の策定や実施の上で与論が不可欠な要素である民主的社会では,緊張,激論,あるいは平和への脅威が協定の妥結を探求する過程を複雑ならしめることはよく承知している。これは我々の好むところではないが,事実である。

ソ連は対決と協力のいずれなりと選択することができる。米国はいずれの選択にも対応する準備を十分整えている。

我々は双方に抑制,暴力でなく交渉によつて紛争を解決する心構え,軍事的でなく平和的に競争する積極性を同じように要求するようなデタントを通じての協力を選ぶであろう。それが十分果されないとすれば,それはデタントを毀損することになる。そしてこれが私の今日のべた懸念を誰も過小評価しないよう希望する理由である。

自制と共通の規制のない競争は,更に重大な緊張に発展し,ソ連との関係全体が悪影響を受けるだろう。私はそれを望まず,又ブレジネフ氏もそれを望むとは思わない。そして,この故に,今こそ我々が率直に話し合う時であり,又問題を直視する時である。

十分な米国の力,この力を行使するに際しての冷静な自制,戦争不可避論の排斥,それからすべての平和的で可能な手段の忍耐強い不断の推進,これらを結合することによつて,我々は終局的に国際社会をより安定したより平和的なそしてより希望に満ちた未来に遵きたいと希望するものである。

諸君と私は共通の義務即ち,若し可能ならば平和的手段によつて,若し必要ならば断固たる行動によつて,米国の緊要な利益を守護すること,を果すため今日この地を去るのである。我々はこの責任のため厳粛な気持になつて,しかし我々の力に自信を持つて,前進する。我々は米国の目的即ち平和,安全,我々自身のため又他人のための自由,が我々の未来を決定し,我々は一緒になつて目的を達することができるということを自覚しつつ前進する。

これらの目的を達するため米国は,諸君が海軍兵学校生徒として,このアナポリスで十分学びとつた特質-勇気,献身,理想主義,それから自己修養-をきびしく要求するであろう。この故にこそ,米国は諸君にそんなに大きな期待を寄せ,又諸君はそれ程多くの寄与をなし得るのである。

私は,諸君にお祝いの言葉をのべ,又諸君及び私が我々の前にある任務と我々が奉仕すべく誓った米国にふさわしいものとなるよう神への祈りを捧げつつ諸君とお別れする。

御清聴有難う。

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(5) 第11回ASEAN閣僚会議共同コミュニケ要旨

(1978年6月16日,パタヤ)

1. 各外相はヴィエトナム・カンボディア間紛争の継続及び中国・ヴィエトナム間の緊張の増大に懸念を表明し,これらの問題が関係国によつて平和的手段により近い将来に解決されるべき旨の希望を表明した。

2. 各外相は東南ア中立地帯構想の実現に対するASEAN諸国のコミットメントを再確認した。またASEAN諸国と域内他の諸国との間の接触に満足の意を表明し,この接触の促進に合意した。同構想に対し国際的承認を得るため努力すべき旨合意した。

3. 各外相はインドシナ難民の第三国に対する再移住の促進に関しUNHCR(国連難民高等弁務官)その他の機関が迅速な措置をとるよう呼びかけた。

また,同難民のASEAN諸国への流入が減少していないことに対し重大な懸念を表明し,国際社会が難民の再移住に関し,一層の共同努力をし,ASEAN諸国の重荷を軽減するよう呼びかけた。

4. 会議は,ASEAN協力の促進に関し,経済閣僚会議の効果的役割を高く評価し,特に71品目及び755品目の特恵関税に合意したことに注目した。また,ASEAN工業プロジェクトに関する基本協定,インドネシアの尿素プロジェクト及びマレイシアの尿素プロジェクトに関する二つの補足協定を承認した。これら諸協定は,各国の憲法手続が完了した後,各国外相により署名される。

5. 会議はASEAN海底ケーブル建設計画の達成状況を了知した。

6. 各国外相は,ASEAN文化基金の設立に合意した。

7. 各外相は共通基金の設立及び個別商品問題の交渉の遅延に対し,失望の念を表明するとともに,同基金に関するグループ77の立場に対し完全な支持を表明した。

8. 各外相はMTN(多角的貿易交渉東京ラウンド)交渉において,米国,EEC,日本等がそのオファーを改善し,この交渉が具体的かつ意味ある成果を上げるよう求めた。

9. 第2回ASEAN・米国ダイアログが閣僚レベルで8月3,4日の両日ワシントンで開催される。また,会議は来る11月20日,ASEAN・EEC間の閣僚会議を開催することに合意した。また,各外相は豪州,カナダ,日本,ニュー・ジーランド,国際機関との協力関係の進展に満足の意を表した。

10. 会議は一部の開発途上国乃至そのグループからアプローチのあつたASEANとの対話を樹立したい旨の申入れに対しては,適当な考慮を払うべき旨合意した。

11. パプア・ニューギニアのオレワレ外相が開会式にオブザーバーとして出席した。

12. 次回閣僚会議は,1979年にインドネシアで開催される。

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(6) 第11回米韓安全保障協議会共同声明(仮訳)

(1978年7月27日,サンディエゴ)

1. 第11回米韓安全保障協議会は,1977年7月25,26日の韓国ソウルでの年次安全保障協議会における韓国及び米国の合意にもとづいて,1978年7月26,27日カリフォルニア,サンディエゴで開催された。

ハロルド・ブラウン国防長官,盧載鉉国防部長官,米統合参謀本部議長,デービッド・C・ジョーンズ将軍,韓国合同参謀本部議長・金鍾煥将軍及びその他両国政府の外務,国防省の幹部がこの会に参加した。

会に先立ち,盧長官一行は,国防長官の招待により,米国の各種軍事基地及び国防産業施設に対する,有益かつ建設的な訪問を行つた。

2. 両長官は,アジア・太平洋地域の安全保障の情勢特に,韓国及び米国の安全保障を強調しつつ広範に意見を交換した。

双方は韓国に対する軍事的脅威について,共同で評価し,その脅威に対処するための,韓国と米国の連合防衛力について注意深く分析した。また,北朝鮮が近代兵器の増加と自らの軍事産業の拡大によつて,その攻撃的軍事能力を増強しつづけていることに留意し,両長官は北朝鮮の韓国に対する全般的な軍事的脅威は依然重大である旨合意した。

