-日本政府が締結した主要な条約・協定(77年に発効したもの)-

3. 日本政府が締結した主要な条約・協定(77年に発効したもの)

(1) 北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定

日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は,

北西太平洋の漁業資源の保存及び最適利用に関する共通の関心を考慮し,

沿岸国の地先沖合における漁業に関する当該沿岸国の権利に関する諸問題についての第3次国際連合海洋法会議における審議を考慮し,

1976年12月10日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令に規定されている探査,開発及び保存のための生物資源に対するソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め,

日本国の国民及び漁船が,北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し,

日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の漁業の分野における互恵的協力を発展させることを希望し,

相互に関心を有し,かつ,ソヴィエト社会主義共和国連邦が主権的権利を行使する生物資源の利用の手続及び条件を定めることを希望して,

次のとおり協定した。

第1条

この協定は,1976年12月10日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第6条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従つて定められる北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域において日本国の国民及び漁船が漁獲を行う手続及び条件を定めることを目的とする。

第2条

日本国の国民及び漁船が前条の漁獲を行う権利は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船のために日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則に立つて与えられる。

第3条

この協定において,

1 「生物資源」とは,第1条にいう海域におけるすべての種類の魚類の資源,ソヴィエト社会主義共和国連邦の淡水水域において産卵し,外洋水域に回遊するすべての種類の(さく)河性魚類の資源及びソヴィエト社会主義共和国連邦の大陸(だな)の定着性の種族に属するすべての生物をいう。

2 「魚類」とは,ひれを有する魚類,軟体動物,甲(かく)類その他のすべての海産動植物(ただし,鳥類を除く。)をいう。

3 「漁獲」とは,次の(A)から(D)までをいう。

(A) 魚類を採捕すること。

(B) 魚類を採捕しようと試みること。

(C) 魚類を採捕する結果になると合理的に予想し得るその他の活動

(D) (A)から(C)までに掲げる活動を直接に補助し又は準備するための海上における作業

4 「漁船」とは,次の(A)又は(B)のために使用されているか又は使用されるよう設備がされている船舶その他の舟艇をいう。

(A) 漁獲

(B) 漁獲に関係する作業(漁獲の準備,船舶への補給,魚類の貯蔵,輸送及び加工並びに積卸し作業を含む。)

この定義には,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局が発給する特別許可証により漁獲に関連する科学的調査を行う日本国の漁船は含まれない。

第4条

1 第1条にいう海域の範囲について,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局により定められる日本国に対する1977年の漁獲割当ての量及び魚種別組成並びに日本国の国民及び漁船が漁獲を行う具体的な区域及び条件は,この協定の署名の日に交換される日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局の間の書簡に掲げられる。

2 1にいう1977年の漁獲割当てには,第1条にいう海域において1977年3月中に日本国の漁船が漁獲した魚類が含まれる。

第5条

1 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,第1条にいう海域において漁獲に従事することを希望する日本国の漁船に対し,当該漁獲を行うことに関する許可証を発給する。日本国の漁船は,この許可証を有していない場合には,同条にいう海域において漁獲に従事することができない。

2 1にいう許可証の申請及び発給の手続,日本国の漁獲に関する情報の提出の手続並びに日本国の漁船の操業日誌の記載の手続は,この協定の不可分の一部をなす附属書に定められる。

3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,1にいう許可証の発給に関し妥当な料金を徴収することができる。

第6条

日本国政府は,日本国の国民及び漁船が,この協定の規定並びに第1条にいう海域における生物資源の保存及び漁業の規制のためにソヴィエト社会主義共和国連邦において定められている規則に従うことを確保する。これらの規定又は規則に従わない日本国の国民及び漁船は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の法律に従い責任を負う。

第7条

1 日本国政府は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関によつて任命された公務員が,第5条1にいう許可証を有し,かつ,この協定に従つて漁獲を行つているすべての日本国の漁船に支障なく乗船する機会が与えられることとなること並びに当該公務員が漁船にある間,当該漁船の船長及び船員が検査(検査の結果発見された違反を除去するための措置をとることを含む。)の実施について当該公務員に協力することを確保する。

2 日本国政府は,1にいうソヴィエト社会主義共和国連邦の公務員の日本国の漁船における滞在に関連する経費がソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に償還されることを確保する。

3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関によつて日本国の漁船が()捕されたときは,日本国政府に対し,その旨が外交上の経路を通じて遅滞なく通報される。()捕された漁船及びその乗組員は,適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。

第8条

この協定のいかなる規定も,第3次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても,相互の関係における諸問題についても,いずれの政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。

