-在外邦人に対する保護・援助-

 

第4節 在外邦人に対する保護・援助

 

1. 一般邦人に対する援助

77年中に在外公館で取扱い,外務本省に報告のあつた邦人の事故,疾病などは,交通事故など84件(死亡92名,負傷102名),精神病を含む疾病73名(死亡26名),自殺12名,殺害された者6名,山岳遭難5件(死亡),行方不明8名であった。

これら事故,疾病などにより援護の必要が生じた場合,在外公館では本省を通じ留守宅に連絡し,必要に応じ治療費,帰国費などの送金などを依頼し,安全かつ速やかな帰国実現を図るよう努力しており,本人が死亡している場合には遺体,遺骨の引取りにつき必要な援助を与えている。

一方,日本政府は生活に困窮した在外邦人(主として中南米に移住した邦人に多く見られる)に対し,生活扶助,医療扶助などを行うとともに,帰国を希望するが,帰国費を負担し得ない者に対して帰国旅費の貸付を行つている(77年の旅費貸付は12世帯,30名)。

また,戦前又は戦後間もなく韓国人と結婚した在韓日本婦人(元日本人を含む)で,困窮している者に対しても69年以来同様の援助を行つている。

一般邦人の犯罪で77年中に外務本省に報告があつたものは,関税法違反11件15名・麻薬などの密輸及び不法所持22件26名,不法滞在,不法就労などの入国管理法違反17件17名,殺人1件1名,詐欺窃盗8件8名,為替管理法違反1件1名である。在外公館は,邦人が外国官憲に逮捕,拘留された場合,人道的見地から,外国人であるがゆえに不利益をこうむることのないよう必要に応じ援助を行つている。

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2. 船員の犯罪及び事故

出漁中の漁船及び外国航路の貨物船などの船員に係る殺人,傷害,その他の刑事事件は77年中に12件14名であり,また死亡,疾病,行方不明,負傷などの事故は52件55名である。なお,船舶の緊急入域,座礁,衝突事件は19件である。

これらの事案について,本省では海上保安庁及び船主側と連絡をとり,保護援助に当たつている。

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3. 巡回医師団の巡遣

外務省は,72年以来海外在留邦人の健康維持の見地から,十分な医療施設のない発展途上国の在留邦人が多い地域に医師団を派遣している。77年度においては,中近東・アフリカに5チーム,南東及び南西アジアに3チーム,中南米に2チーム合計10チームをそれぞれ派遣し,約8,600名の邦人の健康相談に当たつた。

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4. 海外子女教育

外務省は,海外に長期に在留する邦人同伴子女の教育に関し,日本人学校及び補習授業校に対する援助などを中心に種々の施策を講じている。

(1) 日本人学校

本邦の小中学校の教育課程とほぼ同様の教育を行う日本人学校は77年末現在で50校がアジア,中近東,アフリカなどの開発途上地域を中心に,更には,先進地域でも必要性の高い場所に設立されている(第3部資料編II付表8.(3)部参照)。

外務省は,海外子女教育の充実強化の見地から文部省の協力を得て,日本人学校に対し,77年度で国内の国公私立学校の教員475名を派遣している。

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(2) 補習授業校

補習授業校は,現地の学校に通学する在外邦人子女に対し,国語を中心とし,算数,社会科などの教科について週1~2回,2~3時間程度の授業を行うもので77年末現在72校が主として北米,欧州などの地域に設立されている。補習授業校の講師は,現地の在留邦人のなかの適格者が選ばれており,77年5月現在その総数は552名となつている。外務省では,これらの講師に対し支給される謝金の一部を負担している。また,ニューヨークなどの大規模補習授業校(複数)に10名の専任教員を派遣している。

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(3) そ の 他

このほか民間の財団法人海外子女教育振興財団が77年2月現在,5,828名に対し通信教育を行つている。

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