3. 韓国の防衛態勢について緊密に分析した後,両長官は,朝鮮半島における戦争再発を防止する為,韓国が防衛力を十分な水準に維持することが緊要であるとの結論に達した。双方は,韓国の防衛力の発達は,朝鮮半島における軍事的バランスを維持するために重要な役割を果すのみならず,北東アジア地域全体の平和と安定に対して明確な貢献を果すものである旨,留意した。

4. ブラウン長官は米国の韓国に対する防衛公約の保証と,米地上戦闘部隊の撤退計画の部分的修正は韓国に対する米国の防衛公約と朝鮮半島における米国の基本的な防衛戦略のいずれについても如何なる変化も意味しないとのカーター大統領の1978年4月21日の特別声明を再言するとともに,盧長官に対し1954年の米韓相互防衛条約は依然完全に有効であり,条約に従つて,武力攻撃に際し,韓国を防衛するため迅速かつ効果的な支援を行うとの米国の決意は強固なものである旨保証した。これに関連してブラウン長官は韓国が引続き米国の核の傘の下におかれていることを再確認した。

ブラウン長官は,北朝鮮もその他の国も米国の継続した強固な防衛公約について疑いや誤解を持つべきではない旨明らかにした。

5. 両長官は米地上戦闘部隊の撤退は,その地域の平和と安定及び朝鮮半島における軍事バランスを保つやりかたで行われる旨合意した。

盧長官は,米国はバランスに重大な変化を及ぼす情勢について,韓国と緊密に協議し分析して,必要な場合には計画を修正する旨のブラウン長官の保証を歓迎した。

6. 両長官は,韓国からの米地上戦闘部隊の第一陣撤退の実施について,両国政府間で緊密な協議が行われたこと,及びこの種協議が引続き行われるべきことに合意した旨明らかにした。又この第一陣撤退として3,400人が1978年末までに韓国から撤退することを確認した。

両長官は,計画された撤退に関連して,補完措置が撤退に先立つて又は並行して実施される旨合意した。これに関連してブラウン長官は,在韓米空軍部隊の増強と米韓連合軍司令部の創設はこの地域における他の米国の軍事的プレゼンスとあいまつて韓国に対する侵略を防衛し抑止するとの米国の強い決意をあらわすものである旨述べた。ブラウン長官は米国は朝鮮半島周辺に海軍部隊の展開を継続する旨再確認した。

7. ブラウン長官は,米国は議会との協議とその承認の下に,韓国の防衛力の増強特に韓国軍戦力増強計画に対する積極的な支援を継続するつもりである旨,再言した。

ブラウン長官は更に,米国は最新の戦闘即応態勢を維持するため,韓国に対し,戦争予備物資の増強を続ける旨,盧長官に対し確約した。盧長官は,戦争予備物資の適切な備蓄を確立するための物資の提供が韓国にとつて必要である旨,説明した。

8. 韓国の防衛産業の発展に関連して,両長官は専門家の交換訪問を含む各種の手段を通じて,両国政府間の防衛産業の研究,開発分野における緊密な協力が行われていることを確認しつつ,韓国の防衛産業の発展と,それに関連した技術に対する双方の協力関係を発展させる方向で両国政府が緊密な努力を継続する旨合意した。

9. 両長官はティームスピリット78のような連合軍事演習は米韓の適正な防衛態勢の効率性を評価するに極めて効果的な意味をもたらすものであるとの結論に達した。

双方は,この種演習を毎年継続する旨,合意した。

10. 両長官は,韓国の防衛における作戦運用上の効率性を増大することを目的として,

1978年中に設置されることになつている米韓連合軍司令部は両国間の軍事協力の新しい時代を画すものであるとの所感を表明しつつ,両国政府は,常に,その作戦運用上の状況を共同で検討し,連合軍司令部の効率性を継続して高めることについて合意した。

両代表は,連合軍司令部が創設された後,両国政府は,その軍事委員会における緊密な協力と調整を通じ,米韓連合軍司令部を強化する旨合意した。

11. 両長官は,休戦態勢を維持するうえで,関係当事者間における唯一の既存の法的取り極めである休戦協定に替りうる他の取り極めがない限り,国連軍司令部は平和維持の機構としての働きを継続する旨,再確認した。

12. 両長官は,韓国に対する如何なる武力攻撃も成功することはありえないし又朝鮮問題の解決は,朝鮮半島の緊張緩和のための,全ての関係国の相互努力を通じてのみ達成されるものである旨明らかにした。これに関連して双方は,南北朝鮮間の不可侵協定に関する韓国の提案を含めた,朝鮮半島における緊張緩和と平和の確立の為に両国政府が提案してきた重要な政策について留意した。双方は,又,北朝鮮が,1973年に北朝鮮によつて中断された南北対話の再開に応ずることにより,朝鮮半島の平和的解決に対する態度を明確にすべき旨,勧告した。

これに関連して,ブラウン長官は,南北朝鮮間の経済協力機構の創設に関する1978年6月23日の朴大統領の提案に対し,米国政府を代表して歓迎の意を表明するとともに,北朝鮮が,この建設的提案に肯定的に対応すべき旨求めた。ブラウン長官は,又,米国は韓国の参加なしには,北朝鮮との,朝鮮の将来についての如何なる交渉にも応じない旨,述べた。

13. 双方は,年次安保協議会の重要性と成果について留意し,次回,年次安保協議会は韓国政府の招待により,1979年韓国において開催される旨,合意した。

14. 盧長官は,彼とその代表団に対し,米政府からもたらされた好意と歓待,ならびに本協議会の成功に貢献した卓抜な配慮について,ブラウン長官に対し感謝の意を表明した。

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(7) ASEAN・米国対話第2回会合共同プレス・ステートメント(仮訳)

(1978年8月4日,ワシントン)

ASEAN・米国対話第2回会合は,閣僚レベルで1978年8月2日より4日までワシントンで行われた。フィリピン外務大臣カルロス・P・ロムロ准将閣下がASEANのスポークスマンを勤めた。ASEAN各代表団は,インドネシアの経済・財政・工業担当調整大臣ウィジョヨ・ニティサストロ博士閣下,マレイシアの外務大臣アハマド・リタウディン閣下,シンガポールの外務大臣S・ラジャラトナム閣下及びタイの外務大臣ウパディット・パチャリャンクン博士閣下が団長であつた。米国代表団は,国務長官サイラス・ヴァンス閣下が団長であり,ブルメンソール,クレプス,バーグランド,シュレシンジャー各長官及びギリガンAID長官がメンバーであった。