第9条

1 この協定は,それぞれの国の国内法上の手続に従つて承認されなければならない。

2 この協定は,その承認を通知する外交上の公文が交換された日に効力を生じ,1977年12月31日まで効力を有する。

以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

1977年5月27日にモスクワで,ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書2通を作成した。

日本国政府のために

鈴木善幸

重光 晶

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために

A・イシコフ

附属書

ソヴィエト社会主義共和国連邦が主権的権利を行使する生物資源の漁獲を日本国の漁船が1977年に行うことができるための許可証の申請及び発給,当該漁獲に関する情報の提出並びに操業日誌の記載は,次の手続及び条件に従つて行われる。

1 日本国の権限のある機関は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に対し,この協定に基づいて漁獲に従事することを希望する日本国の漁船に対する許可証の発給のために申請を行う。この申請は,両国の権限のある機関の間で合意される様式によつて行わなければならない。申請書の記入及び提出の手続は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関が定める。

2 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,申請書を検討し,この協定の第1条にいう海域において漁獲を行うための日本国の漁船に対する許可証の発給について,この協定の条件に従つて決定する。許可証の発給手続は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関が定める。

3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,許可証の発給を拒否する場合には,日本国の権限のある機関に対しその旨を通知する。必要がある場合には,両国の権限のある機関は,これにつき協議を行うことができる。日本国の権限のある機関は,この協議の後,改めて申請を行うことができる。

4 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関の公務員は,日本国の漁船がこの協定の条件に違反した場合には,当該漁船に対して発給された許可証の効力を停止することができる。ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,日本国の漁船がこの協定の条件に違反した場合には,当該漁船に対して発給された許可証の効力を失わせることができる。

5 すべての日本国の漁船は,この協定の第1条にいう海域において漁獲に従事するときは,当該漁船に対して発給された許可証を船内に常時保持していなければならない。

6 日本国の権限のある機関は,船長が交代し又は乗組員の数に変更がある場合には,10日以内に,許可証を発給したソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に通報する。

7 日本国側は,「極東漁業総局」(ソヴィエト社会主義共和国連邦ウラジオストック市)に対し,無線又は電報によりこの協定の第1条にいう海域における漁獲に関する旬ごとの情報(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を通報し,並びに日本語及びロシア語によるこの海域における漁獲に関する月ごとの資料(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を郵送する。これらの旬ごとの情報及び月ごとの資料は,その旬及び月の末日の後それぞれ5日及び10日以内に,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に提出する。

8 許可証の発給を受けた日本国の漁船は,この協定の第1条にいう海域において漁獲を行う場合には,操業日誌(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)に記載しておかなければならない。

(なお,本協定は「北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の有効期間の延長に関する議定書」(77年12月16日)により78年12月31日まで有効。)

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(2) 日本国とオーストラリアとの間の友好協力基本条約

日本国及びオーストラリアは,

両国間の関係の基礎である友好及び協力の精神を確認するとともに,この関係を一層緊密かつ具体的な基礎の上に置くことを希望し,

両国間の広範にわたる関係がそれぞれの国にとつて重要であること及び両国の国民の福祉の間に緊密かつ永続的な関連があることを認め,

種々の分野における両国間の現行の諸協定が両国間の関係に対して果たしている有益な貢献を増進することを希望し,

両国の政府及び国民が,政治,経済,貿易,通商,社会,文化その他の分野における相互に関心のある事項について,相互理解の精神に基づいて協力するための一層広範な機会を提供することを決意し,

両国間の関係を,長期的な展望に立つて衡平なかつ相互に有利な基礎の上に強化し及び多様化することが重要であることを確信し,

両国間の協力は,両国の相互の利益のみならず,両国が一部を構成しているアジア・太平洋地域の諸国を含む他の国々の繁栄及び福祉に対する両国の共通の関心をも念頭に置いたものでなければならないことを認識し,

両国政府間及び両国の国民の間の友好及び協力を公式に具現しかつ一層促進する条約の締結が,両国間の関係の一層の発展を容易にすることを確信し,

友好協力基本条約を締結することに決定し,このため,次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

日本国

内閣総理大臣 三木武夫

オーストラリア

内閣総理大臣 ジョン・マルコム・フレーザー

これらの全権委員は,互いにその全権委任状を示し,それが良好妥当であると認められた後,次のとおり協定した。

第1条

1 日本国とオーストラリアとの間の関係の基礎は,両国間及びその国民の間の永続的な平和及び友好とする。

2 この条約は,特に両国間及びその国民の間の理解を促進し及び相互に関心のある事項についての協力を発展させることにより,両締約国間の関係を拡大し及び強化することを目的とする。

