-国際連合の諸活動に対する協力-

第3節 国際連合の諸活動に対する協力

1. 今日の国際連合

国際連合は,国際の平和と安全の維持及び諸国民の福祉を向上するための国際協力の促進を図る最も普遍的な国際機構である。国連は当初51カ国の加盟国により発足したが,設立以来30余年を経た今回,151の加盟国を擁するに至つている。その間に,国連は当初意図されたものとはかなり異なつた形で発展してきている。例えば,憲章で予想された強制的紛争解決機能に代わり,いわゆる「平和維持活動」が発達を見せ,また,経済・社会分野においては南北問題の占める比重が増し,この分野で国連が果し得る役割が高まつてきた。これは,国連が国際情勢の現実を端的に反映する機関であるということにほかならない。国連が世界の政治,経済,社会の現実に即応した形で何をなし得るかは,加盟国の意思と協力によるところが大きいが,近年,国連の限界を見極めたうえでできる限り国連の活動に協力せんとの努力が加盟国の間に強まりつつある。

更に,今日の国連はその構成国数の増大及び取扱う問題の多様化,複雑化に伴い,各種専門機関をはじめ数多くの関連国際機関とともに,国際の平和と安全の維持,軍縮,援助と貿易,婦人,人権,科学技術などの広汎な分野で,国際協力の枠組を提供している。

目次へ

2. わが国と国際連合

(1) わが国の基本的態度

わが国は,1956年の国連加盟以来一貫して国際の平和と安全の維持をはじめとする国連の目的及び活動に積極的支持を与えるとともに,わが国の国際的地位の向上に伴い,諸分野における国際協力の推進を目的とする国連の諸活動により積極的に参加,協力してきており,これがわが外交の基本政策の1つとなつている。

(2) 78年におけるわが国の国連活動

78年において,わが国は,このような基本政策に基づき,活発な国連外交を展開したが,その主要なものは次のとおりである。

(イ) 国連総会は,自国の立場を国際世論に訴え,その理解を得る多数国間外交の格好の場であり,特に各国の外交最高責任者が一堂に会するので,ハイレベルでの意見交換,相互理解促進の貴重な機会である。第33回国連総会に出席した園田外務大臣は,精力的に各国の外交責任者と意見交換を行うとともに,一般討論演説においては,南北問題,開発援助,中東問題,南部アフリカ問題,軍縮問題,人権・難民・ハイジャック問題,エネルギー問題など国際社会が直面する主要問題に触れ,これらの問題の解決にわが国が積極的に貢献するとの基本的な考え方を明らかにした。

(ロ) 各国の相互依存関係は,社会体制,国の大小,発展段階などの相違を越えて,近年加速度的に深まりつつあり,非常に多くの問題は各国の協力なしには実効的解決が期待できないといつても過言ではない。例えば南北問題をはじめ,資源,エネルギー,食糧,人口などの諸問題は,2国間ないし少数国間の協力のみでは解決し得ず,これらの問題については,普遍的国際機構たる国連が,問題解決に向つての諸国間協力の有効な枠組を与えている。わが国は,特に経済社会開発分野の中枢機構である経済社会理事会及びその他の国際機関のメンバー国として,この分野で積極的に活動している。

(ハ) 軍縮の分野では,78年5月に,国連創設以来初めての軍縮特別総会が開催されたが,その審議を引き継いだ第33総会では,40にのぼる軍縮関係決議が採択された。わが国は,従来より,全面完全軍縮達成のための着実な国際努力の積み重ねの必要性を訴えており,第33回総会においても包括的核実験禁止条約の早期締結を求める決議などいくつかの決議の共同提案国となつた。

(ニ) わが国は,これまで国連の機構の整備に努めており,78年においても,「憲章及び国連の役割強化特別委員会」のメンバー国としてその作業に参加し,また「平和維持活動特別委員会」の副議長国として,「平和維持活動」のガイドライン作成作業に参加した。

(ホ) わが国は,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約に署名し,また,人種差別撤廃世界会議婦人差別撤廃条約作成のためのワーキング・グループに積極的に参加するなど,社会・人権問題についても積極的役割を果した。

(ヘ) またわが国は,従来から分担金に比べて邦人職員数が極端に少ないことを不満として事務総長に善処方を求めていたところ,第33回国連総会においてわが国など「適正基準枠」に達しない諸国から優先的に職員を採用すべきことが決議された。これは邦人職員の受入れの問題を拡大するものとして大いに評価される。

目次へ