ASEAN事務局長ダトゥク・アリ・ビン・アブドゥラ閣下も出席した。

カーター大統領は,ASEAN代表団を接見し,ASEANの目的と抱負に対する米国の強い支持を再確認した。大統領は,ASEANが地域の安定,経済成長及び社会の発展に協力的貢献を行うことによって,他に範を示していることに注目した。大統領は,ASEANが先進工業国と開発途上国間のギャップを埋めるため,保健と教育の向上,雇用機会の増大の如き共通問題の解決を求めるため,又農業と工業の生産性を高めるため行つている努力を称揚した。大統領は,ASEANが成功裡に育成してきたASEAN加盟諸国の経済力,団結及び協力を促進するため米国が引続き協力することを約した。

会合を通じ,ASEAN及び米国の代表団は,相互にとつて相手の重要性が益々大きくなりつつあることを認識し,相互の関係を強化する手段・方法を探求することで合意した。

米国は,東南アジアにおける本来の地域的集団としてのASEANの役割を歓迎し,同地域の平和と安定の基礎である同地域の人々の幸福と福祉に貢献するというASEANの目的を実現するため,ASEANを支援するとのコミットメントを確認した。

米国は,地域的協力のためのASEANの努力を支援するため他の先進諸国と共働する意向を表明した。

米国は,すべての国家と友好関係を促進するためASEANが払つている努力を評価した。

難民問題

ASEANと米国は,ASEAN諸国内にインドシナ難民がいることにより生じた重大な国際的人道問題を憂慮の念をもつて考察し,問題の公正かつ永続的解決を見出すため共同の国際努力が緊要であることについて意見の一致を見た。米国は,その努力を強化すること,又世界各国が更に多くのことを行うよう勧奨する上でASEANと協力することを約した。

新国際経済秩序

ASEANと米国は,公正な国際経済秩序達成のための共働努力を強く支援することを再確認した。双方は,世界経済が引続き回復することが,経済成長を促進する上で重要であることをともに強調した。双方は又,開発途上国にとつての輸出市場の必要性に特に留意しつつ,保護主義を抑制し,より開放された世界市場を促進することの必要を強調した。

特に関心を払うべき南北問題

米国及びASEANは,主要南北問題を専ら検討する来るべき国際諸会議において,建設的に協力することで合意した。ASEANと米国は,1974年マニラで開催される第5回国連貿易開発会議が国際的協力と理解を助長する機会を与え,公正な国際経済秩序達成への前進を促進する上で顕著なかつ効果的役割りを演ずるであろうという点で意見の一致を見た。双方は,更に国連の全体委員会会議に建設的に参加することの重要性につき見解を一にした。

共通基金及び一次産品総合プログラム

ASEAN及び米国は,UNCTAD事務局長が,事態と展望に関する分析に基いて,更に協議を行つた上で,共通基金会議再召集の日時を確定するよう同事務局長に要請するとの一次産品総合プログラム(the Integrated Program for Commodities (IPC))実施に関する特別委員会の決定を支持した。ASEAN及び米国は又,作業を1979年末或はそれ以前に完了することができるよう,個別一次産品に関する討議を促進すべきである旨強調した。

ASEANは,IPCの実施が全般的に進捗しないことに失望の意を表明した。特に,ASEANは,共通基金に関する交渉がその設置に至らず,個々の一次産品に関する交渉も現在のところ全般的に予備段階を出ていないのを遺憾とした。ASEANは,同地域の経済的福利にとつての一次産品の重要性を強調し,米国代表団とともに,共通基金設置及び個々の一次産品に関する取極の締結を妨げている諸問題を解決する可能性を探求した。米国は,共通基金交渉を速やかに妥結に向わしめるよう積極的に努力し,個々の一次産品に関する適当な取極乃至協定を締結するための討議及び交渉において,建設的役割を果すことを約した。

ASEAN及び米国の双方は,国際ゴム協定の検討の進捗ぶりに満足の意を表明した。米国は,他の一次産品市場の諸問題を分析し,これら諸問題を専ら対象とする可能的,国際的措置を指定する作業が,IPCにおいて進捗していることに留意した。

一次産品政策に関する討議は又,ASEAN諸国に特に関心ある原料を中心に行われた。ASEAN及び米国が,相互に関心ある種々の一次産品問題に関し,必要に応じ定期的に協議することが合意された。

米国は,貿易及び一次産品関係の諸制度が世界的に改善されることが,経済的成長と開発を達成する最も効果的手段であるとの見解を力説した。ASEAN諸国閣僚は,ASEANの輸出,可能な場合の特恵待遇による市場へのアクセス,不当な貿易制限に対する保護及び一次産品輸出所得の縮小を補完するための地域的STABEX(輸出所得安定化)型取極を促進するための援助の重要性を強調した。米国は,輸出所得安定化のための現在の手段が十分であるかどうかについてIMF/IBRD開発委員会による研究の継続をサジェストした。

貿易問題に関する意見の交換

米国とASEANは,一般特恵関税制度(GSP)の重要性と米国GSPスキームのASEAN及び他の開発途上国にとつての重要性に留意した。双方は,このスキーム及びその運営の改善を促すであろうASEAN及び他の開発途上国の多数のサジェスチョンに留意した。ASEANは,米国の同制度の幾つかの一層の改善を改めて要求し,米国はこの要求の検討に同意した。米国政府は,すべてのASEAN加盟国が米国のGSPに適格であるとされるようにとのASEANの要求に好意的である。

ASEAN及び米国は,多角的貿易交渉(MTN)の進捗ぶりを検討し,最近ジュネーヴで設定された12月15日の終結目標を達成するのが望ましいことを確認した。双方は,範囲内の多くの分野において合意を促進し,可能な最大限の貿易自由化を追求することを約した。双方は,特別かつ異なつた取扱いを通じて開発途上国の要請を更に十分考慮し,これら開発途上国の世界貿易体制への一層有意義な参加を保証する如き改善された,より開放的で非差別的な国際貿易機構の重要性を認識した。双方は,先進工業国が開発途上国の貿易,財政及び開発上の要請に矛盾した寄与を開発途上国に期待していないことを確認した。

