-わが国の主要な文化交流の現状-

第5章 情報文化活動

 

第1節 わが国の主要な文化交流の現状

 

1. 概   況

72年に設立された特殊法人国際交流基金は,わが国の国際文化交流活動の中心的存在であるが,76年度の同基金の事業費総額は出資金350億円の運用益にあたる約24億円であった。この事業費の地域別及び事業別の配分比率は,次の図表のとおりである。

地域別配分実績

事業別配分実績

基金を通じた事業のほか,世界各地におかれている在外公館も毎年独自のイニシアティヴに基づき日本文化の紹介のための文化事業を行っている。

このような日本文化の海外への紹介の事業とあわせて政府は,開発途上国における文化・教育の振興に寄与することを目的として,文化無償協力をはじめ東南アジア文相機構(SEAMEO)やユネスコなどの国際機関を通ずる協力を行つている。

なお,外務省は,77年3月8日から20日間にわたり,わが国と中南米諸国との文化関係をより密接なものとするための政府の指針作成に資することを目的として,政府関係者及び学識経験者8名からなる文化交流調査団をメキシコ,ペルー,アルゼンティン及びブラジルの4カ国に派遣した。

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2. 文化交流に関する諸取極の締結

76年10月26日,トルドー・カナダ首相来日の機会に,小坂外務大臣(当時)とランキン駐日カナダ大使との間で署名された日加文化協定は,77年5月20日国会の承認を了し,同年11月16日オタワにおいて批准書交換が行われ,同日発効した。これによつてわが国が諸外国と締結した文化協定は計16となった。

77年12月13日,フィッシャー東独外相来日の機会に,園田外務大臣と同外相との間で日本と東独との間の文化交流に関する取極(交換公文)が署名され,同日発効した。これによつてわが国が諸外国と締結した文化取極は計7となつた。

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3. 文化混合委員会などの開催

(1) 第2回日印文化混合委員会

日印文化協定(57年5月24日発効)に基づく第2回日印文化混合委員会は,77年3月29日,東京において開催され,日印間の文化交流に関する諸問題に関して意見交換が行われた。

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(2) 日伊文化混合委員会第5回東京会合

日伊文化協定(55年11月22日発効)に基づく日伊文化混合委員会の第5回東京会合(これ迄にローマで3回,東京で4回開催)は77年10月18日,19日の両日開催された。

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(3) 第5回日米文化教育協力合同委員会

本件委員会は,77年6月22日から24日まで米国ハワイにおいて開催された。右会合においては,日米文化人,有識者の参加のもとに,文化・教育,テレビ,ニューズメディアなどの各分野における交流増進の方途について意見交換が行われたほか,日本語図書の英文翻訳促進問題,日米文化交流上の構造的阻害要因の問題及び日米文化教育会議の将来について討議が行われた。

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4. 開発途上国との文化・教育協力

(1) 概   況

開発途上国との文化面での交流にあたつては,わが国文化の相手国への紹介,相手国文化のわが国への紹介という側面のみならず,相手国の文化的・教育的水準の向上のための基盤の整備に寄与するための協力(いわゆる「文化協力」ないし「教育協力」と呼ばれる新しいジャンルの協力)が重要性を増している。わが国もかかる観点から,開発途上国による文化財及び文化遺跡の保存活用,文化関係の公演・展示などの開催並びに教育及び研究の振興のために使用する資機材の購入資金を贈与する「文化無償協力」をはじめ,ユネスコや東南アジア文相機構(SEAMEO)などの国際機関を通ずる協力などを行っている。また,77年8月の福田総理大臣の東南アジア訪問の際,わが国はASEAN諸国の域内文化交流促進の努力に対し応分の資金協力を含む貢献を行う用意がある旨提案し,その後わが国の協力の具体的態様についてASEAN諸国とともに検討を続けている。

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(2) 文化無償協力

77年に実施した文化無償協力プロジェクトは次の5件である。

(イ) ビルマ;ラングーン野外劇場の音響・照明機材購入(2,900万円)

(ロ) インドネシア;ムハマディア大学の理工学実験資機材購入(3,000万円)

(ハ) フィリピン;フィリピン・ノーマル・カレッジの体操器具,照明,音響機材購入(1,300万円)

(ニ) 韓国;韓国外国語大学の日本語LLシステム機材購入(1,700万円)

(ホ) タイ;ボピットピムーク職業短大の日本語LLシステム機材購入(1,100万円)

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(3) 東南アジア文相機構(SEAMEO)への協力

77年,わが国は,SEAMEOの教育開発特別基金(SEDF)に対し5万ドル,熱帯生物学センター(BI0TROP)研究訓練施設建設資金として15万ドルの拠出を行うとともに,7名の専門家を派遣した。

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(4) ボロブドール遺跡復興協力

77年,わが国は,10万ドルの拠出を行い,政府拠出は6年間に総額60万ドルに達した。

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(5) ASPAC文化社会センター

77年,わが国は,例年どおり6.2万ドルの分担金を拠出,文化財調査などに参加した。

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5. 海外におけるわが国文化の紹介

(1) 概   況

海外にわが国の文化を紹介し,諸国民のわが国に対する理解を増進するために,わが国は国際交流基金を通じた公演・展示などの催物の実施,映画・TVフィルムなど視聴覚メディアによる紹介,日本関係図書の寄贈などの活動を行つている。また,各在外公館は,それぞれ管轄地域の特殊事情などを勘案して,キメ細かな日本文化の紹介活動を行つている。

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(2) 在外公館主催文化事業

77年には,各地域を通じて文化講演会29回,生花(生花教室,講習会,展示会)29回,日本文化紹介展49回,茶道実演5回,折紙講座3回,その他各種の文化行事を行うとともに,各種文化団体など主催の催しに参加した。