3 両締約国は,両締約国間に存在する諸協定が2にいう目的に合致するものであることに留意しつつ,この条約で取り扱われている事項又はその他の事項(現行の諸協定の対象となつていない事項を含む。)について,必要なときはいつでも両締約国間で更に協定を締結することができる。

第2条

両締約国は,国際社会における諸国間の平和的かつ友好的な関係の重要性を認識するとともに,この関係を維持しかつ強化することにつき,国際連合憲章の原則に従つて,相互に協力する。

第3条

1 両締約国は,政治,経済労働関係,人権,法律,科学,技術,社会,文化,職業,スポーツ,環境等の相互に関心のある分野において,相互の理解及び協力を容易にし,強化し及び多様化するように努める。このため,両締約国は,これらの分野において,適当な研究及び調査,情報,知識及び人物の交流その他の適当な活動を実行可能な限り奨励し,及び促進する。

2 両締約国は,また,1にいう分野のいずれかに関する国際機関であつて両締約国が共に加盟国であるものにおいて,相互の理解及び協力を発展させる。

3 両締約国は,1及び2にいう相互の理解及び協力を発展させるに当たつて,相互に緊密に協調する。このため,両締約国は,1及び2にいう分野の事項に関して,必要なときはいつでも協議する。その際,適当な場合には,現行の諸協定又は諸取極に規定されている方法を利用する。

第4条

両締約国は,国際貿易が開放的,多角的かつ無差別の基礎の上に継続的に拡大することが,世界経済の健全な発展のために基本的に重要であることを認識する。両締約国は,このため,関税及び貿易に関する一般協定,国際通貨基金協定,経済協力開発機構条約及び両締約国が共に当事国であるその他の関連のある多数国間協定の目的及び原則に従つて,相互に協力する。

第5条

1 両締約国は,経済,貿易及び通商の分野における両締約国間の関係の重要性を認識し,この関係を相互の利益及び信頼の基礎の上に強化し及び発展させることにつき協力する。

2 各締約国は,両国間の貿易に関し,それぞれの国が他方の国にとつて安定的なかつ信頼し得る供給者及び市場であることが相互の利益であることを認識し,公正かり安定的な基礎の上に両国間の貿易の一層の拡充及び発展を促進する。

第6条

両締約国は,両締約国にとつてエネルギー資源を含む鉱物資源が重要であることを認識し,前条の規定に従つて,これらの資源の貿易及び開発について協力する。

第7条

両締約国は,両締約国が共に当事国である国際協定の目的及び原則に従い,かつ,第5条の規定に従つて,相互に受け入れることができ,かつ相互に利益となる態様で,資本及び技術の交流について協力する。

第8条

1 各締約国は,他方の締約国の国民に対し,自国の領域への入国,当該領域内における滞在又は居住,当該領域内における旅行及び当該領域からの出国に関し,公正かつ衡平な待遇を与えるものとし,この待遇は,いかなる場合においても,他方の締約国の国民と第3国の国民との間で差別的なものであってはならない。

2 各締約国は,次に掲げる事項に関する手続を簡素化するように努める。

(a) 他方の締約国の国民の自国の領域への入国

(b) 他方の締約国の国民の自国の領域からの出国

(c) 他方の締約国の国民の外国人登録

第9条

1 一方の締約国の国民は,他方の締約国の領域内において,その身体及び財産に対する不断のかつ完全な保護及び保障を享有する。

2 一方の締約国の国民は,他方の締約国の領域内において,法に従つて裁判所において裁判を受け及び審判機関に申立てを行う権利を享有する。

3 各締約国は,自国の領域内において,他方の締約国の国民に対し,事業活動及び職業活動に関連する事項について,公正かつ衡平な待遇を与えるものとし,この待遇は,いかなる場合においても,他方の締約国の国民と第3国の国民との間で差別的なものであつてはならない。

4 一方の締約国の国民の財産で他方の締約国の領域内にあるものは,公共のためにする場合でない限り,また,迅速,適当かつ効果的な補償が支払われない限り,強制的に収用し又は使用してはならない。第一文の規定を害することなく,一方の締約国の国民は,この4で取り扱われているすべての事項に関し,他方の締約国の領域内において,いかなる場合においてもこれらの国民と第3国の国民との間で差別的でない待遇を与えられる。

5 1から4までにおいて,「国民」には,文脈により別に解釈すべき場合を除くほか,会社を含む。

6 一方の締約国の会社であつて,他方の締約国の国民又は会社により,直接に若しくは間接に支配され又はそれに関する利益の過半が直接に若しくは間接に所有されているものは,1から4までにおいて取り扱われている事項に関し,当該一方の締約国の領域内において,それぞれ1から4までに規定されている待遇を与えられる。ただし,3及び4に規定されている要件は,これらの会社と当該一方の締約国の会社であつて第3国の国民又は会社により,直接に若しくは間接に支配され又はそれに関する利益の過半が直接に若しくは間接に所有されているものとの間の関係について適用されるものとする。