ビジネス関係及び投資

ASEAN及び米国代表団は,ASEAN・米国間ビジネス関係の拡大に関し,又ASEANの経済開発における外国民間部門投資の役割に関し,意見を交換した。ASEAN及び米国は,ASEAN地域への投資を奨励することの重要性につき意見を同じくした。海外民間投資公社(Overseas Private Investment Corporation (OPIC))や米国輸出入銀行(U.S.Eximbank)の援助の如き,かかる投資を促進するための米国の措置は,有用な役割を演ずることができる。

この関連において,ASEANは,チャールズ・ロビンソン前国務副長官が団長となり,OPICによって組織される関心のある米国実業家のASEAN投資ミッションの同地域訪問についてラザフォード・ポウツOPIC総裁が行つた米国の声明を歓迎した。

米国は,ASEAN開発目標の達成に貢献する如きASEAN地域におけるビジネス上の接触と投資を促進する用意のあることを言明した。この目的に向つて,ASEANと米国は,ASEAN商工会議所及び米国商工会議所後援の下に,ASEAN・米国ビジネス評議会をできるだけ速やかに設立することを奨励することにつき合意した。

ASEANは又,米国輸出入銀行がASEAN工業プロジェクトの支援を考慮するであろうとの見通しならびに1978年11月における同銀行ジョン・ムーア総裁ASEAN諸国訪問の米側通告を歓迎した。

ASEANは,ASEAN工業補完スキーム及びASEAN諸国の工業プロジェクトヘの民間部門の参加を奨励するとのべた。米国は,これらプロジェクトヘの参加に関し,米国民間部門との話し合いを促進する用意があると言明した。

ASEAN及び米国代表団は又,米国会社の海外所得に対する課税繰延べ廃止案について討議した。ASEANは,かかる措置のもたらす悪影響に関し憂慮の念を重ねて表明した。

開発協力

米国は,一般的米国援助政策の枠内で,開発協力ASEAN地域プロジェクトの広い範囲にわたり参加する用意があることを再確認した。米国は,ASEAN植物保護計画,ASEAN流域保全・管理プロジェクト,ASEAN農業開発・計画センター設立及び教師,教育家,教科課程企画者のためのASEAN麻薬防止教育セミナーの4プロジェクトに関し,設計の段階に進む用意ある旨言明した。他の提案に関しては,その可能性の研究が実施される予定である。ASEANは,これら状況の進展を歓迎した。

ASEANは,米当局に対し,援助を条件づけている人間生活の基本的必要(basic human needs)政策が,同地域の特殊要件ならびに必要の変化に則応したものとなることを確保するよう要求した。

米国とASEANは又,食糧及びエネルギー問題で協力し,エネルギーに関する合同作業グループを設置することで合意した。

米国は又,科学と技術の分野でASEANと協力する意向を表明した。この協力は,第一義的にはASEAN固有の科学・技術のインフラストラクチャ及び能力を向上させることを目的とするであろう。

ASEAN及び米国代表団は,先進工業国及び開発途上国双方の国民の健康に対する麻薬の危険性が増大していることを認め,この問題を解決するための支援を増加することを約した。この努力の一部として,米国はASEAN諸国に対する2国間及び多国間の援助を継続し,麻薬の弊害を防止し抑制する措置を強化し拡大することに同意した。

会議は,上記諸提案に関し協議を続けることで合意した。

教育及び文化に関するASEAN・米国間協力

ASEANと米国の国民及び教育機関の間で接触の機会と範囲を拡大するため協力することについて,意見の交換が行われ,合意が得られた。米国は,ASEANの文化プログラムと教育関係プロジェクトに対する支持を表明した。この協力の付託条項を定めるため同地域内でなるべく速やかに会合するとのASEANの提案に米国は同意した。

ASEAN・米国対話第2回会合は,すべての参加者により,ASEANと米国間の友情と緊密な結び付きを更に強化する重要な一歩と認められた。同会合は,ASEANと米国の指導者達に対し,同地域の発展と繁栄のための共通目標を追求するための協力に関して会合し協議する機会を提供した。ASEANと米国は,永続的で広範かつ相互に有益な関係を強化するため引続き努力し,又このため,更に積極的な経済協力を促進する措置を講ずることで合意した。

双方は,ASEAN・米国対話次回会合を,双方が合意する期日にASEAN地域内で来年開催することにつき合意した。

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(8) 国連軍縮特別総会最終文書概要

(1978年10月30日,ニュー・ヨーク)

     特別総会最終文書は,序文,宣言,行動計画,機構の四部から成るが

     以下は,宣言,行動計画,機構の部分の概要である。

<宣 言>

1. 回顧と評価

人類は今日,破壊兵器の大量な蓄積により先例のない自滅の脅威に直面している。真の永続する平和と安全保障は,軍事同盟による兵器の蓄積によってではなく,国連憲章に規定されている安全保障体制の効果的な実施と,究極的には全面完全軍縮に導く,国際取決めによる兵器,軍備の実質的削減によつて創り出される。

2. 目標と優先順位

軍縮の究極的な目標は,効果的な国際管理下での全面完全軍縮であり,この目標への前進のためには諸国の安全を守る必要性を考慮に入れ,軍備競争の停止と真の軍縮措置に関する協定の締結およびその履行が必要である。そのような措置の中では核軍縮と核戦争の防止が,最も優先度が高い。また,大量破壊兵器の禁止に関連して化学兵器の廃絶も高い優先度を有する。さらに関係国の安全保障を低下させない等の原則に基づき,通常兵器の均衡のとれた削減,通常兵器の国際移転の制限に関しても交渉がなされるべきである。

3. 原則

軍縮の分野における交渉と措置は,次の基本原則に則つて行われるべきである。

(1) 国連は,軍縮の分野で中心的役割と第一義的責任を有する。

(2) すべての国は,軍縮努力に貢献する義務があるとともに,軍縮交渉に参加する権利がある。

(3) 軍縮措置の採択は安全に対する各国の権利を確保し,また公平かつ均衡のとれた態様により行われねばならない。

(4) 軍縮および軍備制限に関する取決めにはすべての当事者が満足する検証措置が規定されるべきである。

(5) 軍縮の結果として解放される資源は,すべての国の経済,社会発展にむけられるべきである。

<行動計画>

1. 目的および優先事項

(1) この行動計画は,軍備競争を停止し,これを逆転させ,また効果的な国際的管理下での全面完全軍縮に導く真の軍縮を達成しようとする努力に,必要なはずみを与えることを目的として,諸国家が緊急の課題として着手すべき軍縮分野における優先事項と措置を含むものである。

