-科学技術問題-

第6節 科学技術問題

1. 宇宙空間の平和利用

(1) 今や宇宙空間の平和利用は人類にとつて不可欠となつており,米・ソをはじめとする各国は宇宙開発を積極的に推進しているが,わが国も通信,放送,気象観測などの分野において実用衛星の打上げを行うなど活発な活動を行つている。

(2) 国連宇宙空間平和利用委員会(構成国数47)は,78年においては,「直接テレビジョン放送のための人工衛星の利用を律する原則案」,「月条約案」,人工衛星による地球の遠隔探査(リモートセンシング)に関する問題,第2回国連宇宙会議開催問題,78年1月のソ連原子力衛星のカナダへの落下を契機とする原子力衛星の安全性問題などについて審議を行つた。その結果,わが国,カナダなどの努力が実を結び,原子力衛星の安全性問題が79年の科学技術小委員会の議題として採択されたほか,月条約案について今後のたたき台となる案が作成され,また,第2回国連宇宙会議を83年以前に開催すべきことが国連総会に勧告された。第33回国連総会は,この勧告を受け入れるとともに,宇宙空間平和利用委員会に対し上記諸問題の検討の継続を求める宇宙オムニバス決議を採択した。

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2. 南極をめぐる国際協力

(1) 61年の南極条約原署名12カ国及び南極条約加入国で実質的な科学研究活動を行つているその他の加盟国(現在ではポーランドのみ)は,南極地域での共通の利害関係事項について協議し,必要な措置を勧告するために,2年ごとに南極条約協議会議を開催している。従来の会議が南極地域の環境保全,科学調査のための国際協力を主要問題としていたのに対し,最近では鉱物・生物資源問題に強い関心が示されるに至つた。

(2) 77年9月に開催された第9回協議会議の勧告に従い,78年2月にはキャンベラ,7月にはブエノスアイレスで,2回にわたり「おきあみ」を中心とする南極生物資源の保存・利用のための条約案作成につき協議会議特別会合が開催され,条約の内容の大筋につき協議国の間に合意をみたが,若干の調整を要する問題が残つており,その後外交経路を通じ協議が続けられている。本条約は鯨,アザラシなど既存の国際協定に基づきすでに規制されている生物資源を除く南極海洋生態系を対象とするもので,科学的データに基づく保存と合理的な利用を委員会を通じ国際協力によつて解決しようとするものである。

また,鉱物資源の探査・開発問題は,79年9月ワシントンで開催予定の第10回協議会議で中心議題の1つとして話し合われることとなつている。

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