第10条

両締約国は,両国間の国際海運活動が両締約国間の経済,貿易及び通商関係の発展に重要な役割を果たすことを認識し,また,両締約国が共に当事国である国際協定の目的及び原則に留意し,公正なかつ相互に有利な基礎の上に両国間の海運を発展させるため,相互の協力を促進する。

第11条

両締約国は,この条約の目的が十分に達成されることを確保するため,この条約の一般的な運用状況を定期的に大臣間で検討する。

第12条

各締約国は,この条約の実施から又はこれに関連して生ずる問題に関し,他方の締約国に対し申入れを行うことができる。このような申入れに対しては,好意的な考慮が払われるものとする。両締約国は,適当な場合には,当該問題に関し協議する。

第13条

この条約のいかなる規定も,この条約の署名の日に両締約国間において有効な諸協定の効力に影響を及ぼすものではない。

第14条

1 この条約は,批准されなければならない。批准書は,できる限り速やかにキャンベラで交換するものとする。

2 この条約は,批准書の交換の日の後30日目の日に効力を生ずる。この条約は,いずれか一方の締約国が他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を文書により通告する日から12箇月を経過するまで効力を有するものとする。

以上の証拠として,前記の全権委員は,この条約に署名調印した。

1976年6月16日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。

日本国のために

三木武夫

オーストラリアのために

マルコム・フレーザー

議定書

日本国とオーストラリアとの間の友好協力基本条約(以下「条約」という。)に署名するに当たり,下名の全権委員は,各自の政府から正当に委任を受け,更に,条約の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 条約のいかなる規定も,

(a) 次の待遇,特恵又は特権の享受を要求する権利を,いずれの一方の締約国に対しても,与えるものではない。

(i) 他方の締約国が,開発途上にある国との特別の協定又は取極により,経済開発又は技術援助の目的のために当該開発途上にある国又はその国民若しくは会社に対し与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権

(ii) 他方の締約国が,相互主義に基づき又は2重課税の回避若しくは脱税の防止のための協定により与えているか,又は将来与える租税に関する特別の利益の性質を有する待遇,特恵又は特権

(iii) 他方の締約国が,特別の協定又は取極により,第3国の国民に与えているか,又は将来与える旅券又は査証に関する待遇,特恵又は特権

(b) 1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第2条の規定に基づいて日本国がすべての権利,権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者にのみ日本国が与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権の享受を要求する権利を,オーストラリアに対し与えるものではない。

(c) 次の待遇,特恵又は特権の享受を要求する権利を,日本国に対し与えるものではない。

(i) オーストラリアが他国又はその国民若しくは会社に与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権であつて,当該他国の英連邦構成員としての地位に由来するもの

(ii) オーストラリアが,アイルランド又はその国民若しくは会社に与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権

(iii) オーストラリアがパプア・ニューギニア又はその国民若しくは会社に与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権

(iv) 条約の署名の日にオーストラリアが国際関係について責任を有するいずれかの非本土地域又はその地域の居住者若しくは会社に与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権

(v) オーストラリアが,第3国又はその国民でオーストラリアヘの移住者であるものに対し,そのような移住者が居住のためにするオーストラリアヘの入国に関する事項又はそのような入国に付随する事項につき,オーストラリアと当該第3国との間の移住に関する特別の協定により与えているか,又は将来与える待遇,特恵又は特権

2 条約のいかなる規定も,いずれか一方の締約国が,関税及び貿易に関する一般協定,国際通貨基金協定,経済協力開発機構条約若しくはそれらを修正し若しくは補足する多数国間協定又は両締約国が共に当事国であるその他の関連のある多数国間協定の当事国として有しているか,又は将来有する権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

3 条約の適用上,「会社」とは,

(a) 締約国に関しては,その締約国の領域において施行されている法律に基づいて設立された法人をいう。

(b) 第3国に関しては,その国の領域において施行されている法律に基づいて設立された法人をいう。

以上の証拠として,各全権委員は,この議定書に署名調印した。

1976年6月16日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。

日本国のために

三木武夫

オーストラリアのために

マルコム・フレーザー

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(3) アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定