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(3) 日本紹介のための公演

わが国の音楽,舞踊,演劇その他の伝統芸能,現代芸能,民俗芸能などの海外への紹介は,わが国についての理解を深めるための重要な文化交流事業の一つであり,在外公館と協力しつつ,国際交流基金の自主的事業,あるいは民間団体に対する一部援助という形で行っている。

77年に世界各地域で国際交流基金が実施又は援助した主要な公演事業としては,歌舞伎の米国及びカナダ公演(カナダにおいては日本移民100年祭記念事業),東京都交響楽団(東欧),舞踊団(中近東),バレー団(米,欧州),古典音楽演奏団(米,欧州),早稲田小劇場(欧州)などの公演がある。

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(4) 日本紹介のための展覧会

国際交流基金は,わが国の美術,工芸,版画,写真,書などの展示を通じ,日本文化を海外に紹介し,対日理解の増進に努めている。77年中の主要な展示事業としては唐招提寺展(仏),アジア巡回カラー写真展,東南アジア巡回現代版画展,中近東巡回児童作品展,現代日本画展(豪州)などがある。

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(5) 図書などの寄贈による日本紹介

77年,わが国は国際交流基金を通じて,在外公館を通じ外国研究機関及び公共機関など158機関に対し,わが国に関する図書18,373冊,図書8セット,マイクロ・フィルム799リール,スライド27セットを寄贈した。

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(6) 映画及びテレビによる日本紹介

(イ) 77年には在外公館主催による劇・文化映画会を107回開催した。これら映画会で使用するフィルムの購入数は,劇映画17種31本,文化映画14種28本,テレビ用フィルム15種17本,計76本となつている。

(ロ) 日ソ両国政府間の文化交流取極に基づき,77年わが方はフルンゼ及びナホトカにおいて日本映画祭を,ソ連側は東京においてソ連映画祭を開催した。

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6. 人物交流事業

(1) 人物交流は,文化を異にする人と人とのふれ合いを通じて国際的相互理解を促進するという意味で,文化交流の最も基本的かつ重要な方法であるとの観点から,国際交流基金を通じ,学者,音楽家,生花,柔道などの指導者などの海外派遣および外国の日本研究者,文化人などの招へい事業を積極的に行つている。

(2) 77年度においては,国際交流基金を通じて次のとおり派遣および招へいを行つた。

(イ) 派   遣

長期(1~2年)35名

短期(約1週間)106名

(ロ) 招 へ い

文化人等短期招へい(2~3週間)88名

日本研究関係者長期招へい(14カ月以内)77名

特定地域専門家招へい  3名

中学,高校教員招へい  136名

  計        445名

(3) また,総理府の青年海外派遣及び外国青年招へい事業並びに地方自治体,民間団体などによる青年国際交流に対し側面より協力を行つた。その他,海外に派遣される学術調査隊,スポーツ団体などに所要の便宜供与を行つた。

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7. 日本研究助成及び日本語普及

(1) 概   況

海外における日本語教育,日本研究に対する関心の増大は,対日理解を深める上で非常に歓迎されるべきものとの観点に立つて,国際交流基金を通じ,積極的な助成を行つている。

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(2) 日本研究助成

アジア地域の主要8大学に対し,日本研究講座を寄贈しているほか,諸外国における日本研究に対し,客員教授などの派遣,教授スタッフ拡充に対する助成,セミナー開催の援助などの事業を行つた。

77年度の実績次のとおり。

客員教授,講師など派遣数(77年末現在) 33名

教材寄贈 23件 11,559千円

日本研究機関援助 43件 125,097千円

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(3) 日本語普及

海外における日本語の普及をはかるため,諸外国における日本語教育施設に対し,講師派遣,教材寄贈,現地講師謝金補助などの事業を行つた。

77年度の実績次のとおり。

日本語講師派遣数(77年末現在) 37名

現地講師謝金補助 50,034千円

日本語教材寄贈 26,152千円

日本語講師研修会招へい数 33名

日本語講座成績優秀者研修招へい 43名

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8. 教育学術交流事業

(1) 外国人留学生

76年5月現在約5,700名がわが国の大学で勉学している。うち,日本政府奨学金による留学生は約1,000名で,その他は私費留学生である。なお,77年度新規採用国費留学生数は458名である。

これら留学生に対しては次の助成策をとつた。

財団法人国際学友会(1935年創立)に,政府補助金を支給し,大学進学前の私費留学生のために日本語学校の運営,宿舎の提供などの事業を行つている。77年度には,施設,経営の改善を図るため,校舎,寮舎などの改築を行つた。

また,留学生アフターケアの一環として,77年10月東南アジア地域の元日本留学者を招いて第4回「東南アジア日本留学者の集い」を開催した。さらに,帰国留学生に対し,集会の開催,相互の連絡などのための助成も行つた。

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(2) 日ソ学者・研究者の交流

わが国は,65年以降政府間取極に基づき,ソ連高等教育省との間で学者・研究者の交流を行つているが,77年には日本側(学術振興会)より4名ソ連側から6名の学者・研究者の交換を行つた。

わが国は,また,73年の「日本政府の関係研究機関とソ連科学アカデミーの研究機関との間の学者及び研究者の交換に関する交換公文」に基づき,77年には日本側(学術振興会,科学技術庁)から19名,ソ連側から20名の学者,研究者などの交換を行つた。

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(3) その他外国人学者・研究者の招へい

このほか,文部省の学者・専門家招へい計画,科学技術庁の外国人研究者招へい計画などにより77年中26人の外国人学者・研究者が来日したが,外務省はこれらの招へいに当たつて諸般の便宜供与を行つた。

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