(2) 軍縮交渉における優先事項は,核兵器,化学兵器を含む他の大量破壊兵器,過度の傷害を与えるかまたは無差別な効果を有すると見なされるものを含む通常兵器,および兵力の削減である。

2. 短期的措置

(1) 核軍縮

(総 論)

(イ) 核軍縮の分野における究極的な目標は,核兵器の完全な廃絶である。この目標を達成するに当つて,全ての核兵器国は特別の責任を有する。

(ロ) 核軍縮の過程は,核兵器国とその他の関係国の既存の兵器庫の相対的な質的,量的重要性を考慮に入れながら,すべての国家の安全が,漸次,より低い核兵器の水準で保障されるような方法で実施されるべきである。

(ハ) 核軍縮を達成するには適当な段階において,十分な検証措置を伴う次の諸点についての交渉を必要とする。

(i) 核兵器体系の質的改善と開発の停止。

(ii) すべての型の核兵器とその運搬手段の生産及び兵器目的の核分裂性物質の生産の停止。

(iii) 核兵器とその運搬手段の貯蔵をできるところから漸進的かつ均衡的に削減するための包括的,段階的計画。

(ニ) 包括的核実験禁止条約およびその不可分の一体である平和目的核爆発についての議定書に関する目下進行中の交渉が速やかに妥結されるべきである。

(ホ) 米ソ間の第2次戦略兵器制限交渉(SALT・II)が早期に妥結されるべきである。

(核不使用)

(イ) 核戦争と核兵器使用の危険に対する最も効果的な保証は,核軍縮と核兵器の完全な廃絶である。

(ロ) それに向つての交渉が追求されるべきであるが,この目標の達成までの間,核兵器国は,国連憲章の諸規定に従い,核兵器の使用を含む国際関係における武力の使用を防止することを目指した諸措置を講ずる特別の責任を有する。

(ハ) この関連において,核兵器国は,核兵器使用の回避を目的とする諸提案を速やかに検討すべきである。また核兵器の使用または威嚇が行われないよう,非核兵器国に保証を与えることが要請される。

(非核地帯)

(イ) 関係地域の諸国間で自由に到達した取決めを基礎とする非核兵器地帯の設定は,重要な軍縮措置である。

(ロ) 核兵器国は,特に,非核兵器地帯の地位を厳格に尊重し,また,こうした地域の諸国に対し,核兵器の使用または使用による威嚇を慎しむことを約束することが要請される。

(平和地帯)

(イ) 世界の各地域において,適当な条件の下に,各地帯の性格と国際連合憲章の諸原則を考慮し,また国際法に従い,明確に定義され,かつ各地帯の関係諸国により自由に決定される平和地帯を設定することは,その地帯の諸国の安全を強化し,国際の平和と安全に役立ち得る。

(ロ) 総会は,特に,東南アジアとインド洋に平和地帯を設置するとの提案に留意する。

(核不拡散)

(イ) 核不拡散の目標は,新たな核兵器国の出現を防止するとともに,核兵器を漸次削減し究極的にはこれを廃絶することである。これは,核兵器国および非核兵器国双方に義務と責任を伴う。

(ロ) 核兵器国と非核兵器国は普遍的かつ無差別に核兵器の拡散を防止するための方法につき国際的コンセンサスをつくる努力を共同で行う。

(ハ) 核兵器の不拡散に関する条約や,ラテン・アメリカにおける核兵器の禁止に関する条約のような,現存する核不拡散に関する条約のすべての規定の完全な実施は,そのための重要な貢献となろう。

(ニ) 核不拡散措置はすべての国がその必要性等に応じて原子力平和利用計画を推進する奪い得ない権利を阻害してはならない。

すべての国は,原子力平和利用の技術,設備,資材を自由に入手することができる。

この分野における国際協力は国際原子力機関(IAEA)を通じて適用される合意された適当な保障措置の下で行われなければならない。

(2) その他の大量破壊兵器

あらゆる化学兵器の開発,生産,貯蔵およびその安全かつ効果的な禁止とその廃棄は,最も緊急な軍縮措置の一つである。従つて過去数年にわたり交渉が行われている。この目的のための条約を緊急に締結する必要がある。

(3) 通常兵器

(イ) 核軍縮措置に関する交渉と共に,兵力および通常兵器の制限並びに段階的削減も追求されるべきである。

(ロ) 通常兵器のあらゆる種類の国際移転の制限に関して,特に当事国の安全保障が損なわれないという原則に基づき,主要武器供給国と受領国の間で協議が行われるべきである。

(ハ) 不必要な苦痛を伴い,または無差別な効果を有するものを含む特定通常兵器については,1979年に開催される国連会議において,その使用禁止もしくは制限に関する合意を追求すべきである。

(4) 軍事費削減

(イ) 各国特に核兵器国およびその他の軍事的に重要な国の軍事予算を段階的に削減することは,軍備競争の停止に貢献し,資源を経済・社会開発に再配分する可能性を増大させる。

軍事予算の削減にあたつては諸国の提案を考慮し,またすべての国にとつて受諾しうる手段と方法で行う必要がある。

3. 検証および信頼醸成措置

(1) 軍縮協定の締結と効果的な実施を促進し,また信頼を醸成するために,協定中に適当な検証規定が設けられるべきである。

(2) 軍縮への過程を促進するため,偶発戦争防止のためのホットラインの設置等の信頼醸成措置がとられるべきである。

4. 軍縮と開発

現在軍事目的に使用されている資源を世界の経済・社会開発,特に開発途上国のために解放する必要性を考慮し,国連事務総長は,軍縮と開発の関係を研究し,第36回国連総会に最終報告を提出する。