日本国政府及びアメリカ合衆国政府は,

合衆国の地先沖合における漁業資源の合理的な管理,保存及び最適利用に関する両政府の共通の関心を考慮し,

海洋法に関して新たな国際的な発展が見られたことを確認し,

合衆国が,その距岸200海里の内側に,同国がすべての魚類に対して漁業管理権を行使する漁業保存水域を設定したこと並びに合衆国が,同国に属する大陸(だな)の生物資源に対して及び同国起源の溯河(さくか)性魚種に対してその全回遊域を通じて漁業管理権を行使していることを認め,

また,日本国が合衆国の地先沖合における公海の生物資源の合理的な管理及び保存に協力してきたこと並びに日本国の国民及び船舶が伝統的にこの資源の開発及び利用に従事してきたことを認め,

相互に関心を有する漁業に関する妥当な条件を確立することを希望して,

次のとおり協定した。

第1条

日本国政府及び合衆国政府は,合衆国の地先沖合における相互に関心を有する漁業資源の効果的な保存,最適利用及び合理的な管理を確保し,並びに合衆国が漁業管理権を行使する同国の地先沖合の生物資源の日本国の国民及び船舶による漁獲に関する原則及び手続についての共通の了解を確立することを約束する。

第2条

この協定において,

(1) 「漁業保存水域」とは,合衆国の領海に接続し,その外側の境界がいずれの点をとつても同国の領海の幅が測定される基線から200海里となるように引かれた線からなる水域をいう。

(2) 「合衆国の地先沖合の生物資源」とは,漁業保存水域内のすべての魚類,合衆国の淡水水域又は河口水域で産卵し,外洋水域に回遊するすべての溯河(さくか)性魚種(以下「合衆国起源の溯河(さくか)性魚種」といい,その回遊域のいずれの部分にあるかを問わない。)及び採捕に適した段階において海底面若しくはその下で静止しており又は絶えず海底に接触していなければ動くことができない合衆国に属する大陸(だな)の定着性の種族をいう。

(3) 「魚類」とは,ひれを有する魚類,軟体動物,甲(かく)類その他のすべての海産動植物(ただし,海産()乳動物,鳥類及びその生活史の中で大洋の水域において広大な範囲にわたつて産卵しかつ回遊するまぐろ類を除く。)をいう。

(4) 「漁業資源」とは,保存及び管理のために単位として取り扱うことができ,かつ,地理的,科学的,技術的,リクリエーション上の及び経済的特性に基づき識別される1又は2以上の魚種をいう。

(5) 「漁業」とは,漁業資源の漁獲をいう。

(6) 「漁獲」とは,次の(A)から(D)までをいう。ただし,科学調査船によつて行われる科学調査活動その他の公海の合法的な使用は含まない。

(A) 魚類を採捕すること。

(B) 魚類を採捕しようと試みること。

(C) 魚類を採捕する結果になると合理的に予想し得るその他の活動

(D) (A)から(C)までに掲げる活動を直接に補助し又は準備するための海上における作業

(7) 「漁船」とは,次の(A)から(C)までのいずれかのために使用されているか,使用されるよう設備がされているか又は通常使用される種類の船舶その他の舟艇をいう。

(A) 漁獲

(B) 漁獲に関係する何らかの活動(準備,補給,貯蔵,冷蔵,輸送及び加工を含む。)をすること。

(C) 海上において1又は2以上の船舶が(A)又は(B)の活動をすることを援助し又は補助すること。

(8) 「海産()乳動物」とは,らつこ,海牛類,ひれ脚類及びくじら類を含む海洋の環境に形態学上適応している()乳動物並びに北極ぐまのように主として海洋の環境に生息する()乳動物をいう。

第3条

日本国政府及び合衆国政府は,この協定の実施次条の規定に従つて合衆国政府が行う決定及び相互に関心を有する漁業の分野における協力の発展(相互に関心を有する漁業に関する科学的資料の収集及び分析のための適当な多数国間機構の設立を含む。)に関し,定期的に両政府間で協議を行う。

第4条

1 合衆国政府は,合衆国の地先沖合の生物資源に関し,適当な場合には前条に規定する日本国政府との協議を考慮に入れ,魚種に影響する予見されなかつた事情により必要となる調整を行うことがあることを条件とし,毎年,次のことを決定する。

(A) 入手可能な最良の科学的証拠を基礎として,かつ,資源の最適生産を継続的に達成するため,魚種の相互依存関係,国際的に受け入れられている基準及びその他のすべての関連要素を考慮して決定される各漁業資源についての総漁獲可能量

