-法 律 問 題-
第7節 法 律 問 題
条約に関する国家承継条約全権会議
(1) 条約に関する国家承継条約全権会議が,77年4月4日より5月6日までウィーンにおいて開催され,わが国を含む89カ国が参加した。本件会議においては,74年に国連国際法委員会が採択した「条約に関する国家承継条約案」を原案として,国家の独立,合併,分離などに際しての条約の承継に関する多数国間条約を採択する目的で審議が行われた。
(2) 条約に関する国家承継については,学説,国家慣行とも多様であるので,本条約の作成は必然的に立法的性格を帯びるものであるところ,会議においては各国ともそれぞれの立場を踏まえ,活発な議論を展開した。わが国代表団は,本問題については,民族自決原則に基づくクリーン・スレート原則,同意の原則,信義誠実の原則などの諸原則が考量されるべきであり,また,国際社会の秩序維持の観点からは,条約関係の継続ができるだけ確保されることが望ましいという点も軽視されてはならないとの基本的立場に立つて,各国とも協調して合理的かつ現実的な条約の採択のために積極的に審議に参加した。
しかしながら,今次会議においては,結局原案39カ条のうち25カ条を採択するにとどまり,条約全体を採択するという所期の目的は達せられなかつた。
(3) 今後の取り扱いについては,第32回総会の決議(32/47)により,本件条約全権会議再開会期を78年7月31日から3週間,ウィーンにおいて開催することが決定された。
(国連海洋法会議については,第2部第2章第6節2.参照。)