5. 研究,情報の普及および教育

(1) 事務総長が,政府専門家等の援助を得て軍縮の分野の研究を実施することは,一層の軍縮措置をとることを容易にする。

(2) 第33回およびその後の総会は,特別総会に提出された提案を含む諸提案を考慮に入れ,研究を実施するための明確なガイドラインを決定すべきである。

(3) 総会は,国際連合創設の日である10月24日からの1週間を軍縮の目的を促進するための週間と宣言する。

6. 包括的軍縮プログラム

(1) 軍縮委員会は,効果的な国際管理下における全面完全軍縮の目標が現実のものとなることを確保するために,適当と考えられるあらゆる措置を含む包括的軍縮プログラムを作成する。

(2) 軍縮の進展は,平和維持と国際紛争の平和的解決のための機構を強化する措置を伴わなければならない。全面完全軍縮計画の実施中または実施後に,国連憲章の諸原則に従い国際の平和と安全の維持に必要な措置がとられるべきである。

(3) 厳格かつ効果的な国際管理の下における全面完全軍縮においては,諸国は,国内秩序の維持および市民の個人的安全の確保,ならびに国際連合平和軍のための要員の支援提供に必要な非核兵力,武器,施設および設備をその利用に供すべく所有することを認められる。

<機 構>

1. 総 論

(1) 軍縮の分野においては,最大限の効率を確保するため,審議と交渉という2種類の機関が必要である。前者にはすべての国が参加し,一方,後者は便宜のため比較的少数の国の参加とすべきである。

(2) 国連は,憲章に従い,軍縮の分野において中心的役割と第一義的責任を有する。

従つて国連は,この分野で,より積極的役割を演ずるべきである。

2. 軍縮審議機関

(1) 国連総会は,軍縮分野における国連の主要な審議機関であったし,今後もそうあるべきであり,また軍縮措置の実施を容易にするため,あらゆる努力をなすべきである。

(2) 総会の第一委員会は将来軍縮問題および関連する国際安全保障問題のみを取り扱うべきである。(註:従来は軍縮問題のほか,政治,安全保障,科学技術を審議)

 (3)(イ) すべての国連加盟国が参加する審議機関として国連軍縮委員会(UN Disarmament Commission)を設置する。この委員会は1950年12月の国連決議で安全保障理事会の下に設置された国連軍縮委員会(註:実質的には現在休眠状態)を継承するものであり,通常総会の補助機関である。

  (ロ) 委員会は,特に総会に対し,または,総会を経由して交渉機関に対し,勧告としては提出される包括的軍縮プログラムの要素を審議する。

  (ハ) 委員会は毎年通常総会に報告を行う。

  (ニ) 委員会は1979年に4週間を越えない期間会合する。日取りは次回通常総会で決定する。

3. 軍縮交渉機関

(イ) 軍縮委員会は,今回の特別総会会期中に加盟国間で協議の結果到達した次の合意を歓迎する。

(ロ) 軍縮委員会(Committee of Disarmament)は,すべての核兵器国と,第32回総会議長(註:特別総会議長でもあるユーゴのモイソフ外務次官)と協議の上選ばれるその他の32~35カ国に開放される。(註:従つて新軍縮委員会は37~40カ国となる。現軍縮委員会は31カ国であるがフランスは常に不参加)

(ハ) 委員会の構成については定期的にレビューする。

(ニ) 委員会は遅くとも,79年1月にジュネーヴで招集される。

(ホ) 委員会はコンセンサスで作業を行う。

(ヘ) 議長は全メンバーの間で毎月交代する。(註:現在の米ソ共同議長制は廃止)

(ト) 非構成国に対し,文書提出,討議参加,見解表明を一定条件の下で認める。

4. その他

(1) 第2回の軍縮特別総会は第33回総会によつて決定される時期に開催される。

(2) 国連の賛助の下で行われる研究につき事務総長に助言するため,個人の識見および地域的衡平を考慮して選ばれた著名人よりなる諮問委員会を設置する。

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(9) ソ連・ヴィエトナム友好協力条約(仮訳)

(1978年11月3日,モスクワ)

ソヴィエト社会主義共和国連邦及びヴィエトナム社会主義共和国は,

両国間に存在する全面的協力の緊密な兄弟的関係,マルクス・レーニン主義及び社会主義的国際主義の原則に立つゆるぎない友好と団結に立脚し,

ソヴィエト社会主義共和国連邦とヴィエトナム社会主義共和国の間の団結と友好の全面的強化は,両国人民の根本的利益にかなうものであり,社会主義共同体諸国の兄弟的団結と統一の一層の強化に役立つものであると強く確信し,

社会主義的対外政策の諸原則と目的,社会主義と共産主義建設のための最も良い条件を確保しようとの意欲を指針とし,

双方は,両国人民の英雄的努力と無私の労働によつて達成された社会主義の成果の強化と防衛について相互に援助することをその国際主義的義務とみなし,

平和,民族独立,民主主義及び社会進歩のために闘うすべての勢力の団結を強く支持し,

アジアと全世界の平和の強化を促進し,異なる社会体制を有する諸国間の良好な関係と互恵的協力の発展に貢献するとの固い決意を表明し,

両国間の全面的協力の発展と完成の継続に努め,

両国関係の条約的・法的基礎の一層の発展と強化を重視し,

国連憲章の目的と原則に従つて,

この友好・協力条約の締結を決意し,次のとおり合意した。

第1条 両締約国は,社会主義国際主義の諸原則に基づき,今後ともゆるぎない友好,連帯及び兄弟的相互援助の関係を強化するであろう。両国は,国家の主権と独立の相互尊重,平等及び相互の内政不干渉を基盤とする政治関係を不断に発達させ,全面的協力を深め,相互にあらゆる支持を与える。

第2条 両締約国は社会主義及び共産主義の建設の促進及び両国国民の物質的文化的生活水準の不断の向上のために,互恵的な経済及び科学・技術協力の強化と拡大のために協力する。両国は,国民経済計画の長期的調整を継続し,経済,科学及び技術の最も重要な分野の発展に関する将来にわたる処置を調和させ,社会主義及び共産主義の建設において蓄積された知識と経験を交換する。

第3条 両締約国は,国家権力機関及び公共団体の間の協力を促進し,科学及び文化,教育,文学及び芸術,出版,ラジオ及びテレビ,保健,環境保全,観光,体育とスポーツ,その他の分野における広範な交流を発展させる。両国は,両国の労働者の接触の発展を促進する。

第4条 両締約国はあらゆる手段をつくし,首尾一貫してマルクス・レーニン主義と社会主義国際主義の基礎に基づき社会主義諸国間の兄弟的関係,統一と連帯の一層の強化のために戦うものである。