(B) 各漁業資源の総漁獲可能量のうち,各年について,合衆国の漁船によつて収獲されず日本国の漁船による収獲に供される部分

(C) 過度の漁獲を防止するために必要な措置

2 合衆国政府は,1の決定を時宜を失することなく日本国政府に通知する。

第5条

前条1(B)の規定に従つて日本国の漁船による収獲に供される部分を決定するに当たり,合衆国政府は,最適利用を促進し,かつ,特に,日本国の国民及び船舶による伝統的漁獲,漁業調査及び魚種の識別に対する日本国の貢献,取締りにおける並びに相互に関心を有する漁業資源の保存及び管理に関する日本国の従来からの協力,並びに日本国の漁船が合衆国の地先沖合の生物資源を常習的に漁獲してきた場合にあつては経済的混乱を最小にする必要性を考慮に入れる。

第6条

日本国政府及び合衆国政府は,合衆国起源の溯河(さくか)性魚種が,その回遊域内の一部の水域で他国起源の溯河(さくか)性魚種と混交している事実にかんがみ,当該水域における溯河(さくか)性魚種についての必要な保存措置に関して協議を行う。

第7条

日本国政府は,次のことを確保するため,すべての必要な措置をとる。

(A) 日本国の国民及び船舶が,この協定に従つて認められる場合を除くほか,合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲を差し控えること。

(B) この協定に基づいて漁獲に従事するすべての漁船が,この協定に基づいて定められる条件に従うこと。

(C) いかなる漁業についても,第4条1(B)にいう部分を超えないこと。

第8条

1 日本国政府は,合衆国政府に対し,この協定の不可分の一部をなすこの協定の附属書Iの規定に従い,合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に従事することを希望する日本国の各漁船の識別及び操業に関する情報を提供する。

2 合衆国政府は,1の情報を受領したときは,日本国の漁船がこの協定の規定に従つて合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に従事することを可能にするため,合衆国の関係法律に基づく許可証の発給を含む必要な行政上の措置をとる。この措置は,この協定の実施を容易にし並びに合衆国の地先沖合の生物資源の保存及び管理を確保するための妥当な料金の支払の要求を含むことができる。

第9条

日本国政府は,日本国の国民及び船舶が,合衆国が締約国である海産()乳動物に関する国際協定に別段の定めがある場合又は合衆国政府によつて定められた海産()乳動物の混獲についての個別の許可及び規制に従う場合を除くほか,漁業保存水域内において,海産()乳動物を脅かし,狩猟し,捕獲し若しくは殺し,又は,脅かし,狩猟し,捕獲し若しくは殺そうと試みることを差し控えることを確保する。

第10条

日本国政府は,日本国の漁船が,この協定に基づく漁業を行うに当たり,第8条2の規定に従つて合衆国政府がとる行政上の措置に従うことを確保する。

第11条

1 日本国政府は,この協定に従つて合衆国の地先沖合の生物資源を漁獲する日本国の各漁船が,正当に権限を有する合衆国の取締官による当該漁船への乗船及び当該漁船の検査を許容し及び助けること並びに取締行為が行われる場合にはこれに協力することを確保するため,適当な措置をとる。

2 合衆国政府の当局によつて日本国の漁船が()捕され又は日本国の漁船の乗組員が逮捕されたときは,日本国政府に対し,その旨が外交上の経路を通じて速やかに通告される。

3 ()捕された漁船及び逮捕された乗組員は,裁判所が決定する妥当な供託金又はその他の保証を条件として,速やかに釈放される。

第12条

合衆国は,この協定又はこれに基づいてとられる行政上の措置に従わない日本国の漁船又はその所有者若しくは運航者に対し,合衆国の法律に従い,妥当な刑を科する。

第13条

日本国政府及び合衆国政府は,合衆国の地先沖合の生物資源の管理及び保存のために必要な科学調査の実施(相互に関心を有する魚種の管理及び保存のための入手可能な最良の科学的情報の収集を含む。)について協力することを約束する。両政府の権限のある機関は,この協力を容易にするために必要な取決めを行う。この協力には,情報及び科学者の交換,調査計画を準備し又びその進(ちょく)状況を検討するための科学者間の定期的な会合並びにこの協定の不可分の一部をなす附属書IIの規定に従つた統計上及び生物学上の関係情報の収集及び記録保管のための統一的体系の実施及び維持を含む。

第14条

この協定のいかなる規定も内水,領海,公海又は沿岸国の管轄権若しくは権限(漁業資源の保存及び管理に係るものを除く。)の範囲に関するいずれの政府の立場にも影響を与え又はこれを害するものではない。

第15条

この協定の附属書は,公文の交換の形式による両政府間の合意により修正することができる。

第16条

1 この協定は,それぞれの国によりその国内手続に従つて承認されなければならない。この協定は,その後日本国政府と合衆国政府との間で相互に合意される日に公文の交換を通じて効力を生じ,1982年12月31日まで効力を存続する。ただし,いずれか一方の政府が12箇月の予告をもつて終了の通告を行うことによりそれよりも早い日にこれを終了させる場合は,この限りではない。

