-国際通貨・金融問題-

第3節 国際通貨・金融問題

1. 国際通貨情勢

(1) 1978年の国際通貨情勢は,主として主要先進国の国際収支の不均衡を背景とし,これに投機的な動きが加わつて77年後半に引き続き大きく動揺した。

米ドルは米国の大幅貿易収支赤字の継続,インフレ傾向の加速などを背景に主要通貨に対しほぼ一貫して軟化傾向を見せ,特に円,マルクに対しては日本,西独の根強い経常収支黒字基調を反映して大幅に下落した。このような状況に対し米国は年初来,公定歩合引上げを中心とする金融引締策,米・西独連銀間のスワップ拡大,保有金売却など一連のドル防衛策を講ずるとともにインフレ対策,輸出促進策,エネルギー法案成立といつた基礎的経済条件改善努力を続けたが,市場はこれらの措置にほとんど反応を示さず,7月には,1ドル=200円,1ドル=2マルクの大台を割り込み,10月下旬には,1ドル=180円,1ドル=1.8マルクを割り込むに至つた。

このような大幅かつ急激なドル全面安の情勢に対処すべく,米国政府は日本,西独,スイスと連絡しつつ11月1日協調市場介入強化と公定歩合の1%引上げなどを中心とする総合的なドル防衛策を発表した。これをうけてドルはようやく反騰し,その後通貨情勢は比較的安定的に推移している。

(2) こうした中で,欧州においてはドル不安定に起因する国際通貨情勢の動揺から域内経済を守るとの気運が急速に高まり,7月の欧州理事会において新欧州通貨制度(EMS)の基本構想が合意され,同制度は79年3月13日に発足した。この間,ECスネークにおいては,新制度がらみの思惑などからマルクの上昇圧力が一段と高まったため,10月中旬スネーク通貨間の通貨調整が行われた(独マルクをデンマーク・クローネ及びノールウェー・クローネに対して4%,ベネルクス3国通貨に対して2%切上げ)。

(3) 通貨,特に基軸通貨たるドルの安定は,世界経済の健全な発展にとつて不可欠である。

7月の主要国首脳会議において,通貨の安定のためには基本的には各国間における成長,物価,国際収支などの基礎的経済条件の格差を改善することが重要であるが,またそのような努力と平行して為替市場における無秩序な状態に対処するために必要な範囲で,引き続き介入を行うこと,そのために各国通貨当局が緊密に連絡協調することも必要である旨が合意された。わが国としては,従来に引き続き国際通貨安定のため,各国と緊密な協力を行っている。

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2. IMFをめぐる動き

(1) 国際通貨制度改革の面では,IMF第2次改正協定が4月1日に発効し,変動相場制が正式に認知された。同改正協定第4条は,加盟国に対し,秩序ある為替取極を確保し,かつ,安定的な為替相場制度を促進するために基金及び他の加盟国と協力することを義務づけている。5月にはIMFの第6次増資(加盟国のクォータの合計が33.6%増加)が発効した。わが国のクォータは38.25%増で,16億5,900万SDRとなつた。

(2) 9月のIMF暫定委員会において,第7次増資とSDRの新規配分について大筋の合意が得られ,その後12月に総務会により正式に決定された。第7次増資は,IMFの資金規模を第6次増資後の加盟国の割当額の合計を50%増加するもので,各国の国内手続の完了を俟つて発効する予定である。SDRの新規配分は79年から81年までの3年間にわたり,毎年約40億SDRを加盟国の割当額に従って配分するもので,第1回の配分が79年1月1日に行われた。

(3) また,IMFの通常の引出しだけでは賄えないような大幅かつ長期にわたる国際収支困難に直面している国に対して融資を行わんとする補完的融資制度(ウィッチフェーン構想)が79年2月発効した。その資金規模は現時点で約87億SDR(約112億ドル)が予定されており既に米,西独,日本,サウディ・アラビアなど13ヵ国が合計77.5億SDR(約99億6,000万ドル)の貸付約束を行っている。

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