両締約国は,世界的社会主義体制の強化のために全力をつくし,社会主義の成果の発展と擁護のために積極的な貢献をなすであろう。

第5条 両締約国は,今後とも国際平和と諸国民の安全の擁護のためあらゆる努力をし,帝国主義及び反動勢力のあらゆる陰謀と好計に積極的に対決し,あらゆる形態と表現における植民地主義と人種差別主義の最終的根絶に対する正当な闘争を支持し,非同盟諸国と,アジア,アフリカ,及びラテン・アメリカ諸国民の帝国主義,植民地主義及び新植民地主義反対闘争,独立強化,主権擁護,自己の天然資源を自由に処理する権利,不平等,専制及び搾取から解放された国際経済関係の確立のための闘争に支援を与え,東南アジア諸国民の平和,独立及び彼等の間の協力への意欲を支持する。

両締約国は,平和共存の原則に基づく社会体制の異なる諸国間の関係の発展,国際関係における緊張緩和の過程の拡大と深化,平和と民族独立,民主主義と社会主義のため諸国民の生活からの侵略と侵略戦争の最終的排除に一貫して賛成する。

第6条 両締約国は,両国の利益に関係するすべての重要な国際問題につき,互いに協議するものとする。一方の締約国が攻撃あるいは攻撃の脅威の対象となつた場合には,両締約国は,かかる脅威を除去し,両国の平和と安全を保障する適切な効果的措置をとるため,遅滞なく相互協議を始めることとする。

第7条 本条約は,両国が参加して締結された現行の2国間及び多国間協定にもとづく双方の権利と義務を害するものではなく,また如何なる第三国に対するものでもない。

第8条 本条約は批准されなければならず,できる限りすみやかにハノイ市で行われる批准書交換の日に効力を生ずる。

第9条 本条約は,25年の期間につき締結され,一方の締約国が当該期間の満了する12カ月前に通告をもつてその効力を停止する旨の意思を言明しない場合には自動的にその都度10年の期間延長される。

1978年11月3日にモスクワでひとしく正文であるロシア語とヴィエトナム語により本書2通を作成した。

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(10) 第52回OPEC総会プレス・リリース(仮訳)

(1978年12月17日,アブダビ)

第52回OPEC総会は,1978年12月16日より17日まで,アラブ首長国連邦アブダビにおいて開催された。総会は,アラブ首長国連邦石油・鉱物資源大臣であり同国の首席代表であるマナ・サイード・アル・オタイバ博士閣下を全会一致で議長に選出した。インドネシアの鉱山・エネルギー大臣であり同国の首席代表であるスブロト教授閣下が副議長に再選された。

総会は,経済委員会理事会の報告を検討し,過去2年にわたる高率のインフレーション及びドル価値の低下並びにそれ故に生じている加盟諸国の石油収入の大幅な減少及び加盟諸国の経済的・社会的発展に対する悪影響につき大きな憂慮の念をもつて留意した。

然し乍ら,世界経済が一層成長することをたすけ,また,米ドルを強化し,インフレーション傾向を阻止するための現在の努力を支持するため,総会は1979年を通じて平均10%の値上げにより石油価格を部分的にのみ是正することを決定した。更に,善意の現われとして,総会は,この是正が累積ベースに基づく次のような四半期毎の調整に細分されることを決定した。

1979年1月1日に5%

1979年4月1日に3.809%

1979年7月1日に2.294%

1979年10月1日に2.691%

例えば,これらの調整を基準原油に適用すると,価格は次のようになろう。

1979年1月1日より 13.335ドル

1979年4月1日より 13.843ドル

1979年7月1日より 14.161ドル

1979年10月1日より 14.542ドル

他方,総会は,若しインフレーション及び通貨不安が継続し,このようにして加盟諸国の石油収入に悪影響を与え,またこの重要かつ枯渇する資源の浪費を助長する場合には,このようなインフレーション並びにドル価値低下の影響を完全に調整することが不可欠になるであろうことに留意する。

総会は,一次産品総合プログラムの合意された目的を達成するための中心的手段としての共通基金の設立に対するOPECの大蔵大臣の全面的な支持を再び表明する。先月ジュネーヴに於いて開催された交渉会議における進展に鑑み,総会は,懸案となつている問題が満足に解決されるよう深甚な希望を表明した。

総会は,1979年のOPECの予算を承認した。

総会は,1979年の理事会議長として,アラブ首長国連邦理事アブドゥル・イスマイル氏を,また,副議長として,ヴェネズエラ理事ホセ・マニュエル・ティネオ氏を任命した。

総会は,エクアドルのルネ・G・オルティス・D氏を,1979年1月1日から2年間OPECの事務局長に,任命した。

総会は,辞任する事務局長アリ・M・ジャイダ閣下に対し,在任中のOPECに対する卓越した尽力につき感謝の意を表明した。

総会は,アラブ首長国連邦政府に対して,その暖かい歓待と能率的な会議の運営に対し深甚なる謝意を表明した。

総会は,加盟各国の批准を得た後,1979年1月17日に公表される予定の諸決議を採択した。

次回通常総会は,1979年の6月前半に開催される。

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(11) 米中関係正常化関連文書

(イ) アメリカ合衆国と中華人民共和国との間の外交関係樹立に関する共同コミュニケ(仮訳)

                   (1979年1月1日)

アメリカ合衆国及び中華人民共和国は,1979年1月1日付けで,相互に承認し及び外交関係を樹立することに合意した。

アメリカ合衆国は,中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。この範囲内で,合衆国の人民は,台湾の人民と文化,商業その他の非公式な関係を維持する。

アメリカ合衆国及び中華人民共和国は,上海コミュニケで双方が合意した諸原則を再確認するとともに,次のことを再び強調する。

一 双方は,国際的軍事衝突の危険を減少させることを願望する。

一 いずれの側も,アジア・太平洋地域においても又は世界の他のいずれの地域においても()権を求めるべきではなく,また,このような()権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対する。

一 いずれの側も,いかなる第三者に代わつて交渉し,又は第三国に向けられた合意若しくは了解を他方の側と行う用意もない。

一 アメリカ合衆国政府は,中国はただ一つであり,台湾は中国の一部であるとの中国の立場を認める。

一 双方は,米中関係の正常化は,中国及びアメリカの人民の利益に合致するのみならず,アジアと世界の平和に貢献するものと信ずる。

アメリカ合衆国及び中華人民共和国は,1979年3月1日に,大使を交換し及び大使館を設置する。

(ロ) 米中関係正常化に関するアメリカ合衆国声明(仮訳)