2 この協定は,効力発生の2年後又は第3次国際連合海洋法会議の結果としての多数国間条約が採択された時に,両政府によつて再検討される。

以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

1977年3月18日にワシントンで,ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。

日本国政府のために

東郷文彦

アメリカ合衆国政府のために

ロザーン・リッジウェイ

附属書I

合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に日本国の漁船が従事することを認める各年ごとの許可証の申請及び発給は,次の手続に従つて行われる。

1 日本国政府は,合衆国政府に対し,この協定に従つて漁獲に従事することを希望する日本国の各漁船のために申請を行う。この申請は,合衆国政府がこのために定める様式により行われる。

2 この申請には,次のことを明記する。

(A) 許可証を求めている漁船の船名及び公式番号又はその他の識別材料並びに当該漁船の所有者及び運航者の氏名及び住所

(B) トン数,積載量,速度,加工設備,漁具の種類及び数量並びに当該漁船の漁獲の特性に関するその他の情報であつて要請されるもの

(C) 当該漁船が行うことを希望する各漁業の明細

(D) 当該許可証の有効期間内に当該漁船が予定している魚種別の漁獲量又は漁獲トン数

(E) 当該漁獲が行われる海域及び漁期

(F) 要請されるその他の関連情報

3 合衆国政府は,各申請を審査し,漁業資源の管理及び保存に関連して必要となる条件及び制限並びに必要とされる料金を決定する。合衆国政府は,この決定を日本国政府に通知する。

4 日本国政府は,3の通知を受けたときは,合衆国政府に対して,3にいう条件及び制限を受諾するか又は拒否するかを通知し,拒否する場合にはその拒否の理由を通知する。

5 日本国政府によつて3にいう条件及び制限が受諾され,かつ,料金が支払われたときは,合衆国政府は,前記の申請を承認し,日本国の各漁船のために許可証を発給する。この許可証の発給により,当該各漁船は,この協定及び許可証に規定される条件に従つて漁獲することを認められる。この許可証は,個々の漁船に対して発給されるものとし,譲渡されてはならない。

6 日本国政府が合衆国政府に対して具体的な条件及び制限についての拒否の理由を通知した場合には,両政府は,これにつき協議を行うことができる。日本国政府は,この協議の後,修正した申請を提出することができる。

附属書II (省略)

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(4) 日本国の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定

日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は,

北西太平洋の漁業資源の保存及び最適利用に関する共通の関心を考慮し,

沿岸国の地先沖合における漁業に関する当該沿岸国の権利に関する諸問題についての第3次国際連合海洋法会議における審議を考慮し,

1977年5月2日付けの日本国の漁業水域に関する暫定措置法に基づく漁業に関する日本国の管轄権を認め,

1977年5月27日にモスクワで署名された北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の諸規定を考慮し,

ソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船が,日本国の地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し,

日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の漁業の分野における互恵的協力を発展させることを希望し,

相互に関心を有し,かつ,日本国が管轄権を行使する漁業についての手続及び条件を定めることを希望して,

次のとおり協定した。

第1条

この協定は,1977年5月2日付けの日本国の漁業水域に関する暫定措置法に従って定められる漁業水域においてソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船が漁獲を行う手続及び条件を定めることを目的とする。

第2条

この協定において,

1 「魚類」とは,ひれを有する魚類,軟体動物,甲(かく)類その他のすべての海産動植物(ただし,鳥類を除く。)をいう。

2 「漁獲」とは,次の(A)から(D)までをいう。

(A) 魚類を採捕すること。

(B) 魚類を採捕しようと試みること。

(C) 魚類を採捕する結果になると合理的に予想し得るその他の活動。

(D) (A)から(C)までに掲げる活動を直接に補助し又は準備するための海上における作業。

この定義には,1977年6月17日付けの漁業水域に関する暫定措置法施行令第3条に掲げる高度回遊性魚種に係る漁獲は含まれない。

3 「漁船」とは,次の(A)又は(B)のために使用されているか又は使用されるよう設備がされている船舶その他の舟艇をいう。

(A) 漁獲

(B) 漁獲に関係する作業(漁獲の準備,船舶への補給,魚類の貯蔵,輸送及び加工並びに積卸し作業を含む。)

この定義には,日本国の権限のある当局が発給する特別許可証により漁獲に関連する科学的調査を行うソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船は含まれない。