(1978年12月15日,ワシントン)

1979年1月1日付けで,アメリカ合衆国は,中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であることを承認する。同日に,中華人民共和国は,アメリカ合衆国に対して同様の承認を与える。合衆国は,これにより中華人民共和国と外交関係を樹立する。

同じく1979年1月1日に,アメリカ合衆国は,台湾に対し,外交関係を終了させること及びアメリカ合衆国と中華民国との間の相互防衛条約が同条約の規定に従い終了されることを通告する。合衆国は,また,4箇月以内に台湾より残存軍人を撤退させることを声明する。

将来,アメリカの人民及び台湾の人民は,商業,文化その他の公式に政府を代表せず,かつ,外交関係を伴わない関係を維持する。

行政府は,正常化の後の新しい環境における商業,文化その他の非政府関係の維持を可能にするため,国内法令の調整を求めるであろう。

合衆国は,台湾の人民の将来が平和的かつ繁栄的なものになることを確信する。合衆国は,台湾問題の平和的解決に引き続き関心を有し,台湾問題が中国人民自身により平和的に解決されることを期待する。

合衆国は,中華人民共和国との外交関係の樹立が,アメリカの人民の幸福,合衆国が主要な安全保障上及び経済上の関心を有するアジアの安定並びに全世界の平和に貢献するものと信ずる。

(ハ) 米中正常化に関する中華人民共和国政府声明(仮訳)

(1978年12月16日,北京)

中華人民共和国とアメリカ合衆国は,1979年1月1日より相互に承認し及び外交関係を樹立し,これにより両国関係の長期にわたる不正常な状態に終止符をうつた。これは,中米両国関係における歴史的な出来事である。

周知のように,中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府であり,台湾は中国の一部である。台湾問題は,かつて中米両国関係正常化実現を阻むかなめの問題であつた。上海コミュニケの精神に基づき,中米双方の共同の努力により,現在この問題は中米両国間で解決をみることができ,これにより中米両国人民が熱望してきた両国関係正常化が実現した。台湾の祖国復帰を解決し,国家統一を完成する方式については,これは全く中国の内政問題である。

中米両国人民の友情と両国の良好な関係の一層の発展を促進させるため,中華人民共和国国務院トウ小平副総理は米国政府の招待に応じて1979年1月に米国を公式訪問する。

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(12) ASEAN外相会議のインドシナ問題に関する共同声明(仮訳)

(1979年1月13日,バンコック)

東南アジア地域の平和と安定に対する現下の脅威に対し,ASEANの団結と結束を示すことを決意し,また相互の独立,主権,領土保全を尊重し同地域における平和と安定の維持強化に協力するとのヴィエトナムのASEAN加盟国に対する誓約を想起し,ASEAN加盟国外相は12,13の両日バンコックで会合し,次のとおり合意した。

(イ) ASEAN諸国外相は,9日,ジャカルタにおいてASEAN常任委員会議長としてインドネシア外相が発表したヴィエトナム,カンボディア両国間の武力紛争拡大に関する声明を再確認した。

(ロ) ASEAN諸国外相は,カンボディアの独立,主権,領土保全に対する武力干渉を強く遺憾とした。

(ハ) ASEAN諸国外相は,カンボディア人民が民族自決権の行使にあたつて,外部勢力からの干渉もしくは影響を受けることなく,自らの将来を決定するカンボディア人民の権利を確認した。

(ニ) この目的に向けて,ASEAN諸国外相はカンボディア領土からの外国軍隊の即時全面撤退を要求した。

(ホ) ASEAN諸国外相は,インドシナ情勢を遅滞なく審議するとの国連安全保障理事会の決定を歓迎するとともに,安保理に対し,この地域における平和,安全及び安定を回復するため必要かつ,適切な措置を講ずるよう強く要請した。

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(13) 南北朝鮮対話資料

(イ) 朴大統領提案要旨       (79年1月19日年頭記者会見,ソウル)

「いつなんどき,如何なる場所,如何なるレベルであるかを問わず,南北当局が何らの前提条件なしに,如何にして同族が相争う悲劇を防止し,5千万民族の繁栄をなしとげ,統一を達成するか,従来南北当局が提示してきたすべての問題につき直接対話を持つことを促す。」

(ロ) 北朝鮮の祖国統一民主主義戦線中央委員会の4項目の提案

     (79年1月23日,平壌)

(あ) 7・4南北共同声明(自主的・平和的・民族的大団結)の原則に立ち戻る

(い) 誹謗と中傷の停止

(う) 軍事行動の無条件停止(本年3月1日午前零時を期して軍事境界線における軍事行動の停止)

(え) 南北全民族大会の招集(本年9月初旬,平壌あるいはソウルで開催,その準備のため6月初旬に平壌で予備会談を開く)

(ハ) 韓国政府声明要旨            (79年1月26日,ソウル)

(あ) 相互の誹謗・中傷の中止,武力衝突事件の防止を含め,北朝鮮側が7・4共同声明(1972年)の理念と原則を遵守することを再確認した点を評価する。

(い) (1972年の場合と同様に)今後の南北対話も双方の責任ある当局の間で行われるべきである。

(う) 本年6月まで待つことなく,ソウルもしくは平壌において南北当局間の予備会談の開催を提案する。

(え) 直接責任ある北朝鮮当局の回答を期待する。

(ニ) 北朝鮮の祖国統一民主主義戦線中央委員会書記局声明要旨

    (79年1月27日,平壌)

1. 1月26日の韓国政府声明は,北朝鮮提案に対する肯定的反応を示したものである。

2. 実務級代表の会談を可能な限り早目に4月初旬に招集することを提案する。

3. 適切な時機に実務級代表の会談のための招請状を北と南の全政党,団体と各界人士,海外のあらゆる組織の代表と個別的人士,そして双方の当局に発送する。

4. 実務級代表の会談が開かれるならば,全民族大会招集問題は容易に解決する。

5. われわれは既に相手方に対する誹謗,中傷を中止しはじめている。南朝鮮側も同様の措置をとるべきである。

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