第3条

第1条にいう漁業水域について,日本国の権限のある当局により定められるソヴィエト社会主義共和国連邦に対する1977年の漁獲割当ての量及び魚種別組成並びにソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船が漁獲を行う具体的な区域及び条件は,この協定の署名の日に交換される日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局の間の書簡に掲げられる。

第4条

1 日本国の権限のある当局は,第1条にいう漁業水域において漁獲に従事することを希望するソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船に対し,当該漁獲を行うことに関する許可証を発給する。ソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船は,この許可証を有していない場合には,同条にいう漁業水域において漁獲に従事することができない。

2 1にいう許可証の申請及び発給の手続,ソヴィエト社会主義共和国連邦の漁獲に関する情報の提出の手続並びにソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船の操業日誌の記載の手続は,この協定の不可分の一部をなす附属書に定められる。

3 日本国の権限のある機関は,1にいう許可証の発給に関し妥当な料金を徴収することができる。

第5条

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船が,この協定の規定並びに第1条にいう漁業水域における魚類の保存及び漁業の規制のために日本国において定められている法令に従うことを確保する。これらの規定又は法令に従わないソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船は,日本国の法律に従い責任を負う。

第6条

1 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は,日本国の権限のある当局によって任命された公務員が,第4条1にいう許可証を有し,かつ,この協定に従つて漁獲を行つているすべてのソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船に支障なく乗船する機会が与えられることとなること並びに当該公務員が漁船にある間,当該漁船の船長及び船員が検査(検査の結果発見された違反を除去するための措置をとることを含む。)の実施について当該公務員に協力することを確保する。

2 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は,1にいう日本国の公務員のソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船における滞在に関連する経費が日本国の権限のある機関に償還されることを確保する。

3 日本国の権限のある機関によつてソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船が()捕されたときは,ソヴィエト社会主義共和国連邦政府に対し,その旨が外交上の経路を通じて遅滞なく通報される。()捕された漁船及びその乗組員は,適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。

第7条

この協定のいかなる規定も,第3次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても相互の関係における諸問題についても,いずれの政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。

第8条

1 この協定は,それぞれの国の国内法上の手続に従つて承認されなければならない。

2 この協定は,その承認を通知する外交上の公文が交換された日に効力を生じ,1977年12月31日まで効力を有する。

以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

1977年8月4日に東京で,ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書2通を作成した。

日本国政府のために

鳩山威一郎

鈴木 善幸

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために

A・イシコフ

附属書

この協定の第4条1にいう許可証の申請及び発給,ソヴィエト社会主義共和国連邦の漁獲に関する情報の提出並びにソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船の操業日誌の記載は,次の手続及び条件に従つて行われる。

1 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,日本国の権限のある当局に対し,この協定に基づいて漁獲に従事することを希望するソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船に対する許可証の発給のために申請を行う。この申請は,両国の権限のある機関の間で合意される様式によつて行わなければならない。申請書の記入及び提出の手続は,日本国の権限のある機関が定める。

2 日本国の権限のある当局は,申請書を検討し,この協定の第1条にいう漁業水域において漁獲を行うためのソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船に対する許可証の発給について,この協定の条件に従つて決定する。許可証の発給手続は,日本国の権限のある機関が定める。

3 日本国の権限のある当局は,許可証の発給を拒否する場合には,ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に対しその旨を通知する。必要がある場合には,両国の権限のある機関は,これにつき協議を行うことができる。ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,この協議の後,改めて申請を行うことができる。

4 日本国の権限のある当局は,ソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船がこの協定の条件に違反した場合には,当該漁船に対して発給された許可証の効力を停止し又はその効力を失わせることができる。

5 すべてのソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船は,この協定の第1条にいう漁業水域において漁獲に従事するときは,当該漁船に対して発給された許可証を船橋内又はこれに準ずる場所に常時備え付けていなければならない。

6 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は,船長が交代し又は乗組員の数に変更がある場合には,10日以内に,許可証を発給した日本国の権限のある当局に通報する。

7 ソヴィエト社会主義共和国連邦側は,日本国の権限のある機関に対し,無線又は電報によりこの協定の第1条にいう漁業水域における漁獲に関する旬ごとの情報(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を通報し,並びに日本語及びロシア語によるこの漁業水域における漁獲に関する月ごとの資料(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を郵送する。これらの旬ごとの情報及び月ごとの資料は,その旬及び月の末日の後それぞれ5日及び10日以内に,日本国の権限のある機関に提出する。

8 許可証の発給を受けたソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船は,この協定の第1条にいう漁業水域において漁獲を行う場合には,操業日誌(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)に記載しておかなければならない。

(なお,本協定は「日本国の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の有効期間の延長に関する議定書」(77年12月16日)により78年12月31日まで有効。)

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